元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

居候生活の始まり

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 両親と馬車に揺られてやって来たのは、スペンサー侯爵家。お父様の姉にあたる伯母様の家。ずっと領地に引き籠っていた私は、出産後の赤ちゃんだった時に、会ったきりのお方らしい。ほぼ初対面である。

 すごい邸ね。うちのタウンハウスもなかなかだけど、スペンサー侯爵家はもっと大きいわね。でも、お約束のね…何となく見たことがあるような気がするんだけど。
 もしかして、乙女ゲームの攻略対象者の家だったりした?従姉妹のお姉様の事故死も、もしかして…、乙女ゲームの悪役令嬢にされて、消されたとか!でも、従姉妹は私よりかなり年上になるわけだから、もう乙女ゲームは終了して、今はその後の世界だとか?
 ああ、何を信じて、何をすればいいのか分からないわ。とりあえず、学園を早期で卒業する事と、剣術と魔術はもっと頑張らないとね。そんな考えを巡らせながら、両親の背後をついて行き、玄関ホールに入る。すると、伯母夫婦らしき人物が待っていてくれた。

「姉上、義兄上、娘のマリーベルを連れて来たよ。マリー、ご挨拶して。」

 お父様に促されカーテシーをする私。

「フォーレス侯爵家、長女のマリーベルと申します。今日から、どうぞよろしくお願い致します。」

「……。」

「………。」

 伯父様と伯母様が目を見開いて固まっている。ああ、もう慣れて来たわね。恐らく、亡くなった従姉妹に似ているから、驚いてるのね。でも、亡くなった従姉妹の両親から見ても、そんなに似てるのかしら?伯母様は、私と同じ髪と瞳の色みたい。私は伯母様に似ているかもしれないわね。

「…あっ。ごめんなさいね。マリーベルが余りにも娘のアンに似ていたから驚いてしまったの。これから、よろしくね。自分の家だと思って、過ごしてくれたら嬉しいわ。ねぇ、あなた?」

「……そうだね。こちらこそ、よろしく。さあ、中に入って!」

 優しそうな夫妻で良かったわ。そのまま、応接室に通され、お茶を飲みながら、これからのお話をする。

「しばらくは、学園はお休みするのね?」

「その方がいいかと思いまして。しばらくアルには接触させないようにしたいのですわ。マリーもそれでいいわよね?」

「はい。ただお母様にお願いがあるのですが…。」

「何かしら?」

「(副業の為の)刺繍糸と布、それと早期の卒業の為に必要な参考書を買って頂きたいのです。学園に、行かない時間を無駄にしたくないので。」

 自立に向けて時間を有効に使わないとね。すると、伯母様が

「まあ!マリーベルは素晴らしいわ。それは、おば様とおじ様がプレゼントするわね。」

「そうだね。勉強したいなら、私が何でも協力するよ。あっ、そうだ!王宮の図書館は沢山の本が揃っているから、勉強するならオススメみたいだよ。おじ様が王宮に行く時に、一緒に行こうか?」

「本当ですか?ぜひお願いしますわ。」

「じゃあ、お父様は王宮の図書館の、入館許可証を貰っておくよ。」

 おじ様もおば様も、協力的で良かったわ。この2人の他に、私の従兄妹になる方がいるらしいが、今は騎士団の遠征に行っていて、しばらく戻らないようだ。26歳になる従兄弟は近衛騎士団に所属していて、侯爵位を継ぐまでは騎士団で活動する予定だとか。上手くやれば、剣の鍛練に付き合ってくれるかな?でも、気を付けよう。義兄もそうだったけど、どんな人か分からないし、乙女ゲームに関係ある人だったら怖いし。

 両親は、おじ様とおば様と仲良く話をする私を見て、安心したのか帰って行った。

 すると、おば様が使用人達を紹介してくれる。まず執事長とメイド長を紹介してくれるが、この2人も、勤続年数が長そうだから、私と従姉妹が似ているのをビックリしているわね。2人とも何か言いたそうな顔をしているもの。
 それと、私の専属のメイドを紹介してくれる。フィーネという、ハタチ前後の、目がクリクリのかわいいお姉さんだ。歳が近いからか、気さくに話しかけてくれるので嬉しかった。

 ところでアリーは、学園の寮の管理人として留守番してもらっている。というか友人達との、手紙のやり取りの窓口になってもらうことにした。学園の情報や出来事とか知らせたい事は、手紙に書いてアリーに渡すようにレジーナに伝えてきたのだ。学園で何があるのか、知らないのも不安だからね。ヒロインが編入して来たとか、義兄がどうだとか、噂話とかね。反対に私がレジーナ達に知らせたい事も、アリーがレジーナに届けに行く事になっている。スペンサー侯爵家は、使用人は沢山いるので、連れて来なくて大丈夫と言ってくれたから出来たことだった。

 おば様は、早速、商会を呼んでくれて、刺繍糸や布地を沢山買ってくれた。こんなにいいの?って思うくらい。おば様は、こういう買い物をするのは楽しいからいいのよと言ってくれる。優しい方なのね。沢山刺繍して、プレゼントしよう。

 おじ様は、お父様から王宮の図書館の入館許可証が届くと、早速、図書館に連れて行ってくれた。
 こんなすごい図書館ってあるのね。おじ様が優しくエスコートして、連れて行ってくれたが、かなりの視線を感じた。あまり気にしないけど、学園休んでいるから目立つのかもね。
 おじ様は、更に早期の卒業に必要な課題を学園に問い合わせてくれていた。それぞれの教科のレポートを提出し、卒業試験に合格すれば大丈夫らしい。なら、まずはレポートを作成していこう。そういえば、ミッシェルも学園に慣れて来たら、本格的に早期の卒業を目指して動こうかと言っていたわね。ちょっと、ミッシェルに手紙を書いてみようかな?

 ある日、アリーが手紙を届けに来てくれた。アリーの顔を見たら、安心して笑みが溢れる。それを見たおば様は、アリーにゆっくりお茶をしていきなさいと、応接室に案内してくれた。
 応接室に、案内され2人きりで話をする。まずレジーナからの手紙を受け取る。手紙には、学園での噂話が書いてある。私は退学になった男爵令嬢に危害を加えられそうになったので、しばらくは学園には来ないだろうと言う噂。退学になった男爵令嬢は、王太子殿下の従姉妹の私に嫌がらせをして、王家の怒りを買い、修道院に送られたと言う噂。だから、しばらく休んでいても、平気かもしれないわと書いてあった。
 また、その王太子殿下夫妻が、今回の男爵令嬢の嫌がらせを激怒したことが、刺激になったのか、私の友人である聖女子メンバー達への、嫌がらせが止まっているらしい。修道院送りはいい見せしめになったようね、と書いてある。ふーん。誰が喋って噂になったのだろう?…もしかして、王家でワザと流したとか?分からないわね。
 それと義兄は、学園で静かにしているようだ。みんなは私が休んでいるから、元気がないと思っているらしい。
 レジーナには、すぐに近況報告の手紙を書いてアリーに持って行ってもらおう。あっ、ミッシェルとエリーゼにもね。

 またアリーの話によると、私が学校を休み始めた日の放課後に、義兄が訪ねて来たらしいが、私がいないことを知ると、何も言わずに帰ったらしい。お母様達は何も話してないのかしら?

 こんな感じで、私の居候生活が始まったのだった。
 

 




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