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第38話 それでも納得しない人は、必ず理由を変える
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第38話 それでも納得しない人は、必ず理由を変える
噂が効かなかったと知った人は、
次に何をするか。
答えは簡単だ。
理由を変える。
不安が通じなければ、
信仰を。
信仰が通じなければ、
伝統を。
伝統が通じなければ――
道徳を持ち出す。
午前中。
宰相が、少しだけ疲れた顔でやってきた。
「……新しい動きがあります」
「来たね」
私は、先を促す。
「“金銭を介した聖女行為は、
人の心を堕落させる”
という主張が、
一部の貴族層で出ています」
私は、静かに息を吐いた。
「効かなかったから、
正しさに逃げた」
「はい」
宰相は、頷く。
「数字でも、
現場の声でも
否定できないため」
「だから、
価値観をぶつける」
私は、淡々と言った。
午後。
その主張の中心にいる人物が、
正式に面会を求めてきた。
年配の伯爵。
立場も、発言力もある。
「聖女殿」
「どうぞ」
私は、椅子に腰掛けたまま促す。
「あなたの制度は、
人々の信仰心を
薄めている」
「そう思う理由は?」
「聖女が、
“職業”になってしまったからだ」
来た。
「奇跡は、
対価を求めるものではない」
私は、少しだけ首を傾げた。
「奇跡の話を、
してる?」
伯爵は、言葉に詰まる。
「私は、
医療と支援の話を
している」
「信仰は、
信じたい人が
勝手に信じるもの」
「制度は、
信じなくても
使える必要がある」
伯爵は、
眉をひそめた。
「それでは、
聖女が“ただの人”に
なってしまう」
「なるよ」
私は、即答した。
「ただの人で、
仕事をする」
「それの、
何が悪い?」
一瞬、
伯爵の言葉が止まった。
「……聖女とは、
そういう存在ではない」
「誰が決めたの?」
私は、穏やかに聞いた。
「……伝統が」
「伝統は、
人を守るためにある」
「人を縛るためじゃない」
沈黙が、
部屋に落ちる。
「納得できない?」
私は、確認する。
「……できない」
伯爵は、はっきり言った。
「分かった」
私は、頷く。
「じゃあ、
無理に納得しなくていい」
伯爵は、
驚いた顔をする。
「……何?」
「制度は、
全員の納得を
必要としない」
「困らない人が、
使えばいい」
「納得できない人は、
使わなくていい」
伯爵は、
言葉を失った。
夜。
王太子ステルヴィオが、
少し心配そうに現れた。
「……強く出たな」
「強くはないよ」
私は、肩をすくめる。
「線を引いただけ」
「分断にならないか?」
「ならない」
私は、即答する。
「納得しない人は、
もう理由を変え続ける段階」
「話し合いは、
終わってる」
王太子は、
しばらく黙ってから頷いた。
「……父上も、
同じ結論に
近づいている」
「“説得”を
やめる時期だって?」
「そう」
私は、窓の外を見る。
納得しない人は、
必ず理由を変える。
それは、
理解できないからじゃない。
理解した上で、
受け入れられないから。
そこに、
正解はない。
「さて」
私は、小さく息を吐く。
「これで、
最後の試練かな」
全員を救おうとしない。
全員に理解されようとしない。
それを選べたとき、
制度は――
完成する。
安定したサブスク生活は、
いよいよ――
“選べる自由”を
本当に持った制度に
なろうとしていた。
噂が効かなかったと知った人は、
次に何をするか。
答えは簡単だ。
理由を変える。
不安が通じなければ、
信仰を。
信仰が通じなければ、
伝統を。
伝統が通じなければ――
道徳を持ち出す。
午前中。
宰相が、少しだけ疲れた顔でやってきた。
「……新しい動きがあります」
「来たね」
私は、先を促す。
「“金銭を介した聖女行為は、
人の心を堕落させる”
という主張が、
一部の貴族層で出ています」
私は、静かに息を吐いた。
「効かなかったから、
正しさに逃げた」
「はい」
宰相は、頷く。
「数字でも、
現場の声でも
否定できないため」
「だから、
価値観をぶつける」
私は、淡々と言った。
午後。
その主張の中心にいる人物が、
正式に面会を求めてきた。
年配の伯爵。
立場も、発言力もある。
「聖女殿」
「どうぞ」
私は、椅子に腰掛けたまま促す。
「あなたの制度は、
人々の信仰心を
薄めている」
「そう思う理由は?」
「聖女が、
“職業”になってしまったからだ」
来た。
「奇跡は、
対価を求めるものではない」
私は、少しだけ首を傾げた。
「奇跡の話を、
してる?」
伯爵は、言葉に詰まる。
「私は、
医療と支援の話を
している」
「信仰は、
信じたい人が
勝手に信じるもの」
「制度は、
信じなくても
使える必要がある」
伯爵は、
眉をひそめた。
「それでは、
聖女が“ただの人”に
なってしまう」
「なるよ」
私は、即答した。
「ただの人で、
仕事をする」
「それの、
何が悪い?」
一瞬、
伯爵の言葉が止まった。
「……聖女とは、
そういう存在ではない」
「誰が決めたの?」
私は、穏やかに聞いた。
「……伝統が」
「伝統は、
人を守るためにある」
「人を縛るためじゃない」
沈黙が、
部屋に落ちる。
「納得できない?」
私は、確認する。
「……できない」
伯爵は、はっきり言った。
「分かった」
私は、頷く。
「じゃあ、
無理に納得しなくていい」
伯爵は、
驚いた顔をする。
「……何?」
「制度は、
全員の納得を
必要としない」
「困らない人が、
使えばいい」
「納得できない人は、
使わなくていい」
伯爵は、
言葉を失った。
夜。
王太子ステルヴィオが、
少し心配そうに現れた。
「……強く出たな」
「強くはないよ」
私は、肩をすくめる。
「線を引いただけ」
「分断にならないか?」
「ならない」
私は、即答する。
「納得しない人は、
もう理由を変え続ける段階」
「話し合いは、
終わってる」
王太子は、
しばらく黙ってから頷いた。
「……父上も、
同じ結論に
近づいている」
「“説得”を
やめる時期だって?」
「そう」
私は、窓の外を見る。
納得しない人は、
必ず理由を変える。
それは、
理解できないからじゃない。
理解した上で、
受け入れられないから。
そこに、
正解はない。
「さて」
私は、小さく息を吐く。
「これで、
最後の試練かな」
全員を救おうとしない。
全員に理解されようとしない。
それを選べたとき、
制度は――
完成する。
安定したサブスク生活は、
いよいよ――
“選べる自由”を
本当に持った制度に
なろうとしていた。
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