婚約破棄されましたが、私はもう必要ありませんので

ふわふわ

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第二十七話 評価されない選択

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第二十七話 評価されない選択

 王宮では、新たに招いた外部顧問が静かに職務を始めていた。

 経歴は申し分ない。
 学会での評価も高く、改革論文も数多い。
 だが――

「……数字は、改善しています」

 定例報告で、外部顧問が言う。

「短期的には、確かに」

 重臣の一人が付け加える。

「ただし、現場の判断は、相変わらず中央待ちです」

「責任分担を明示したはずでは?」

「“最終判断は王宮”という文言が、現場のブレーキになっています」

 ロイド・ヴァルシュタインは、黙って聞いていた。

 失敗ではない。
 だが、成功とも言い切れない。

 “無難”な改革。
 評価されやすい改革。

 しかし、それは、
 人を動かす改革ではなかった。

 一方、辺境公爵領。

 マルグリット・フォン・ルーヴェンは、自治組織の試験責任者三名を集めていた。

「この一か月、ありがとうございました」

 三人は、緊張した面持ちで彼女を見る。

「結果は、いずれも良好です。
 ですが、評価は一律ではありません」

 資料を配りながら、続ける。

「判断の速さ、修正力、報告の質。
 それぞれに、強みと弱みがあります」

 三人とも、黙って頷いた。

「ですから、全員を残します」

 意外そうな表情が浮かぶ。

「役割を分けます。
 一人に集約しません」

 評価されやすいのは、
 “分かりやすい成果”を出す人間だ。

 だが、組織を支えるのは、
 目立たない判断の積み重ねだ。

「評価されない選択も、あります」

 マルグリットは、静かに言う。

「ですが、それが長く続く仕組みを作るなら、
 必要な選択です」

 フェリクス・フォン・グランツは、その様子を見て思う。

 彼女は、拍手を求めていない。
 称賛される改革より、壊れない改革を選んでいる。

 午後、王宮からの定期報告が届く。

 外部顧問による改革案は、形式上、順調だという。

「……形式上、ですか」

 マルグリットは、文面をなぞる。

「評価は高いでしょうね」

「だが、動かない」

「ええ」

 それ以上、言うことはない。

 夜、王宮。

 ロイドは、執務室で一人、書類を閉じた。

 改革案は整っている。
 だが、何かが足りない。

「……評価されることを、気にしすぎている」

 誰にともなく呟く。

 彼女がいた頃、
 評価は後回しだった。
 まず動かし、壊れたら直す。

 だが、それは“評価されない”やり方でもあった。

 辺境公爵領の夜は、静かだ。

 マルグリットは、廊下を歩きながら考える。

「……評価されない選択」

 それは、孤独だ。
 だが、必要だ。

 拍手がないからこそ、
 長く続く。

 誰も気づかないからこそ、
 壊れにくい。

 彼女は、足を止めずに歩く。

 評価を求めず、
 称賛を求めず、
 ただ、選び続ける。

 それが、
 マルグリット・フォン・ルーヴェンという存在の、
 本当の価値だった。
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