形式だけの妻でしたが、公爵様に溺愛されながら領地再建しますわ

鍛高譚

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3-2 交錯する視線、芽生える協力

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3-2 交錯する視線、芽生える協力

クラリティが屋敷の不審な気配をガルフストリームに報告してから数日。
彼は直ちに側近へ調査を命じると同時に、クラリティの申し出を受け入れ、彼女も屋敷内の情報収集に加わるようになった。

これまで儀礼的でしかなかった夫婦関係に、初めて「同じ目的を共有する」温度が生まれ始めていた。


---

秘密を共有する夜

「調査は進んでいるが……まだ決定的なものが掴めない。」

書斎の机に並べられた資料を前に、ガルフストリームは低い声で言った。
クラリティは静かに頷き、自分が観察したことを口にする。

「夜遅く、数名の新しい使用人が裏庭へ荷物を運んでいました。動きが不自然でした。」

ガルフストリームの視線がわずかに揺れた。
驚いた――その表情が一瞬浮かぶ。

「……君は本当に、鋭いな。ここまでの情報を持ってくるとは予想していなかった。」

淡々とした言葉だったが、そこには確かな敬意があった。

クラリティの頬がほんのり熱を帯びる。
認められたことが嬉しい。
だが、その理由を自分でも説明しきれない。


---

屋敷に潜む影を追って

メイド長の協力もあり、クラリティは屋敷内での監視体制を整えた。
長年仕えてきたメイド長も、最近雇われた者たちに違和感を覚えているという。

「奥様、彼らは……影が薄いと言いますか。誰とも馴染もうとしません。」

「……やはり、何かありますね。」

クラリティは不安を抱えながらも毅然と指示を出した。

「怪しい動きがあれば、些細なことでも知らせてください。見逃せません。」

メイド長が深く頷く。
こうして内部からの調査は静かに広がっていった。


---

夜の作戦会議

夜――。

書斎には、二人だけの時間が流れ始めていた。

クラリティが持ち寄った情報をガルフストリームは真剣に受け止め、初めて彼の言葉に柔らかさが滲む。

「君の協力がなければ、ここまで進められなかっただろう。」

「私は……この屋敷のことだから。できることをしているだけです。」

「……君の家、か。」

その一言の後、ガルフストリームの表情が僅かにほどける。

クラリティの胸に、言いようのない温かさが灯った。
初めて、彼と真正面から向き合えている気がした。


---

影との遭遇

その夜遅く、廊下を歩くクラリティの目に、怪しい影が映る。
ひとりの使用人が重そうな荷物を抱え、裏庭へ向かっていた。

胸がざわつく。
呼び止めるべきか迷ったが、彼女はそっと影に身を潜め、その後を追うことにした。

裏庭。
使用人は荷物を地面に置き、外部の男と何かをやり取りしている。

「……やはり、取引。」

その瞬間――。

「クラリティ。」

背後から静かな声がした。
振り返ると、ガルフストリームが立っていた。

状況をひと目で理解した彼は、クラリティの腕をそっと取り、低く囁く。

「ここは危険だ。君は戻りなさい。」

その声は強く、しかしどこか優しかった。
クラリティは胸が詰まるような思いで頷き、彼に導かれるように屋敷へ戻った。

振り返ったとき、
彼の背に「守る」という意思が確かにあった。


---

真相への鍵

翌朝。
ガルフストリームは早くから側近たちを召集し、昨夜の情報をもとに調査の指示を飛ばしていた。

クラリティもまた、昨夜目にした全ての内容を書き留め、夫へ手渡す。

「これが……最後の鍵になると思います。」

ガルフストリームはその記録を黙って読み、そして静かに頭を上げた。

「……君は本当に頼りになる。ありがとう、クラリティ。」

その言葉は、これまでの形式的な礼とは違う。
どこか温かく、彼女の存在を確かに認めている響きがあった。

胸がじんわりと熱を持つ。

――ようやく、この人と肩を並べて歩けるのかもしれない。

「では、公爵様。共に真実を明らかにいたしましょう。」

クラリティがそう告げると、
ガルフストリームは深く頷き、鋭い決意の色を瞳に宿した。

ここから、二人の戦いが本格的に始まるのだった。
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