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南国へ国外逃亡できたよ
閑話 サミュエル 3
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婚約パーティーが始まると、マリアとベイリー公爵子息が仲良くダンスをしている。
「まあ!あの2人、お似合いね。」
「あのご令嬢がコリンズ伯爵令嬢?想像以上にお美しいのね。相手の子息はベイリー公爵家の子息ね。あの2人は、よく一緒に勉強をするくらい仲がいいって噂よね。」
「ほら、あの悪女のせいで、マーフィー侯爵子息とお別れしたって噂があったでしょ?それで、コリンズ伯爵令嬢と仲良くなろうとした令息が沢山いたらしいの。でも、ベイリー公爵子息やクラーク侯爵子息が付いていることが多くて、なかなか近づけないって話を聞いたわ。」
「学園のパーティーでは、いつも王太子殿下とダンスを踊るらしいわよ。とてもダンスがお上手な方よね。さっきの悪女とは大違いだわ。」
マリアの噂話が不愉快に感じた。
しかし、もっと不愉快なのは、自分の不貞行為で別れたはずのマーフィー卿が、ずっとマリアを見つめていることに気づいた時だった。そんな目で見つめる程好きなら、なぜ裏切ったのだ?しかも、あのアバズレは一方的にマリアを逆恨みして、危害を加えようとするし。この2人は、この先もずっと絶対に許さないと思った。
マリアは更に勉強に没頭し、学園を早期で卒業する。令嬢がここまでするなんて、本当に優秀らしい。
しかし後日、私に内緒で文官の試験を受けて合格したと知った私は、とにかくイライラしてしまった。あんな男ばかりの職場にマリアが行くなんて、私には考えられなかったのだ。マリアは自分がどんな存在なのかに気付いていないから、とにかく危険だし、王宮には、あのマーフィー卿も仕事で来ることがあるから、もしかしたら顔を合わせてしまうかもしれない。私はマリアに、あの男とは絶対に接触させたくなかったのだ。
しかし両親はマリアに甘く、伯爵家から王宮に通うということで、話はまとまってしまう。
不安な私は、時間が合えば、必ずマリアを所属部署まで送ることにした。殿下や同僚達には呆れられ、シスコンだとか、しつこい兄貴は嫌われるだとか言ってきたが、そんなことはないだろうと、全く気にしないことにした。
そんな時に同僚の近衛騎士から嫌な話を聞く。マリアがよく仕事で資料室に行っていると噂になっているらしいと。何だその噂?と思っていると、マリアに近づきたがっている子息の中では有名な話らしく、あのマーフィー卿も最近、資料室に行く姿を見るというのだ。
そんな話を聞いたら、マリアに直接聞いてみたくなった。
「マリア!王宮でマーフィー卿に、絡まれてるんだって?」
すると、偶然会っただけだと言うマリア。あの男が偶然を装っているだけだろう。マリアは考えが甘い。
マリアはあの男とは会いたくはないし、話したくもないと言う。しかし、向こうから勝手に来るし、冷たく対応はしていると。それなのに、ただ甘いとか、気を付けろとか言われるのも辛いと。
私はただ心配なだけなのに、珍しくマリアが反抗的だったことに、カチンときてしまい、言ってはいけない言葉を口にしてしまった。
「こんなことがあるから、文官で働くことには反対だったんだ!辞めてしまえ。」
マリアは、悲しそうな、軽蔑するような目で私を見ていた…。
その日から、マリアは私と目を合わせてくれなくなった。挨拶や必要最低限の会話の時は私を見てくれるが、それだけだった。部屋にお茶やお菓子を持って行っても、『今はお腹が空いていませんので、お気持ちだけ頂きます。ありがとうございます。』と義務的にお礼を言うだけ。一緒に馬車に乗っていても、窓の外を見て、私の方は全く見ない。
私はマリアに嫌われてしまったようだ…。
長い付き合いである殿下は、私がいつもと違う事に気付いたようだった。
「エル。最近は元気がないけど、ついにマリア嬢に嫌われたのか?」
思わず、手に持っていた書類をバサバサっと落としてしまった。
「…えっ!当たったのか?どうせ口煩くして、嫌われたんだろう。」
「………。」
「…やっぱりな。可愛いのはわかるけど、マリア嬢に近づこうとする令息に対して、兄としてではなく、エルは男として嫉妬していたよな。マリア嬢はモテるだろうから、色々な令息が近づいてくるのはしょうがないだろう?どうせ、それをグチグチ口煩く言って、マリア嬢に嫌われたんだろう。だけど、いくらマリア嬢に注意しても、勝手に寄ってくるのは令息の方なんだから、マリア嬢にだけ煩く言っても無駄だし、言われている方は嫌になるぞ。」
