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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私
閑話 従兄妹 1
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姉の葬儀を終えて、しばらく経ったある日、亡くなった姉から私にプレゼントが届く。
中には、綺麗なサファイアのブローチが入っており、メッセージカードには
『私が隣国から戻る頃には、フィルは素敵な令息になっているのでしょうね。次に会う日を楽しみにしています。
フィルのサファイアのような綺麗な瞳が、これからも輝き続けますように。
大好きなフィルへ アンネマリー』
心から姉上に逢いたいと思った…。いくら願っても無理なのは分かっているのに。どうして姉は亡くなってしまったのだろう。
私の大好きな姉は、美しく聡明で、心優しく、自慢の姉であった。将来、どんな人と結婚したいか聞かれたら、間違いなく、姉のような人と答えると思う。世間ではそれをシスコンと呼ぶかもしれないが、それくらい大好きな姉だった。
10歳くらいの頃に、私は流行りの高熱病に罹って寝込んでしまったことがあった。これは10代の子供から若者に多い病いのようで、姉は感染する危険があるからと、私に接触しないように言われていたらしい。しかし、熱にうなされる私を見た姉は、私は大丈夫だからと言い、看病を買って出たらしい。両親や使用人達は反対したのに、姉は私がしたいと言って聞かなかったようなのだ。寂しがりやのフィルの側についていたいと言って。そして、私が治りかけるころに、今度は姉が倒れてしまう。姉の方が症状が重く、意識が数日戻らず、医師が匙を投げるくらいであった。当時まだ子供だった私は、泣いて側にいることしか出来なかった。
そんな私を見て、姉の仲の良かった護衛騎士のアルは、教会に行って病気が治るように祈って来ましょうかと声を掛けてくれた。母もそれがいいわと、私とアルが教会に行くことを許してくれ、その日から毎日、アルと一緒に教会にお祈りに行くようになった。
数日後、姉は意識を取り戻す。すっかり痩せ細ってしまった姉は、私のせいで病にかかってしまったことを謝ると、優しく微笑んで、私こそ心配掛けてごめんなさいと言う。姉のこの優しい微笑みが、本当に大好きだった。
姉は病の後、何となく雰囲気が変わったような気がする。父や母が言うには、姉はもう今までの我慢をやめて、自分らしく生きていきたいのだろうと。家族として、見守ってあげようということになった。それが、何を意味するのかは、その時は分からなかったが、しばらくすると、幼少の頃からの婚約者と婚約を白紙にしたようだった。あの婚約者は、姉に対して、いつも冷たい態度をとるので大嫌いだった。父も母も、何か思うところはあったようで、もう無理に婚約者を決めるのはやめたらしい。そして、姉の気持ちを考えず、無理に婚約者を決めてしまったことで、姉に苦労させてしまったという負い目からか、私にも無理に婚約者を決めることはしなかったのだった。
姉は婚約を白紙にすると、隣国に留学する為に勉学に励み出す。姉や母の話だと、学園の先輩である宰相家の令息が、親切に勉強を教えてくれているらしい。その頃の姉は生き生きして、輝いていた。そして聡明な姉は、学園を早期で卒業し、留学することになる。
学園最後のパーティーの日、勉強でお世話になったという宰相家の令息が、エスコートする為に、姉を迎えに来る。今まで来ていた元婚約者とは違った雰囲気の、知的で礼儀正しい令息だった。姉から、いつも親切にしてもらっているということを聞いていたので、良い印象しか持っていたかったが、確かに姉を見る目は優しいし、姉もその令息を信頼しているようだったので、姉が幸せなら、黙って見守りたいと思った。
パーティーを終え、もうすぐ隣国に出発するという時であった。出発前に、仲の良い友人達とお茶をしに出かけた姉は、家に帰って来る途中に、馬車の事故に遭い、そのまま亡くなった。姉の護衛騎士のアルも一緒に。アルは姉を庇おうとしたようで、馬車の中で姉を強く抱き締めた状態で亡くなっていたらしい。
