悪役令嬢、冤罪で一度命を落とすも今度はモフモフと一緒に幸せをつかむ

Blue

文字の大きさ
3 / 40

時間逆行と夢

しおりを挟む
「キャーッ!!」
ベッドから跳び起きる。自分の叫び声で目が覚めたようだ。
身体中から汗が出たのでは、そう錯覚するくらい全身がじっとりとして気持ち悪い。
「夢?」

それにしてはやけにリアルだった。あの時の夜の匂いも、無情に輝く星々も、お兄様の叫び声も、私を貫いた激痛も、目の端で見た真っ赤な血しぶきも……全てがたった今、起こった事であるかのように感じられる。

「嫌……いや、イヤーッ!!」
拭えない恐怖に再び叫んでしまった。

「お嬢様!どうされました?」
私の声を聞きつけて、ひどく慌てた様子で侍女のジュリアが部屋に入ってきた。
肩で息をする私の背中をさすりながら、額に浮かんでいる汗をそっと拭ってくれる。

「怖い夢でも見てしまいましたか?」
優しく聞いてくるジュリアを見た途端、涙が溢れてきた。
「ジュリア、ジュリア」
ずっと姉のように私の傍にいてくれたジュリアにしがみついて泣く私に
「そんなに怖い夢だったのですか?でももう大丈夫ですよ。私が付いていますからね」
そう言って、彼女は私が泣き止むまで、背中をトントンと優しく叩いてくれた。

しばらくして落ち着いた私はお風呂に入れてもらう。気持ち悪かった汗も綺麗に流され、幾分か気分がスッキリした。まだ、恐怖は拭えていないがあれはきっと夢だったんだと思い込むようにして心を落ち着けようとした。

ところが、そんな私の気持ちを下降させる言葉がジュリアから発せられる。
「今日は王城のお茶会に行くのですから、早めに準備を致しましょうね」

「王城で……お茶会?」
嫌な感覚が身体を巡る。暑くもないのに背中に汗が一筋流れた。
「そうですよ。今日のお茶会は、第二王子殿下主催だそうですよ」

第二王子のお茶会……あの方がお茶会を開くなんて、昔、私が行ったあのお茶会以来ではないかしら?

そう思った時、妙な違和感に気付く。
慌てて立ち上がり鏡の前に立つ。そこには夢で見た私より数年幼くなった私がいた。

透けるような金の髪、深い紫の瞳。光が当たると瞳の中に見える光彩は一緒。しかしジュリアより低い身長。間違いない。私は幼くなっている。お茶会に行くという事はきっと12歳の自分。

そう理解するのと同時に、先程の恐ろしい夢を思い出す。ではあれは……あの出来事は過去の事?いいえ違う、どうやら時間が逆行したようだ。あれは過去であると同時に未来に起こりうる事だ。

またあの恐ろしい体験をするの?そう認識した途端、再び悲鳴を上げた私は気を失った。

 眩しく感じて目が覚めると、私は真っ白い空間にいた。あまりにも白一色で、広さもよくわからない。でも不思議と怖くはなかった。
「ここは何処?」
返事が返ってくるわけでもないのに口に出す。

『ここは君の夢の中だよ』
誰も居ないと思っていた空間から声が聞こえた。
「私の夢の中?じゃあ、あなたは誰?」
『僕は光の神獣』
「光の神獣?」
『俺たちは神の眷属だ』
もうひとつ声がした。

「あなたは?」
『俺は闇の神獣』
「闇の神獣?」
『そう、僕たちは神が選んだ聖女を監視する役目だったんだ。正常に力を使うことが出来るかね』
『そしてあの女は間違えたんだ』

ふっと風を感じた瞬間、美しい二匹の豹が現れた。金色の毛並みの美しい豹と艶のある美しい黒い豹。二匹は私の正面に立つと深々と頭を下げた。
『ごめんね、本当は助けてあげたかった。でも監視しか許されていなかった僕たちには何も出来なかった』
『この世界に不用意に干渉することは禁じられていたんだ』

その言葉を聞いて何故か涙が流れた。
「もう、いいの。過ぎた事だし。だけどまた、この人生を生き直すことはしたくない。もうあんなこと……もう一度あの恐ろしい出来事を繰り返すなんて……もしかしてあなた達が時を戻したの?もしそうなら、私の事は消して。また繰り返すなんて無理……無理なの」

『時間を戻したのは神。残念ながら僕たちにはどうすることも出来ない』
『でも今度はお前を守る!干渉することを神に承諾させた』
『あの子に聖女の力を授ける事もしない』
『きっと未来は変わるから』
そんな事を言ってもらっても私の気持ちは変わらない。フルフルと首を横に振り続ける。

