20 / 71
竜とアリアンナ
しおりを挟む
竜舎の入り口。
「入る前にアリアンナ様への注意事項です」
ジルヴァーノがアリアンナの目の前に立つ。
「はい」
アリアンナはジルヴァーノの銀の瞳を見つめた。
「ここにいる竜たちは、野生の竜に比べれば人慣れしています。ですが、初対面の人間に対して友好的ではありません。私たちと共にいる事で、竜たちにアリアンナ様の存在を受け入れてもらうようにします」
「はい」
「それと、いきなり大きな声は出さないように。驚いた竜は急に攻撃を仕掛けてくることもありますので」
「はい」
「急に大きな動作をする事も危ないです」
「はい」
いくつかの注意事項を聞いて、やっと竜舎へ入る事になる。
『わあ』
入り口を開いた瞬間、大きな空間が広がる。屋根の付いた大きな広場の奥は、先程外から見えた岩山にそのまま繋がっていた。
竜たちの視線が全てアリアンナに集まっているのを感じる。
『ドキドキする』
緊張のせいで心臓の鼓動が早い。それでも美しい竜たちを目にしたアリアンナは、感動していた。
ほとんどが黒い竜だったが、たった一頭だけ銀色の竜がいた。ジルヴァーノはその銀の竜の方へ真っ直ぐ向かう。銀の竜もジルヴァーノが近づいて来るのを待っているようにジッとこちらを見ていた。
「この竜が私の竜です。ここにいる竜の中のリーダーでもあります」
そう言ってこちらを見たジルヴァーノの瞳と、銀の竜の色は見事にシンクロしていた。
『綺麗だわ』
そう思って見ていると、銀の竜がアリアンナをジッと見ている事に気付いた。しばしの間見つめ合う形になる。すると、銀の竜がゆっくりと動き出した。大きい身体であるのに地響きがするわけでもなく、静かにアリアンナの目の前に歩み寄る。
咄嗟にジルヴァーノと王太子が、アリアンナを守るように間に立つが、銀の竜は気にする風でもなく二人を無視してアリアンナに首を伸ばした。アリアンナも、まるでそうするのが当然のように、銀の竜に向かって両手を伸ばした。
「初めまして、銀の竜」
アリアンナがそう言うと、銀の竜はアリアンナの手に鼻先を付け、匂いを嗅いだ。そしてその鼻先をアリアンナのおでこに付けたのだ。
「どういう事だ?」
ジルヴァーノも王太子も、初めて見る銀の竜の行動にポカンとしてしまう。更に銀の竜は、甘えるかのようにアリアンナの頬に鼻さきを擦り付ける。銀の竜の鼻息がアリアンナの首にかかった。
その時だった。
「あはは、くすぐったいわ」
アリアンナが声を上げて笑ったのだ。王太子が信じられないという顔で、アリアンナを見ている。ジルヴァーノも大きく目を見開いた。そんな二人にお構いなしで、銀の竜はアリアンナに甘え続ける。
「ふふふ、わかったわ。ここね、ここを撫でればいいのね」
鼻筋を撫でられた銀の竜は、気持ちよさそうに金色の瞳を閉じた。すると、興味を引かれた他の竜たちが次々とアリアンナの周辺に集まって来た。すっかり囲まれてしまったアリアンナ。ついでに一緒に囲まれた王太子とジルヴァーノが、呆気に取られながらもアリアンナを守ろうと彼女に近づいた。
「うわっ」
「!」
ところが二人は銀の竜と一頭の黒い竜に咥えられ、囲いの外へと降ろされてしまった。
「ロワ!」
ジルヴァーノが銀の竜の名を呼ぶが、銀の竜は完全にジルヴァーノを無視する。
「アリアンナ!無事⁉︎」
王太子は囲いの中心にいるアリアンナに声を掛けた。
「大丈夫、私は無事よ。あ、ちょっと。こら、ダメよ」
一体何をされているのか……王太子もジルヴァーノも気が気ではない。
「あはは、ダメ、首はダメ。くすぐったいったら」
二人の心配をよそに、アリアンナから楽しそうな声が聞こえてくる。
全く予想だにしていなかった光景に、呆然とする二人。
「……竜ってこんなに人懐っこかったか?」
王太子の呟くような質問に、ジルヴァーノは首を振る。
「いえ、初めてです」
「じゃあ……女の子だからとかか?」
「いえ、何度か女性も来ましたが、このような事にはなりませんでした。どちらかというと、女性の方が疎まれるのですが……」
二人は、暫くは放してもらえそうもないアリアンナを大人しく待つしかなかった。
「入る前にアリアンナ様への注意事項です」
ジルヴァーノがアリアンナの目の前に立つ。
「はい」
アリアンナはジルヴァーノの銀の瞳を見つめた。
「ここにいる竜たちは、野生の竜に比べれば人慣れしています。ですが、初対面の人間に対して友好的ではありません。私たちと共にいる事で、竜たちにアリアンナ様の存在を受け入れてもらうようにします」
「はい」
「それと、いきなり大きな声は出さないように。驚いた竜は急に攻撃を仕掛けてくることもありますので」
「はい」
「急に大きな動作をする事も危ないです」
「はい」
いくつかの注意事項を聞いて、やっと竜舎へ入る事になる。
『わあ』
入り口を開いた瞬間、大きな空間が広がる。屋根の付いた大きな広場の奥は、先程外から見えた岩山にそのまま繋がっていた。
竜たちの視線が全てアリアンナに集まっているのを感じる。
『ドキドキする』
緊張のせいで心臓の鼓動が早い。それでも美しい竜たちを目にしたアリアンナは、感動していた。
ほとんどが黒い竜だったが、たった一頭だけ銀色の竜がいた。ジルヴァーノはその銀の竜の方へ真っ直ぐ向かう。銀の竜もジルヴァーノが近づいて来るのを待っているようにジッとこちらを見ていた。
「この竜が私の竜です。ここにいる竜の中のリーダーでもあります」
そう言ってこちらを見たジルヴァーノの瞳と、銀の竜の色は見事にシンクロしていた。
『綺麗だわ』
そう思って見ていると、銀の竜がアリアンナをジッと見ている事に気付いた。しばしの間見つめ合う形になる。すると、銀の竜がゆっくりと動き出した。大きい身体であるのに地響きがするわけでもなく、静かにアリアンナの目の前に歩み寄る。
