元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
15 / 161
アンネマリー編〜転生に気付いたのでやり直します

感謝と微笑み

しおりを挟む
 王宮の図書館に通う様になり、かなり充実している。
 利用する方々が落ち着いた方ばかりなので、集中できるし、司書さんは親切でかなり優秀。こんなに広くて、沢山ある本の中から、目的の本をさっと探してくれる。

 私は隅の窓側の席が気に入り、いつもそこでレポート作成をしている。静かで、人目につかなくていいのだ。

 シリル様は王宮に来たついでと言いつつ、分からないところがないかと聞きに来てくれる。気遣いの出来る、イケメン眼鏡の素敵な方です。

 そして、レポートを作成している私を見で声を掛けてくれた方が。人の良さそうな仙人みたいな、お爺ちゃま。いつも頑張っているねー、何を書いているの?みたいな感じで話し掛けてくれた。

 飛び級をして早期の卒業を目指す為に、レポートを作成している事を伝えたら、やたら興味を持ってくれている。よくよく話を聞いたら、貴族学園の前の学園長を務めていた方でした。こんなタイミングで、教育の重鎮に出会えるなんて…。

 図々しいかなと思いつつ、助言を求めると、いい感じのヒントをくれるのです。
 私はこの出会いに本当に感謝した。

 そんな感じで、レポートは卒業までの残りの2学年と半分をやり切った。シリル様や前学園長のアドバイスのおかげか、なかなか良い評価を貰えたと思う。休みを返上し、ロマンス小説もカフェでお茶するのも我慢した甲斐があったと思う。こんなに勉強したのは、前世の大学受験以来だ。

 あとは、卒業認定の試験を受けるのみである。

 そんな時、シリル様が過去の学期末の試験問題を踏まえて、卒業認定の試験問題を予測してきてくれた。

 自分だって王太子殿下の側近としての仕事や、侯爵家の跡取りとして、多忙であるはずなのに。ここまでしてくれるなんて…。

 ここまでしてくれた彼の為にも結果を出さないといけない。絶対に合格しないと。

 そう思って卒業認定試験に臨む私であった。


 そして数日後の昼休み…。卒業認定試験の結果を聞く為に、私は学園長室に来ている。

「アンネマリー・スペンサー侯爵令嬢。…合格です。
卒業を認めます。よく頑張りましたね。」

 その結果を聞いて、私はすぐに教室に戻り、レベッカ達に報告した。嬉しくて涙が出てきてしまった。それを見た3人の親友達も、泣かないのと言いつつ、目が潤んでいる。そして、他のクラスメイト達にもお礼を伝えた。みんな、私が勉強に集中出来る様にと、色々と配慮してくれていたからだ。みんな喜んでくれた。正式に学園から発表するまでは秘密ということも伝えておいた。何を噂されるか分からないからね!

 クラスメイト達への報告が済んだ後、レベッカが

「一番お世話になった先輩には報告しないのかしら?」

 ニヤリとして、私に尋ねる。

 そうなんだよねー。報告しに行きたいけど、いきなりクラスを尋ねたら迷惑だろうし、元仮婚約者もいるし、何を噂されるか。どうしようと悩んでいると、

「私が呼びに行きますよ。多分、今なら教室にいると思うので。」

 同じクラスの伯爵家の子息が声を掛けてくれる。

「そこまでお世話になるのは申し訳ないですわ。」

「彼は私の従兄弟なのですよ。スペンサー嬢のおかげで、最近あの従兄弟の性格が穏やかになってきたので、感謝しているのです。図書室近くの空き教室あたりに来るように言えばいいですか?」

 確かに呼び出すには穴場だ。しかし、性格が穏やかになったって一体何がだろう。いつも穏やかじゃないの?もしかして身内には厳しい方なのかしら。シリル様は親族にどう思われているのか。

 せっかくなので、彼に呼んできてもらうことにした。

 空き教室で待っていると、すぐにシリル様が来てくれた。

「突然お呼びして申し訳ありません。報告したい事がありまして。…無事に卒業認定試験に合格致しました。」


 シリル様は、フッと優しく微笑む。この微笑みは危険だ!

「それは良かった。君の努力の成果だ。頑張ったな。」

「いえ、シリル様のおかげですわ。目標を決めたのは良かったですが、一人ではここまで出来ませんでした。シリル様にはいつも助けていただいてばかりで。本当にありがとうございました。シリル様がいてくれて、良かったです。」

「…いや、君に少しは必要とされて、私も嬉しかったよ。」

「少しではなく、かなり必要としてましたわ。それくらい感謝してます。」

「……そこまで言われたら、少し恥ずかしいな。」

 冷静であまり感情を出さないシリル様が、珍しく照れた?少し顔が赤くなったかも。ちょっとかわいい!

「学園にはいつまで来る予定なんだ?」

「あと1ヶ月で長期休暇になるので、休暇前までは来たいと思ってます。」

「休暇前の学園のダンスパーティーには出れるのか?」

 忘れていたが、休暇前には学園主催のダンスパーティーがあったのだ。学園主催なので、少しカジュアルでエスコートなしでもいいし、仲の良い友人にエスコートしてもらってもいいし、婚約者と参加する人もいる。
 レベッカは婚約者にエスコートしてもらうって言ってたな。仲が良さそうで羨ましいと思っていた。

「忘れていたので考えていませんでしたが、学園最後なので、出席したいと思います。」

 シリル様は「そうか。」と一瞬考え込んだ後、スッと跪いて、

「アンネマリー嬢、どうか私に今度のパーティーであなたのエスコート役をさせていただけないだろうか。」

 いつもの腹黒さや、余裕がある様子が感じられない、真っ直ぐな瞳で私を見つめるシリル様を見て、心臓がビックリしている私。
 たぶん、今は私の顔が赤くなっているはず。だってかっこいいんだもん!
 私の答えは決まっていた。

「はい。喜んで。」

 恥ずかしいのと、嬉しいのが合わせあった複雑な表情になってしまっていたと思う。でも、こんな風に跪いて、エスコートを申し込まれるなんて初めてだから、とても嬉しかった。

 シリル様は私の返事を聞いて、また優しく微笑んでくれた。
 この人の微笑みはとにかくヤバい。気をつけないと魂を盗られるわ!


 数日後、私の知らないところで、私とシリル様が噂になるなんて、この時の私は気付いていなかった。



令嬢A
「聞きまして?あのマディソン侯爵子息がスペンサー侯爵令嬢に跪いてたらしいですわよ!」

令嬢B
「まぁ!愛の告白かしら!ステキだわぁ」

令嬢C
「今まで沢山の御令嬢に言い寄られても、冷たくして全く相手にしてこなかったのに。スペンサー侯爵令嬢にだけは優しく微笑まれるとか。」











 


 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

行動あるのみです!

恋愛
※一部タイトル修正しました。 シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。 自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。 これが実は勘違いだと、シェリは知らない。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

処理中です...