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第8話 リオナの改革③ 庭と畑の再生
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第8話 リオナの改革③ 庭と畑の再生
朝食の後、リオナは庭に出た。
昨日から気になっていた“畑らしき一角”へ向かう。
庭は雑草が背丈ほどに伸び、木片や壊れた桶が散乱していて、畑はおろか、通路すら見えない状態だった。
ティムが後ろから駆け寄ってくる。
「リオナ、ここ……ほんとに畑だったの?」
「ええ、そうですわ。地面を見てくださいまし。ほら、この土……他より少し柔らかいでしょう?」
リオナは手袋越しに土を掘り返し、ティムの掌に乗せた。
ティムは目を丸くした。
「ほんとだ……この土、ほかのところより黒い!」
「畑として使われていた証拠ですわ。この土地は、きっとよく育つのです。雑草さえ取り除けば、また野菜を育てられますわよ」
後ろから、ミラとエマもやってくる。
「リオナ……これ、全部抜くの?」
「わたしたちに……できる?」
リオナは三人の不安を払うように、にっこりと笑った。
「もちろん、できますわ。むしろ――みんなの力が必要なのです」
子どもたちは互いに顔を見合わせた。
そのとき、騎士団の詰め所からカイル団長が姿を見せた。
斧を肩に担ぎ、無骨な表情でこちらへ歩いてくる。
「おい、そこの茂み……昨日よりひどく見えるんだが」
「今日から、本格的に畑の再生に取りかかろうと思いまして」
「なるほどな。で、子どもらも手伝うのか?」
「ええ。ただし、危険な作業は騎士団の皆さまへお願いしたいですわ」
カイルは短く頷いた。
「よし、了解だ。おい、手の空いてるやつ、こっち来い!」
団員が三人ほど駆けつけ、斧や鍬を持って並んだ。
リオナは子どもたちに振り返る。
「それでは……まず雑草を抜き、土を耕しますわ。根気よくやれば、畑は必ず蘇ります」
ティムが拳を握り締めた。
「やる!」
ミラもエマも小さく頷く。
そして――作業開始。
子どもたちは短い雑草から手をつけ、騎士たちは鎌で大きな草を刈り、リオナは抜かれた草を束ねて処理していく。
メアリは水を汲んだり、子どもたちの作業をフォローしたりと走り回っていた。
カイルは斧をひと振りすると、太い枯れ木がみるみる倒れていく。
「カイル団長、すごい……!」
ティムが目を輝かせる。
カイルは照れたようにそっぽを向いた。
「こんなのは普通だ。お前も、けがするなよ」
「うん!」
その言葉がうれしかったのか、ティムはさらに頑張って草を集め始めた。
やがて、午前の日差しが高くなる頃――
庭には目に見えて変化が生まれていた。
雑草の海だった場所に、少しずつ土が顔を出し、畑としての形が見え始めている。
ミラは汗を拭いながら、小さく笑った。
「……なんか、きれいになってきた」
「ええ。みなさんが頑張ってくださったおかげですわ」
リオナは丁寧に子どもたちの頭を撫でた。
すると――エマの目に、じんわりと涙が溜まり始める。
「どうしたの、エマ?」
「だって……誰も、こんなふうにしてくれなかった……」
「……」
リオナの胸が、きゅっと痛む。
「エマ。あなたはよく頑張りましたわ。もう大丈夫です。これからは、みんなで育てて、みんなで食べるのです」
エマは鼻をすすり、こっそり袖で目を拭った。
カイルが鍬を突き立て、全体を見渡す。
「ひとまず雑草は七割くらいだな。このあとは土を耕し、畝を作る必要がある」
「ええ、午後も続けますわ。みなさん、休憩しましょう」
リオナが声をかけると、子どもたちは嬉しそうに屋内へ駆けていった。
カイルは腕を組み、リオナをじっと見た。
「……しかしお前、本当に貴族か?」
「まあ、またその質問ですの?」
「だって普通、令嬢は畑仕事なんかしねえぞ。手が荒れるとか、日焼けがどうとか、色々言うだろう」
リオナは笑った。
「わたくしは、子どもたちの生活が整うなら、何でもします。畑があれば食費が浮きますし、安全な食材を育てられますわ」
「まあ……それはそうだが」
カイルは目をそらし、ぼそりと呟く。
「……立派なもんだな」
リオナは聞こえていないふりをして、軽く会釈した。
「午後もよろしくお願いいたしますわ、団長」
「お、おう。任せとけ」
騎士団が詰め所へ戻り、子どもたちとメアリは休憩に入った。
リオナはひとり畑の中央に立ち、ほくそ笑む。
(もっと良くなりますわ……まだまだ、これからです)
雑草に埋もれていた庭が、生き返ろうとしている。
その変化は――孤児院の未来が変わる兆しだった。
---
次は 第9話「元婚約者ライナルト再登場/冷たい提案」 を書きましょうか?