咄嗟にジルヴァーノと王太子が、アリアンナを守るように間に立つが、銀の竜は気にする風でもなく二人を無視してアリアンナに首を伸ばした。アリアンナも、まるでそうするのが当然のように、銀の竜に向かって両手を伸ばした。
「初めまして、銀の竜」
アリアンナがそう言うと、銀の竜はアリアンナの手に鼻先を付け、匂いを嗅いだ。そしてその鼻先をアリアンナのおでこに付けたのだ。
「どういう事だ?」
ジルヴァーノも王太子も、初めて見る銀の竜の行動にポカンとしてしまう。更に銀の竜は、甘えるかのようにアリアンナの頬に鼻さきを擦り付ける。銀の竜の鼻息がアリアンナの首にかかった。
その時だった。
「あはは、くすぐったいわ」
アリアンナが声を上げて笑ったのだ。王太子が信じられないという顔で、アリアンナを見ている。ジルヴァーノも大きく目を見開いた。そんな二人にお構いなしで、銀の竜はアリアンナに甘え続ける。
「ふふふ、わかったわ。ここね、ここを撫でればいいのね」
鼻筋を撫でられた銀の竜は、気持ちよさそうに金色の瞳を閉じた。すると、興味を引かれた他の竜たちが次々とアリアンナの周辺に集まって来た。すっかり囲まれてしまったアリアンナ。ついでに一緒に囲まれた王太子とジルヴァーノが、呆気に取られながらもアリアンナを守ろうと彼女に近づいた。
「うわっ」
「!」
ところが二人は銀の竜と一頭の黒い竜に咥えられ、囲いの外へと降ろされてしまった。
「ロワ!」
ジルヴァーノが銀の竜の名を呼ぶが、銀の竜は完全にジルヴァーノを無視する。
「アリアンナ!無事⁉︎」
王太子は囲いの中心にいるアリアンナに声を掛けた。
「大丈夫、私は無事よ。あ、ちょっと。こら、ダメよ」
一体何をされているのか……王太子もジルヴァーノも気が気ではない。
「あはは、ダメ、首はダメ。くすぐったいったら」
二人の心配をよそに、アリアンナから楽しそうな声が聞こえてくる。
全く予想だにしていなかった光景に、呆然とする二人。
「……竜ってこんなに人懐っこかったか?」
王太子の呟くような質問に、ジルヴァーノは首を振る。
「いえ、初めてです」
「じゃあ……女の子だからとかか?」
「いえ、何度か女性も来ましたが、このような事にはなりませんでした。どちらかというと、女性の方が疎まれるのですが……」
二人は、暫くは放してもらえそうもないアリアンナを大人しく待つしかなかった。
79
あなたにおすすめの小説
元王太子妃候補、現王宮の番犬(仮)
モンドール
恋愛
伯爵令嬢ルイーザは、幼い頃から王太子妃を目指し血の滲む努力をしてきた。勉学に励み、作法を学び、社交での人脈も作った。しかし、肝心の王太子の心は射止められず。
そんな中、何者かの手によって大型犬に姿を変えられてしまったルイーザは、暫く王宮で飼われる番犬の振りをすることになり──!?
「わん!」(なんでよ!)
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
「結婚しよう」
まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。
一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
【完結】髪は女の命と言いますが、それよりも大事なものがある〜年下天才魔法使いの愛には応えられません〜
大森 樹
恋愛
髪は女の命。しかし、レベッカの髪は切ったら二度と伸びない。
みんなには秘密だが、レベッカの髪には魔法が宿っている。長い髪を切って、昔助けた男の子レオンが天才魔法使いとなって目の前に現れた。
「あなたを愛しています!絶対に絶対に幸せにするので、俺と結婚してください!よろしくお願いします!!」
婚約破棄されてから、一人で生きていくために真面目に魔法省の事務員として働いていたレベッカ。天才魔法使いとして入団してきた新人レオンに急に告白されるが、それを拒否する。しかし彼は全く諦める気配はない。
「レベッカさん!レベッカさん!」とまとわりつくレオンを迷惑に思いながらも、ストレートに愛を伝えてくる彼に次第に心惹かれていく…….。しかし、レベッカはレオンの気持ちに答えられないある理由があった。
年上訳あり真面目ヒロイン×年下可愛い系一途なヒーローの年の差ラブストーリーです。
傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました
みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。
ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。
世界一美しい妹にせがまれるので婚約破棄される前に諦めます~辺境暮らしも悪くない~
tartan321
恋愛
美しさにかけては恐らく世界一……私の妹は自慢の妹なのです。そして、誰もがそれを認め、私は正直言って邪魔者なのです。でも、私は長女なので、王子様と婚約することになる運命……なのですが、やはり、ここは辞退すべきなのでしょうね。
そもそも、私にとって、王子様との婚約はそれほど意味がありません。私はもう少し静かに、そして、慎ましく生活できればいいのです。
完結いたしました。今後は後日談を書きます。
ですから、一度は婚約が決まっているのですけど……ごたごたが生じて婚約破棄になる前に、私の方から、婚約を取り下げます!!!!!!
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる