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第40話 それでも私は、昼まで寝たい
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第40話 それでも私は、昼まで寝たい
朝。
――いや、正確には昼前。
「お嬢様、もうお昼です」
控えめなノックと、控えめじゃない宣告。
「……聞かなかったことにして」
私は毛布を頭まで引き上げた。
静かな王宮。
安定した制度。
回り続ける仕組み。
――全部、順調。
順調すぎる。
「お嬢様」
「あと十分」
「もう二時間です」
「誤差」
ため息とともに、侍女が引き下がる気配がした。
ようやく、
私はベッドの中で目を開ける。
ああ、静かだ。
反対派もいない。
噂も沈んだ。
制度は回り、
説明は現場がやり、
疑う役も機能している。
私はもう、
呼ばれない。
必要なときだけ呼ばれる。
時給で。
記録つきで。
「……完璧じゃない」
私は天井を見ながら呟いた。
完璧すぎて、
やることがない。
午後。
王太子ステルヴィオが、
珍しく正式な通路からやってきた。
「……起きてるか?」
「起きてる判定で来たでしょ」
彼は、苦笑する。
「父上が、
最後に君へ伝言を」
「嫌な予感」
「“礼を言う”」
私は、思わず吹き出した。
「それ、
一番やりにくいやつ」
「分かる」
彼も、同意する。
「だが――」
彼は、少し真面目な顔になった。
「君がいなくても、
この制度は回る」
「うん」
私は、あっさり頷く。
「そう作った」
「……寂しくないのか?」
少しだけ、
本当に少しだけ、
心配そうな声。
「全然」
即答だった。
「だって――」
私は、ベッドに腰掛ける。
「働かなくていい未来を、
ちゃんと作れたんだよ?」
王太子は、
しばらく黙ってから笑った。
「……君らしい」
「でしょ」
彼は立ち上がる。
「父上は、
こうも言っていた」
「“聖女は、
国を救ったのではない”」
「“国が、
自分で立てる場所を
作っただけだ”と」
私は、少しだけ目を細めた。
「正解」
王太子が去ったあと、
私は再びベッドに戻る。
もう、
奇跡を振りまく必要はない。
もう、
全員を納得させなくていい。
選びたい人が、
選べる。
使いたい人が、
使える。
使わない人も、
否定されない。
それで、いい。
「さて……」
私は、毛布にくるまる。
「明日は、
昼まで寝よう」
安定したサブスク生活は、
英雄譚でも、
革命でもなかった。
ただ――
無理をしないで生きられる場所を
作っただけ。
それが、
一番の奇跡だったのかもしれない。
聖女?
ええ、そう。
でも今日は、
ただの――
よく寝る人。
世界が回る音を、
遠くに聞きながら、
私はもう一度、目を閉じた。
朝。
――いや、正確には昼前。
「お嬢様、もうお昼です」
控えめなノックと、控えめじゃない宣告。
「……聞かなかったことにして」
私は毛布を頭まで引き上げた。
静かな王宮。
安定した制度。
回り続ける仕組み。
――全部、順調。
順調すぎる。
「お嬢様」
「あと十分」
「もう二時間です」
「誤差」
ため息とともに、侍女が引き下がる気配がした。
ようやく、
私はベッドの中で目を開ける。
ああ、静かだ。
反対派もいない。
噂も沈んだ。
制度は回り、
説明は現場がやり、
疑う役も機能している。
私はもう、
呼ばれない。
必要なときだけ呼ばれる。
時給で。
記録つきで。
「……完璧じゃない」
私は天井を見ながら呟いた。
完璧すぎて、
やることがない。
午後。
王太子ステルヴィオが、
珍しく正式な通路からやってきた。
「……起きてるか?」
「起きてる判定で来たでしょ」
彼は、苦笑する。
「父上が、
最後に君へ伝言を」
「嫌な予感」
「“礼を言う”」
私は、思わず吹き出した。
「それ、
一番やりにくいやつ」
「分かる」
彼も、同意する。
「だが――」
彼は、少し真面目な顔になった。
「君がいなくても、
この制度は回る」
「うん」
私は、あっさり頷く。
「そう作った」
「……寂しくないのか?」
少しだけ、
本当に少しだけ、
心配そうな声。
「全然」
即答だった。
「だって――」
私は、ベッドに腰掛ける。
「働かなくていい未来を、
ちゃんと作れたんだよ?」
王太子は、
しばらく黙ってから笑った。
「……君らしい」
「でしょ」
彼は立ち上がる。
「父上は、
こうも言っていた」
「“聖女は、
国を救ったのではない”」
「“国が、
自分で立てる場所を
作っただけだ”と」
私は、少しだけ目を細めた。
「正解」
王太子が去ったあと、
私は再びベッドに戻る。
もう、
奇跡を振りまく必要はない。
もう、
全員を納得させなくていい。
選びたい人が、
選べる。
使いたい人が、
使える。
使わない人も、
否定されない。
それで、いい。
「さて……」
私は、毛布にくるまる。
「明日は、
昼まで寝よう」
安定したサブスク生活は、
英雄譚でも、
革命でもなかった。
ただ――
無理をしないで生きられる場所を
作っただけ。
それが、
一番の奇跡だったのかもしれない。
聖女?
ええ、そう。
でも今日は、
ただの――
よく寝る人。
世界が回る音を、
遠くに聞きながら、
私はもう一度、目を閉じた。
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