朝食の後、リオナは庭に出た。
昨日から気になっていた“畑らしき一角”へ向かう。
庭は雑草が背丈ほどに伸び、木片や壊れた桶が散乱していて、畑はおろか、通路すら見えない状態だった。
ティムが後ろから駆け寄ってくる。
「リオナ、ここ……ほんとに畑だったの?」
「ええ、そうですわ。地面を見てくださいまし。ほら、この土……他より少し柔らかいでしょう?」
リオナは手袋越しに土を掘り返し、ティムの掌に乗せた。
ティムは目を丸くした。
「ほんとだ……この土、ほかのところより黒い!」
「畑として使われていた証拠ですわ。この土地は、きっとよく育つのです。雑草さえ取り除けば、また野菜を育てられますわよ」
後ろから、ミラとエマもやってくる。
「リオナ……これ、全部抜くの?」
「わたしたちに……できる?」
リオナは三人の不安を払うように、にっこりと笑った。
「もちろん、できますわ。むしろ――みんなの力が必要なのです」
子どもたちは互いに顔を見合わせた。
そのとき、騎士団の詰め所からカイル団長が姿を見せた。
斧を肩に担ぎ、無骨な表情でこちらへ歩いてくる。
「おい、そこの茂み……昨日よりひどく見えるんだが」
「今日から、本格的に畑の再生に取りかかろうと思いまして」
「なるほどな。で、子どもらも手伝うのか?」
「ええ。ただし、危険な作業は騎士団の皆さまへお願いしたいですわ」
カイルは短く頷いた。
「よし、了解だ。おい、手の空いてるやつ、こっち来い!」
団員が三人ほど駆けつけ、斧や鍬を持って並んだ。
リオナは子どもたちに振り返る。
「それでは……まず雑草を抜き、土を耕しますわ。根気よくやれば、畑は必ず蘇ります」
ティムが拳を握り締めた。
「やる!」
ミラもエマも小さく頷く。
そして――作業開始。
子どもたちは短い雑草から手をつけ、騎士たちは鎌で大きな草を刈り、リオナは抜かれた草を束ねて処理していく。
メアリは水を汲んだり、子どもたちの作業をフォローしたりと走り回っていた。
カイルは斧をひと振りすると、太い枯れ木がみるみる倒れていく。
「カイル団長、すごい……!」
ティムが目を輝かせる。
カイルは照れたようにそっぽを向いた。
「こんなのは普通だ。お前も、けがするなよ」
「うん!」
その言葉がうれしかったのか、ティムはさらに頑張って草を集め始めた。
やがて、午前の日差しが高くなる頃――
庭には目に見えて変化が生まれていた。
雑草の海だった場所に、少しずつ土が顔を出し、畑としての形が見え始めている。
ミラは汗を拭いながら、小さく笑った。
「……なんか、きれいになってきた」
「ええ。みなさんが頑張ってくださったおかげですわ」
リオナは丁寧に子どもたちの頭を撫でた。
すると――エマの目に、じんわりと涙が溜まり始める。
「どうしたの、エマ?」
「だって……誰も、こんなふうにしてくれなかった……」
「……」
リオナの胸が、きゅっと痛む。
「エマ。あなたはよく頑張りましたわ。もう大丈夫です。これからは、みんなで育てて、みんなで食べるのです」
エマは鼻をすすり、こっそり袖で目を拭った。
カイルが鍬を突き立て、全体を見渡す。
「ひとまず雑草は七割くらいだな。このあとは土を耕し、畝を作る必要がある」
「ええ、午後も続けますわ。みなさん、休憩しましょう」
リオナが声をかけると、子どもたちは嬉しそうに屋内へ駆けていった。
カイルは腕を組み、リオナをじっと見た。
「……しかしお前、本当に貴族か?」
「まあ、またその質問ですの?」
「だって普通、令嬢は畑仕事なんかしねえぞ。手が荒れるとか、日焼けがどうとか、色々言うだろう」
リオナは笑った。
「わたくしは、子どもたちの生活が整うなら、何でもします。畑があれば食費が浮きますし、安全な食材を育てられますわ」
「まあ……それはそうだが」
カイルは目をそらし、ぼそりと呟く。
「……立派なもんだな」
リオナは聞こえていないふりをして、軽く会釈した。
「午後もよろしくお願いいたしますわ、団長」
「お、おう。任せとけ」
騎士団が詰め所へ戻り、子どもたちとメアリは休憩に入った。
リオナはひとり畑の中央に立ち、ほくそ笑む。
(もっと良くなりますわ……まだまだ、これからです)
雑草に埋もれていた庭が、生き返ろうとしている。
その変化は――孤児院の未来が変わる兆しだった。
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