婚約破棄されたのでサブスク聖女始めました ―平民がダメ?なら侯爵令嬢にしますが、だから何?―

ふわふわ

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第39話 納得しない自由を、制度は受け入れる

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第39話 納得しない自由を、制度は受け入れる

 

 全員を納得させる必要がない――
 その結論に辿り着いた翌日、
 王宮は驚くほど静かだった。

 反発が消えたわけじゃない。
 賛同が増えたわけでもない。

 ただ、
 線が引かれた。

 使う人。
 使わない人。
 信じる人。
 信じない人。

 それぞれが、
 自分の場所を選んだ。

 午前中。
 王宮に一通の申し立てが届いた。

 例の伯爵派を中心とした、
 「聖女制度に対する道徳的懸念についての意見書」。

 言葉は丁寧。
 論調も冷静。

 でも――
 内容は、変わっていない。

「……却下、ですね」

 宰相が、静かに言った。

「うん」

 私は、即答した。

「反論しない。
 訂正もしない」

「説明は?」

「しない」

 宰相は、少しだけ驚いた顔をする。

「それで、
 よろしいのですか?」

「うん」

 私は、紅茶を一口飲む。

「彼らは、
 理解してないわけじゃない」

「理解した上で、
 受け入れないと
 選んでる」

「そこに、
 言葉を足す必要はない」

 午後。
 王太子ステルヴィオが、
 執務のa室を訪ねてきた。

「……意見書、
 処理されたそうだな」

「されたよ」

「静かに」

「それが正解」

 私は、淡々と答える。

「声を荒げない否定は、
 相手の居場所を
 残す」

「でも、
 制度は曲げない」

 王太子は、
 少し考えてから言った。

「……父上が、
 こう言っていた」

「“納得しない自由を
 認められる国は、
 強い”と」

「名言だね」

 私は、素直に頷いた。

 夕方。
 医務局から、
 一件の報告が届いた。

 伯爵派の領地で、
 聖女制度を使わず、
 独自に治癒体制を整えたという。

「……それで?」

 私は、続きを促す。

「問題なく回っていると」

「なら、
 それでいい」

 宰相は、
 少し不安そうに言った。

「制度が、
 分断を生まないでしょうか」

「生まない」

 私は、即答する。

「選べるから」

「選べない制度が、
 一番分断を生む」

 夜。
 私は、窓辺で王宮の灯りを眺めていた。

 奇跡を信じる人もいる。
 制度を使う人もいる。
 どちらも、
 否定されない。

 それが、
 本当の安定。

「さて」

 私は、静かに息を吐く。

「残るのは、
 ひとつだけ」

 ――この制度が、
 私がいなくなっても
 回るかどうか。

 安定したサブスク生活は、
 もはや私個人のものじゃない。

 納得しない自由を含めて、
 選べる形になった。

 それはつまり――
 手を離す準備が、
 整ったということ。

 次で、
 終わる。

 私は、
 そう確信していた。
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