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061 かの人の破滅を夢見て
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「ミーア、落ち着いて聞いて?」
「どうされたのですか、そんな怖い顔をして」
「そのあざは、他国特有の感染症なの」
「感染症……」
「簡単に言えば人から人にうつる、病ってことよ」
私の言葉に、ミーアは手で口を押えた。
「そんな! それならすぐに退出します!」
「そんなことはいいの。治療法もあるし、大丈夫だから」
「でももし、アンリエッタ様にでもうつしてしまったら」
「大丈夫。そんなに危険な病ではないわ。ほら、風邪だって人から人にうつるでしょう? あれみたいなものよ」
興奮して泣き出しそうになるミーアを安心させるように私は微笑みかける。
それでもまだ不安だと、ミーアの顔には書いてあった。
聞いたことのない病だもの。不安なのは当り前よね。
だけどこんな時でも自分のことより、今同じ部屋にいる私のことを気遣ってくれている。
今度こそ、絶対に助けなきゃ。
二度とあなたを失ったりしない。
そう心に強く刻み込む。
「でもミーアの言う通り、他の使用人たちに感染させてしまうといけないから、しばらくは屋敷の掃除はいいわ。お薬は私が責任をもって手配するからね」
「ですが、お薬なんて大金なんじゃ」
「大丈夫よ。ミーアに何かあったら困るもの」
「アンリエッタ様……」
不安からか、ミーアのそのブルーの瞳からは、ポロポロと涙が零れ落ちていた。
「その代わり約束して?」
私の言葉にミーアは顔を上げてこちらを見る。
「風邪でもなんでもそうだけど、急に悪くなることってあるでしょう」
「……はい」
「だから症状に変化があった時とか、辛い時とかはちゃんと教えてね」
私の言葉に、ミーアは何度も頷いていた。
その後、ミーアを部屋まで送ると、急いで他の使用人たちに指示を出す。
マリアンヌとブレイズにはうちの屋敷で珍しい病が出たこと。
うつる可能性もあるから、しばらくは近寄らないで欲しいとのことを伝えた。
二人とも心配して逆に駆けつけようと連絡が来たが、治まったら状況を説明するからと言ってなんとか押しとどめた。
ブレイズにはいずれ、国にこのバラ病のことを報告してもらわなきゃいけない。
一度始まれば、この国すべてを飲み込む勢いだから。
だけどその前に、まずは薬を確保しなくちゃ。
やり方は分かっている。
前回他の商人たちが使った手だから。
今回はまだ病の名も、その存在自体も誰も知らない。
むしろ好都合だと思わなきゃ。
「アンリエッタ様、いいですか?」
使用人の一人がノックと共に入室してくる。
その手には、うちの商会の封蝋が押された手紙があった。
「ありがとう」
使用人から受け取ると、すぐに中身を確認する。
色よい返事とまではいかなくとも、私は父が断らないだろうことはあらかじめ予測していた。
ああ、安定に分かりやすい人ね。
急なお願いごとにかなりご立腹ではあるものの、父は私との面会をすぐに引き受けてくれていた。
あの人にとっては大した金額にならなくても、お金はお金だものね。
でもいいきっかけだわ。
その金で自滅することになるんだから。
私はこの先の未来を思い浮かべ、嬉しくなる。
自分でも性格悪いなって思うけど、まぁ、あの父の娘だものね。
これでもまだマシに育った方だと自分でも思うわ。
「お手紙大丈夫ですか?」
一人笑う私に、使用人がおずおずと声をかける。
明らかに変な人にしか見えなかったのだろう。
引いてないだけマシというレベルだ。
「ええ、大丈夫よ。ありがとう。今からすぐ商会に顔を出すから、旦那様たちには使用人も私も熱を出してうつすといけないからと伝えておいて」
「はい。了解しましたー」
