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第9章 三人の男性からの告白
しおりを挟む──リリアナの回復劇から数日後。
王都は「狂気の令嬢」ではなく「救世主エリアナ」の話題で持ちきりになっていた。
街を歩けば、行き交う人々が頭を下げる。
「本当にありがとうございます、娘が助かりました」
「救世主様……!」
……いや、救世主じゃない。ただのオタクなんですけど!?
どうしてこうなった。
---
そんなある日のこと。
「少し……お時間をいただけますか」
そう声をかけてきたのは、錬金術師アレクサンダーだった。
研究所の庭園。陽射しを受けて、彼の銀髪が煌めく。
「この前は無茶をしてしまったな。だが、君のおかげで薬は完成した」
「いえ、私ひとりじゃ絶対無理でした。アレクサンダー様の力があったからこそ──」
そう言いかけた瞬間、彼は真剣な眼差しを向けてきた。
「だからこそ……私は決めたんだ」
「え?」
「エリアナ。これからも共に研究を続けてほしい。いや……研究だけじゃない」
彼は私の手を取った。
「君の人生を、共に歩ませてくれないか」
「………………」
ちょ、ちょっと待って!? これってつまり──告白!?
「わ、私……研究仲間としてはすごく頼もしいと思ってますけど……」
「仲間以上になりたい。君が笑うたび、私は心を奪われるんだ」
アレクサンダーの瞳は、真剣そのもの。
私の心臓は、ドクン、と跳ね上がった。
(やば……イケメン研究者に告白されるとか、どこの乙女ゲーム!?)
---
混乱冷めやらぬまま屋敷に戻ると、今度はルカスが待っていた。
「エリアナ嬢、少し話がある」
彼は騎士団の制服に身を包み、きっちりと背筋を伸ばしている。
「リリアナ様を救ったあの場で……俺は見た。君が命を懸ける覚悟を」
「そ、それはただ必死だっただけで──」
「いや。君は勇敢だった。俺は騎士だ。忠義を尽くすと誓った相手を守る」
ルカスは一歩踏み出し、私を見据える。
「だが今は、それだけじゃない。俺は、ひとりの男として、君を守りたい」
「……っ」
「エリアナ。俺のそばにいてくれ」
真っ直ぐすぎる言葉に、胸が熱くなる。
騎士らしい誠実さ。真面目すぎるくらい真面目な想い。
(わ、わわ……ちょっと待って! これってフラグ乱立しすぎじゃない!?)
---
さらに追い討ちをかけるように、隣国の王子ディミトリがやってきた。
豪奢なマントを翻し、笑みを浮かべながら。
「おお、救世主殿。ようやく会えた」
「ディミトリ殿下……?」
「君の噂は隣国にまで届いている。だが私は噂ではなく、君自身を見に来た」
彼は私の手を取り、軽く口づけを落とす。
「……っ!?」
いきなりの王子ムーブに、私は固まった。
「政治のためでも計算のためでもない。私は、君をひとりの女性として愛している」
「ええええっ!?」
「君は国を救う知恵を持ち、そして何より……心が美しい。もし君が望むなら、私は王位すら投げ捨てよう」
「いやいやいや! 投げ捨てちゃダメでしょ!?」
突っ込みが止まらない。けど、殿下は至って真剣な表情だ。
---
三人の男性からの告白。
アレクサンダーは知識を共有する研究仲間として。
ルカスは命を懸けて守りたい騎士として。
ディミトリは国を越えた愛を誓う王子として。
「……えっと、その……」
私は完全にパニックだった。
(ちょ、ちょっと待って!? これ、乙女ゲームのルート分岐じゃん! セーブポイントどこ!?)
心臓は早鐘のように鳴り、頭の中は真っ白。
──社畜SEだった私が、まさか恋愛フラグでデバッグ地獄に陥るなんて。
夜、自室でベッドに突っ伏しながら、私は呻いた。
「……無理。ど、どうすればいいの……!?」
けれど確かに胸の奥は、ほんの少しだけ甘く、温かく疼いていた。
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