悪役令嬢、冤罪で一度命を落とすも今度はモフモフと一緒に幸せをつかむ

Blue

文字の大きさ
4 / 40

家族

しおりを挟む
 誰かに呼ばれているような気がして目が覚める。すると視界にはアイスブルーの煌きと金の絹糸。綺麗だなと思いながらボーっとしてその色を見つめる。
「リーザ?」
私を気遣うようにそっと名前を呼んだそれは、私の視界の中で次第に形を帯びて美しい男の人になった。

国外追放の最中、最後の最後に私を信じてくれたお兄様だった。

「お、にい、さま」
3日も目覚めなかったというのは本当だったようで、口の中がカラカラで喉に張り付いて声が上手く出せない。

「リーザ?リーザ、リーザ。ああ、良かった、目が覚めたんだね。一時は熱が40度まで上がってしまって危なかったんだよ。どう?今はもう苦しくない?」
あちこち触りながら私の無事を確認するお兄様。懐かしく感じる兄妹のやり取りに思わず笑みを浮かべてしまう。

「ああ、リーザ。本当に無事で良かった」
私を布団ごと抱きしめるお兄様。

「チェーザレ様、それではせっかく目覚めたお嬢様が苦しくなってしまいますよ」
笑いながら言うジュリアの手にはコップがあった。
「そうか、リーザ、ごめんね」
私はブンブンと首を振る。とっても嬉しかった。私の大好きなお兄様が戻って来てくれたのだもの。

「喉が渇いて苦しいでしょう。お水を飲みましょうね」
ジュリアがそっと抱き起こして、お水を飲ませてくれた。程よい冷たさが喉の渇きを潤してくれる。

「ありがとう、ジュリア。お兄様、心配してくれてありがとう、大好きよ」
喉の張り付きもなくなりスムーズに言葉が出た。
「リーザ……」
私を見ながら涙ぐむお兄様。

「リーザ。本当に、本当に良かった。君が無事で」
再び、私を抱きしめながらお兄様は泣いていた。
ビビアナと知り合うまではこれが通常運転の兄妹だった。妹に甘い兄と、兄を大好きな妹。
永遠に続くであろうと疑う事もなかったその絆すらも、簡単に壊したビビアナが心底恐ろしいと、今更ながらに感じてしまう。

ほどなくして、思い切り扉が開いたかと思ったら
「エリーザ!目が覚めたって?」
「エリーザ」
背の高いガタイのいい男の人と、とても美しい女の人が入ってきた。

「おじい様、お母様」
私が呼ぶと、二人は満面の笑みを浮かべ
「エリーザ、やっとお目覚めか?我が家の天使は随分と寝坊助だな」
「本当に。エリーザ良かった。体調はどう?」

「もうすっかり。心配かけてしまってごめんなさい」
ペコリと頭を下げて謝ると
「ふふ、何を言ってるの。子供は親に心配をかけるのが仕事の一つよ」
そう言いながら私を優しく抱きしめてくれたお母様。

「よし、次はじい様だ」
そう言って近寄ってきたおじい様をお母様が制した。
「お義父様、あなたはエリーザが完治するまでお待ちになってください。病み上がりにお義父様の力強いハグは危ないですもの」
キラキラが舞うような美しい笑顔で言うお母様。

「マルツィアが酷い」
両手で顔を覆い、泣くフリをするおじい様。190㎝を軽く超える巨体で筋骨隆々、シルバーグレーの長い髪を後ろに縛り、口元には同じシルバーグレーの髭。アイスブルーの眼光は鋭く、その辺の魔物なら素手で倒してしまうほどの戦士が猫背で泣くフリは、大きな熊さんが泣いているようで可愛い。

