9 / 185
7「魔力ゼロ?」
しおりを挟む
「さっぱりですか?」
「もう全くさっぱりっす」
村の子供たちも同じ方法で感覚を掴んだんですが。子供たちよりもタロウの方が循環させる能力は相当に高いと思いましたが、なぜでしょう。
「予定より早く進んでいますので、今日はここで野営にするとして、もう一度魔力を入れてみましょうか」
街道から少し外れ、適当な木の根元に荷物を降ろし、そして荷物からテント替りに使う布を出し、二本の木に結わえて垂らします。
風向きを考慮して、結わえた布で荷物を巻き、荷物の重さで押さえます。これで簡易的にテント張りは終了です。
風もそう強くないし、雨も降らなそうですし、充分二人寝られるでしょう。
「ほー。ヴァンさんて何でも器用にやりますね」
「このくらい誰でもやるでしょう?」
「そうっすか? 俺はやったことないですけど」
まぁタロウはないかも知れません。引きこもりですし。
「食事は後で適当に作るとして、魔力循環の練習しましょうか」
「おねがっす!」
オネガッス。
これはなんとなく分かりますね。少し慣れてきました。
手に魔力を纏わせタロウの手へと移しました。今回は深すぎず浅すぎずのちょうど良い呼吸です。
タロウの全身が淡く輝いています。ゆっくりですが、丁寧な良い魔力循環ですね。
しばらく続けても乱れません。大したものです。
そろそろ集中力の限界ですね。循環が乱れ、魔力が全身から霧散しそうです。
霧散しました。
「ふぅー。呼吸を気をつけただけで全然違うっすね」
「今度は自分の魔力を意識してやってみて下さい」
「おす!」
……輝きませんね。
ふぅぅふぅぅと呼吸を繰り返すだけで兆しがありません。
八十年以上生きた中で、魔力を持たない人を見た事がないんですが、まさかタロウが初めてのそれなんでしょうか。
「やっぱ俺って魔力ないんすか?」
うーん、参りました。
結界の礎になるには大量の魔力量がいるはずなんです。
五英雄の中で最も魔力量の少ない『獣人の王』ガゼル様でさえ僕の倍ほどだそうです。
父が僕を礎に選ばずにタロウを選んだ事からも、少なくともタロウは僕以上の魔力量があるはずなんですが。
でも悩んでもしょうがないですね。アンセム様に会った時に相談してみましょう。
「タロウ、心配しなくても魔力の無い人なんていません。まだコツが掴めていないだけでしょう」
「そっすか? それなら良いんすけど……」
魔法で火を熾し、干し肉や保存用のパンを串に刺して火の側に立てます。今夜は簡単に済ませましょう。
「ヴァンさん、質問良いっすか?」
「構いませんよ」
「循環の練習で、とりあえず自分のではないですけど魔力の雰囲気は分かったっす」
「えぇ」
「そんでっすね、その魔力で火とか水とか出せる意味が分かんないんすけど」
ほぉ。
ここは大袈裟に褒めておきましょう。村の子供たちにするのと同じ様に。
「鋭いです」
「え? そう?」
タロウがはにかむ。
「やはり魔法の才能があるんじゃないでしょうか」
「いやそんな俺なんてそんなことそんな」
めちゃめちゃ照れてるじゃないですか。褒められ慣れていませんね。
「いや実際に鋭いです。火や水を魔力で作っている訳ではないんです」
「どゆこと?」
疑問顔ですね。
「火の魔法には火の媒介が、水の魔法には水の媒介が必要です」
「え? でもヴァンさんが魔法使う時って何も持ってないっすよね?」
これまた鋭いです。良く見てますね。
「はい、その通り何も持っていません。いつも体が触れている、ある所に存在する媒介を使っています」
「分かったっす!」
さすがタロウ。本当に鋭いですね。
「服っすね!」
ズッコケそうになりました。メガネがちょっとズレたじゃないですか。
これは全く鋭くありません。期待し過ぎでしたか。
「ハズレです。答えは、この空気です」
