元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

閑話 義兄

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 貴族学園に義妹が編入してから、すぐに彼女はアンネマリー様の生まれ変わりだと感じるようになった。

 それを確信したのは、彼女が侯爵家のタウンハウスに来た時である。
 義母は義妹が大好きだという、ロイヤルミルクティーを用意していた。その時、ラム酒も一緒に添えて出していたのだが、義妹はロイヤルミルクティーにラム酒をスプーンで入れて、かき混ぜ、それを嬉しそうに飲んでいた。ロイヤルミルクティーにラム酒を入れて飲む人は滅多にいないと思う。しかし、過去に1人だけいた。そう、アンネマリー様が好んでやっていたのだ。ロイヤルミルクティーにラム酒を入れる動作も、アンネマリー様と全く一緒。やっぱり、義妹はアンネマリー様だ。
 筆跡も、クッキーの味も、仕草も、刺繍も、ロイヤルミルクティーが好きなところも。すべてが一致している。
 ずっと逢いたかった大切な人。…やっと逢えた。

 それからは、当然だが義妹としては見れなくなっていた。
 アンネマリー様の護衛騎士だった頃は、身分の違いがあったし、公爵家の嫡男がアンネマリー様の婚約者であったので、それ以上のことは望まず、このまま護衛騎士として、ずっと側にいれれば幸せだと思っていた。
 しかし、今は義理の兄妹。元々はただの再従妹だ。お互い婚約者もいない。本気で望めば、どうにかなるかもしれない関係。だから、欲が出たのだ。

 俺は義父から、虫除けを頼まれていたことを理由に、他の令息が近づかないように徹底して行動した。侯爵家という身分は、貴族の中でも高位なので、マリーの虫除けをするには、便利な身分であった。
 しかし、問題はマリーだった。マリーは自分が令息達から、熱い目で見られていることに全く気付いていない。親切にしてくれるのは、その令息の善意だと思っているようだ。下心があるなんて、気付いていない。
 だから、マリーと一緒にいる時は、恋人同士のように振る舞い、周りの子息を牽制するようにした。俺たちが義理の兄妹だということは、みんな知っているので、本当は恋仲なのではと思う友人も出てきた。マリー自身にも、俺を義兄としてではなく、男として意識させるためにも。
 しかし、一部の令嬢がマリーに嫉妬し、嫌がらせをする。教科書やノートを破いたり、睨みつけたりする者もいる。特にミラー伯爵令嬢はひどい。前から、私に近付く令嬢に嫌がらせをしていたので、恐らく首謀者はあの女だ。証拠を掴む為に家の影に監視させる。すると学園でも影に監視させているようだと情報が入った。もしかして、担任が動いてくれているのか?
 担任のルーベンス先生は、マリーが幼少の頃から付き合いのある先生のようで、とても信用しているようだ。マリーは先生の前で涙を流し、ルーベンス先生が昔から大好きで、両親と離れて寂しかったけど、先生がいたから頑張ってこれたと言っていた。すごく心が痛んだ。俺がマリーを守らないと…。
 ルーベンス先生に聞いてみると、やはり先生が影を使って、嫌がらせの首謀者を探っていたらしい。ルーベンス先生もマリーのことを大切に思ってくれているようだ。先生と協力して、首謀者の証拠を掴む。なんと同じクラスの真面目な男爵令嬢であった。あんな真面目そうな振りをして、許さない。しかし、彼女は真面目で成績が良い生徒で通っているので、捕まえても、何とでも言い逃れが出来てしまいそうだ。そう思った俺は、王太子殿下に協力を求めることにした。王太子殿下はマリーを守る為ならと、すんなり協力してくれ、自白剤を飲ませて、罪を認めさせ、学園を退学にして、修道院に追放してくれた。更に、他の令嬢がマリーに手出し出来ないように、学園に男爵令嬢の噂まで流してくれるという。男爵令嬢はいい見せしめになってくれるようだ。
 俺としては、学園の教員の中で若手のルーベンス先生が、今回かなり親身になって対応してくれたので、王太子殿下に、ルーベンス先生の功績を伝えておいた。王太子殿下も感心したようで、先生は学園で役職がつくようだし、爵位も授かるらしい。これで、ルーベンス先生は、マリーにまた何か起きたら助けてくれるだろう。味方は多い方がいいからな。

 しかし、マリーに対しての思いが強くなるにつれて、独占欲も強くなる一方であった。

 ダンスパーティーでは、王太子殿下に声を掛けられたとは言え、あのマディソン卿とダンスをする姿を見た時は、どうしようもない気持ちになった。かつてアンネマリー様が、婚約が白紙になってから親しくしていた令息。学園生活で色々と助けてくれた、親切な方だと言っていた。あのシールド公爵は許さないが、マリーが望むなら、マディソン卿なら仕方がないかと思う自分がいる。しかし、誰にも渡したくないという気持ちの方が断然強いのは確かだ。

 マリーは全く、俺のことを男と意識して見ていないようであった。義兄ではなく、1人の異性として見て欲しくて、手を繋いだり、抱き締めたりするが、全く効果がない。どうすれば、俺を見てくれるんだ?

 それなのに、俺の気持ちに気付かず、剣術の指導に来ていた騎士と親しくしていた姿を見た時は、嫉妬が抑えられなかった。マリーを抱きしめて、他の男と親しくしないように話したが、マリーは全く理解してくれてないようだった。
 学園が休みの日、またカフェにでも誘おうかと寮に尋ねて行くと、マリーは不在で、彼女の帰りを待つ事にした。長い時間待って帰ってきたマリーは、珍しく着飾って、明らかに不自然だった。マリーを膝に座らせ抱き締めると、何となく男の香水の匂いがする。一体、誰と会ってきたんだ?我慢出来なくて、誰といたのか聞くが、なかなか答えないマリー。言わないと首元に俺の痕を付けると軽く脅すと、マリーは泣いてしまった。泣かせようと思っていなかったのだが、後悔した時は遅かった。その場に、義母がやって来て、帰るように言われてしまったのだ。謝ることすら、出来なかった。
 その日の夜、義母から、マリーは俺を義兄として見ているのだから、過剰なスキンシップは止めること、むやみに寮に行くのはダメだと注意された。マリーが泣くくらい嫌がっているのだから、考えなさいと。あなたのやっていることは、以前あなたがベタベタして、一方的に付き纏って来て困ると言っていた、ミラー伯爵令嬢に似ているわよと。…そんなつもりは無かったのに。あんな女と一緒にされるなんてショックだった。

 次の週、マリーは学園を休んだ。週末のことを謝りたかった俺は、寮を訪ねるのはいけないと知りつつ、どうしても一言謝りたくて、彼女の部屋を訪ねる。すると、マリーは不在であった。メイドのアリーは、しばらく戻られないようですと言う。行き先は、私からは言わないように、奥様から言われておりますので、お許しくださいませと。
 義母は私とマリーを離したいようだ。過剰なスキンシップを警戒されたのだろう。そしてそのまま、マリーは学園を休み続けたのだった。

 マリーが今どこにいるのか、義母に聞きたいが、聞き出すことが出来なくて、数日が経つ頃。義父と2人でいる時であった。

「マリーはかわいいから、アルがマリーを好きになってしまうのも、私は理解できるよ。親バカと言われても、マリーは可愛いからね。ただ、マリーの気持ちを考えないとダメだよ。マリーが嫌がることはダメ。それに、マリーもアルも相思相愛なら、私は2人の将来を反対はしない。2人ともかわいい私の子供達だからね。だからアル、間違えないで行動して欲しい。」

 義父はいつも俺に優しい。義母は恐ろしいが。しかし、2人とも大切な両親なのだ。悲しませるようなことはしたくない。
 でも、マリーのことは諦められない。だから両親が納得してくれるやり方を探していこう。今はマリーに会って謝れないことがつらいが、マリーが戻って来るのを静かに待つしかないな。

 義父にマリーへの自分の気持ちを伝えると、義父は、多分、みんなアルの気持ちに気付いているけど、マリーは分かっていないから、頑張ってと言っていた。

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