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第5話 商売である必要は、あります?
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第5話 商売である必要は、あります?
テラスに置いた椅子に腰を下ろし、アルフェッタは湯気の立つカップを眺めていた。
午後のお茶。砂糖は控えめ。気分は、非常に穏やか。
――さて。
(ここまで自由だと)
(次は、何か“始める”流れですわよね)
異世界転生ものの定番を思い出す。
商売。改革。発明。知識チート。
成功して、称賛されて、ざまぁして――。
「……忙しそうですわね」
ぽつりと呟いて、紅茶を一口。
(そもそも)
(私、それをしたいのかしら)
考えてみる。
何かを売る?
利益を出す?
周囲を驚かせる?
少しだけ、想像する。
(毎日、数字を気にして)
(流行を追って)
(失敗しないように神経を使って)
――却下。
「……楽しそうでは、ありませんわね」
断言だった。
アルフェッタは、カップを置いて空を見上げる。
雲はゆっくりと流れ、誰にも急かされていない。
(商売って)
(“成功しなければならない”遊びですもの)
それは、義務が発生した瞬間に遊びではなくなる。
ふと、思いつく。
「カフェ……?」
テラスでお茶をしているのだから、自然な連想だ。
(おしゃれですし)
(流行りそうですし)
一拍。
「……でも」
首を傾げる。
(流行ったら、混みますわよね)
知らない人が増えて、対応が増えて、管理が増える。
(落ち着きませんわ)
次。
「馬車の……ドライブスルー?」
一瞬、想像してしまう。
馬車が列をなし、御者が待ちくたびれる光景。
「……客層、限られすぎですわね」
しかも、面倒そう。
次。
「貴族相手に、ぼったくる?」
ここで、少しだけ笑う。
「……悪くはありませんけれど」
(楽しさより、意地悪が勝ちますわ)
それは、彼女の好みではなかった。
アルフェッタは、改めて考える。
(商売である必要は……あります?)
答えは、すぐに出た。
(ありませんわね)
自分は公爵令嬢だ。
生活のために稼ぐ必要はない。
ならば。
(儲けなくてもいい)
(評価されなくてもいい)
(失敗しても、問題ない)
条件が外れると、途端に世界が広がる。
アルフェッタは、満足そうに頷いた。
「……やっぱり」
「趣味で、よろしいですわ」
楽しいからやる。
面白いと思ったから続ける。
それだけでいい。
誰かのためでも、世界のためでもない。
――自分のため。
テラスを渡る風が、心地よく髪を揺らす。
「さて……」
彼女は、再びカップを手に取った。
「楽しい趣味、何にしましょうか」
答えは、まだ出ていない。
けれど、それでいい。
考える時間そのものが、もう――
十分に、楽しいのだから。
テラスに置いた椅子に腰を下ろし、アルフェッタは湯気の立つカップを眺めていた。
午後のお茶。砂糖は控えめ。気分は、非常に穏やか。
――さて。
(ここまで自由だと)
(次は、何か“始める”流れですわよね)
異世界転生ものの定番を思い出す。
商売。改革。発明。知識チート。
成功して、称賛されて、ざまぁして――。
「……忙しそうですわね」
ぽつりと呟いて、紅茶を一口。
(そもそも)
(私、それをしたいのかしら)
考えてみる。
何かを売る?
利益を出す?
周囲を驚かせる?
少しだけ、想像する。
(毎日、数字を気にして)
(流行を追って)
(失敗しないように神経を使って)
――却下。
「……楽しそうでは、ありませんわね」
断言だった。
アルフェッタは、カップを置いて空を見上げる。
雲はゆっくりと流れ、誰にも急かされていない。
(商売って)
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それは、義務が発生した瞬間に遊びではなくなる。
ふと、思いつく。
「カフェ……?」
テラスでお茶をしているのだから、自然な連想だ。
(おしゃれですし)
(流行りそうですし)
一拍。
「……でも」
首を傾げる。
(流行ったら、混みますわよね)
知らない人が増えて、対応が増えて、管理が増える。
(落ち着きませんわ)
次。
「馬車の……ドライブスルー?」
一瞬、想像してしまう。
馬車が列をなし、御者が待ちくたびれる光景。
「……客層、限られすぎですわね」
しかも、面倒そう。
次。
「貴族相手に、ぼったくる?」
ここで、少しだけ笑う。
「……悪くはありませんけれど」
(楽しさより、意地悪が勝ちますわ)
それは、彼女の好みではなかった。
アルフェッタは、改めて考える。
(商売である必要は……あります?)
答えは、すぐに出た。
(ありませんわね)
自分は公爵令嬢だ。
生活のために稼ぐ必要はない。
ならば。
(儲けなくてもいい)
(評価されなくてもいい)
(失敗しても、問題ない)
条件が外れると、途端に世界が広がる。
アルフェッタは、満足そうに頷いた。
「……やっぱり」
「趣味で、よろしいですわ」
楽しいからやる。
面白いと思ったから続ける。
それだけでいい。
誰かのためでも、世界のためでもない。
――自分のため。
テラスを渡る風が、心地よく髪を揺らす。
「さて……」
彼女は、再びカップを手に取った。
「楽しい趣味、何にしましょうか」
答えは、まだ出ていない。
けれど、それでいい。
考える時間そのものが、もう――
十分に、楽しいのだから。
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