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第7話 国のため?その前に、話を聞いて
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第7話 国のため?その前に、話を聞いて
父との話し合いから三日後。
私は、再び王宮に呼び出されていた。
ただし今回は、執務官ではなく、国王直々の招集。
しかも「協議の場」と明記されている。
「……やっと“相談”の段階に来たか」
馬車の揺れに身を任せながら、私は小さく息を吐いた。
命令でも通達でもない。
それだけで、少しだけ空気が変わったと分かる。
会議室には、国王、宰相、数名の高官、そして王太子ステルヴィオがいた。
全員が揃っているが、誰もすぐには口を開かない。
沈黙を破ったのは、私だった。
「で、今日は何の話?」
国王が一瞬だけ目を見開き、咳払いをする。
「……聖女としての今後についてだ」
「うん。それは聞いてる」
私は席に着き、背もたれに軽く寄りかかった。
「先に言っとくけど、
常駐と無償奉仕の話なら、答えは変わらないよ」
宰相が慌てて口を挟む。
「い、いえ。
本日は、その……条件について、改めて」
その言葉に、内心で少しだけ評価を上げる。
少なくとも、話を聞く気はあるらしい。
「条件って言っても、もう出してるけど」
私は指を折りながら言った。
「非常勤。呼び出し制。
拘束時間は時給換算。
緊急時は最優先で対応」
「それは……」
国王が低く唸る。
「聖女の立場として、あまりに自由ではないか」
「自由じゃないよ」
私は即座に返した。
「仕事の範囲を明確にしてるだけ」
視線が集まる。
「今までのやり方はさ、
“聖女がいるから大丈夫”って前提で全部回してたでしょ?」
「それは……」
「それが一番危ない」
私は言い切った。
「私が倒れたら、終わり。
私がいなくなったら、もっと終わり」
会議室が静まり返る。
「属人化しすぎなんだよ。
それ、国の仕組みとして、普通に欠陥」
宰相が苦い顔をした。
「……否定できません」
国王は、しばらく黙り込んでいたが、やがて低い声で言った。
「だがな、シャマル。
国は、常に最悪を想定せねばならん」
「うん、同意」
私は頷いた。
「だからこそ、
“一人に全部背負わせる”想定は間違ってる」
王太子が、静かに口を開いた。
「父上。
彼女の言う通りです」
国王が睨む。
「ステルヴィオ」
「聖女が常駐しないと回らない体制こそ、
王家の怠慢ではありませんか」
一瞬、空気が張り詰めた。
私は、ちらりと王太子を見る。
公の場では王太子らしい口調。
でも、どこかシャマル成分が混じっている気がした。
「……ふう」
国王は、大きく息を吐いた。
「では聞こう。
その条件で、国は何を得られる?」
「安定」
私は即答した。
「私が無理しないから、
長く働ける」
「それだけか?」
「それだけで十分でしょ」
私は肩をすくめた。
「短期間の奇跡より、
長期間の確実性」
その言葉に、誰も反論しなかった。
国王は、ゆっくりと椅子にもたれかかる。
「……分かった」
「この件、即断はせぬ」
「うん、急がなくていいよ」
私は立ち上がる。
「でもね」
一歩だけ前に出て、続けた。
「話を聞いてもらえないなら、
協力もしない」
「私は聖女だけど、
便利な道具じゃないから」
会議室を出たあと、王太子が追いついてきた。
「……強かったな」
「事実しか言ってないよ」
私は歩きながら答える。
「それに」
一瞬だけ立ち止まり、振り返る。
「国のためって言葉、
使うなら、ちゃんと話を聞いてからにしてほしい」
王太子は、少しだけ笑った。
「……影響、受けてるな」
「今さら?」
そう返しながら、私は思う。
押し切らせない。
感情で争わない。
条件と事実だけで進める。
それが、私のやり方だ。
