笑い方を忘れた令嬢

Blue

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竜舎

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 その日の夕食は、いつもにも増して豪華だった。
ドマニからの伝言を聞いたドメニカもやって来て、親子ならぬ親族水入らずでアリアンナを祝った。

「本当に……本当に良かった」
王妃とドメニカは号泣だ。国王はアリアンナの顔を見た途端抱きしめた。
「きっと少しずつ笑っていける。私もアンナの天使のような微笑みを楽しみにしている」

父となった国王に抱きしめられ、アリアンナは再び涙を流した。国王と王太子に助け出されてから約半年。アリアンナはもう、ダヴィデやナターラの元へ逝きたいとは思わなくなっていた。



 王太子に連れられ、アリアンナが来たのは王城の奥深く。本当に城の敷地内なのかと思うような、岩山がそびえ立つ場所にある竜舎だった。岩山には数頭の竜が羽を広げたり、丸くなって眠っていたりした。

「お城にこんな場所があったなんて」
初めて訪れる場所に、アリアンナはキョロキョロする。
「ここは竜の為に作られた物だからね。竜騎士以外では父上や私、あと数人くらいしか来ないんだ。竜が認めた者しか出入りは許されていない」

「竜の為なのね」
「そう。竜がいて私たちがいるんだ。アンナ、私から離れないようにね」
「はい」

 竜舎に入る前には騎士たちがいる事務所があった。その奥から竜舎へ向かう入り口と、騎士たちの訓練の為なのだろう、闘技場へ行くための入り口に分かれていた。
「殿下」
事務所の入り口にはジルヴァーノが待っていた。

「仕事中にすまないね」
「いえ」
ジルヴァーノがアリアンナを見る。アリアンナは軽く裾を持ち上げながら挨拶した。

「今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ。殿下からも聞いているでしょうが、くれぐれも殿下や私から離れる事はしないようにお願いいたします。竜に認められない限り、いつ攻撃されるかわかりませんので」
相変わらずぶっきらぼうな話し方のジルヴァーノ。
「はい、肝に銘じます」

事務所には他の竜騎士たちも何人かいた。皆、アリアンナを見つめている。
「……噂以上だ」
「こんなに間近で見られるなんてラッキーだな」
「握手とかしてもらえるかな」
皆、総じて声が大きい。小声が一般の人の声のボリュームのようだ。

「申し訳ありません。竜騎士は、貴族以外の者もおりますのでどうしても品がないのです」
ジルヴァーノが言うが、お世辞を言われるよりよほど好感が持てるとアリアンナは思った。

「ざっくばらんにお話してくれた方が私は嬉しいです」
アリアンナの言葉を聞いた騎士たちが一気に湧いた。
「聞いたか?俺たちでも話していいって事だよな」
「俺、何聞こう」
「好きな食べ物とか?」
「おまえ、それ聞いてどうすんだよ?」
「え?一緒に食べたいですねって言う」
「バカか?いつ食べられるんだよ」
「……そうか」

騎士たちの会話に可笑しくなる。反対に、隣にいる王太子のこめかみはピクピクしていた。
「いいか、おまえたち。アリアンナと話をしたい奴は、私を通してからにしてもらおう」
低い声に、騒いでいた騎士たちがピシリとする。どうやら王太子は怖いと認識されているらしい。

しかし、勇気のある者というのは何処にでもいる。
「殿下、殿下に話を通せば姫様と話す事が出来るんですか?」
薄い茶色の髪に群青色の瞳の男性だ。無精ひげが生えていて、ワイルド系のイケメンだった。

「ああ、そうだな。まずはジルヴァーノに話を通して、それから私にしようか。私たち二人に認められる事が出来たら話をさせてやろう」
「ええっ⁉︎団長もっすか?」
騎士たちからブーイングが起こった。
「ジョエル兄様、私は別にいつでも……」
アリアンナがそんな事はしなくてもと言おうとするが、王太子の手で口を塞がれてしまった。

「アンナ、こいつらは図々しいんだ。少しでも甘い顔をするとつけ上がるから。私やジルヴァーノの言う通りにする事。で、なければ危ないよ。わかった?」
「は、はい」
「さ、まずはこいつらよりも竜たちに挨拶に行こう」
王太子はアリアンナを騎士たちから隠すようにして歩いた。
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