21 / 71
笑顔
しおりを挟む
結局、竜たちがアリアンナを解放したのは1時間以上経ってからだった。
銀の竜の鼻先に乗せられたアリアンナが、二人の前に降ろされる。髪も服もすっかり崩れていたアリアンナだが、楽しそうに笑みを浮かべている。
「アンナ、大丈夫だったかい?」
王太子がアリアンナの乱れた服を直し、手櫛で髪を梳いてやる。
「ありがとう、ジョエル兄様」
整え終わると、王太子はアリアンナを抱きしめた。
「無事で良かった……それにアンナ、気付いたかい?君は声を上げて笑った。今もほら……微笑みを浮かべている……天使のようだ」
抱きしめる力を弱め、アリアンナの笑みを間近で見た王太子は、アリアンナの頬を優しく撫でた。
「はは、幼い頃と同じ笑みだ……良かった、アンナ」
「ジョエル兄様……」
王太子が再びアリアンナを抱きしめるとすぐ横から圧を感じた。目をやると銀の竜の顔が目の前にあった。
「!」
驚いた二人は、一瞬固まってしまう。
「ロワ」
ジルヴァーノが銀の竜の鼻先を手で押し退けた。
「申し訳ない、アリアンナ様。不快な思いをさせてしまった」
そう言ったジルヴァーノにアリアンナは首を振った。
「いいえ、とっても楽しかったです。皆とても懐っこくて可愛らしいです」
「……」
ジルヴァーノが驚いた顔をする。
「可愛らしい、ですか?」
「はい」
笑顔を取り戻したアリアンナは、満面の笑みをジルヴァーノに向けた。
「!」
まともに見たジルヴァーノの耳がうっすらと赤くなる。気付かないアリアンナは、ジルヴァーノから何も返事が帰って来ない事にキョトンとする。
「竜を可愛いという女性は、きっとアリアンナが初めてだと思うよ」
呆けているジルヴァーノの代わりに答えたのは王太子だった。
「どうして?皆、可愛くて美しいわ」
「普通はね、怖くて恐ろしいわって言うんだよ。アンナがそんな風だから、竜たちもアンナの事を気に入ってくれたのかもしれないな。ジルヴァーノもそう思うだろう?」
王太子の言葉に覚醒したジルヴァーノは「そうですね」と一言だけ答えた。
「さ、そろそろ戻ろうか?ドマニがハラハラしながら待っているよ、きっと」
「はい。またね、皆」
アリアンナが竜たちに手を振ると、まるでそれに応えているかのように、竜たちは首を垂れた。
竜舎を出て一息つく。
「はあぁ、アンナのお陰で色々驚き過ぎて疲れたよ」
王太子が溜息を吐くと、ジルヴァーノも大きく溜息を吐いた。
事務所の入り口まで来るとアリアンナは事務所にいる騎士たちの方へ向く。
「お邪魔いたしました。もし許していただけるなら、また来たいと思います。よろしくお願いいたします」
そう言って裾を上げ、小さくお辞儀をして事務所を後にした。ジルヴァーノが扉を閉めたすぐ後には「うぉおおお」という雄叫びが聞こえた。
「結構な時間を取らせてしまってすまなかったね」
王太子がジルヴァーノに謝るとジルヴァーノが首を振る。
「いえ、とんでもないです。私も初めての現象を目に出来て良かったです」
「はは、そうだね。あの現象をどう受け取っていいかはわからないがね」
二人が話している横で、アリアンナがソワソワしていた。ふと二人の会話が途切れた時、すかさずアリアンナがジルヴァーノの前に立つ。
「今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました。あの、事務所でも言った通り、出来たらまたここに来る事を許して頂けませんでしょうか?」
ジッとジルヴァーノを見つめながら言った。
数秒の見つめ合いの後、ジルヴァーノは小さく息を吐くと微笑んだ。銀の瞳が細められる。
「はい、アリアンナ様でしたらいつでもいらっしゃって構いません。竜たちも歓迎するでしょう」
今度はアリアンナが頬を染める番だった。
『初めて見た』
ジルヴァーノの笑った顔を初めて見たアリアンナの胸はドキドキと大きく鳴っている。なにより、また来る事を許してもらった事にも嬉しさを感じていた。
「ありがとうございます」
うっすらと頬を染め、はにかんだようなアリアンナの微笑みを見たジルヴァーノは、今日何度目になるのかまたもや固まってしまう。
そんな二人を見た王太子は、笑いたいのを堪えながらアリアンナの肩を抱いた。
「さ、そろそろ行くよ」
「はい」
そして後ろを向く直前、王太子はジルヴァーノの耳に口を寄せた。
「……」
何かを囁かれたジルヴァーノは、目をこれでもかという程見開く。
「ははは、じゃあな」
王太子はアリアンナを連れて、笑いながら去って行った。
銀の竜の鼻先に乗せられたアリアンナが、二人の前に降ろされる。髪も服もすっかり崩れていたアリアンナだが、楽しそうに笑みを浮かべている。
「アンナ、大丈夫だったかい?」
王太子がアリアンナの乱れた服を直し、手櫛で髪を梳いてやる。
「ありがとう、ジョエル兄様」
整え終わると、王太子はアリアンナを抱きしめた。