まざまざと浮かび上がる恐怖に再び涙が流れる。もう泣きたくないのに。

『あのね、君が居なくなった後、この国もなくなったんだ』
そんな私に、彼らはその後の話をし出した。

『君が亡くなった後、君の家族は激怒した。それはそうだよね。全く調べもせず国を追いやってその途中で娘だけでなく息子までも殺されたんだ。怒らないはずがない』

『だが国王は体裁が悪いと調査をしなかった。それに激怒したのがもう一人、第一王子だった。第一王子は自分が率先して調査をすると国王に啖呵を切った』

『だけどその日の夜、第一王子は殺された。第二王子の母親である側妃の雇い入れた暗殺者にね。それを知った国王は失意のあまり、側妃を殺して自分も死んだ』

『君の家族は爵位を返上して国を出た。これがどういう事かわかるよね。君たちオリヴィエーロ侯爵家は何代もずっと魔の森からこの国を守っていた。その砦であった君の家族が居なくなったのと、第二王子が国王、あの女が王妃になったのはほぼ同時期』

『国は1週間も持たなかったよ』

衝撃的な事実に何も言葉が出なかった。そんな壮絶な事になっていたなんて。

『聖女のせいで国は平和どころか滅亡してしまったんだ』
『神は自分の過ちだと力の限りを使ってこの世界の時間を戻した。だからお願い、君の幸せのために君を僕たちに守らせて』
『もう一度だけ、おまえの幸せを見つける手伝いをさせてくれ』
またもや深々と頭を下げる二匹。

「本当に?次は幸せになれる?」
『そうなってもらえるように頑張るよ』
『危険な目には合わせない』
二匹をじっと見つめる。二匹の鮮やかな緑の瞳が煌いて綺麗だった。

「……頑張ってみる」
私は二匹に向けてなんとか笑顔を作って言った。

「その為には、もうバイアルド殿下の婚約者にはなりたくないの。協力してくれる?」
二匹に向かってお願いすると二匹ともニタリと笑う。
『それはもう叶ってるぞ。おまえが気絶してから3日経ったからな』
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

働きませんわ。それでも王妃になります

鷹 綾
恋愛
「私は働きませんわ」 そう宣言して、王太子から婚約破棄された公爵令嬢エルフィーナ。 社交もしない。慈善もしない。政務にも口を出さない。 “怠け者令嬢”と陰で囁かれる彼女を、王太子アレクシスは「王妃に相応しくない」と切り捨てた。 ――だが彼は知らなかった。 彼女が動かないからこそ、王家は自力で立つことを覚えたのだということを。 エルフィーナは何もしない。 ただ保証を更新せず、支援を継続せず、静かに席を外すだけ。 その結果―― 王家は自らの足で立つことを強いられ、王太子は“誰の力にも頼らない王”へと変わっていく。 やがて外圧が王国を揺らしたとき、彼は気づく。 支配でも依存でもなく、並んで立てる存在が誰だったのかを。 「君と並びたい」 差し出されたのは、甘い救済ではない。 対等という選択。 それでも彼女の答えは変わらない。 「私は働きませんわ」 働かない。 支配しない。 けれど、逃げもしない。 これは―― 働かないまま王妃になる、公爵令嬢の静かなざまあ恋愛譚。 優雅で、合理的で、そしてどこまでも強い。 “何もしない”という最強の選択が、王国を変えていく。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

婚約辞退いたします。だってこの国、沈みますもの

鍛高譚
恋愛
「婚約はお断りいたします――この国は近い将来、崩壊しますので」 そう言い放ったのは、社交界でも目立たない子爵令嬢、マリン・アクアリウム。 ある日、とある舞踏会に突如現れた王太子ガイア殿下。 誰もが驚く中、なんと彼はマリンに婚約を申し出る。 周囲は騒然。「子爵令嬢が王太子妃!?」「断る理由などないはず!」 ――だが、彼女は断った。「この国は、もうすぐ滅びます」――と。 そんな不吉な言葉を口にしたことで、彼女は“狂言癖のある嘘つき令嬢”と噂され、 家族にさえ見放され、ついには国外追放の身に。 だが、彼女の予言は本物だった―― 数年後、王国に未曾有の大災厄が迫る。 国土が崩れ、海に沈む都市。人々が絶望する中、思い出されるのは、 あの舞踏会でただひとり“滅び”を告げた少女の名。 「彼女なら、この国を救えるかもしれない……」 皮肉にも“追放令嬢”マリンは、再び王都に呼び戻され、 滅びゆく国で最後の希望として担ぎ上げられる。 信じてもらえなかった過去。 それでも人々の命を守ろうと奔走するマリン。 そして、王子ガイアが差し伸べた、あの日と変わらぬ手。 ――たとえ国が滅んでも、あなたとともに歩んでいきたい。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

悪役令嬢だったわたくしが王太子になりました

波湖 真
恋愛
クローディアは十年ぶりに祖国の土を踏んだ。婚約者だったローレンス王子が王位を継承したことにより元々従兄弟同士の関係だったクローディアが王太子となったからだ。 十年前に日本という国から来たサオリと結婚する為にクローディアとの婚約を破棄したローレンスには子供がいなかった。 異世界トリップの婚約破棄ものの十年後の悪役令嬢クローディアの復讐と愛はどうなるのか!! まだストックが無いので不定期に更新します よろしくお願いします

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー 結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!? 王女が婚約破棄した相手は公爵令息? 王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした? あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。 その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。 彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。 そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。 彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。 その数日後王家から正式な手紙がくる。 ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」 イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。 「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」 心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ! ※ざまぁ要素はあると思います。 ※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...