49 / 78
成り立てほやほや王女殿下の初外交
15 概念がないものに概念を求めるのは無理な話でした
しおりを挟む……ずいぶん、風通しが良くなりましたね。
私はイシリス様と一緒に、安全圏である空中に待機中。
イシリス様が「任せておけ」と自信満々に仰ったので任せていると、まさかまさかの、大技を繰り出したわ。
屋根が全て取り外されたの。ブッ壊されたって言った方が適切ね。さすがの私もビックリしたわ。その後、「淀んだ空気をなんとかする」と言って、風魔法を放ってましたね。ボロボロになった家具がコロコロと転がっていたので、どれほどの威力かは想像できるわね。普通、生きた人間相手には放たないわよ。絶対大怪我するもの。最悪なことも起きかねないからね。
でも、ここにいるのは【死なない人間】と【生きる屍】だから大丈夫。怪我をしても治るもの。
それに、自らの欲望のために命を弄んできたものに、なんの遠慮があるのよ。命を弄んだ者には、自らの命を弄ばれても仕方ないわよね。自業自得だわ。
「……荒業ですね」
「これで、かなりマシになったんじゃないか? ついでに、浄化魔法も建物に掛けてきたぞ」
さすがですね、イシリス様。建物内にいる生きる屍を避けてなんて。ナイスですわ。
「そうですね。まだ、少し悪臭はしますが、衣服や髪に付くことはありませんわ」
建物内の汚物や汚れは、イシリス様の浄化魔法でピカピカになったのに、ましてや空気も入れ替えて、空気が通りやすくしたのに、まだ悪臭がするなんて。自然と悪臭の出どころはわかるよね。
悪臭の出どころたちが、コロコロと転がる勢いで走って来るのが見えるもの。
あっ、まだ、ドレス着てるんだ……もう、らしきものになってるけどね。あまりにも、屑らしくて笑っちゃうわ。
「そうだな。なら、あいつらも浄化魔法を掛けるか?」
そう訊いてくるイシリス様だけど、彼は掛けたくなさそう。なら、ここはイシリス様の気持ちを汲まないと。私もそう思ってたし。
「その必要はありませんよ。あいつらに浄化魔法は、行き過ぎたサービスですわ。元王城が綺麗になっただけで十分です」
「ならば、一定以上近づけないように結界でも張るか。これで、少しは違うだろ?」
イシリス様はそう言うと、片手を上げ軽く払う。
お礼を言わなくちゃいけないのに、代わりに笑い声が出ちゃった。だって、走って来た屑たちが、次々と見えない壁に勢いよくぶつかってるんだもの。笑うなっていうのが、無理だよ。
「……最高ですわ、イシリス様」
「喜んでもらえたのは嬉しいが、少し複雑だな」
「仕方ありませんわ。とうに見切りは付けていたとはいえ、長い間護ってきた人たちですもの。割り切っていても、わだかまりはあるでしょう」
イシリス様を見詰めながらそう告げると、イシリス様にさらに強く抱き寄せられた。
「ありがとう……ミネリア。俺の番が君でほんとうによかった」
甘い顔と声で、イシリス様は囁く。
途端に、真っ赤になる私。いつも間近で、光り輝く尊顔を特等席で拝顔してるけど、それでも、これは私にもダメージが加わるレベルだわ。直視できなくて、視線を屑たちに移した。さりげにできたから、屑たちに感謝。
そういえば、さっきから、やけに騒いでるわね。煩いわよ。全員が喚いてるから、何言ってるのかわかんない。
「……イシリス様、屑たち、ついに頭が退化したのですか?」
まだ、喚いている。普通わかるでしょ。全員が一緒に声出したら相手に通じないって。
「それだけ追い詰められて、興奮してるんじゃないか」
「ああ、そうかも。魔猿が興奮した時と同じだわ。真っ赤だわ」
「魔猿が可哀想だ」
「ですね」
私とイシリス様が和やかな会話を楽しんでいる時も、下にいる屑たちは喚き続けていた。さすがに、起き上がって結界の壁を連打してる。最悪のBGMだわ。なので、
「煩いですわ。こちらには、何を仰ってるかわかりませんわ。言いたいことがあるのなら、一人ずつにしてくれません」
はっきりと口にした。
すると、一瞬黙った後、また一斉に喚き出した。それには、私もイシリス様も溜め息を吐いたわ。
ほんと、つくづく自分優勢の人たちね。折れるってことを全くしない。っていうか、そもそも、その概念がないのかも。だったら、私が悪かったわね。概念がないものに概念を求めてもね……無理な話だったわ。学習能力がない奴らだし。
さて、どうしようかって考えようとした時、イシリス様がキレて、軽く雷魔法を屑たちの傍に落とした。
効果てきめんで、ピタッと喚き声が止まったよ。これで、会話ができるわね。
「煩い!! 言いたいことがあれば、一人ずつ言え!!」
口調はとても厳しくて声も低いけど、イシリス様は優しいわね。
おそらく、私とイシリス様がこの場に訪れるのは、今日で最後。
一方的に伝えてもよかったのだけど、わざわざ屑たちの言葉を聞こうなんて。……そんなイシリス様だから、私は番になることを了承したの。強いだけじゃない。深い愛情と優しさも持っているから……
161
あなたにおすすめの小説
その発言、後悔しないで下さいね?
風見ゆうみ
恋愛
「君を愛する事は出来ない」「いちいちそんな宣言をしていただかなくても結構ですよ?」結婚式後、私、エレノアと旦那様であるシークス・クロフォード公爵が交わした会話は要約すると、そんな感じで、第1印象はお互いに良くありませんでした。
一緒に住んでいる義父母は優しいのですが、義妹はものすごく意地悪です。でも、そんな事を気にして、泣き寝入りする性格でもありません。
結婚式の次の日、旦那様にお話したい事があった私は、旦那様の執務室に行き、必要な話を終えた後に帰ろうとしますが、何もないところで躓いてしまいます。
一瞬、私の腕に何かが触れた気がしたのですが、そのまま私は転んでしまいました。
「大丈夫か?」と聞かれ、振り返ると、そこには長い白と黒の毛を持った大きな犬が!
でも、話しかけてきた声は旦那様らしきものでしたのに、旦那様の姿がどこにも見当たりません!
「犬が喋りました! あの、よろしければ教えていただきたいのですが、旦那様を知りませんか?」「ここにいる!」「ですから旦那様はどこに?」「俺だ!」「あなたは、わんちゃんです! 旦那様ではありません!」
※カクヨムさんで加筆修正版を投稿しています。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法や呪いも存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
※クズがいますので、ご注意下さい。
※ざまぁは過度なものではありません。
婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです
風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。
婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。
そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!?
え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!?
※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。
※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~
村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。
だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。
私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。
……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。
しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。
えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた?
いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる