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第15話「叔母ミレイユの暴走/カイル、胃痛の予兆」
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第15話「叔母ミレイユの暴走/カイル、胃痛の予兆」
ミレイユ叔母が屋敷を訪れてから一時間――
カイルの胃はすでに限界に近かった。
その原因はただひとつ。
叔母ミレイユの暴走である。
「リオナ、食事はきちんと取ってる?
睡眠は? 旦那様に粗末に扱われてない?
ひどいこと言われてない?
泣いてない?
倒れてない?
痩せてない?
太ってない?
肌荒れしてない?
髪はつやつやしてる?」
質問の矢継ぎ早に、リオナはゆっくり紅茶を飲んで返した。
「叔母様、私は健康ですわ。
旦那様に粗末に扱われたこともありません」
「ほんとうに?
リオナは昔から我慢する子だったから……!」
「いえ、今は全く我慢してませんわ」
「まあ……! 幸せなのね!」
ミレイユはハンカチで涙をぬぐった。
その横で、カイルが小さく呻く。
(……なぜ俺が悪者になっている……?)
***
さらに暴走は続く。
ミレイユは突然、カイルに向き直った。
「カイル様!」
「……はい」
「リオナのことを本当に大切にしていますの?」
「もちろんです」
即答したが――
「嘘ではございませんわね!?」
「嘘ではない!」
「証拠は?」
カイルは固まった。
「証拠……?」
「愛情は言葉でなく行動で示すものですわ!」
(いや、白い結婚のはずなんだが!?)
(お互い干渉しない契約だったんだが!?)
しかし、リオナは隣で紅茶を飲むだけで、フォローする気はないらしい。
リリィは震えながら、そっと耳打ちする。
「カイル様……頑張ってください……!」
「励ますな……さらに胃が痛くなる……」
ミレイユは止まらない。
「例えば!!
リオナが困っていたら助ける?
悲しんでいたら慰める?
傷つけられたら守る?
誘拐されそうになったら命懸けで追う?」
カイルはひとつ息を吐き、真剣な声で答えた。
「当然だ。
リオナを傷つける者がいれば、俺は――」
「うふふ。
そこまで言えるなら合格ですわ!」
急に満足げにうなずいた。
(いや、今の質問……全部叔母上の誤解が前提だったのだが……)
(しかも誘拐犯は叔母上だったのだが……)
しかし、ミレイユは気にしていない。
むしろ――
娘を嫁に出した母親のように、ホッとした表情だ。
***
だが、そこで終わらないのがミレイユ叔母。
「ところで、カイル様」
「……まだ何かあるんですか」
「リオナと手をつないだことは?」
「……え?」
「お姫様抱っこは?」
「なっ……!」
「おそろいのアクセサリーは?」
「いや、その……」
「寝る前に“おやすみ”のキスは?」
「待ってください叔母上!!!」
カイルは真っ赤になった。
(……全部していない……
いや、してはいけないと思っていた……
だって白い結婚だし……
干渉しないと言ったのは俺だし……)
ミレイユは腕を組んでふんと見下ろした。
「そんなの、夫婦の常識ですわよ?」
「いや……その……リオナと俺は……」
と、カイルが言いかけた時。
リオナがぽつりと一言。
「旦那様。もし必要であれば、手をつなぎますわよ?」
カイルは顔を覆った。
(必要とかじゃない……!!
いや、嬉しいけど……!!
なんでそんな淡々と……!!)
リリィは涙をボロボロこぼしながら叫んだ。
「リオナ様ぁぁぁぁ!
そんな尊いことをあっさり言わないでぇぇぇ!!」
ミレイユはうんうんと頷いた。
「やはりあなた、鈍感ですわね」
「鈍感……?」
「この子は昔からこうなのですの。
好意を向けられても、ぜんぜん気づかない鈍感娘で……
でも、それも含めて可愛いのよ!」
リオナは頬に手を当て、きょとんとした。
「叔母様、私は鈍くありませんわ。
ただ……旦那様のお気持ちを邪魔しないようにしているだけで――」
カイルは、動きが止まった。
(……気持ちを、邪魔しない……?
つまり、俺に“好きな人がいる”と思って……
だから距離を置いていた……?)
(……何それ……
俺は……最初から――)
胸の奥に、言葉にならない熱が広がった。
だが、それを言葉にできないまま、
ミレイユが突然手を叩いた。
「決めましたわ!
しばらくここに滞在します!」
「「え?」」
リオナとカイルが同時に固まった。
ミレイユは満面の笑み。
「リオナの幸せを見届けるまで、帰りませんわ!」
カイルは悟った。
(……これは本当に……胃が死ぬ……)
こうして――
リオナの叔母ミレイユの“幸福監視生活”が始まる。
カイルの平穏は、しばらく戻らない。
ミレイユ叔母が屋敷を訪れてから一時間――
カイルの胃はすでに限界に近かった。
その原因はただひとつ。
叔母ミレイユの暴走である。
「リオナ、食事はきちんと取ってる?