「空気……、空気に火も水もないっすけど……」
そう思いますよね。それがあるんです。この世界で魔法を使う者みんなが分かっている事なので、もったいつけるほどの事ではありませんが。
「雨の日には空気が湿っていませんか?」
「湿ってるっす」
「焚き火に近づくと火の粉が舞いませんか?」
「舞うっす」
「目には見えませんが、空気には様々な要素が溶け合っています。それを選び取り、魔力によって増幅や操作をするのが魔法です」
「なるほどっす。なんとなく科学的な気がするっす」
カガク? それはちょっと分かりませんが、タロウは理解が早いですね。
「また、魔力を使うという点では、魔法とは異なる魔術というものがありますが、これは今は説明を省きます。難しいので」
「もっと難しいのもあるんすか」
干し肉もパンも良い香りがしてきましたね。
「とりあえず食べて、明日も歩き通しですので早目に寝ましょうか」
食事を済ませ、簡易テントに入ってマントを被って就寝です。
「ヴァンさん、寝る前にもう一回だけ魔力入れて貰っても良いですか?」
「もちろんです」
練習熱心で感心です。
再度、タロウの右手に魔力を移しました。
やはり魔力を循環させる能力は大したものですね。全身の隅々までしっかりと循環しています。
「ちょっとやってみるっす」
そう言うとタロウは右手の人差し指を顔の前に立て、循環させていた僕の魔力を指先に集中させます。
うーん、と唸ったタロウが、
「火!」
小さくそう唱えたタロウの指先から、細い火の柱が真上へ立ち登り、そのまま空へと吸い込まれて行きました。
「出たっすヴァンさん! 火出たっす!」
さすがの僕もこれは驚きました。まさかまだ自分の魔力も感じられないタロウが、借り物の魔力を使って火の魔法を使うとは。
「正直に言って驚きました」
「俺もっす!」
魔法を使うセンスには相当非凡なものがあるようですね。
「もう全くさっぱりっす」
村の子供たちも同じ方法で感覚を掴んだんですが。子供たちよりもタロウの方が循環させる能力は相当に高いと思いましたが、なぜでしょう。
「予定より早く進んでいますので、今日はここで野営にするとして、もう一度魔力を入れてみましょうか」
街道から少し外れ、適当な木の根元に荷物を降ろし、そして荷物からテント替りに使う布を出し、二本の木に結わえて垂らします。
風向きを考慮して、結わえた布で荷物を巻き、荷物の重さで押さえます。これで簡易的にテント張りは終了です。
風もそう強くないし、雨も降らなそうですし、充分二人寝られるでしょう。
「ほー。ヴァンさんて何でも器用にやりますね」
「このくらい誰でもやるでしょう?」
「そうっすか? 俺はやったことないですけど」
まぁタロウはないかも知れません。引きこもりですし。
「食事は後で適当に作るとして、魔力循環の練習しましょうか」
「おねがっす!」
オネガッス。
これはなんとなく分かりますね。少し慣れてきました。
手に魔力を纏わせタロウの手へと移しました。今回は深すぎず浅すぎずのちょうど良い呼吸です。
タロウの全身が淡く輝いています。ゆっくりですが、丁寧な良い魔力循環ですね。
しばらく続けても乱れません。大したものです。
そろそろ集中力の限界ですね。循環が乱れ、魔力が全身から霧散しそうです。
霧散しました。
「ふぅー。呼吸を気をつけただけで全然違うっすね」
「今度は自分の魔力を意識してやってみて下さい」
「おす!」
……輝きませんね。
ふぅぅふぅぅと呼吸を繰り返すだけで兆しがありません。
八十年以上生きた中で、魔力を持たない人を見た事がないんですが、まさかタロウが初めてのそれなんでしょうか。
「やっぱ俺って魔力ないんすか?」
うーん、参りました。
結界の礎になるには大量の魔力量がいるはずなんです。
五英雄の中で最も魔力量の少ない『獣人の王』ガゼル様でさえ僕の倍ほどだそうです。
父が僕を礎に選ばずにタロウを選んだ事からも、少なくともタロウは僕以上の魔力量があるはずなんですが。
でも悩んでもしょうがないですね。アンセム様に会った時に相談してみましょう。
「タロウ、心配しなくても魔力の無い人なんていません。まだコツが掴めていないだけでしょう」
「そっすか? それなら良いんすけど……」
魔法で火を熾し、干し肉や保存用のパンを串に刺して火の側に立てます。今夜は簡単に済ませましょう。
「ヴァンさん、質問良いっすか?」
「構いませんよ」
「循環の練習で、とりあえず自分のではないですけど魔力の雰囲気は分かったっす」
「えぇ」
「そんでっすね、その魔力で火とか水とか出せる意味が分かんないんすけど」
ほぉ。
ここは大袈裟に褒めておきましょう。村の子供たちにするのと同じ様に。
「鋭いです」
「え? そう?」
タロウがはにかむ。
「やはり魔法の才能があるんじゃないでしょうか」
「いやそんな俺なんてそんなことそんな」
めちゃめちゃ照れてるじゃないですか。褒められ慣れていませんね。
「いや実際に鋭いです。火や水を魔力で作っている訳ではないんです」
「どゆこと?」
疑問顔ですね。
「火の魔法には火の媒介が、水の魔法には水の媒介が必要です」
「え? でもヴァンさんが魔法使う時って何も持ってないっすよね?」
これまた鋭いです。良く見てますね。
「はい、その通り何も持っていません。いつも体が触れている、ある所に存在する媒介を使っています」
「分かったっす!」
さすがタロウ。本当に鋭いですね。
「服っすね!」
ズッコケそうになりました。メガネがちょっとズレたじゃないですか。
これは全く鋭くありません。期待し過ぎでしたか。
「ハズレです。答えは、この空気です」
「空気……、空気に火も水もないっすけど……」
そう思いますよね。それがあるんです。この世界で魔法を使う者みんなが分かっている事なので、もったいつけるほどの事ではありませんが。
「雨の日には空気が湿っていませんか?」
「湿ってるっす」
「焚き火に近づくと火の粉が舞いませんか?」
「舞うっす」
「目には見えませんが、空気には様々な要素が溶け合っています。それを選び取り、魔力によって増幅や操作をするのが魔法です」
「なるほどっす。なんとなく科学的な気がするっす」
カガク? それはちょっと分かりませんが、タロウは理解が早いですね。
「また、魔力を使うという点では、魔法とは異なる魔術というものがありますが、これは今は説明を省きます。難しいので」
「もっと難しいのもあるんすか」
干し肉もパンも良い香りがしてきましたね。
「とりあえず食べて、明日も歩き通しですので早目に寝ましょうか」
食事を済ませ、簡易テントに入ってマントを被って就寝です。
「ヴァンさん、寝る前にもう一回だけ魔力入れて貰っても良いですか?」
「もちろんです」
練習熱心で感心です。
再度、タロウの右手に魔力を移しました。
やはり魔力を循環させる能力は大したものですね。全身の隅々までしっかりと循環しています。
「ちょっとやってみるっす」
そう言うとタロウは右手の人差し指を顔の前に立て、循環させていた僕の魔力を指先に集中させます。
うーん、と唸ったタロウが、
「火!」
小さくそう唱えたタロウの指先から、細い火の柱が真上へ立ち登り、そのまま空へと吸い込まれて行きました。
「出たっすヴァンさん! 火出たっす!」
さすがの僕もこれは驚きました。まさかまだ自分の魔力も感じられないタロウが、借り物の魔力を使って火の魔法を使うとは。
「正直に言って驚きました」
「俺もっす!」
魔法を使うセンスには相当非凡なものがあるようですね。
10
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる