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032 前回なかったことばかり
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「もう、本当になんなの? 前回はなかったことばかりじゃない」
私はややぐったりと深く椅子に背を預け、天井を仰ぎ見た。
そして右腕で目を覆う。
マリアンヌもそうだけど、ヒューズも、あの騎士団長様も。
前回の時には登場していたとしても、面識のなかった人たち。
全部今回は私が動いたせいもあるんだろうけど、起こらなかった未来のことは少し不安ね。
私が知らなかった先だもの。
どのみち父やダミアンたちを捨てようと動いたら、未来は変わるのだからこうなることは一定数分かっていたけど。
「それにしてもじゃない?」
今のところ計画に支障はない。
マリアンヌは味方だし、ヒューズは少なくとも敵にはならないだろう。
元々闇ギルドは父との繋がりがあるから、早々に敵に回ることはないだろうし。
あとはあの騎士団長様よね。
ああ、考えることが多すぎだわ。
昔なんて、こんな風に頭を悩ますこともなかったのに……。
今はあの時、逆にどうやって生きていたのか分からないくらいよ。
ただ言いなりになるっていうのは、自分として生きていないみたい。
「人生二週目のはずなのに、ホント一回目みたいね」
出て来るのはため息だけ。
嫌だと思ったことはもちろんないけど、生きるのは本当に大変なのだと実感した。
◇ ◇ ◇
翌日の夕方。
私はマリアンヌの侍女から呼び出され、別邸を訪れた。
初めて入る別邸は本邸とはまったく別物のようだった。
造りも新しく、調度品もしっかりと配置されている。
そして使用人が多いせいか、ほこりなどはみじんもない。
カーテンなども重厚かつ細やかな刺繍が施されており、値段にしたら本邸の軽く三倍以上しそうなものばかり。
こちらが本邸であっちは物置だといってもおかしくないレベルだった。
「なにをそんなに貴女はきょろきょろしているの?」
私が部屋に入るなり、ソファーに深く腰かけていたマリアンヌが声をかけてきた。
部屋には数名の侍女が控えているものの、ダミアンの姿はない。
本邸にもいなかったから、出かけたのかしら。
「いや、なんか綺麗だなぁと感心してしまって」
「嫌味? まぁ、でも分かるわ。あっちは酷いものね」
「そうなんですよ。潰した方が早いんじゃないかっていつも思っているんです」
私の言葉にマリアンヌは吹き出したように笑い出す。
こういう姿を見ると、愛人というよりも可愛らしい少女のようだ。
そんな彼女の姿を、侍女たちも嬉しそうな顔で見ていた。
「にしてもこんな時間に大丈夫なのですか? あの人、いつもこっちにいるようですが」
「ああ……。遊びに出かけたわ」
そう言ったマリアンヌの表情はどこか暗い。
前に言っていたっけ。
お金が入った途端、また外遊びをダミアンが始めたようだと。
まったく頭が悪いにもほどがあるわね。
「こんなに美しい人を置き去りにして、何考えてるんですかね」
「あの人はそういう人よ……」
「ん-。そっちに関しては、こちらが裏から手をまわしてみます」
「出来るの⁉」
マリアンヌは立ち上がらんばかりの勢いで、こちらを向く。
出来ないことはない。
ただ、父の手を借りると後々めんどうなのが困ったところなだけで。
だけどあの人に散財されても困るし、父を介さなくてもうちの名前を出せばどうにかなるかしら。
ちょっと入念に考えないとダメね。
「ちょっと時間はかかるかもしれませんが、対策はします。お金を流出させられてもこちらも困るので」
「助かるわ」
「大切な友だちの頼みですから~」
「もぅ」
私の言葉にマリアンヌは子どものように頬を膨らませた。
友だちって言葉は否定しないのね。
ふふふ。なんか嬉しいかも。
「それよりもよ! この手紙はなんなの?」
マリアンヌの言葉に、侍女が私宛の例の手紙をテーブルに置く。
「あ、お返事書いて下さいました?」
「書くには書いて出してもらっておいたけど。書かせたからにはちゃんと説明して! なんで公爵家の三男であるブレイズ様と貴女がやりとりしているのかを」
