元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
76 / 161
マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

デビュタント 1

しおりを挟む
 スペンサー侯爵家では、朝から忙しい。そう、今日はついにデビュタントの日なのだ。おば様のオススメの香油を使ったスペシャルケアで、2週間前からひたすら磨かれ続けてきた。多分、私よりおば様が気合い入っている。
 しかも、久しぶりだからダンスが心配と言ったら、おば様の心に火をつけてしまったらしく、おば様の愛のスパルタレッスンが始まってしまい、従兄妹やおじ様に練習を付き合ってもらう。2人とも、ニコニコして練習に付き合ってくれたから良かったけどね。

 ドレスは少し前に、お母様とおば様と3人で議論して決めたやつ。やはりアラサーの感覚で、あまりヒラヒラ、ゴテゴテしてないのがいいと、デザイナーに希望を話しておいた。お母様とおば様は、デビュタントはみんな白ドレスだから、何か変化をつけたいと言い出して、色々と細かい注文をつけていたようだ。

 湯浴みとエステを終え、髪をセットしてもらう。おば様のおかげで、髪はサラ艶なので、サイドを編み込んだ、ハーフアップにしてもらう。編み込んだところに、ダイヤモンドのユーピンを飾り、サイドに白薔薇の飾りを付けてくれた。
 アクセサリーは、大きなダイヤのペンダントトップが付いたパールの二連ネックレスと、パールとダイヤのイヤリング。

 ドレスはデビュタントらしく、少し大人っぽくしてくれたようだ。胸もいい感じに成長してくれたので、Vネックにして、下品にならない程度に胸元を開けたらしい。お母様とおば様が希望したプリンセスラインのドレスに、お母様が好きな大きなリボンと、おば様が好きな段々のフリルは背後に、前面は私が希望するシンプルだけど、品良く見えるようにしてもらった。
 もうね、お母様とおば様のコラボしたドレスです!まぁ、2人が喜んでいるからいいか。

 準備が終わると、おば様は私よりも喜んでいた。おじ様と従兄妹も、ニコニコして綺麗だと褒めてくれたので、テンションが上がる私。
 
 デビュタント会場の王宮までは、おば様達と一緒に行く。エスコートは、私の知らないところで、イケメン従兄妹がしてくれることに決まっていた。従兄妹ともそれなりに仲良くなり、マリーとフィル兄様と呼び合っている。フィル兄様は、近衛騎士団の正装を着ていて、すごいカッコいい。眼福だ!
 多分、フィル兄様のファンの令嬢に睨まれそうだから、今日も一応、念入りに全身に保護魔法をかけておいた。おば様達にも、保護魔法の練習と言って、かけさせてもらった。これでオッケーね。会場で聖女子メンバーに会ったら、こっそり保護魔法かけてあげよう。戦場と変わらないだろうからね。

 今日はお父様は、国王陛下の側近としているらしく、一緒には行動出来ないと言っていた。しかし、ファーストダンスは絶対に、私と一緒に踊りたいと通したらしい。お母様は義兄がエスコートするようだ。
 義兄も、静かに反省しているようなので、私は来週から、しばらくぶりに学園に復帰する。しかし、寮ではなくスペンサー家から通うことになっている。寮が懐かしいが、せっかく楽しく過ごせているのだからと、おじ様とおば様が言ってくれたので、もう少しお世話になることに決めたのだ。
 レジーナと、ミッシェル、エリーゼは一度、スペンサー家に遊びに来てくれた。他の子達はずっと会ってないから、会うのが楽しみだわ。

 …と、色々考えていたら、王宮に着いたようだ。

 馬車から降りると…、お約束のどこかで見たことがある景色が広がっている。フィル兄様のエスコートで大広間に向かって歩いて行く。ん、みんなこっちををチラチラ見ているわね。あー、フィル兄様かっこいいからね。
 デビュタントは国内の貴族がほぼ集まっているので、とにかく人が多い。迷子にならないように気を付けないとね。フィル兄様も、私の不安に気付いたのか、私の歩幅に合わせて、しっかりと手を握ってエスコートしてくれている。カッコいいだけじゃなくて、優しくて気遣いの出来る人なのだ。
 目が合うと、優しく微笑んでくれる。…ご馳走様です!じゃなくて、この人はモテるわね。ふふっ。今日は、フィル兄様を巡って、令嬢方のどんなバトルが始まるのかしら。今から楽しみだわ。すこーし、離れた場所から見れたら面白そうね。大奥がテーマの映画やマンガが好きだった私としては、大人の女同士のバトルを見てみたいのだ!