安定したサブスク生活への道は、
まだ交渉段階。
でも――
確実に、前には進んでいた。
父との話し合いから三日後。
私は、再び王宮に呼び出されていた。
ただし今回は、執務官ではなく、国王直々の招集。
しかも「協議の場」と明記されている。
「……やっと“相談”の段階に来たか」
馬車の揺れに身を任せながら、私は小さく息を吐いた。
命令でも通達でもない。
それだけで、少しだけ空気が変わったと分かる。
会議室には、国王、宰相、数名の高官、そして王太子ステルヴィオがいた。
全員が揃っているが、誰もすぐには口を開かない。
沈黙を破ったのは、私だった。
「で、今日は何の話?」
国王が一瞬だけ目を見開き、咳払いをする。
「……聖女としての今後についてだ」
「うん。それは聞いてる」
私は席に着き、背もたれに軽く寄りかかった。
「先に言っとくけど、
常駐と無償奉仕の話なら、答えは変わらないよ」
宰相が慌てて口を挟む。
「い、いえ。
本日は、その……条件について、改めて」
その言葉に、内心で少しだけ評価を上げる。
少なくとも、話を聞く気はあるらしい。
「条件って言っても、もう出してるけど」
私は指を折りながら言った。
「非常勤。呼び出し制。
拘束時間は時給換算。
緊急時は最優先で対応」
「それは……」
国王が低く唸る。
「聖女の立場として、あまりに自由ではないか」
「自由じゃないよ」
私は即座に返した。
「仕事の範囲を明確にしてるだけ」
視線が集まる。
「今までのやり方はさ、
“聖女がいるから大丈夫”って前提で全部回してたでしょ?」
「それは……」
「それが一番危ない」
私は言い切った。
「私が倒れたら、終わり。
私がいなくなったら、もっと終わり」
会議室が静まり返る。
「属人化しすぎなんだよ。
それ、国の仕組みとして、普通に欠陥」
宰相が苦い顔をした。
「……否定できません」
国王は、しばらく黙り込んでいたが、やがて低い声で言った。
「だがな、シャマル。
国は、常に最悪を想定せねばならん」
「うん、同意」
私は頷いた。
「だからこそ、
“一人に全部背負わせる”想定は間違ってる」
王太子が、静かに口を開いた。
「父上。
彼女の言う通りです」
国王が睨む。
「ステルヴィオ」
「聖女が常駐しないと回らない体制こそ、
王家の怠慢ではありませんか」
一瞬、空気が張り詰めた。
私は、ちらりと王太子を見る。
公の場では王太子らしい口調。
でも、どこかシャマル成分が混じっている気がした。
「……ふう」
国王は、大きく息を吐いた。
「では聞こう。
その条件で、国は何を得られる?」
「安定」
私は即答した。
「私が無理しないから、
長く働ける」
「それだけか?」
「それだけで十分でしょ」
私は肩をすくめた。
「短期間の奇跡より、
長期間の確実性」
その言葉に、誰も反論しなかった。
国王は、ゆっくりと椅子にもたれかかる。
「……分かった」
「この件、即断はせぬ」
「うん、急がなくていいよ」
私は立ち上がる。
「でもね」
一歩だけ前に出て、続けた。
「話を聞いてもらえないなら、
協力もしない」
「私は聖女だけど、
便利な道具じゃないから」
会議室を出たあと、王太子が追いついてきた。
「……強かったな」
「事実しか言ってないよ」
私は歩きながら答える。
「それに」
一瞬だけ立ち止まり、振り返る。
「国のためって言葉、
使うなら、ちゃんと話を聞いてからにしてほしい」
王太子は、少しだけ笑った。
「……影響、受けてるな」
「今さら?」
そう返しながら、私は思う。
押し切らせない。
感情で争わない。
条件と事実だけで進める。
それが、私のやり方だ。
安定したサブスク生活への道は、
まだ交渉段階。
でも――
確実に、前には進んでいた。
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