父と母は、姉は最期にアルが一緒にいてくれて、心強かっただろうから、アルには感謝しかないと言っていた。そしてこの事故は、まだ分からないことが沢山あるから、解決するまでは姉が亡くなったことも、何があったのかも、誰にも何も言わないようにと強く口止めされ、私は事故の調査が落ち着くまでは、元国王夫妻である祖父母の住む、離宮に預けられることになる。そして数日後、姉は事故の後、衰弱して亡くなったと世間に発表され、告別式を行う事になった。
姉は沢山の友人がいたようで、みんな涙を流している。その中には、あの元婚約者もいた。元婚約者は、姉の柩に何かブローチのような物を入れている。あんな冷たい態度をとっていたくせに、何を今更と思った。あいつを見ると、姉の悲しそうな顔を思い出すから、本当に大嫌いだと思った。
そのブローチが実は、剣術大会で優勝し、国王陛下から賜った特別なブローチであったことに気づくのは、まだ先のこと。
葬儀から約2年後、姉の死は、実は隣国の公爵家が企てた暗殺によるもので、その事に気づいた姉の元婚約者と、隣国に留学に行っていた宰相子息が協力し、首謀者の公爵令嬢を断罪してきたと、正式に発表される。
私の大好きな姉は、暗殺で亡くなっていたとは。どうして姉が狙われたのだろう。
そして、そのことに早い段階で気付き、事件の指揮を取り、姉の報復の為に隣国まで行き、首謀者を断罪までしてきた、姉の元婚約者。元婚約者である公爵は、姉が亡くなって何年経っても、結婚どころか、恋人も婚約者すらも、持とうとしないらしい。亡くなった婚約者だけを思い続ける真実の愛だと、この公爵と姉の話をモデルにしたロマンス小説が人気だったらしいが、そんなのは偽りだ。姉にあんな態度をとっていたくせに。私は姉の、あの悲しそうな表情を絶対に忘れない。生きている時に大切に出来なかったことを、後悔しているのかもしれないが、亡くなってから何をしても、もう遅いのだ。
父と母は、姉が亡くなったことをとても悲しんでいたが、隣国の公爵令嬢を断罪し、区切りがついたことで、気持ちを切り替えたようだった。少しずつではあるが、前のような日常に戻りつつある。
しかし私自身は、心にぽっかりと穴が空いたままであった。寂しさを紛らわせる為に、剣術も勉強も頑張ったし、両親もそんな私を認めてくれた。でも、何を達成しても、どこか満たされないのだ。
その頃になると家柄も、見目も、人よりいいこともあって、嫌という程、令嬢が言い寄ってくるようになる。
貴族も恋愛での結婚が増えたせいか、婚約とは言わなくても、恋人になって欲しいと言う令嬢にうんざりしていた。友人の中には、その令嬢の恋心を利用して、いいように付き合って、飽きたら別れるを繰り返している令息も珍しくない。恋愛もある程度は自由だから出来るのだろう。
断るのが面倒になった私は、適当に都合の良さそうな令嬢と付き合うことにした。もちろん、本気になる訳がない。だから、付き合う前には必ず伝えておくようにしている。私は君を好きではないし、これからも好きになるつもりはないので、期待しないで欲しい。しつこくしたり、礼儀をわきまえないのは嫌いだし、私が別れたくなったら、すぐに別れて欲しい。それでもいいなら付き合うよと。高位貴族の令嬢は、大抵はそれで、付き合うことをやめるが、下位の貴族令嬢は、それでもいいと言って付き合う人が多い。こんな付き合いの何が楽しいのか、自分自身で言っておきながら、理解に苦しむ。
剣術が得意であった私は、父の侯爵位を継ぐまでは、近衛騎士として活動することになった。そして、近衛騎士はとにかくモテる。それは、私だけではないのだが。
騎士は勤務時間が不規則な時があるので、王都に家がある令息でも、騎士団の寮をみんな借りている。その寮は、子息だけが利用しているので、そこまで警備は厳しくないのだ。その寮にみんな、遊びの関係の女性を連れ込んでいる。寝るだけの狭い部屋なので、誰も本命の恋人は連れてこないというのが、近衛騎士団だけの暗黙のルールらしい。そんな、近衛騎士団に入った私も、時々、割り切った関係の女性を連れてくることもあった。しかし、どんな美女だろうと、心は満たされなかった。ただ、発散する為だけの関係。ただそれだけ。
貴族も、昔と比べると晩婚化しているようで、以前ほど、急いで結婚とはならなくなった。しかし私も26歳。両親には30歳になっても結婚出来なければ、見合いで決めるように言われている。
今まで心惹かれる人に出会えたことは無かったし、誰と付き合っても満たされることは無かったのだから、それでいいと諦めていた。それまでは、今までのように自由に過ごそう。そう思っていた時に、彼女は現れたのだった…。
中には、綺麗なサファイアのブローチが入っており、メッセージカードには
『私が隣国から戻る頃には、フィルは素敵な令息になっているのでしょうね。次に会う日を楽しみにしています。
フィルのサファイアのような綺麗な瞳が、これからも輝き続けますように。
大好きなフィルへ アンネマリー』
心から姉上に逢いたいと思った…。いくら願っても無理なのは分かっているのに。どうして姉は亡くなってしまったのだろう。
私の大好きな姉は、美しく聡明で、心優しく、自慢の姉であった。将来、どんな人と結婚したいか聞かれたら、間違いなく、姉のような人と答えると思う。世間ではそれをシスコンと呼ぶかもしれないが、それくらい大好きな姉だった。
10歳くらいの頃に、私は流行りの高熱病に罹って寝込んでしまったことがあった。これは10代の子供から若者に多い病いのようで、姉は感染する危険があるからと、私に接触しないように言われていたらしい。しかし、熱にうなされる私を見た姉は、私は大丈夫だからと言い、看病を買って出たらしい。両親や使用人達は反対したのに、姉は私がしたいと言って聞かなかったようなのだ。寂しがりやのフィルの側についていたいと言って。そして、私が治りかけるころに、今度は姉が倒れてしまう。姉の方が症状が重く、意識が数日戻らず、医師が匙を投げるくらいであった。当時まだ子供だった私は、泣いて側にいることしか出来なかった。
そんな私を見て、姉の仲の良かった護衛騎士のアルは、教会に行って病気が治るように祈って来ましょうかと声を掛けてくれた。母もそれがいいわと、私とアルが教会に行くことを許してくれ、その日から毎日、アルと一緒に教会にお祈りに行くようになった。
数日後、姉は意識を取り戻す。すっかり痩せ細ってしまった姉は、私のせいで病にかかってしまったことを謝ると、優しく微笑んで、私こそ心配掛けてごめんなさいと言う。姉のこの優しい微笑みが、本当に大好きだった。
姉は病の後、何となく雰囲気が変わったような気がする。父や母が言うには、姉はもう今までの我慢をやめて、自分らしく生きていきたいのだろうと。家族として、見守ってあげようということになった。それが、何を意味するのかは、その時は分からなかったが、しばらくすると、幼少の頃からの婚約者と婚約を白紙にしたようだった。あの婚約者は、姉に対して、いつも冷たい態度をとるので大嫌いだった。父も母も、何か思うところはあったようで、もう無理に婚約者を決めるのはやめたらしい。そして、姉の気持ちを考えず、無理に婚約者を決めてしまったことで、姉に苦労させてしまったという負い目からか、私にも無理に婚約者を決めることはしなかったのだった。
姉は婚約を白紙にすると、隣国に留学する為に勉学に励み出す。姉や母の話だと、学園の先輩である宰相家の令息が、親切に勉強を教えてくれているらしい。その頃の姉は生き生きして、輝いていた。そして聡明な姉は、学園を早期で卒業し、留学することになる。
学園最後のパーティーの日、勉強でお世話になったという宰相家の令息が、エスコートする為に、姉を迎えに来る。今まで来ていた元婚約者とは違った雰囲気の、知的で礼儀正しい令息だった。姉から、いつも親切にしてもらっているということを聞いていたので、良い印象しか持っていたかったが、確かに姉を見る目は優しいし、姉もその令息を信頼しているようだったので、姉が幸せなら、黙って見守りたいと思った。
パーティーを終え、もうすぐ隣国に出発するという時であった。出発前に、仲の良い友人達とお茶をしに出かけた姉は、家に帰って来る途中に、馬車の事故に遭い、そのまま亡くなった。姉の護衛騎士のアルも一緒に。アルは姉を庇おうとしたようで、馬車の中で姉を強く抱き締めた状態で亡くなっていたらしい。
父と母は、姉は最期にアルが一緒にいてくれて、心強かっただろうから、アルには感謝しかないと言っていた。そしてこの事故は、まだ分からないことが沢山あるから、解決するまでは姉が亡くなったことも、何があったのかも、誰にも何も言わないようにと強く口止めされ、私は事故の調査が落ち着くまでは、元国王夫妻である祖父母の住む、離宮に預けられることになる。そして数日後、姉は事故の後、衰弱して亡くなったと世間に発表され、告別式を行う事になった。
姉は沢山の友人がいたようで、みんな涙を流している。その中には、あの元婚約者もいた。元婚約者は、姉の柩に何かブローチのような物を入れている。あんな冷たい態度をとっていたくせに、何を今更と思った。あいつを見ると、姉の悲しそうな顔を思い出すから、本当に大嫌いだと思った。
そのブローチが実は、剣術大会で優勝し、国王陛下から賜った特別なブローチであったことに気づくのは、まだ先のこと。
葬儀から約2年後、姉の死は、実は隣国の公爵家が企てた暗殺によるもので、その事に気づいた姉の元婚約者と、隣国に留学に行っていた宰相子息が協力し、首謀者の公爵令嬢を断罪してきたと、正式に発表される。
私の大好きな姉は、暗殺で亡くなっていたとは。どうして姉が狙われたのだろう。
そして、そのことに早い段階で気付き、事件の指揮を取り、姉の報復の為に隣国まで行き、首謀者を断罪までしてきた、姉の元婚約者。元婚約者である公爵は、姉が亡くなって何年経っても、結婚どころか、恋人も婚約者すらも、持とうとしないらしい。亡くなった婚約者だけを思い続ける真実の愛だと、この公爵と姉の話をモデルにしたロマンス小説が人気だったらしいが、そんなのは偽りだ。姉にあんな態度をとっていたくせに。私は姉の、あの悲しそうな表情を絶対に忘れない。生きている時に大切に出来なかったことを、後悔しているのかもしれないが、亡くなってから何をしても、もう遅いのだ。
父と母は、姉が亡くなったことをとても悲しんでいたが、隣国の公爵令嬢を断罪し、区切りがついたことで、気持ちを切り替えたようだった。少しずつではあるが、前のような日常に戻りつつある。
しかし私自身は、心にぽっかりと穴が空いたままであった。寂しさを紛らわせる為に、剣術も勉強も頑張ったし、両親もそんな私を認めてくれた。でも、何を達成しても、どこか満たされないのだ。
その頃になると家柄も、見目も、人よりいいこともあって、嫌という程、令嬢が言い寄ってくるようになる。
貴族も恋愛での結婚が増えたせいか、婚約とは言わなくても、恋人になって欲しいと言う令嬢にうんざりしていた。友人の中には、その令嬢の恋心を利用して、いいように付き合って、飽きたら別れるを繰り返している令息も珍しくない。恋愛もある程度は自由だから出来るのだろう。
断るのが面倒になった私は、適当に都合の良さそうな令嬢と付き合うことにした。もちろん、本気になる訳がない。だから、付き合う前には必ず伝えておくようにしている。私は君を好きではないし、これからも好きになるつもりはないので、期待しないで欲しい。しつこくしたり、礼儀をわきまえないのは嫌いだし、私が別れたくなったら、すぐに別れて欲しい。それでもいいなら付き合うよと。高位貴族の令嬢は、大抵はそれで、付き合うことをやめるが、下位の貴族令嬢は、それでもいいと言って付き合う人が多い。こんな付き合いの何が楽しいのか、自分自身で言っておきながら、理解に苦しむ。
剣術が得意であった私は、父の侯爵位を継ぐまでは、近衛騎士として活動することになった。そして、近衛騎士はとにかくモテる。それは、私だけではないのだが。
騎士は勤務時間が不規則な時があるので、王都に家がある令息でも、騎士団の寮をみんな借りている。その寮は、子息だけが利用しているので、そこまで警備は厳しくないのだ。その寮にみんな、遊びの関係の女性を連れ込んでいる。寝るだけの狭い部屋なので、誰も本命の恋人は連れてこないというのが、近衛騎士団だけの暗黙のルールらしい。そんな、近衛騎士団に入った私も、時々、割り切った関係の女性を連れてくることもあった。しかし、どんな美女だろうと、心は満たされなかった。ただ、発散する為だけの関係。ただそれだけ。
貴族も、昔と比べると晩婚化しているようで、以前ほど、急いで結婚とはならなくなった。しかし私も26歳。両親には30歳になっても結婚出来なければ、見合いで決めるように言われている。
今まで心惹かれる人に出会えたことは無かったし、誰と付き合っても満たされることは無かったのだから、それでいいと諦めていた。それまでは、今までのように自由に過ごそう。そう思っていた時に、彼女は現れたのだった…。
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