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6「魔法トレ」
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今日こそようやく出発です。
昨夜は早目に就寝したので、今朝はタロウも早起きで朝食も済みました。幸先良いとしておきましょう。
「タロウ、体調はどうですか?」
「そこそこっす」
「では早速出ましょうか」
家の戸締りを確認して荷物を背負う。タロウも思ったより余裕がありそうに背負っています。杖は要らなかったかもしれません。ちょっと安心しました。
「アンセムの街まではまともな道が通っています。少し森を抜けますが、そう危険な事はないでしょう」
「危険というと昨日の熊とかっすか?」
少し不安そうなタロウ。
「獣はあまり街道には寄り付きませんが、熊くらいなら特に危険ではありません。もし出てきてくれたらお肉が手に入るので出てきて欲しいくらいです。あまり大きいと持っていけませんが」
「……そっすか」
しばらく黙々と草原の中の道をひたすら歩きます。村を出てから誰とも出会う事もありません。
ペリエ村はアンセム領の中心よりやや南寄りにあり、ペリエ村の少し北、領の中心にアンセムの街よりも少し小さい町が日帰りで行ける距離にありますからね。ペリエ村からアンセムの街を目指す人は、日常的にはあまりいません。
「タロウ、だいぶ歩きましたが疲れていませんか?」
「あ、そんなに歩いたっすか?」
青白い顔に少し赤味が刺していますが息を切らすこともないようです。運動不足だと言っていましたが、思っていたより体力があるんでしょうか。
「まだまだ平気そうですね」
「まだいけるっす!」
もう少し草原を歩き続けると、街道の周囲に木々が増えてきました。思っていた以上に順調ですね。三日目の夜に街に入る予定でしたが、これなら昼前には着けるかもしれません。
「タロウ、少し早いですが休憩して食事にしましょう」
街道脇の木陰に入って腰を下ろします。タロウもすぐそばで荷物を降ろして座りました。
「ふぃー、久しぶりにこんなに歩いたっす」
「思っていた以上に健脚じゃないですか。驚きました」
首に巻いた手拭いで顔を拭くタロウ。清々しい表情です。
「久しぶりに太陽の下で体動かしてるからっすかねー。なんか日本にいた時より体が軽く感じるんすよ」
やはり引きこもりは体に良くないんでしょう。
干し肉を千切って鍋に入れ、水の魔法で鍋に水を満たし、火の魔法で鍋を沸かす。適当に干し野菜も千切って入れ、粉を練ってそれも鍋に入れる。
「すいとんっすね!」
「スイトン。あぁ、タロウの世界ではスイトンと言うのですね。こちらではダンゴ汁です」
「なんでやねん!」
「ナンデヤネン?」
ちょっと久しぶりにナンデヤネンが出ました。どこか変でしたでしょうか。
「あっちでもすいとんとダンゴ汁なんてほとんど同じものっす!」
そちらでもダンゴ汁とも言うのですね。それのどこが変なんでしょうか。
なんで言葉が同じなんだ、とぶつぶつ言っています。それほど気になる事でしょうか。
「ところでタロウ」
「なんです?」
「ただ歩いていても退屈でしょうし、歩きながら出来る魔法の練習しましょうか」
「きたこれ!」
「キタコレ?」
何が来たんでしょう。ちょっと分かりませんね。
「ぜひやりたいっす!」
やる気たっぷりですね。やる気があると習得も早いでしょう。
「まず魔法ですが。これは体内の魔力を使って行います」
「ふむふむ」
「誰でも魔力は持っていますので、練習すれば大抵の人は魔法が使えますが、魔力量は個人差があります。ここまでよろしいですか?」
「よろしいです」
「まずは体内の魔力を感じる事が必要です。魔法が使えない人は、大抵この時点でできない人です」
上に向けた手のひらに魔力を纏わせました。
「これが魔力です」
「ぼんやり淡く光ってる?」
僕の手を上から横から下からと視点を変えてまじまじと見つめるタロウ。
「タロウの手を乗せて下さい」
恐る恐る手を重ねるタロウ。歩いたからか興奮からか、少し汗ばんでいますね。
「ゆっくり行きますよ」
僕の魔力を少しだけタロウの手へ流します。
「分かりますか?」
コクコクと頷いて、僕の顔と自分の手のひらを行ったり来たり見つめています。
