婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~

ふわふわ

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第21話: 魔物の襲撃

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第21話: 魔物の襲撃

冬の訪れを感じさせる冷たい風が吹き始めたある夜。

辺境の領地は、いつもより深い闇に包まれていた。  
屋敷の暖炉で火がぱちぱちと音を立て、エルカミーノとラクティスは並んでソファに座り、  
新しいポーションの配合表を眺めていた。

「この魔力増幅剤を加えれば、防御結界用の薬も作れるわね」  
「君のアイデアはいつも天才的だ」

ラクティスが微笑みながら彼女の髪を指で梳く。  
甘い時間が流れていたその時――

突然、村の外から轟音が響いた。

ドオオオン!

地面が揺れ、窓ガラスがびりびりと震える。

ガレンが扉を勢いよく開けて飛び込んできた。

「公爵殿下! 大変です!  
森から魔物の大群が押し寄せています!  
数は数百……中型から大型まで、明らかに異常です!」

エルカミーノが立ち上がる。

「魔物の大発生……? こんな時期に?」

ラクティスは即座に表情を冷徹なものに変え、エルカミーノの手を握った。

「君はここにいろ。  
僕とガレンで片付ける」

「駄目よ! 私も行く!  
ポーションがあれば、村人の怪我をすぐに治せるわ!」

ラクティスは一瞬躊躇したが、彼女の決意の瞳を見て頷いた。

「……わかった。一緒に来い。  
だが、絶対に僕の側を離れるな」

村の広場に出ると、すでに魔物の咆哮が響き渡っていた。

灰色の巨狼、角を生やした猪型魔獣、毒を吐く巨大蜘蛛……  
森から溢れんばかりに押し寄せ、村の柵を破ろうとしている。

村人たちは慌てて屋内に避難し、わずかな守備隊が必死に矢を放つ。

ラクティスは一歩前に出て、両手を広げた。

「空間結界――展開」

紫の光が爆発的に広がり、村全体を覆う巨大なドーム状の結界が形成される。  
魔物たちの突進が弾かれ、暫定的に時間を稼いだ。

「ガレン、前衛を。  
僕は上空から殲滅する」

ガレンが赤髪をなびかせ、大剣を構えて突撃する。

エルカミーノはセシルと一緒に、負傷した村人を治療しながら叫んだ。

「ラクティス! 魔物の数が多すぎる!  
このポーションを使って!」

彼女は投擲用の瓶を投げ渡す。  
中身は、魔物を弱体化させる特殊な麻痺・毒薬。

ラクティスはそれを空間魔法で増幅し、空中で爆散させた。

緑色の霧が魔物群に降り注ぎ、動きが一気に鈍る。

「今だ!」

ラクティスが両手を合わせ、紫の魔力光柱を放つ。  
空間を切り裂くような攻撃が、魔物の群れを一掃していく。

エルカミーノも負けじと、防御ポーションを村人に配り、  
簡易結界を張って守りを固めた。

戦いは激しかったが、二人の完璧な連携で、  
魔物は次々と倒されていった。

最後の大型魔獣――双頭の熊型が、結界を破って突進してきた時。

ラクティスはエルカミーノを背に庇い、  
一撃で魔獣の頭部を空間圧縮で粉砕した。

戦いが終わった頃、  
辺境の空は夜明けの光に染まり始めていた。

村人たちが安堵の息を吐き、エルカミーノとラクティスに感謝の言葉をかけに来る。

ラクティスは汗を拭いもせず、エルカミーノを抱き寄せた。

「……怪我は?」

「ないわ。あなたこそ……」

エルカミーノは彼のローブの破れを見て、心配そうに触れる。

ラクティスは彼女の額に自分の額を寄せ、囁いた。

「君が無事なら、それでいい。  
……もう、こんな危険な場所にいさせない」

村人たちが遠巻きに見守る中、二人は静かに抱き合った。

魔物の大発生は、実は王都方面からの魔瘴病の余波だったことが後で判明する。  
しかし、この戦いで、  
エルカミーノは完全に決意した。

(ラクティスの国へ、行こう。  
この人と、ずっと一緒に)

朝日が昇る中、  
二人の絆は、戦火の中でさらに強固なものとなった。
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