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南国へ国外逃亡できたよ
閑話 サミュエル 2
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新学期が始まり、しばらくして、学園の新入生歓迎のパーティーがある日。今日は王太子殿下の護衛の1人として、パーティーに行く事になっている。
パーティー会場に入った後、すぐに殿下がマリアを見つけたようだった。
「エル!マリア嬢は今日も美しいな。令息達がみんなマリア嬢を見ているぞ!」
王太子殿下がそんなことを言うから、他の護衛や従者達までマリアを見ている。気分のいいものではない。しかし、それより気になることがあった。
「マリア嬢と一緒にいる令息は誰だ?まだデビュー前か?分からないな。…手を繋いでいるようだ。いいのか兄上?」
何が兄上だ!イラつく私を殿下は揶揄っている。マリアにピッタリと付いて、まるでパートナーのように振る舞う見目の良い令息は、雰囲気や服装からして恐らく高位の貴族令息だろう。その後2人はダンスを踊っている。
マリアのダンス姿を初めて見たが、とても美しかった。完璧で優雅で、どこかの国の姫君と言ってもおかしくはない。
「エル、マリア嬢はダンスも上手いだろう?一緒に踊ると分かるが、とにかく踊りやすいんだ。」
私はまだマリアとダンスなんてした事がないのに!
その時に見てしまった。何だ?あの令息は、微笑んだマリアに顔を赤くしている。
「エル!その殺気を何とかしろ。恐らくマリア嬢は、お前の殺気に気付いたぞ!可愛い義妹を怖がらせてどうするんだよ。困った兄上だな。」
「殿下!兄上、兄上って、さっきから煩いですよ!」
「エル、あの令息はマリア嬢から離れる気配がないぞ。よし、私が何とかしてやるからな。待ってろ、兄上!」
殿下はそう言うと、スッと歩き出してマリアの所へ行く。そして………、ダンスに誘っていた。
殿下がマリアとダンスがしたかっただけじゃないのか?本当にイライラする。
帰ったら、マリアには令息に気をつけるように、また注意しないといけないな。
後日、マリアは王女殿下に会うために王宮に招待されていた。殿下もマリアが目立つようなことをさせるのは止めてほしい。
王女殿下の友人としてマリアを紹介したかったようだが、脚の不自由な王女殿下を見て、マリアが何かを勘違いしたようだ。急遽、治癒魔法で治療することになる。長年、王家で悩んでいた王女殿下の脚をマリアはあっさり治してしまった。そこまで凄い治癒魔法が出来るなんて…。
国王陛下も王妃殿下も、みんな喜んでいた。王女なのに、脚が不自由でカーテシーも、ダンスも上手く出来ないことをずっと心配していたようだし、嫁ぎ先も、その不自由な脚のせいでどうなるかと不安に思っていたらしいから。
マリアは公にしないで欲しいと殿下に話したようだが…。それがまた謙虚だと、陛下と王妃殿下から評価されていた。あまり、評価を上げることをしないで欲しい。こんなに凄いマリアが、自分から離れて行ってしまうのではと不安になる。
陛下や殿下とマリアの魔法は凄いから、危険人物が近づかないようにしないといけないと話をしていると、近衛騎士が私を呼びに来る。
「コリンズ卿、妹君が気分が悪くなってしまったようです。今すぐコリンズ卿を呼んで欲しいと言っています。」
「エル!さっき強い治癒魔法を使ったから、気分が悪くなったのかもしれない。すぐに行った方がいい。私もついて行く!」
心配になり、急いでマリアがいる所へ。すると顔色を悪くしたマリアがいた。大丈夫か?魔力切れは時に命に関わるから、早く休んだ方がいい。しかし、マリアは驚くことを口にする。恋人のマーフィー卿が裏庭にいると…。
人気のない裏庭は、近衛の中では不貞行為をする場所という認識の場所だ。まさかマーフィー卿が!
「お兄様、私が潔く身を引けるように、現行犯で押さえたいのです。一緒に来てくれませんか?」
何てことを…。マーフィー卿の為にこの国に来たマリアが身を引くなんて、心が痛む。しかし、私を頼りにしてくれるなら。可愛い妹の為に、盾にでも剣にでもなろう。
王太子殿下も一緒に来てくれると言ってくれ、現場に向かうと酷いものを見せられた。私達に見られた事を知ったマーフィー卿は、慌ててマリアに謝っていたが、マリアは迷わずに別れをつげ、マリアを大切な友人として扱ってくれていた殿下は、マーフィー卿と、不貞相手のアバズレ女の行為を叱責してくれた。
マリアは涙を流していた。私はそんなマリアを大切にして、守りたいと思った。
邸に帰った後、今日の出来事を両親に報告する。王宮で王女殿下の脚を治癒魔法で治して、王家から感謝されたこと。しかし、その後にマーフィー卿の不貞行為を見てしまい、その場で別れを告げて帰って来たこと。その場には私と殿下と、近衛騎士がいて、殿下がマーフィー卿を叱責してくれたこと。
父上は表情を無くして無表情になっていた。これは相当怒っている時の顔だ。
父上は、美しくて聡明なマリアをとても可愛がっていた。本当は娘も欲しかったらしいが、残念ながら、男1人、私しか子供に恵まれなかった。そんな時にマリアが養女でやって来て、理想の娘ができて嬉しいとか言っていたくらいだ。
そんな父上が母上と一緒になって、マリアのドレスのデザインを考えていたことを私は知っている。デザインに凝り過ぎて、ドレスが高額になり過ぎても気にせず、マリアにピッタリのドレスを作るのに予算は関係ないと言い張っていたことも。全て、家令が教えてくれた事だ。
母上は震えている。ああ、怒りを通り越して、もうすぐ涙を流すな。
「…何ですって?結婚するからと、わざわざ他国に連れて来ておいて不貞ですって?そしてマリアは、そんな2人に幸せになって欲しいと身を引いた?…オスカー殿なんてもういいわ!マリアはうちの可愛い娘よ。これからもずっとうちで幸せに暮らしていけばいいわ。…うっ、うっ。あなたもそう思うでしょ?」
「その通りだ。うちの娘にこんな仕打ちをしたオスカー殿は許さないし、マリアのことを家族みんなで守っていこう。それに…、治癒魔法がそこまで得意なマリアは、誰に狙われるか分からないから、気をつけた方がいい。特にオスカー殿と別れたと知ったら、更に縁談や茶会の誘いが増えるだろうからな。しかし……、エル、良かったな。振り向いてもらえるように頑張りなさい。」
「…は?何を言っているのです?」
「エルは、マリアが好きよね?いつもマリアを目で追っているじゃないの。マリアは可哀想だったけど、エルにとっては良かったわね。ボケーっとしていると、誰かにすぐに奪われるわよ。ハッキリ言って、オスカー殿に拘らなくても、マリアなら他にもいい出会いは沢山あるでしょうからね。」
「マリアは可愛い妹です!」
「ふーん。後悔しないようにしなさいね。」
両親は何か勘違いをしているようだったが、家族でマリアを守っていこうという話でまとまった。
しばらくして、マーフィー卿の婚約パーティーがある。
当日、ドレスアップしたマリアはとにかく美しくて、誰にも見せたくないと思ってしまった。他にも美しい令嬢は沢山いるだろうが、マリアはレベルが違うと思う。父上と母上は、そんなマリアを見て喜んでいた。…喜び過ぎだろう。
しかし、どうしてエスコートするのは私ではなくて、マリアの友人の令息なのか。
「エル!ベイリー公爵子息からマリアをパーティーでエスコートしたいと正式に申し込みがあったの。マリアも友人として仲良くしているから、引き受けていいと言っていてね、エスコートをお願いすることにしたのよ。マーフィー侯爵家よりも上の家門の、ベイリー公爵家の子息のエスコートなら、パーティーで肩身の狭い思いをしないからいいと思うわ。……エル?その不機嫌な顔はやめてね。マリアは可愛い妹なのでしょう?……ふふっ。ボケーっとしていると、誰かにすぐに奪われると言ったわよね?こういうことを言ったのよ。分かったなら、自分の身の振りを考えて行動しなさいね。」
チクリと心が痛むような気がした。
パーティー会場に入った後、すぐに殿下がマリアを見つけたようだった。
「エル!マリア嬢は今日も美しいな。令息達がみんなマリア嬢を見ているぞ!」
王太子殿下がそんなことを言うから、他の護衛や従者達までマリアを見ている。気分のいいものではない。しかし、それより気になることがあった。
「マリア嬢と一緒にいる令息は誰だ?まだデビュー前か?分からないな。…手を繋いでいるようだ。いいのか兄上?」
何が兄上だ!イラつく私を殿下は揶揄っている。マリアにピッタリと付いて、まるでパートナーのように振る舞う見目の良い令息は、雰囲気や服装からして恐らく高位の貴族令息だろう。その後2人はダンスを踊っている。
マリアのダンス姿を初めて見たが、とても美しかった。完璧で優雅で、どこかの国の姫君と言ってもおかしくはない。
「エル、マリア嬢はダンスも上手いだろう?一緒に踊ると分かるが、とにかく踊りやすいんだ。」
私はまだマリアとダンスなんてした事がないのに!
その時に見てしまった。何だ?あの令息は、微笑んだマリアに顔を赤くしている。
「エル!その殺気を何とかしろ。恐らくマリア嬢は、お前の殺気に気付いたぞ!可愛い義妹を怖がらせてどうするんだよ。困った兄上だな。」
「殿下!兄上、兄上って、さっきから煩いですよ!」
「エル、あの令息はマリア嬢から離れる気配がないぞ。よし、私が何とかしてやるからな。待ってろ、兄上!」
殿下はそう言うと、スッと歩き出してマリアの所へ行く。そして………、ダンスに誘っていた。
殿下がマリアとダンスがしたかっただけじゃないのか?本当にイライラする。
帰ったら、マリアには令息に気をつけるように、また注意しないといけないな。
後日、マリアは王女殿下に会うために王宮に招待されていた。殿下もマリアが目立つようなことをさせるのは止めてほしい。
王女殿下の友人としてマリアを紹介したかったようだが、脚の不自由な王女殿下を見て、マリアが何かを勘違いしたようだ。急遽、治癒魔法で治療することになる。長年、王家で悩んでいた王女殿下の脚をマリアはあっさり治してしまった。そこまで凄い治癒魔法が出来るなんて…。
国王陛下も王妃殿下も、みんな喜んでいた。王女なのに、脚が不自由でカーテシーも、ダンスも上手く出来ないことをずっと心配していたようだし、嫁ぎ先も、その不自由な脚のせいでどうなるかと不安に思っていたらしいから。
マリアは公にしないで欲しいと殿下に話したようだが…。それがまた謙虚だと、陛下と王妃殿下から評価されていた。あまり、評価を上げることをしないで欲しい。こんなに凄いマリアが、自分から離れて行ってしまうのではと不安になる。
陛下や殿下とマリアの魔法は凄いから、危険人物が近づかないようにしないといけないと話をしていると、近衛騎士が私を呼びに来る。
「コリンズ卿、妹君が気分が悪くなってしまったようです。今すぐコリンズ卿を呼んで欲しいと言っています。」
「エル!さっき強い治癒魔法を使ったから、気分が悪くなったのかもしれない。すぐに行った方がいい。私もついて行く!」
心配になり、急いでマリアがいる所へ。すると顔色を悪くしたマリアがいた。大丈夫か?魔力切れは時に命に関わるから、早く休んだ方がいい。しかし、マリアは驚くことを口にする。恋人のマーフィー卿が裏庭にいると…。
人気のない裏庭は、近衛の中では不貞行為をする場所という認識の場所だ。まさかマーフィー卿が!
「お兄様、私が潔く身を引けるように、現行犯で押さえたいのです。一緒に来てくれませんか?」
何てことを…。マーフィー卿の為にこの国に来たマリアが身を引くなんて、心が痛む。しかし、私を頼りにしてくれるなら。可愛い妹の為に、盾にでも剣にでもなろう。
王太子殿下も一緒に来てくれると言ってくれ、現場に向かうと酷いものを見せられた。私達に見られた事を知ったマーフィー卿は、慌ててマリアに謝っていたが、マリアは迷わずに別れをつげ、マリアを大切な友人として扱ってくれていた殿下は、マーフィー卿と、不貞相手のアバズレ女の行為を叱責してくれた。
マリアは涙を流していた。私はそんなマリアを大切にして、守りたいと思った。
邸に帰った後、今日の出来事を両親に報告する。王宮で王女殿下の脚を治癒魔法で治して、王家から感謝されたこと。しかし、その後にマーフィー卿の不貞行為を見てしまい、その場で別れを告げて帰って来たこと。その場には私と殿下と、近衛騎士がいて、殿下がマーフィー卿を叱責してくれたこと。
父上は表情を無くして無表情になっていた。これは相当怒っている時の顔だ。
父上は、美しくて聡明なマリアをとても可愛がっていた。本当は娘も欲しかったらしいが、残念ながら、男1人、私しか子供に恵まれなかった。そんな時にマリアが養女でやって来て、理想の娘ができて嬉しいとか言っていたくらいだ。
そんな父上が母上と一緒になって、マリアのドレスのデザインを考えていたことを私は知っている。デザインに凝り過ぎて、ドレスが高額になり過ぎても気にせず、マリアにピッタリのドレスを作るのに予算は関係ないと言い張っていたことも。全て、家令が教えてくれた事だ。
母上は震えている。ああ、怒りを通り越して、もうすぐ涙を流すな。
「…何ですって?結婚するからと、わざわざ他国に連れて来ておいて不貞ですって?そしてマリアは、そんな2人に幸せになって欲しいと身を引いた?…オスカー殿なんてもういいわ!マリアはうちの可愛い娘よ。これからもずっとうちで幸せに暮らしていけばいいわ。…うっ、うっ。あなたもそう思うでしょ?」
「その通りだ。うちの娘にこんな仕打ちをしたオスカー殿は許さないし、マリアのことを家族みんなで守っていこう。それに…、治癒魔法がそこまで得意なマリアは、誰に狙われるか分からないから、気をつけた方がいい。特にオスカー殿と別れたと知ったら、更に縁談や茶会の誘いが増えるだろうからな。しかし……、エル、良かったな。振り向いてもらえるように頑張りなさい。」
「…は?何を言っているのです?」
「エルは、マリアが好きよね?いつもマリアを目で追っているじゃないの。マリアは可哀想だったけど、エルにとっては良かったわね。ボケーっとしていると、誰かにすぐに奪われるわよ。ハッキリ言って、オスカー殿に拘らなくても、マリアなら他にもいい出会いは沢山あるでしょうからね。」
「マリアは可愛い妹です!」
「ふーん。後悔しないようにしなさいね。」
両親は何か勘違いをしているようだったが、家族でマリアを守っていこうという話でまとまった。
しばらくして、マーフィー卿の婚約パーティーがある。
当日、ドレスアップしたマリアはとにかく美しくて、誰にも見せたくないと思ってしまった。他にも美しい令嬢は沢山いるだろうが、マリアはレベルが違うと思う。父上と母上は、そんなマリアを見て喜んでいた。…喜び過ぎだろう。
しかし、どうしてエスコートするのは私ではなくて、マリアの友人の令息なのか。
「エル!ベイリー公爵子息からマリアをパーティーでエスコートしたいと正式に申し込みがあったの。マリアも友人として仲良くしているから、引き受けていいと言っていてね、エスコートをお願いすることにしたのよ。マーフィー侯爵家よりも上の家門の、ベイリー公爵家の子息のエスコートなら、パーティーで肩身の狭い思いをしないからいいと思うわ。……エル?その不機嫌な顔はやめてね。マリアは可愛い妹なのでしょう?……ふふっ。ボケーっとしていると、誰かにすぐに奪われると言ったわよね?こういうことを言ったのよ。分かったなら、自分の身の振りを考えて行動しなさいね。」
チクリと心が痛むような気がした。
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