「これどうしたら良いんすか!?」
どうやら僕の魔力を霧散させずに留められているようですね。
「そのまま維持して下さい。維持できたら、手から腕、腕から肩、肩から胸、胸からは同時に逆の腕とお腹、足へとゆっくり巡らせてみて下さい」
目を閉じて必死に循環させていますね。全身がぼんやり白く淡く輝いています。そこで不意に輝きが消えました。魔力が霧散したようです。
「ぷは!」
ゼーゼーと肩で息をしています。どうも呼吸を止めてやっていたみたいです。
これは僕の説明不足ですね。呼吸を止めて続けられる訳がありません。
「どうなんすか今の? できてんすか?」
「相当に良いですよ。注意点としては、呼吸は深すぎず浅すぎずを意識して行うと良いと思います」
「あ、俺息止めてやってましたやん!失敗したー」
がっくりと項垂れてしまいました。そんなに残念がられると謝らないとしょうがないですね。
「すみません、あれほど上手く全身に行き渡らせられると思わなかったので、呼吸について説明しませんでした。僕の失敗です」
そうこうしている内にダンゴ汁も出来上がりましたので頂くことにします。
「いただきます」
「いただきます」
「あれ、ヴァンさんもいただきます?」
「えぇ、そちらの作法も悪くないと思いましたので」
食事の後片付けも済みましたのでまた歩きます。
「午後からは自分の魔力を体の内側で循環させるのを意識しながら歩いて下さい」
「おす!」
また黙々と歩きます。木々の密度が徐々に増えてきてすっかり林の中です。木陰が増えたので少し肌寒いくらいですね。
延々と歩きます。一つ目の林を抜けた所で今夜は野営のつもりでしたが、陽が落ちるまでまだありますので二つ目の林の手前まで行きましょうか。
タロウは数歩後ろをウンウン唸りながら歩いています。練習熱心で感心です。たまに集中しすぎなのか少し遅れる事もありますが、気づくと早足ですぐに追いついてきます。
もしかしたら今夜中には火の玉くらい出せるかも知れません。
「タロウ、頑張りすぎも良くありませんよ」
「それがっすねヴァンさん。確かに頑張ってんですけど、俺ホントに魔力なんてあるんすかね?」
「体内の魔力が感じられませんか?」
「とんとさっぱりっす」
昨夜は早目に就寝したので、今朝はタロウも早起きで朝食も済みました。幸先良いとしておきましょう。
「タロウ、体調はどうですか?」
「そこそこっす」
「では早速出ましょうか」
家の戸締りを確認して荷物を背負う。タロウも思ったより余裕がありそうに背負っています。杖は要らなかったかもしれません。ちょっと安心しました。
「アンセムの街まではまともな道が通っています。少し森を抜けますが、そう危険な事はないでしょう」
「危険というと昨日の熊とかっすか?」
少し不安そうなタロウ。
「獣はあまり街道には寄り付きませんが、熊くらいなら特に危険ではありません。もし出てきてくれたらお肉が手に入るので出てきて欲しいくらいです。あまり大きいと持っていけませんが」
「……そっすか」
しばらく黙々と草原の中の道をひたすら歩きます。村を出てから誰とも出会う事もありません。
ペリエ村はアンセム領の中心よりやや南寄りにあり、ペリエ村の少し北、領の中心にアンセムの街よりも少し小さい町が日帰りで行ける距離にありますからね。ペリエ村からアンセムの街を目指す人は、日常的にはあまりいません。
「タロウ、だいぶ歩きましたが疲れていませんか?」
「あ、そんなに歩いたっすか?」
青白い顔に少し赤味が刺していますが息を切らすこともないようです。運動不足だと言っていましたが、思っていたより体力があるんでしょうか。
「まだまだ平気そうですね」
「まだいけるっす!」
もう少し草原を歩き続けると、街道の周囲に木々が増えてきました。思っていた以上に順調ですね。三日目の夜に街に入る予定でしたが、これなら昼前には着けるかもしれません。
「タロウ、少し早いですが休憩して食事にしましょう」
街道脇の木陰に入って腰を下ろします。タロウもすぐそばで荷物を降ろして座りました。
「ふぃー、久しぶりにこんなに歩いたっす」
「思っていた以上に健脚じゃないですか。驚きました」
首に巻いた手拭いで顔を拭くタロウ。清々しい表情です。