「おじい様、優しくしてくれますよね」
そう言って両手を広げると、途端に笑顔になったおじい様は、まるでスポンジケーキを抱きしめるように優しく抱きしめてくれた。

「ふふふ、良かったですわね、お義父様。そのまま絶対に力は入れないでくださいね。もしそんな事をしたら私の魔力を口からぶち込んでしまいますわよ」
金の絹糸のような美しい髪。長い睫毛の奥に見えるのは深い紫の瞳。魔力が高く美しかったお母様は、王家から婚約を打診されたらしい。けれどその話を蹴って愛していたお父様の元へ嫁いだそうだ。今も尚、社交界の華と呼ばれているお母様。お腹は黒くないけれど無意識に言動が黒い。

「お父様にはお知らせしておいたから、きっと早めに帰ってくると思うわ。だから今のうちにもう少し休みましょう」
そう言うと、おじい様を剥がし、お兄様を連れて部屋をあとにした。

「さあ、一度お風呂にお入りになってから休みましょう?」
ジュリアに言われ、お風呂に入ってさっぱりしてから、もう少し休むことにした。

 次に目が覚めた時は、ベッドの横で突っ伏して眠っているお父様がいた。お母様からの知らせを受け取ったお父様は、あの後すぐに帰ってきたらしく、私が目覚めるのを待っているうちに眠ってしまったらしい。

「お父様?」
私の呼ぶ声に肩がぴくっと動くと目を覚ましたお父様。私を愛おしそうに見つめ抱きしめてくれる。そして
「お帰り」
そう優しく言ってくれた。

心にその言葉が染み渡る。
「ただいま」
なんとか一言だけ言うと、私はお父様の胸で大泣きしてしまった。

今あるこの時を、私は大事に生きたい。お父様の胸で泣きながら、私は心の底からそう思ったのだった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

殿下の婚約者は、記憶喪失です。

有沢真尋
恋愛
 王太子の婚約者である公爵令嬢アメリアは、いつも微笑みの影に疲労を蓄えているように見えた。  王太子リチャードは、アメリアがその献身を止めたら烈火の如く怒り狂うのは想像に難くない。自分の行動にアメリアが口を出すのも絶対に許さない。たとえば結婚前に派手な女遊びはやめて欲しい、という願いでさえも。  たとえ王太子妃になれるとしても、幸せとは無縁そうに見えたアメリア。  彼女は高熱にうなされた後、すべてを忘れてしまっていた。 ※ざまあ要素はありません。 ※表紙はかんたん表紙メーカーさま

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@女性向け
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

始まりはよくある婚約破棄のように

喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

ハイパー王太子殿下の隣はツライよ! ~突然の婚約解消~

緑谷めい
恋愛
 私は公爵令嬢ナタリー・ランシス。17歳。  4歳年上の婚約者アルベルト王太子殿下は、超優秀で超絶イケメン!  一応美人の私だけれど、ハイパー王太子殿下の隣はツライものがある。  あれれ、おかしいぞ? ついに自分がゴミに思えてきましたわ!?  王太子殿下の弟、第2王子のロベルト殿下と私は、仲の良い幼馴染。  そのロベルト様の婚約者である隣国のエリーゼ王女と、私の婚約者のアルベルト王太子殿下が、結婚することになった!? よって、私と王太子殿下は、婚約解消してお別れ!? えっ!? 決定ですか? はっ? 一体どういうこと!?  * ハッピーエンドです。

第一王子と見捨てられた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
アナトール公爵令嬢のマリアは婚約者である第一王子のザイツからあしらわれていた。昼間お話することも、夜に身体を重ねることも、なにもなかったのだ。形だけの夫婦生活。ザイツ様の新しい婚約者になってやろうと躍起になるメイドたち。そんな中、ザイツは戦地に赴くと知らせが入った。夫婦関係なんてとっくに終わっていると思っていた矢先、マリアの前にザイツが現れたのだった。 お読みいただきありがとうございます。こちらの話は24話で完結とさせていただきます。この後は「第一王子と愛された公爵令嬢」に続いていきます。こちらもよろしくお願い致します。

処理中です...