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成り立てほやほや王女殿下の初外交
16 屑たちの最後
しおりを挟む最後の機会だってことを、こいつらはまるで理解してないわね。
愛しいイシリス様の隣で、屑たちを呆れながら見下ろし思う。
「つくづく、馬鹿な奴らね……」
その言葉しか出てこないわ。
せっかく、聖獣であるイシリス様が話す機会を与えてくださってるのに、屑どもは自分から最後の弁明を拒否してるもの。まぁ、最後の弁明っていっても、聞き入れてはもらえないだろうけど。
私の声が聞こえたのか、屑たちはさらにヒートアップ。
色々な修羅場を見てきた私だけど、そんな私が引くくらいの有様だった。人って極限状態を超えた時間が続くと、そんな顔できるんだって思うほどの顔面。全ての感情が歪な形で爆発したかのような表情に、私は言葉を失った。
屑たちはかろうじて人の姿をしてるけど、もうそこにいるのは人じゃないわ。イシリス様が精神が壊れないように魔法を掛けているのに、まともなはずなに、そこにいるのは、一頭の獣ーー。
いや、獣ではない人の皮を被ったバケモノだった。
そんな彼らが放つ言葉は、私には、まるで呪詛のように聞こえたの。
「……いや、あれはもう呪詛だ」
イシリス様が厳しい表情のまま肯定する。
「では、あれは、もう人ではありませんね」
普通の人間が呪詛を吐き出すことはできないもの。不満や愚痴を言うことはあるわ。でもそれが、物理的に作用するレベルになっているのなら、もはや話は別。普通はそこまでいかないから。どんなに相手を恨んでもね。命を賭けたりしたら、あるかもだけど。生きている人間はまず無理。
まぁ、呪詛といっても、他国までには実害がないレベルだから問題ないし。幸いにも、他国の王族とは深く付き合いがなかったみたいだからね。それもどうかと思うけど。実害があったら、報告があるはずだもの。
深く付き合いのあるリアスや、決定打を打った私たちに呪詛を放ったとしても、イシリス様の結界がベルケイド王国を護っている以上届かない。現に今、近くにいる私たちも、結界のおかげで一切実害はないけどね。
ほんと、屑たちは自ら、人であることを止めたみたいね。
屑らしいといえばらしいわ。私には考えられない選択だけど。ほんの少しでも、そこまでに至ったことに反省する気持ちがあれば、こんなことにはならなかったと思う。はじめからね。
極限に追い込まれても、屑たちの中で誰一人反省する者がいなかったみたい。全ての責任を他者に変換した。それが悪いとは言わない。人間は醜いところがあるもの。そうしなければ、生きれない人もいるのは確か。
でもね、屑たちはやり過ぎたの。
だから、人を止める結果になったの。そもそも、他人に責任を擦り付けてきた奴らだもの、自分の欲求のために命を奪うことも当たり前だと考えていた屑なんだからーー。わかってたのにね。
最後まで、奴らは人のせいにし続けた。
不満と憤慨の言葉が、次第に呪いの言葉に変貌しても口にし続けた。
そして、奴らはとうとう人を止めてしまった。
そんな奴らに、反省を促すなんてはじめから無理な話だったのよ。とことん、私って甘かったみたい。屑で最低な奴らだって理解はしていたのに、心のどこかで、自分の非を認める言葉が聞けるかもしれないって思ってた……ほんと、愚かだよ。
「そうだな」
その返答はどっちにでもとれるわね。たぶん、両方だと思う。
「ならば、屑たちの言葉を聞く必要がないのでは? イシリス様に呪詛を放つとは、許せませんわ」
気付きながらも、私はあえてそう提案した。
「ああ、そうだな」
イシリス様は私を見詰めながらそう答えると、視線を屑たちに向けた。
そして、低い声で告げた。
最終宣告をーー。
「かつて、聖騎士であった者の生きる屍を数体残し、再度、元王城に結界を張る。その結界はもう二度と解けぬと思え。気付いているだろうが、お前たちは死ぬことは叶わぬ。自死もできない。己の寿命が尽きるまで食べ続けられるがよい」
そう告げると、私とイシリス様は元王城を後にした。
それから六十年近く、結界は張り続けられた。
最後まで残ったのは、マリアだったとイシリス様の眷属から聞いたわ。マリアが叶わぬ夢を抱かなければ、少なくとも、こんな最後を迎えることはなかったのにね……
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