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第4話 広すぎる家は、遊び場ですわ
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第4話 広すぎる家は、遊び場ですわ
午後の陽射しが、廊下の窓から長く伸びていた。
アルフェッタは、特に目的もなく歩いている。
――というのは建前で。
(今日は“家の中”を楽しむ日ですわ)
公爵邸は、広い。
それも、日常生活には明らかに過剰なほど。
住んでいるのは自分ひとり。
使用人は多いが、使われている部屋は意外なほど限られている。
つまり――
(未開拓エリアだらけ)
彼女は角を曲がり、普段は通らない廊下へ足を向けた。
埃一つない。手入れはされている。けれど、明らかに“使われていない空間”の気配がある。
最初に開けたのは、小さな応接室だった。
落ち着いた色合いの壁紙、使い込まれていないソファ、窓から差し込む柔らかな光。
「……悪くありませんわね」
むしろ、かなりいい。
(ここ、静かですし……)
(読書向きですわ)
用途、決定。
次の部屋は、やけに広い。
天井が高く、音がよく響く。何に使っていたのか分からない空間だ。
アルフェッタは中央に立ち、くるりと一回転した。
「……走れますわね」
誰に見せるでもなく、納得したように頷く。
(雨の日の散歩代わり)
(あるいは、気分転換用)
さらに奥へ。
窓の多い部屋、日当たりの良い回廊、飾りだけの小部屋。
一つ一つに立ち止まり、その場の空気を確かめる。
――使い道は、後でいい。
(まずは“感じる”ことが大事)
階段を上がり、別の棟へ向かう途中、執事と鉢合わせた。
「アルフェッタ様。何かご用件が……?」
「いいえ。探検中ですわ」
即答だった。
「……探検、でございますか」
「ええ」
アルフェッタは、当たり前のように続ける。
「この家、まだ全部見ていませんもの」
執事は一瞬、言葉を探し、やがて静かに頷いた。
「……かしこまりました」
理解したのかどうかは分からない。
けれど止められなかったので、問題はない。
再び歩き出しながら、アルフェッタは思う。
(これ、贅沢ではなくて)
(単なる“持て余し”ですわね)
持っているものを使わないのは、もったいない。
ならば、使えばいい。
役に立つかどうかは、後回し。
必要かどうかも、今は考えない。
(楽しいかどうか)
それだけで、十分だった。
最後に辿り着いたのは、庭に面した小さなテラス。
午後の風が心地よく、椅子を置けばすぐにでもお茶ができそうだ。
「……ここ、気に入りましたわ」
小さく呟き、微笑む。
婚約がなくなっても、世界は何も変わらない。
――いいえ、正確には。
変えなくていい世界が、ここにあった。
「さて……」
アルフェッタは踵を返す。
「次は、何を置きましょうか」
公爵邸は、今日から彼女の遊び場だ。
使い切れないほどの空間は、退屈ではなく――
楽しみの余白だった。
午後の陽射しが、廊下の窓から長く伸びていた。
アルフェッタは、特に目的もなく歩いている。
――というのは建前で。
(今日は“家の中”を楽しむ日ですわ)
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それも、日常生活には明らかに過剰なほど。
住んでいるのは自分ひとり。
使用人は多いが、使われている部屋は意外なほど限られている。
つまり――
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むしろ、かなりいい。
(ここ、静かですし……)
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次の部屋は、やけに広い。
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アルフェッタは中央に立ち、くるりと一回転した。
「……走れますわね」
誰に見せるでもなく、納得したように頷く。
(雨の日の散歩代わり)
(あるいは、気分転換用)
さらに奥へ。
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一つ一つに立ち止まり、その場の空気を確かめる。
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「アルフェッタ様。何かご用件が……?」
「いいえ。探検中ですわ」
即答だった。
「……探検、でございますか」
「ええ」
アルフェッタは、当たり前のように続ける。
「この家、まだ全部見ていませんもの」
執事は一瞬、言葉を探し、やがて静かに頷いた。
「……かしこまりました」
理解したのかどうかは分からない。
けれど止められなかったので、問題はない。
再び歩き出しながら、アルフェッタは思う。
(これ、贅沢ではなくて)
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持っているものを使わないのは、もったいない。
ならば、使えばいい。
役に立つかどうかは、後回し。
必要かどうかも、今は考えない。
(楽しいかどうか)
それだけで、十分だった。
最後に辿り着いたのは、庭に面した小さなテラス。
午後の風が心地よく、椅子を置けばすぐにでもお茶ができそうだ。
「……ここ、気に入りましたわ」
小さく呟き、微笑む。
婚約がなくなっても、世界は何も変わらない。
――いいえ、正確には。
変えなくていい世界が、ここにあった。
「さて……」
アルフェッタは踵を返す。
「次は、何を置きましょうか」
公爵邸は、今日から彼女の遊び場だ。
使い切れないほどの空間は、退屈ではなく――
楽しみの余白だった。
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