睡眠は? 旦那様に粗末に扱われてない?
ひどいこと言われてない?
泣いてない?
倒れてない?
痩せてない?
太ってない?
肌荒れしてない?
髪はつやつやしてる?」
質問の矢継ぎ早に、リオナはゆっくり紅茶を飲んで返した。
「叔母様、私は健康ですわ。
旦那様に粗末に扱われたこともありません」
「ほんとうに?
リオナは昔から我慢する子だったから……!」
「いえ、今は全く我慢してませんわ」
「まあ……! 幸せなのね!」
ミレイユはハンカチで涙をぬぐった。
その横で、カイルが小さく呻く。
(……なぜ俺が悪者になっている……?)
***
さらに暴走は続く。
ミレイユは突然、カイルに向き直った。
「カイル様!」
「……はい」
「リオナのことを本当に大切にしていますの?」
「もちろんです」
即答したが――
「嘘ではございませんわね!?」
「嘘ではない!」
「証拠は?」
カイルは固まった。
「証拠……?」
「愛情は言葉でなく行動で示すものですわ!」
(いや、白い結婚のはずなんだが!?)
(お互い干渉しない契約だったんだが!?)
しかし、リオナは隣で紅茶を飲むだけで、フォローする気はないらしい。
リリィは震えながら、そっと耳打ちする。
「カイル様……頑張ってください……!」
「励ますな……さらに胃が痛くなる……」
ミレイユは止まらない。
「例えば!!
リオナが困っていたら助ける?
悲しんでいたら慰める?
傷つけられたら守る?
誘拐されそうになったら命懸けで追う?」
カイルはひとつ息を吐き、真剣な声で答えた。
「当然だ。
リオナを傷つける者がいれば、俺は――」
「うふふ。
そこまで言えるなら合格ですわ!」
急に満足げにうなずいた。
(いや、今の質問……全部叔母上の誤解が前提だったのだが……)
(しかも誘拐犯は叔母上だったのだが……)
しかし、ミレイユは気にしていない。
むしろ――
娘を嫁に出した母親のように、ホッとした表情だ。
***
だが、そこで終わらないのがミレイユ叔母。
「ところで、カイル様」
「……まだ何かあるんですか」
「リオナと手をつないだことは?」
「……え?」
「お姫様抱っこは?」
「なっ……!」
「おそろいのアクセサリーは?」
「いや、その……」
「寝る前に“おやすみ”のキスは?」
「待ってください叔母上!!!」
カイルは真っ赤になった。
(……全部していない……
いや、してはいけないと思っていた……
だって白い結婚だし……
干渉しないと言ったのは俺だし……)
ミレイユは腕を組んでふんと見下ろした。
「そんなの、夫婦の常識ですわよ?」
「いや……その……リオナと俺は……」
と、カイルが言いかけた時。
リオナがぽつりと一言。
「旦那様。もし必要であれば、手をつなぎますわよ?」
カイルは顔を覆った。
(必要とかじゃない……!!
いや、嬉しいけど……!!
なんでそんな淡々と……!!)
リリィは涙をボロボロこぼしながら叫んだ。
「リオナ様ぁぁぁぁ!
そんな尊いことをあっさり言わないでぇぇぇ!!」
ミレイユはうんうんと頷いた。
「やはりあなた、鈍感ですわね」
「鈍感……?」
「この子は昔からこうなのですの。
好意を向けられても、ぜんぜん気づかない鈍感娘で……
でも、それも含めて可愛いのよ!」
リオナは頬に手を当て、きょとんとした。
「叔母様、私は鈍くありませんわ。
ただ……旦那様のお気持ちを邪魔しないようにしているだけで――」
カイルは、動きが止まった。
(……気持ちを、邪魔しない……?
つまり、俺に“好きな人がいる”と思って……
だから距離を置いていた……?)
(……何それ……
俺は……最初から――)
胸の奥に、言葉にならない熱が広がった。
だが、それを言葉にできないまま、
ミレイユが突然手を叩いた。
「決めましたわ!
しばらくここに滞在します!」
「「え?」」
リオナとカイルが同時に固まった。
ミレイユは満面の笑み。
「リオナの幸せを見届けるまで、帰りませんわ!」
カイルは悟った。
(……これは本当に……胃が死ぬ……)
こうして――
リオナの叔母ミレイユの“幸福監視生活”が始まる。
カイルの平穏は、しばらく戻らない。
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