言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹

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成り立てほやほや王女殿下の初外交

14 責任があるからね



「……マジで見に行くつもりなのか?」

「物好きだな」

 ラリーお兄様とお父様が呆れながら言ってくる。うん、当然の反応よね。

「あ~確かに、実際の食事場面は見たくはありませんし、すごい異臭だそうですから、王城に立ち入るつもりはありませんわ」

 衣服と髪に匂いが染み付きそうだからね。一度付いたらとれなさそうじゃない。死臭がする王女っていないでしょ。とはいえ、絶望で歪むあいつらの顔は見たいし、どうしようかな……難しいわ。

「その件なら任せろ」

 そんなことを考えていたら、イシリス様が私の腰を抱き寄せながら、頼もしい台詞を言ってくれた。

「はい、イシリス様にお任せしますわ」

 当然、私の返事はこれ一択よ。ついでに、体を自ら寄せることも忘れない。これが、私なりの甘え方だからね。

 親や兄相手でも人に甘えるのが苦手な私は、素直に甘えを口にすることはできない。なので、ほんのちょっぴりだけど、マリアさんのようなお花畑の方が羨ましくなるのよね。まぁ彼女は、自分の欲望に忠実だっただけなんだけど。甘え上手なことに間違いないわ。

 実は甘えるという行為が、なんか……恥ずかしいんだよね。それに、口にすると引かれるような……歯止めが効かなくなりそうな、そんな気がするんだよね。突拍子もないことを言うつもりはないんだけど。変なところで、自信が持てない。私の短所の一つかな。

 だから、これが私の精一杯な甘え方。

 元々、聖獣様のイシリス様にとっては、こっちの方が直接的で、色々くるものがあるそうらしいけどね。それでよく怒られるんだけど、仕方ないよね。この方法しか知らないんだから。っていうか、できないんだから。

「はぁ……ほんとに、ミネリアはズルいな」

 イシリス様が苦笑交じりに、そして悔しそうに呟く。

「そうですか?」

 人の心の声を聞くことができるイシリス様だもの、私の胸の内をよく理解してくれてる。だからこそ、強く出れないことに悔しいんだわ。この前の悪戯は別として。

 イシリス様がとぼける私に溜め息を吐く。腰に回した手は離さないけどね。そんなイシリス様に、私は微笑む。さらに、イシリス様の溜め息が大きくなった。

「リアスはどうするんだ? 連れて行くのか?」

 私とイシリス様の会話が一段落したところで、お父様が私に訊いてきた。ダラキューロ様が私を凝視している。

「さすがに、連れては行きませんわ。トラウマになったら困りますもの」

 できるのなら、一生見なくていい光景だわ。

 ダラキューロ様が安心した表情を一瞬見せた。

「それは、ミネリアも同じだぞ」

 厳しくて固い口調だけど、その目は私を心配する親の目だった。

 嬉しいな。でも、私には屑たちの最後を見届ける責任があるの。

「心配してくださり、ありがとうございます、陛下。でも、私は行きますわ。私には責任がありますからね」

「責任?」

 お父様の疑問に、私は軽く頷いてから答えた。

「……決定し、手を下したのは、創世神様たちとイシリス様ですが、一部私が関わっていますの。……陛下、私は大丈夫ですわ。私は小さい頃から魔獣の討伐の場に出ていますもの。血肉には慣れてますわ。それに、私の隣には、愛するイシリス様がいますから、支えてくれますわ」

 私は微笑みながら答える。少しでも、お父様を安心させるために。

「安心しろ。ミネリアは俺が護る」

 イシリス様がキッパリと宣言してくれた。これほど、心強い言葉はないわ。

 すると、お父様はさっきのイシリス様と同じ様に、大きな溜め息を吐くと立ち上がる。そして、イシリス様と私の前まで来ると、イシリス様に頭を下げた。

「聖獣様、我が娘をよろしくお願いします」

「……お父様」

 その姿はベルケイド国王陛下ではなく、一人の父親だった。

 目頭が熱くなってきたわ。とても嬉しいけど、止めてよね。情けない顔、皆に見られちゃうじゃない。

「任せろ」

 イシリス様の言葉に、お父様は少し笑みを浮かべる。少しだけなのは、やっぱり親として心配してくれてるからだよね。

 お父様、大好き。

 イシリス様、むくれないで。家族の好きとイシリス様の好きは違うんだたから。わかるでしょ。



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