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なんてことしちゃったんだ
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ベルナー様のところに翌日訪ねていった。
昨日は冷たい目で「金か?」なんて言っていたのに、
今日。
部屋に入った瞬間、彼はきっちり背筋を伸ばして、気まずそうな笑顔を貼り付けていた。
「ああ、アルステッド卿。本日はご足労いただき、感謝いたします」
……なんだろうこの、昨日の零度の視線どこやった…みたいな低姿勢。
父様が少し不安そうに眉を寄せる。
「ベルナー様なにか……問題でも?」
ベルナー様は、申し訳なさそうに人差し指で眼鏡を押し上げた。
「ええ、ポーションはたいへんに効果的でした。が…
その……実は……“聖環”が修復されたのです」
「……は?」
私とカイル兄様の声がぴったり揃った。
「“聖環”って……あの……?」
「ええ、“セラフィック・サークレット・オブ・エターナル・グレイス”。教会の至宝とも呼ばれる、あの奇跡の聖環です。昨日、修復されたとのことでして……」
え。
ちょっと待って。
その聖環って、よく知ってるよ。
昨日見たもん。
体力回復も毒の治癒も、魔力枯渇だってたちどころに癒す、ほぼ万能治癒アイテムだったよね?
王国中の病弱貴族が泣いて並ぶレベルの。
「……つまり、ポーションは」
「……必要性が、一時的に低下いたしまして」
ベルナーさんは頭を深々と下げた。
「昨日お納めいただいた分は、もちろん通常通りお支払いいたします。ただ……追加の大口契約は、一旦保留と……」
「…………」
父様が、わかりやすく肩を落とした。
カイル兄様が、こめかみを押さえる。
私は――
(なんてことしちゃったんだ私!!!)
昨日あの聖環、直しちゃったもんね。
思いっきり、盛大に、完璧に。
私の リペア魔法 で。
(いや~~~!リナちゃんやっちゃいましたね~~!!)
心の中の誰かが拍手してる。うるさい。
大して儲かってないのに!
あれ直したせいで市場壊してるじゃん私!!
バカ!バカ!ほんとバカ!!
でも、世の中は広い。
王国騎士団は優先的に聖環の恩恵を受けられるようだけど、王都の教会に行けるのは金と暇がある人だけだし、なにより病人は待ってくれない。
だからポーションは細々と、だけど確実に売れるようになった。
――庶民と、働き手と、侍女たちと、騎士見習いたちに。
それならそれでいい。
セデル村の生活は、じんわり、でもちゃんと良くなるはずだ。
「……気を取り直して観光しよう。父様、甘いの食べましょ」
「そうだな……とりあえず何か食べたら元気出るかもな……」
父様の腕を引っ張って、王都の中央通りへ向かう。
通りには、鮮やかな絹布をひるがえす露店。
香ばしい焼き菓子の匂いが風に乗り、ホットワインの香りが漂い、旅人と観光客が行き交う。
「うわっ、すっごいなあ! 兄様あれ見て!」
「あれが王都名物『ふわとろ焼き』!? 絶対食う!!」
「さっきまで落ち込んでたのにテンション高っ」
「あれは落ち込む時と食う時の人格が違うだけだ」
父様が笑いながら言う。
そんな会話をしていた時だった。
小さな薬屋の前――
侍女風の女性たちが5人ほど、口々に慌てた声を上げている。
「ないんですの!?」
「ご主人、次の入荷はいつ!?」
「主様がお待ちなんですよ!」
「代わりになる薬は!? 本当に何でも!」
「急を要しているのです!」
彼女たちの服装は――上等。
仕立ての質がいい。刺繍も細かい。
確実に上級貴族の家の侍女。
カイル兄様が小声で言う。
「リナ……あれ」
「うん。ポーション探してるね」
「売り込むか?」
私はゆっくりスカートのシワを伸ばした。
背筋を伸ばし、表情を柔らかく――でも堂々と。
「行きましょう兄様。田舎ポーションの力を見せつけてあげましょう」
草の香りが淡く漂う小瓶を手に、侍女たちの前へすっと進み出た。
昨日は冷たい目で「金か?」なんて言っていたのに、
今日。
部屋に入った瞬間、彼はきっちり背筋を伸ばして、気まずそうな笑顔を貼り付けていた。
「ああ、アルステッド卿。本日はご足労いただき、感謝いたします」
……なんだろうこの、昨日の零度の視線どこやった…みたいな低姿勢。
父様が少し不安そうに眉を寄せる。
「ベルナー様なにか……問題でも?」
ベルナー様は、申し訳なさそうに人差し指で眼鏡を押し上げた。
「ええ、ポーションはたいへんに効果的でした。が…
その……実は……“聖環”が修復されたのです」
「……は?」
私とカイル兄様の声がぴったり揃った。
「“聖環”って……あの……?」
「ええ、“セラフィック・サークレット・オブ・エターナル・グレイス”。教会の至宝とも呼ばれる、あの奇跡の聖環です。昨日、修復されたとのことでして……」
え。
ちょっと待って。
その聖環って、よく知ってるよ。
昨日見たもん。
体力回復も毒の治癒も、魔力枯渇だってたちどころに癒す、ほぼ万能治癒アイテムだったよね?
