白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚

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第13話「不審な“お迎え”の正体/カイルの過保護、限界突破」

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第13話「不審な“お迎え”の正体/カイルの過保護、限界突破」


リオナ宛てに届いた、不審すぎる手紙。

『近日中にお迎えにあがる』

その短い文面は十分に不気味だった。

カイルは手紙を握りしめると、すぐさま護衛たちを呼ぼうとしたが――

「旦那様、そんなに慌てずとも……」

「慌てるに決まっているだろう!」

カイルは珍しく語気を強めた。

「覆面の男が“お迎え”などと書いてよこす時点で、危険だ。
誘拐か、脅迫か……最悪の場合は――」

「旦那様。私はお昼寝中でも誘拐されない自信がありますわ」

「根拠のない自信を持つな!!」

リオナは「まぁ……」と目を瞬かせた。

(こんなに怒られるとは思いませんでしたわ)

しかし、怒りの裏に“心からの心配”が見え隠れしているのは、鈍いリオナでもわかった。

リリィは涙目でカイルとリオナを交互に見つめている。

「か、カイル様……わたしも、リオナ様が心配で……」

「リリィ、お前は悪くない。危険を知らせてくれただけだ」

カイルは優しく言い、困ったようにリオナを見つめる。

「リオナ、とにかく護衛を増やすぞ」

「必要ございませんわ。お茶の時間が騒がしくなります」

「お茶の心配より命の心配をしろ!」

***

その後、手紙の出所を探るため、護衛と侍女たちが屋敷中を走り回った。

しかし――。

「旦那様、門番の者が……
“不審者は見ていない”と申しております」

「何だと? では、いつどうやって手紙を渡した……?」

「リリィは確かに……覆面の人から……」

リリィは不安げに両手をぎゅっと握りしめた。

「ご、ごめんなさい……わたし……気づくのが遅くて……」

「リリィのせいではありませんわ。丁寧な誘拐予告なんて珍しいですし」

「丁寧ならいいわけじゃない! 何度言えばわかるんだ!」

カイルは再びリオナの額に手を当てる。

「……熱は、ないな。だが、お前の危機感が薄すぎる」

「旦那様が過保護すぎるのですわ」

「過保護で何が悪い!?」

言い返され、リオナは「なるほど」と納得するように頷いた。

(……なるほど。旦那様は私のことを“物騒な人間”として扱っているのではなく、“守るべき存在”として見ているのですのね)

だが、その意味を深く考えることはなかった。

鈍感力は健在である。

***

夕刻――。

再び手紙が届いた。

今度は、屋敷の南庭に置かれていた。

カイルは顔色を変える。

「リオナ! これは本当に危険だ!」

新しい手紙にはこう書かれていた。

『お迎えの準備が整いました。
かわいいリオナ様を、必ずや丁重にお連れいたします』

丁重でもダメなものはダメである。

「……旦那様」

「なんだ!?」

「これ……誘拐ではなく……ファンの方では?」

「ファン!? 誰の!? お前のか!?」

「そうですわ。私、最近リリィと一緒にお菓子を差し上げたら、領民の間で噂になりまして……“親切なご令嬢”という……」

「領民が覆面してローブ着て誘拐予告するか!!」

リオナは首をかしげた。

「熱心な方は熱心ですわ」

「熱心でも犯罪は犯罪だ!!」

ついにカイルの声が裏返った。

リリィは震えながら叫ぶ。

「リ、リオナ様は渡しませんからぁぁぁ!!」

「リリィ……泣かなくていいのですよ?」

「泣きますぅぅ!!」

***

その夜、カイルは寝室の前に立ち、護衛たちに指示を出した。

「絶対にリオナから目を離すな。
不審者が近づいたら即時捕縛。
屋敷の外に怪しい影があったら報告を――」

「旦那様。私は籠の鳥になったつもりはございませんが……」

「黙って守られていろ!」

「……まぁ、そんなに言うなら」

リオナは軽く微笑んだ。

その微笑みは、護られるのを嫌がっていない柔らかいもので――

カイルの胸が、きゅっと痛くなった。

「……ほんとに……ちょっとは自覚しろよ……」

誰にも聞こえないほどの小ささで、そう呟いた。

そしてカイルの“過保護モード”は完全にスイッチが入ったのだった。
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