 ダンスパーティーが始まる前に、爵位の低い順から、国王陛下に挨拶をするらしい。フォーレス侯爵家もスペンサー侯爵家もかなり後の方になるらしく、王宮に来るのも、下位の貴族より遅めにしたらしい。そして、大広間近くにおば様が控室を用意してくれたようで、そこでお母様達と待ち合わせをする約束だ。

 控室に入ると、すでにお母様と義兄は来ていた。義兄とは、涙を流した時から会ってなかったので、アラサーでも気不味い。うーん、どうしよう。
 すると、手をギュッと握られる。ん?フィル兄様がエスコートしている手を、ギュッとしてくれたようだ。私と義兄のちょっとしたトラブルを知っているのかな?聞いていても、おかしくないよね。だって、何でスペンサー家に居候してるんだって疑問に思って、おば様あたりに聞いてそうだもん。きっと心配してくれたのね。本当に優しい人だわ。私は大丈夫の意味を込めて、手をギュッと握り返して、フィル兄様に微笑んでおいた。

 お母様とおば様達は、私のドレスの話題で話し込んでいる。この2人、結構仲がいいのね。本当の姉妹みたい。その時、義兄が気不味そうに

「マリー、ちょっと話がしたいんだけど、いいかな?」

 そうね。私も冷戦はつらいもの。

「お兄様、私もお話ししたかったですわ。お母様、少し向こうでお兄様とお話しをして来ます。」

「いいわよ。久しぶりだろうから、しっかり話して来なさい。」

 どれ、窓側にでも行こうかと、歩き出そうすると、グイッと手を引っ張られる。えっ?

「マリー、2人で大丈夫?」

 えっ?フィル兄様が真顔で聞いてくる。しかも手をがっちり掴んで、いつもと雰囲気が違うぞ。心配性なのね。

「はい。大丈夫ですわ。」

「…わかった。待ってる。」

 おじ様、おば様も、フィル兄様を見て驚いているようだ。しかし、ごめん。今は義兄と話するのを優先します。

 控室の窓側の隅で、2人肩を並べて話す。

「マリー。今までマリーが嫌がることをして、ごめん。これからは、気をつけるし、マリーが嫌なことはしない。だから、嫌いにならないでくれ。」

「本当ですか?私は普通の兄妹みたいに仲良くなりたいのです。」

「ああ。マリーが大切だから約束する。」

「大切?私がですか?」

「当たり前だ。大切だし、可愛くてしょうがない。」

 サラッとシスコンっぽいこと言ってるけど、この人なりに、大切にしてくれているのは知っているのだ。

「じゃあ、あまりベタベタするのはやめて下さいね。」

「分かった。でも…、手は繋ぎたい。それは許してくれ。」

 手を繋ぐと安心するのは本当なのね。そこは、折れてあげる?心の傷もあるだろうし。あっ、条件付けちゃおうか。

「手を繋ぐ事で、お兄様が安心するなら。でも、約束して欲しいことがあるのです。」

「約束して欲しい事?言ってみて。」

「小さい頃から、誰かに殺される夢を見ることがあるのです。それが、とても不安で。だから、お兄様は何があっても、私を殺さないでくださいね。私も悪いことは絶対にしないので、断罪もしないでくださいね。」

 もしかしたら、私が悪役令嬢で義兄は攻略対象者かもしれない可能性があるからね。今のうちから、殺さない・断罪しないって約束をしてもらおう。誰かに殺される、怖い夢を見ることがあって、とても不安だからということにしておいて。ふふっ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。

季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。  今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。  王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。  婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!  おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。  イラストはベアしゅう様に描いていただきました。

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

処理中です...