王国中の病弱貴族が泣いて並ぶレベルの。
「……つまり、ポーションは」
「……必要性が、一時的に低下いたしまして」
ベルナーさんは頭を深々と下げた。
「昨日お納めいただいた分は、もちろん通常通りお支払いいたします。ただ……追加の大口契約は、一旦保留と……」
「…………」
父様が、わかりやすく肩を落とした。
カイル兄様が、こめかみを押さえる。
私は――
(なんてことしちゃったんだ私!!!)
昨日あの聖環、直しちゃったもんね。
思いっきり、盛大に、完璧に。
私の リペア魔法 で。
(いや~~~!リナちゃんやっちゃいましたね~~!!)
心の中の誰かが拍手してる。うるさい。
大して儲かってないのに!
あれ直したせいで市場壊してるじゃん私!!
バカ!バカ!ほんとバカ!!
でも、世の中は広い。
王国騎士団は優先的に聖環の恩恵を受けられるようだけど、王都の教会に行けるのは金と暇がある人だけだし、なにより病人は待ってくれない。
だからポーションは細々と、だけど確実に売れるようになった。
――庶民と、働き手と、侍女たちと、騎士見習いたちに。
それならそれでいい。
セデル村の生活は、じんわり、でもちゃんと良くなるはずだ。
「……気を取り直して観光しよう。父様、甘いの食べましょ」
「そうだな……とりあえず何か食べたら元気出るかもな……」
父様の腕を引っ張って、王都の中央通りへ向かう。
通りには、鮮やかな絹布をひるがえす露店。
香ばしい焼き菓子の匂いが風に乗り、ホットワインの香りが漂い、旅人と観光客が行き交う。
「うわっ、すっごいなあ! 兄様あれ見て!」
「あれが王都名物『ふわとろ焼き』!? 絶対食う!!」
「さっきまで落ち込んでたのにテンション高っ」
「あれは落ち込む時と食う時の人格が違うだけだ」
父様が笑いながら言う。
そんな会話をしていた時だった。
小さな薬屋の前――
侍女風の女性たちが5人ほど、口々に慌てた声を上げている。
「ないんですの!?」
「ご主人、次の入荷はいつ!?」
「主様がお待ちなんですよ!」
「代わりになる薬は!? 本当に何でも!」
「急を要しているのです!」
彼女たちの服装は――上等。
仕立ての質がいい。刺繍も細かい。
確実に上級貴族の家の侍女。
カイル兄様が小声で言う。
「リナ……あれ」
「うん。ポーション探してるね」
「売り込むか?」
私はゆっくりスカートのシワを伸ばした。
背筋を伸ばし、表情を柔らかく――でも堂々と。
「行きましょう兄様。田舎ポーションの力を見せつけてあげましょう」
草の香りが淡く漂う小瓶を手に、侍女たちの前へすっと進み出た。
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