「無事で良かった……それにアンナ、気付いたかい?君は声を上げて笑った。今もほら……微笑みを浮かべている……天使のようだ」
抱きしめる力を弱め、アリアンナの笑みを間近で見た王太子は、アリアンナの頬を優しく撫でた。
「はは、幼い頃と同じ笑みだ……良かった、アンナ」
「ジョエル兄様……」
王太子が再びアリアンナを抱きしめるとすぐ横から圧を感じた。目をやると銀の竜の顔が目の前にあった。
「!」
驚いた二人は、一瞬固まってしまう。
「ロワ」
ジルヴァーノが銀の竜の鼻先を手で押し退けた。
「申し訳ない、アリアンナ様。不快な思いをさせてしまった」
そう言ったジルヴァーノにアリアンナは首を振った。
「いいえ、とっても楽しかったです。皆とても懐っこくて可愛らしいです」
「……」
ジルヴァーノが驚いた顔をする。
「可愛らしい、ですか?」
「はい」
笑顔を取り戻したアリアンナは、満面の笑みをジルヴァーノに向けた。
「!」
まともに見たジルヴァーノの耳がうっすらと赤くなる。気付かないアリアンナは、ジルヴァーノから何も返事が帰って来ない事にキョトンとする。
「竜を可愛いという女性は、きっとアリアンナが初めてだと思うよ」
呆けているジルヴァーノの代わりに答えたのは王太子だった。
「どうして?皆、可愛くて美しいわ」
「普通はね、怖くて恐ろしいわって言うんだよ。アンナがそんな風だから、竜たちもアンナの事を気に入ってくれたのかもしれないな。ジルヴァーノもそう思うだろう?」
王太子の言葉に覚醒したジルヴァーノは「そうですね」と一言だけ答えた。
「さ、そろそろ戻ろうか?ドマニがハラハラしながら待っているよ、きっと」
「はい。またね、皆」
アリアンナが竜たちに手を振ると、まるでそれに応えているかのように、竜たちは首を垂れた。
竜舎を出て一息つく。
「はあぁ、アンナのお陰で色々驚き過ぎて疲れたよ」
王太子が溜息を吐くと、ジルヴァーノも大きく溜息を吐いた。
事務所の入り口まで来るとアリアンナは事務所にいる騎士たちの方へ向く。
「お邪魔いたしました。もし許していただけるなら、また来たいと思います。よろしくお願いいたします」
そう言って裾を上げ、小さくお辞儀をして事務所を後にした。ジルヴァーノが扉を閉めたすぐ後には「うぉおおお」という雄叫びが聞こえた。
「結構な時間を取らせてしまってすまなかったね」
王太子がジルヴァーノに謝るとジルヴァーノが首を振る。
「いえ、とんでもないです。私も初めての現象を目に出来て良かったです」
「はは、そうだね。あの現象をどう受け取っていいかはわからないがね」
二人が話している横で、アリアンナがソワソワしていた。ふと二人の会話が途切れた時、すかさずアリアンナがジルヴァーノの前に立つ。
「今日は本当に楽しかったです。ありがとうございました。あの、事務所でも言った通り、出来たらまたここに来る事を許して頂けませんでしょうか?」
ジッとジルヴァーノを見つめながら言った。
数秒の見つめ合いの後、ジルヴァーノは小さく息を吐くと微笑んだ。銀の瞳が細められる。
「はい、アリアンナ様でしたらいつでもいらっしゃって構いません。竜たちも歓迎するでしょう」
今度はアリアンナが頬を染める番だった。
『初めて見た』
ジルヴァーノの笑った顔を初めて見たアリアンナの胸はドキドキと大きく鳴っている。なにより、また来る事を許してもらった事にも嬉しさを感じていた。
「ありがとうございます」
うっすらと頬を染め、はにかんだようなアリアンナの微笑みを見たジルヴァーノは、今日何度目になるのかまたもや固まってしまう。
そんな二人を見た王太子は、笑いたいのを堪えながらアリアンナの肩を抱いた。
「さ、そろそろ行くよ」
「はい」
そして後ろを向く直前、王太子はジルヴァーノの耳に口を寄せた。
「……」
何かを囁かれたジルヴァーノは、目をこれでもかという程見開く。
「ははは、じゃあな」
王太子はアリアンナを連れて、笑いながら去って行った。
63
あなたにおすすめの小説
[完結]私を巻き込まないで下さい
シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。
魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。
でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。
その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。
ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。
え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。
平凡で普通の生活がしたいの。
私を巻き込まないで下さい!