「久しぶりに太陽の下で体動かしてるからっすかねー。なんか日本にいた時より体が軽く感じるんすよ」
やはり引きこもりは体に良くないんでしょう。
干し肉を千切って鍋に入れ、水の魔法で鍋に水を満たし、火の魔法で鍋を沸かす。適当に干し野菜も千切って入れ、粉を練ってそれも鍋に入れる。
「すいとんっすね!」
「スイトン。あぁ、タロウの世界ではスイトンと言うのですね。こちらではダンゴ汁です」
「なんでやねん!」
「ナンデヤネン?」
ちょっと久しぶりにナンデヤネンが出ました。どこか変でしたでしょうか。
「あっちでもすいとんとダンゴ汁なんてほとんど同じものっす!」
そちらでもダンゴ汁とも言うのですね。それのどこが変なんでしょうか。
なんで言葉が同じなんだ、とぶつぶつ言っています。それほど気になる事でしょうか。
「ところでタロウ」
「なんです?」
「ただ歩いていても退屈でしょうし、歩きながら出来る魔法の練習しましょうか」
「きたこれ!」
「キタコレ?」
何が来たんでしょう。ちょっと分かりませんね。
「ぜひやりたいっす!」
やる気たっぷりですね。やる気があると習得も早いでしょう。
「まず魔法ですが。これは体内の魔力を使って行います」
「ふむふむ」
「誰でも魔力は持っていますので、練習すれば大抵の人は魔法が使えますが、魔力量は個人差があります。ここまでよろしいですか?」
「よろしいです」
「まずは体内の魔力を感じる事が必要です。魔法が使えない人は、大抵この時点でできない人です」
上に向けた手のひらに魔力を纏わせました。
「これが魔力です」
「ぼんやり淡く光ってる?」
僕の手を上から横から下からと視点を変えてまじまじと見つめるタロウ。
「タロウの手を乗せて下さい」
恐る恐る手を重ねるタロウ。歩いたからか興奮からか、少し汗ばんでいますね。
「ゆっくり行きますよ」
僕の魔力を少しだけタロウの手へ流します。
「分かりますか?」
コクコクと頷いて、僕の顔と自分の手のひらを行ったり来たり見つめています。
「これどうしたら良いんすか!?」
どうやら僕の魔力を霧散させずに留められているようですね。
「そのまま維持して下さい。維持できたら、手から腕、腕から肩、肩から胸、胸からは同時に逆の腕とお腹、足へとゆっくり巡らせてみて下さい」
目を閉じて必死に循環させていますね。全身がぼんやり白く淡く輝いています。そこで不意に輝きが消えました。魔力が霧散したようです。
「ぷは!」
ゼーゼーと肩で息をしています。どうも呼吸を止めてやっていたみたいです。
これは僕の説明不足ですね。呼吸を止めて続けられる訳がありません。
「どうなんすか今の? できてんすか?」
「相当に良いですよ。注意点としては、呼吸は深すぎず浅すぎずを意識して行うと良いと思います」
「あ、俺息止めてやってましたやん!失敗したー」
がっくりと項垂れてしまいました。そんなに残念がられると謝らないとしょうがないですね。
「すみません、あれほど上手く全身に行き渡らせられると思わなかったので、呼吸について説明しませんでした。僕の失敗です」
そうこうしている内にダンゴ汁も出来上がりましたので頂くことにします。
「いただきます」
「いただきます」
「あれ、ヴァンさんもいただきます?」
「えぇ、そちらの作法も悪くないと思いましたので」
食事の後片付けも済みましたのでまた歩きます。
「午後からは自分の魔力を体の内側で循環させるのを意識しながら歩いて下さい」
「おす!」
また黙々と歩きます。木々の密度が徐々に増えてきてすっかり林の中です。木陰が増えたので少し肌寒いくらいですね。
延々と歩きます。一つ目の林を抜けた所で今夜は野営のつもりでしたが、陽が落ちるまでまだありますので二つ目の林の手前まで行きましょうか。
タロウは数歩後ろをウンウン唸りながら歩いています。練習熱心で感心です。たまに集中しすぎなのか少し遅れる事もありますが、気づくと早足ですぐに追いついてきます。
もしかしたら今夜中には火の玉くらい出せるかも知れません。
「タロウ、頑張りすぎも良くありませんよ」
「それがっすねヴァンさん。確かに頑張ってんですけど、俺ホントに魔力なんてあるんすかね?」
「体内の魔力が感じられませんか?」
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