白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚

文字の大きさ
18 / 40

第18話「叔母の最終兵器/カイル、ついに覚悟を決める」

しおりを挟む
第18話「叔母の最終兵器/カイル、ついに覚悟を決める」


ミレイユ叔母の“夫婦円満講座”が始まって三日目の朝。

屋敷の空気はもう、誰が見てもわかるほど不穏だった。

カイルは廊下に立つだけで、胃がきりきり痛む。

(……今日こそは何も起きないでいてくれ……頼む……)

しかし、その願いはすぐに打ち砕かれることになる。

***

その日の昼前――。

リオナが応接室で刺繍をしていると、
扉が開いてミレイユが勝ち誇った顔で飛び込んできた。

「リオナ! カイル様! ついに“これ”を持ってきましたわ!」

「え……?」

カイルは不吉な予感に背筋が震えた。

「叔母上……“これ”とは……?」

ミレイユはズバァーン!とテーブルに広げる。

そこには――

《新婚の心得書》
(叔母ミレイユによる全30項目 実践版)

カイル
「げほぉっ!?!?
なんだその地獄の書物は!!!」

リオナ
「まあ……すごい分厚さですわね」

リリィ
「ひっ……ひぃぃ……っ!!!」

ミレイユは得意満面で言った。

「本家で代々受け継がれている“幸せになるための家訓”なのよ!」

カイルは頭を抱えた。

(……本家……なんて恐ろしいものを代々受け継いでいるんだ……)

***

ミレイユは本を開き、朗々と読み上げる。

「第一項目!
夫婦は一日一回、手をつなぐこと!」

カイル
(三日前からもうやらされてる!!)

「第二項目!
お互いを毎日五回褒めること!」

カイル
(五回!?!? 心臓がいくつあっても足りん!!)

「第三項目!
“寝る前には必ず同じ部屋で過ごす”こと!」

カイル
「む、むりむりむりむり!!!!」

リオナ
「旦那様、声が大きいですわ」

「お、俺は紳士でいたいんだ!!!」
「紳士というより、ただの照れ屋さんでは?」

「違う!!」
「可愛い……」

(↑リリィが心の声を漏らした)

***

それでも、最も恐ろしいのは次の項目だった。

ミレイユがページをめくり――
目を輝かせて読み上げた。

「第二十四項目!
《想いを伝える勇気が、二人の絆を育てる》
つまり――夫は妻に、必ず気持ちを言葉で伝えること!」

空気がぴたりと止まる。

カイルの心臓は一瞬で跳ね上がった。

(お、想いを……伝える……だと……?
……そんな……
リオナに……今……??)

ミレイユは勢いよく指をさす。

「カイル様! 今日あなたが語る番です!!」

カイル
「か、語るって何を……?」

「決まっているでしょう! 愛の言葉よ!!」

リオナ
「愛……?」

リリィ
「ひぃぃぃ!!(震)」

カイルはリオナを見た。

リオナは相変わらず、静かで落ち着いた表情のまま。

(……俺が……
こんな気持ちを持っていることも気づかず……
距離を置かれていると思って……
それでも笑ってくれる……
そんなリオナに……)

カイルは、ふっと息を吸い込んだ。

ミレイユもリリィも固唾を飲んで見守っている。

そして――

「俺は……」

言いかけた瞬間。

バタンッ!

扉が乱暴に開いた。

「旦那様ぁぁぁぁ!!!」
護衛が飛び込んできた。

「な、なんだ!? 今いいところなんだが!?」
(↑カイルが珍しく逆ギレ)

「庭に……!!
“お迎え”の覆面男が再び現れました!!」

「えっ」
「えっ」
「ええええ!?」

リリィが絶叫する。

「叔母様じゃなかったんですかぁぁぁ!!?」

ミレイユも青ざめた。

「わ、わたくしではありません!!」

カイルは立ち上がり、剣を掴もうとして――
その手が止まった。

彼の瞳は、まっすぐリオナをとらえている。

「……リオナ」

「はい?」

「話の続きは、絶対にあとで言う。
聞いてもらう」

「もちろん、聞きますわ。
旦那様のお気持ちですもの」

その“何気ない返事”に、カイルの胸が熱くなる。

(……俺はもう……覚悟を決めるしかない……)

ミレイユは感動して涙を流した。

「カイル様ぁぁ……なんて男らしい……!」

リリィは鼻血寸前。

こうしてカイルは――
“本物の敵”と対峙するため、庭へ向かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

勘違い令嬢の離縁大作戦!~旦那様、愛する人(♂)とどうかお幸せに~

藤 ゆみ子
恋愛
 グラーツ公爵家に嫁いたティアは、夫のシオンとは白い結婚を貫いてきた。  それは、シオンには幼馴染で騎士団長であるクラウドという愛する人がいるから。  二人の尊い関係を眺めることが生きがいになっていたティアは、この結婚生活に満足していた。  けれど、シオンの父が亡くなり、公爵家を継いだことをきっかけに離縁することを決意する。  親に決められた好きでもない相手ではなく、愛する人と一緒になったほうがいいと。  だが、それはティアの大きな勘違いだった。  シオンは、ティアを溺愛していた。  溺愛するあまり、手を出すこともできず、距離があった。  そしてシオンもまた、勘違いをしていた。  ティアは、自分ではなくクラウドが好きなのだと。  絶対に振り向かせると決意しながらも、好きになってもらうまでは手を出さないと決めている。  紳士的に振舞おうとするあまり、ティアの勘違いを助長させていた。    そして、ティアの離縁大作戦によって、二人の関係は少しずつ変化していく。