先ほどまでの不信感はなく、元気よく使用人が部屋を飛び出す。
これがなければ本当にいい子なんだけどなぁと思いつつも、私は急いで身支度をした。
「どうされたのですか、そんな怖い顔をして」
「そのあざは、他国特有の感染症なの」
「感染症……」
「簡単に言えば人から人にうつる、病ってことよ」
私の言葉に、ミーアは手で口を押えた。
「そんな! それならすぐに退出します!」
「そんなことはいいの。治療法もあるし、大丈夫だから」
「でももし、アンリエッタ様にでもうつしてしまったら」
「大丈夫。そんなに危険な病ではないわ。ほら、風邪だって人から人にうつるでしょう? あれみたいなものよ」
興奮して泣き出しそうになるミーアを安心させるように私は微笑みかける。
それでもまだ不安だと、ミーアの顔には書いてあった。
聞いたことのない病だもの。不安なのは当り前よね。
だけどこんな時でも自分のことより、今同じ部屋にいる私のことを気遣ってくれている。
今度こそ、絶対に助けなきゃ。
二度とあなたを失ったりしない。
そう心に強く刻み込む。
「でもミーアの言う通り、他の使用人たちに感染させてしまうといけないから、しばらくは屋敷の掃除はいいわ。お薬は私が責任をもって手配するからね」
「ですが、お薬なんて大金なんじゃ」
「大丈夫よ。ミーアに何かあったら困るもの」
「アンリエッタ様……」
不安からか、ミーアのそのブルーの瞳からは、ポロポロと涙が零れ落ちていた。
「その代わり約束して?」
私の言葉にミーアは顔を上げてこちらを見る。
「風邪でもなんでもそうだけど、急に悪くなることってあるでしょう」
「……はい」
「だから症状に変化があった時とか、辛い時とかはちゃんと教えてね」
私の言葉に、ミーアは何度も頷いていた。
その後、ミーアを部屋まで送ると、急いで他の使用人たちに指示を出す。
マリアンヌとブレイズにはうちの屋敷で珍しい病が出たこと。
うつる可能性もあるから、しばらくは近寄らないで欲しいとのことを伝えた。
二人とも心配して逆に駆けつけようと連絡が来たが、治まったら状況を説明するからと言ってなんとか押しとどめた。
ブレイズにはいずれ、国にこのバラ病のことを報告してもらわなきゃいけない。
一度始まれば、この国すべてを飲み込む勢いだから。
だけどその前に、まずは薬を確保しなくちゃ。
やり方は分かっている。
前回他の商人たちが使った手だから。
今回はまだ病の名も、その存在自体も誰も知らない。
むしろ好都合だと思わなきゃ。
「アンリエッタ様、いいですか?」
使用人の一人がノックと共に入室してくる。
その手には、うちの商会の封蝋が押された手紙があった。
「ありがとう」
使用人から受け取ると、すぐに中身を確認する。
色よい返事とまではいかなくとも、私は父が断らないだろうことはあらかじめ予測していた。
ああ、安定に分かりやすい人ね。
急なお願いごとにかなりご立腹ではあるものの、父は私との面会をすぐに引き受けてくれていた。
あの人にとっては大した金額にならなくても、お金はお金だものね。
でもいいきっかけだわ。
その金で自滅することになるんだから。
私はこの先の未来を思い浮かべ、嬉しくなる。
自分でも性格悪いなって思うけど、まぁ、あの父の娘だものね。
これでもまだマシに育った方だと自分でも思うわ。
「お手紙大丈夫ですか?」
一人笑う私に、使用人がおずおずと声をかける。
明らかに変な人にしか見えなかったのだろう。
引いてないだけマシというレベルだ。
「ええ、大丈夫よ。ありがとう。今からすぐ商会に顔を出すから、旦那様たちには使用人も私も熱を出してうつすといけないからと伝えておいて」
「はい。了解しましたー」
先ほどまでの不信感はなく、元気よく使用人が部屋を飛び出す。
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