婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~

ふわふわ

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第18話: ラクティスの守護

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第18話: ラクティスの守護

王都への薬送りが決まってから、数日後の夜。

屋敷のテラスで、エルカミーノは一人で星空を見上げていた。  
秋の夜風が少し冷たく、薬草の香りを運んでくる。

(王都に薬を送ることにしたけど……本当にこれでいいのかしら)

家族を助けたい気持ちと、過去の屈辱を思い出す気持ちが交錯する。  
そんな時、背後から静かな足音が近づいてきた。

「夜風は冷たい。風邪を引くぞ」

振り返ると、そこにラクティスが立っていた。  
黒いマントを羽織り、銀髪が月光に輝いている。  
今日はガレンも連れず、また一人で訪れたらしい。

「公爵殿下……どうしてまた?」

ラクティスは無言で近づき、自分のマントをエルカミーノの肩にかけた。

「君が悩んでいる顔をしていると聞いた。  
セシルからな」

(セシルったら……!)

エルカミーノは頰を赤らめつつ、マントの温もりに少し安心した。

「王都への薬の件で、少し考え込んでしまって」

ラクティスは彼女の隣に立ち、星空を見上げた。

「後悔しているのか?  
あんな国に、薬を送ることを」

エルカミーノは首を振った。

「後悔はしてません。  
苦しんでいる人たちを放っておけないだけです。  
……ただ、カイロン殿下やソルスティス様の顔を見たくないだけかも」

ラクティスは静かに彼女の手を取り、自分の大きな手で包んだ。

「なら、もう関わるな。  
薬を送るのはこれが最後でいい。  
君の才能は、そんな薄情な国に縛られるものじゃない」

その声は低く、しかし確かな独占欲を帯びていた。

エルカミーノが少し驚いて顔を上げる。

「公爵殿下……?」

ラクティスは彼女を真正面から見つめ、紫の瞳を細めた。

「エルカミーノ。  
僕はもう、君を他の誰かに譲る気はない。  
王太子だろうが、王だろうが、君に近づく者を許さない」

突然の告白めいた言葉に、エルカミーノの心臓が激しく鳴った。

「そんな……急に……」

「急じゃない」  
ラクティスは彼女の腰に手を回し、そっと引き寄せた。

「初めて君のポーションを見た時から、興味はあった。  
一緒に錬金をして、君の笑顔を見て、魔力の共鳴を感じて……  
もう、君以外を考えられない」

距離が近づき、銀髪がエルカミーノの頰に触れる。

「君は僕のものだ。  
エルドラントへ来い。  
僕が、君を一生守る」

エルカミーノは言葉を失い、ただ彼の胸に顔を埋めた。  
マントの温もりと、ラクティスの鼓動が伝わってくる。

「……ずるいです、公爵殿下。  
こんなこと言われたら、逃げられません」

ラクティスは小さく笑い、彼女の髪を優しく撫でた。

「逃がさない。  
君が望むなら、今すぐここから連れ去ってもいい」

「だ、駄目です! 村の人たちに迷惑がかかります!」

二人は顔を見合わせて、初めて一緒に笑った。

その夜、ラクティスは屋敷に泊まることになった(もちろん別室で)。  
セシルは興奮のあまり眠れず、  
(お嬢様と公爵殿下、もう完全に両想いですわ……!)  
と枕を抱えて転がっていた。

翌朝、王都へ送る最後の薬の荷馬車が出発した。  
エルカミーノはテラスからそれを見送り、  
隣に立つラクティスにそっと手を握られた。

「これからは、僕の国で新しい薬を作ろう。  
君と、二人で」

エルカミーノは頷き、静かに微笑んだ。

(もう、戻る気はないわ)

星が瞬く夜空の下、  
二人の絆は、確実に深まっていた。

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