私はマリアンヌの向かい側のソファーに腰かけると、ことの発端を話し始めた。
私はややぐったりと深く椅子に背を預け、天井を仰ぎ見た。
そして右腕で目を覆う。
マリアンヌもそうだけど、ヒューズも、あの騎士団長様も。
前回の時には登場していたとしても、面識のなかった人たち。
全部今回は私が動いたせいもあるんだろうけど、起こらなかった未来のことは少し不安ね。
私が知らなかった先だもの。
どのみち父やダミアンたちを捨てようと動いたら、未来は変わるのだからこうなることは一定数分かっていたけど。
「それにしてもじゃない?」
今のところ計画に支障はない。
マリアンヌは味方だし、ヒューズは少なくとも敵にはならないだろう。
元々闇ギルドは父との繋がりがあるから、早々に敵に回ることはないだろうし。
あとはあの騎士団長様よね。
ああ、考えることが多すぎだわ。
昔なんて、こんな風に頭を悩ますこともなかったのに……。
今はあの時、逆にどうやって生きていたのか分からないくらいよ。
ただ言いなりになるっていうのは、自分として生きていないみたい。
「人生二週目のはずなのに、ホント一回目みたいね」
出て来るのはため息だけ。
嫌だと思ったことはもちろんないけど、生きるのは本当に大変なのだと実感した。
◇ ◇ ◇
翌日の夕方。
私はマリアンヌの侍女から呼び出され、別邸を訪れた。
初めて入る別邸は本邸とはまったく別物のようだった。
造りも新しく、調度品もしっかりと配置されている。
そして使用人が多いせいか、ほこりなどはみじんもない。
カーテンなども重厚かつ細やかな刺繍が施されており、値段にしたら本邸の軽く三倍以上しそうなものばかり。
こちらが本邸であっちは物置だといってもおかしくないレベルだった。
「なにをそんなに貴女はきょろきょろしているの?」
私が部屋に入るなり、ソファーに深く腰かけていたマリアンヌが声をかけてきた。
部屋には数名の侍女が控えているものの、ダミアンの姿はない。
本邸にもいなかったから、出かけたのかしら。
「いや、なんか綺麗だなぁと感心してしまって」
「嫌味? まぁ、でも分かるわ。あっちは酷いものね」
「そうなんですよ。潰した方が早いんじゃないかっていつも思っているんです」
私の言葉にマリアンヌは吹き出したように笑い出す。
こういう姿を見ると、愛人というよりも可愛らしい少女のようだ。
そんな彼女の姿を、侍女たちも嬉しそうな顔で見ていた。
「にしてもこんな時間に大丈夫なのですか? あの人、いつもこっちにいるようですが」
「ああ……。遊びに出かけたわ」
そう言ったマリアンヌの表情はどこか暗い。
前に言っていたっけ。
お金が入った途端、また外遊びをダミアンが始めたようだと。
まったく頭が悪いにもほどがあるわね。
「こんなに美しい人を置き去りにして、何考えてるんですかね」
「あの人はそういう人よ……」
「ん-。そっちに関しては、こちらが裏から手をまわしてみます」
「出来るの⁉」
マリアンヌは立ち上がらんばかりの勢いで、こちらを向く。
出来ないことはない。
ただ、父の手を借りると後々めんどうなのが困ったところなだけで。
だけどあの人に散財されても困るし、父を介さなくてもうちの名前を出せばどうにかなるかしら。
ちょっと入念に考えないとダメね。
「ちょっと時間はかかるかもしれませんが、対策はします。お金を流出させられてもこちらも困るので」
「助かるわ」
「大切な友だちの頼みですから~」
「もぅ」
私の言葉にマリアンヌは子どものように頬を膨らませた。
友だちって言葉は否定しないのね。
ふふふ。なんか嬉しいかも。
「それよりもよ! この手紙はなんなの?」
マリアンヌの言葉に、侍女が私宛の例の手紙をテーブルに置く。
「あ、お返事書いて下さいました?」
「書くには書いて出してもらっておいたけど。書かせたからにはちゃんと説明して! なんで公爵家の三男であるブレイズ様と貴女がやりとりしているのかを」
私はマリアンヌの向かい側のソファーに腰かけると、ことの発端を話し始めた。
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