恋愛要素は、中盤以降から出てきます
9月28日 本編完結
10月4日 番外編完結
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
妹と人生を入れ替えました〜皇太子さまは溺愛する相手をお間違えのようです〜
鈴宮(すずみや)
恋愛
「俺の妃になって欲しいんだ」
従兄弟として育ってきた憂炎(ゆうえん)からそんなことを打診された名家の令嬢である凛風(りんふぁ)。
実は憂炎は、嫉妬深い皇后の手から逃れるため、後宮から密かに連れ出された現皇帝の実子だった。
自由を愛する凛風にとって、堅苦しい後宮暮らしは到底受け入れられるものではない。けれど憂炎は「妃は凛風に」と頑なで、考えを曲げる様子はなかった。
そんな中、凛風は双子の妹である華凛と入れ替わることを思い付く。華凛はこの提案を快諾し、『凛風』として入内をすることに。
しかし、それから数日後、今度は『華凛(凛風)』に対して、憂炎の補佐として出仕するようお達しが。断りきれず、渋々出仕した華凛(凛風)。すると、憂炎は華凛(凛風)のことを溺愛し、籠妃のように扱い始める。
釈然としない想いを抱えつつ、自分の代わりに入内した華凛の元を訪れる凛風。そこで凛風は、憂炎が入内以降一度も、凛風(華凛)の元に一度も通っていないことを知る。
『だったら最初から『凛風』じゃなくて『華凛』を妃にすれば良かったのに』
憤る凛風に対し、華凛が「三日間だけ元の自分戻りたい」と訴える。妃の任を押し付けた負い目もあって、躊躇いつつも華凛の願いを聞き入れる凛風。しかし、そんな凛風のもとに憂炎が現れて――――。
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
【完結】 婚約破棄間近の婚約者が、記憶をなくしました
瀬里@SMARTOON8/31公開予定
恋愛
その日、砂漠の国マレから留学に来ていた第13皇女バステトは、とうとうやらかしてしまった。
婚約者である王子ルークが好意を寄せているという子爵令嬢を、池に突き落とそうとしたのだ。
しかし、池には彼女をかばった王子が落ちることになってしまい、更に王子は、頭に怪我を負ってしまった。
――そして、ケイリッヒ王国の第一王子にして王太子、国民に絶大な人気を誇る、朱金の髪と浅葱色の瞳を持つ美貌の王子ルークは、あろうことか記憶喪失になってしまったのである。(第一部)
ケイリッヒで王子ルークに甘やかされながら平穏な学生生活を送るバステト。
しかし、祖国マレではクーデターが起こり、バステトの周囲には争乱の嵐が吹き荒れようとしていた。
今、為すべき事は何か?バステトは、ルークは、それぞれの想いを胸に、嵐に立ち向かう!(第二部)
全33話+番外編です
小説家になろうで600ブックマーク、総合評価5000ptほどいただいた作品です。
拍子挿絵を描いてくださったのは、ゆゆの様です。 挿絵の拡大は、第8話にあります。
https://www.pixiv.net/users/30628019
https://skima.jp/profile?id=90999
病弱令嬢ですが愛されなくとも生き抜きます〜そう思ってたのに甘い日々?〜
白川
恋愛
病弱に生まれてきたことで数多くのことを諦めてきたアイリスは、無慈悲と噂される騎士イザークの元に政略結婚で嫁ぐこととなる。
たとえ私のことを愛してくださらなくても、この世に生まれたのだから生き抜くのよ────。
そう意気込んで嫁いだが、果たして本当のイザークは…?
傷ついた不器用な二人がすれ違いながらも恋をして、溺愛されるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる