元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
75 / 161
マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

従兄妹が帰ってきた

しおりを挟む
 スペンサー侯爵家の生活にも少しずつ慣れたような気がする。おじ様もおば様もとても親切で、居心地のいい家だからかな。最近は2人とかなり打ち解けてきて、2人は私をマリーと呼んでくれるようになった。

 レポート作成や、刺繍もどんどん進めている。ただ、毎日それだと飽きてくるんだよね。
 そんな時、メイドのフィーネの手荒れに気付いてしまった。あっ、治癒魔法の練習しよう!と思い、フィーネの手荒れを治して、更に手のタレントみたいな白い手にしてみた。フィーネはクリクリの目を輝かせて喜んでくれたので、調子に乗った私は、ソバカスも消してあげた。フィーネは、鏡を見て涙を流し、私に一生ついて行きたいとまで言ってくれた。大袈裟だけど、嬉しいよね。
 おば様には、一応許可をとって、邸の使用人の手荒れや、ソバカス、腰痛、肩こり、火傷の跡や古傷で痛むところなど、どんどん治癒魔法で治しまくった。子供の頃よりも、かなり強い治癒魔法が使えるようになったと思う。みんな喜んでくれたから、次は誰を治そうかな。そう言えば、シミ・ソバカスはいけるから、シワも何とか出来ないのかな?と言っていたら、調理場のおばちゃんが私で試してみなよと言ってくれる。えっ?いいの?少しやらせて貰いますね。目尻のシワが気になると言ってたので、目の周りを中心にたるみが消える事を願いながら、魔法をかける。目元が若返ったぞ!ついでに視力も回復したらしい。やっぱり、エステサロンでもやろうかな?

 調理場のおばちゃんを中心に、使用人とも仲良くなれたから良かった。おば様は、治癒魔法を褒めてくれた。だけど、もっと練習する場が欲しいよね。

 クッキーに治癒魔法の力を込めて作る練習もしたいな。子供の頃によくやっていたけど、今ならもっと強力なのが作れる気がする。おば様に相談してみようかな。
 おば様に調理場の空いている時間帯にクッキー作りをしたいと言ってみたら、なぜか喜んでいた。令嬢がお菓子作りをするのは、賛否分かれるから、良かったわね。使用人達も、最近仲良くなってきたからか、どうぞーって感じ。じゃあ、お言葉に甘えて。領地にいる時によく作っていたクッキーを作ろう。あっ、セバスチャンは元気にしているかな?なんて思い出しながら、治癒の力を込めて生地を作る。焼くのは、料理人がやってくれるので、お願いした。
 良い匂いがしてきたー!焼けたかな?料理人がオーブンからクッキーを出してくれる。さすが、プロね。焼き加減バッチリ。少し冷ましてから、味見ね。久しぶりのお菓子作りを楽しむ私。ルンルンしていると、そこに…

「…姉上」

 ん?私を呼んでいるの?
 声をする方を見ると、調理場入口に、サラサラの銀髪に青い瞳のカッコいい騎士様が立っている。彼、私を見ているよね?銀髪に青い目は、おじ様の息子さん?っていうか、私の従兄妹かー!貴方の姉じゃなくて、従兄妹ですよと言おうとしたところで、少し離れたところから、おば様の声が聞こえる。

「フィル?帰って来たのね。あなた、そこで何をしているの?」

「………あっ。母上、今帰りました。その、懐かしい匂いがしてきたので、気になって覗いたのですが…。」

「ああ、マリーがクッキーを焼いているのよ。まだフィルには紹介していなかったわね。マリー、あなたにも紹介するから、こっちに来てくれる?」

 と言われたので、慌てて調理場から出て行く。

「マリー、私達の息子のフィリップよ。あなたの従兄弟になるのね。」
「フィル、フォーレス侯爵家のマリーベルよ。しばらく、うちで生活することになったの。」

「フォーレス侯爵家、長女のマリーベルと申します。よろしくお願い致します。」

「……あっ。こちらこそ、よろしく!」

「ふふっ。アンに似ているから驚いているのね。」

「…はい。驚きました。姉上が帰ってきたかと思いました。声まで似ているような気がします。」

「似ているわね。すべてがそっくりよ。まあ、家族が増えたと言うことで、みんなで楽しく過ごしましょう。フィルはずっと留守にしていたから、びっくりするわよ。あなたのお父様は、今、マリーが1番の生き甲斐になっているから。」

 生き甲斐って?私、ペットみたいな存在になってる?

 しかし、見れば見る程カッコいい従兄妹ね。これはモテるだろうな。おじ様に似てるわ。…うん、気を付けよう!イケメン騎士の貴族令息もなかなか危険な気がするからね。程々の距離感で揉めないくらいに、仲良く出来ればいいよね。

「マリー、クッキーは焼けたのかしら?」

「はい。さっきから冷ましているので、そろそろ食べれるかと思います。普通のクッキーですが、治癒魔法の力を込めて作ってみました。よろしければ、味見をして頂けませんか?」

「勿論よ。フィルも頂くでしょ?」

「…はい。頂きます。」

 調理場のおばちゃんが、焼きたてのクッキーを数枚お皿に取ってくれた。さすがおばちゃん、気が利くわね。それを、おば様と従兄弟の前に。

「お口に合えば嬉しいですわ。」

「まあ。良い匂いね。」

 おば様と従兄弟は、一口食べる。

「……マリー、…とっても美味しいわ。」

「…………美味しい。」

 美味しく食べてるように、見えないんだけど!なんか涙目になっているし、悲しそう。えー!久しぶりで失敗した?

「あの…、お口に合わなかったら、申し訳ありません。無理に食べなくても大丈夫ですわ。もっと練習しますので、ハッキリ言って下さった方が有難いですわ。」

「マリー、優しい味がして本当に美味しいのよ。これは、旦那様の分も取っておいてくれるかしら?泣いて喜ぶわ。」

「おば様が、そう言われるなら。」

「もっと、食べてもいいかな?」

「沢山焼きましたので、どうぞ。」

 すると、従兄妹はパクパクと何枚も食べる。無理して食べてないよね?

「フィル、いくら美味しいと言っても食べ過ぎよ。お茶の時間に、ゆっくり頂きましょう。」

「はい、母上。」
「ありがとう。本当に美味しかった。」

 おお!イケメン騎士の笑顔は眩しいな。
 私も釣られて微笑み返した。

 で、クッキーは、使用人達に試食してもらって、治癒魔法がどのくらい効いているのかを聞く。食べると元気になれるって言われたが、どの程度だろう?それをもっと深く知りたいから、また焼いてみよう。

 王宮から帰って来たおじ様にも食べて貰ったら、本当に泣きそうになっていた。えー、これくらいで?今後は、焼いたら王宮に差し入れに持って来て欲しいと言っていた。
 おば様は呆れていた。従兄妹は何とも言えない顔をしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。

季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。  今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。  王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。  婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!  おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。  イラストはベアしゅう様に描いていただきました。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

⚪︎
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

「結婚しよう」

まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。 一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。

処理中です...