白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活

しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。 新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。 二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。 ところが。 ◆市場に行けばついてくる ◆荷物は全部持ちたがる ◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる ◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる ……どう見ても、干渉しまくり。 「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」 「……君のことを、放っておけない」 距離はゆっくり縮まり、 優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。 そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。 “冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え―― 「二度と妻を侮辱するな」 守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、 いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

会えば喧嘩ばかりの婚約者と腹黒王子の中身が入れ替わったら、なぜか二人からアプローチされるようになりました

黒木メイ
恋愛
伯爵令嬢ソフィアと第一王子の護衛隊長であるレオンの婚約は一年を迎えるが、会えば口喧嘩、会わなければ音信不通というすれ違いの日々。約束を破り続けるレオンと両親からの『式だけでも早く挙げろ』という圧に我慢の限界を迎えたソフィアは、ついに彼の職場である王城へと乗り込む。 激しい言い争いを始めた二人の前に現れたのは、レオンの直属の上司であり、優雅な仮面の下に腹黒な本性を隠す第一王子クリスティアーノ。 王子は二人が起こした騒動への『罰』として、王家秘伝の秘薬をレオンに服用させる。その結果――なんとレオンとクリスティアーノの中身が入れ替わってしまった!全ては王子の計画通り。 元に戻るのは八日後。その間、ソフィアはこの秘密がバレないよう、文字通り命がけで奔走することとなる。 期限付きの入れ替わり生活は、不器用な婚約者との関係をどう変えるのか? そして、この騒動を引き起こした腹黒王子の真の目的とは? ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※他サイトからの転載。

【完結済】春を迎えに~番という絆に導かれて~

廻野 久彩
恋愛
辺境の村から王都の星環教会へやってきた研修生アナベル・ウィンダーミア。 門で出会った王族直属騎士団副団長ルシアン・ヴァルセインと握手を交わした瞬間、二人の手首に金色の光が浮かび上がる。 それは"番"——神が定めた魂の半身の証。 物語の中でしか聞いたことのない奇跡的な出会いに胸を躍らせるアナベルだったが、ルシアンの口から告げられたのは冷酷な現実だった。 「俺には……すでに婚約者がいる」 その婚約者こそ、名門ルヴェリエ家の令嬢セレナ。国境の緊張が高まる中、彼女との政略結婚は王国の命運を左右する重要な政治的意味を持っていた。 番の衝動に身を焼かれながらも、決して越えてはならない一線を守ろうとするルシアン。 想い人を諦めきれずにいながら、彼の立場を理解しようと努めるアナベル。 そして、すべてを知りながらも優雅に微笑み続けるセレナ。 三人の心は複雑に絡み合い、それぞれが異なる痛みを抱えながら日々を過ごしていく。 政略と恋情、義務と本心、誠実さと衝動—— 揺れ動く想いの果てに、それぞれが下す選択とは。 番という絆に翻弄されながらも、最後に自分自身の意志で道を選び取る三人の物語。 愛とは選ぶこと。 幸せとは、選んだ道を自分の足で歩くこと。 番の絆を軸に描かれる、大人のファンタジーロマンス。 全20話完結。 **【キーワード】** 番・運命の相手・政略結婚・三角関係・騎士・王都・ファンタジー・恋愛・完結済み・ハッピーエンド

円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』

みこと。
恋愛
「あなたと子を作るつもりはない」 皇帝シュテファンに嫁いだエリザは、初夜に夫から宣言されて首をかしげる。 (これは"愛することのない"の亜種?) 前世を思い出したばかりの彼女は、ここが小説『冷酷皇帝の最愛妃』の中だと気づき、冷静に状況を分析していた。 エリザの役どころは、公爵家が皇帝に押し付けた花嫁で、彼の恋路の邪魔をするモブ皇妃。小説のシュテファンは、最終的には運命の恋人アンネと結ばれる。 それは確かに、子どもが出来たら困るだろう。 速やかな"円満離婚"を前提にシュテファンと契約を結んだエリザだったが、とあるキッカケで彼の子を身ごもることになってしまい──? シュテファンとの契約違反におののき、思わず逃走したエリザに「やっと見つけた」と追いすがる夫。 どうやら彼はエリザ一筋だったらしく。あれ? あなたの恋人アンネはどうしたの? ※小説家になろう様でも掲載しています ※表紙イラスト:あさぎかな先生にコラージュアートをいただきました ※毎朝7時に更新していく予定です

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

白狼王の贄姫のはずが黒狼王子の番となって愛されることになりました

鳥花風星
恋愛
白狼王の生贄としてささげられた人間族の第二王女ライラは、白狼王から「生贄はいらない、第三王子のものになれ」と言われる。 第三王子レリウスは、手はボロボロでやせ細ったライラを見て王女ではなく偽物だと疑うが、ライラは正真正銘第二王女で、側妃の娘ということで正妃とその子供たちから酷い扱いを受けていたのだった。真相を知ったレリウスはライラを自分の屋敷に住まわせる。 いつも笑顔を絶やさず周囲の人間と馴染もうと努力するライラをレリウスもいつの間にか大切に思うようになるが、ライラが番かもしれないと分かるとなぜか黙り込んでしまう。 自分が人間だからレリウスは嫌なのだろうと思ったライラは、身を引く決心をして……。 両片思いからのハッピーエンドです。

処理中です...