「…口煩いのは認めますが、マリアにあのマーフィー卿が近づいていると聞いて、考えが甘いと注意しただけですよ。」
「ああ、マーフィー卿か!マリア嬢に未練がありそうだから、心配だよな。」
「殿下もそう思いますよね?王宮で働くとマーフィー卿と顔を合わせてしまうのが嫌だったので、私はマリアに文官にはなって欲しくなかったのです。それなのに、私が心配していることも知らず、会いたくないし、話もしたくないし、冷たくしても勝手に向こうから来るのに、甘いとか注意しろとか言われるのが辛いとマリアが言うので、こんなことがあるなら文官なんて辞めてしまえと言ってしまったのですが…。」
「マリア嬢に関しては秘密主義のエルが、そこまで私達に打ち明けるなんて……、よっぽど悩んでるな。」
「ちょっと待って下さい。さっきから2人の会話を聞かせてもらっていましたが、コリンズ卿はマリア嬢に『文官なんて辞めてしまえ』と言ったのですか?」
最近、殿下の側近として働き出した、マリアの友人のベイリー公爵子息が口を挟んで来た。
「…ああ。言ってしまった。」
「…失望しました。マリア嬢がどんな気持ちで文官になったのか全く分かってないのですね。マリア嬢は、マーフィー卿と別れた後に『早く自立したい。1人で生きていけるようになりたい。』って言って勉強していたんです。恐らく、マーフィー卿と結婚する為にこの国に来て、コリンズ伯爵家に養女として入ったのに、それがなくなってしまったから、伯爵家を出ようと考えていたのではないですか?マリア嬢は、他の令嬢みたいに高位の貴族令息を捕まえて、結婚して、ラクに生きたいって考えはなくて、自分で努力して頑張りたいって考えの令嬢ですよね?せっかく努力して文官になったのに、辞めてしまえだなんて…。そんな酷いことを、よく言えますね。」
「……そうか。1人で生きていけるようになりたいと言っていたのか。…そう言えば、文官の寮で生活をしたいと言っていた。…うちを出るつもりだったのだろうな。結局、うちの両親が反対して、その話は無くなったが。」
「エル、黙って見守ることも大切だ。エルは、しつこい令嬢がきっかけで女嫌いになっただろ?マリア嬢だって、しつこくて口煩い義兄のせいで、お兄様嫌いになってしまったらどうする?気をつけろ!そして、明後日には、隣国に旅立つのだから、その前に仲直りできるようにしろ。1ヶ月は会えなくなるぞ。」
殿下とベイリー公爵子息にダメ出しをされ、更にショックを受ける。しかし、マリアに謝ろうと思っても、何と声を掛けていいのか分からない。相変わらずマリアは、私に素っ気なく、目も合わせてくれないのだ。
しかし、明日は隣国に出発することは言わなければならない。私が不在だと知って、マリアに近づく令息は沢山いるだろうから。いや、本当は謝るのが先なのだろうが…。
思い切って、帰りの馬車の中で明日から隣国に行くことと、私がいない間も気を付けて欲しいことを伝えてみた。すると、マリアは一瞬何かを考え込んだ後に、自分の腕から赤い宝石の付いたブレスレットを取って、私に渡してくれる。この赤い宝石は、魔石か?
マリアはこの魔石は、魔物討伐で手に入れて、マリアの治癒魔法と保護魔法の力が込められた物であると言う。それをお守りとしてくれると言うのだ。
今までの人生で1番嬉しいプレゼントだと思った。
「まあ!あの2人、お似合いね。」
「あのご令嬢がコリンズ伯爵令嬢?想像以上にお美しいのね。相手の子息はベイリー公爵家の子息ね。あの2人は、よく一緒に勉強をするくらい仲がいいって噂よね。」
「ほら、あの悪女のせいで、マーフィー侯爵子息とお別れしたって噂があったでしょ?それで、コリンズ伯爵令嬢と仲良くなろうとした令息が沢山いたらしいの。でも、ベイリー公爵子息やクラーク侯爵子息が付いていることが多くて、なかなか近づけないって話を聞いたわ。」
「学園のパーティーでは、いつも王太子殿下とダンスを踊るらしいわよ。とてもダンスがお上手な方よね。さっきの悪女とは大違いだわ。」
マリアの噂話が不愉快に感じた。
しかし、もっと不愉快なのは、自分の不貞行為で別れたはずのマーフィー卿が、ずっとマリアを見つめていることに気づいた時だった。そんな目で見つめる程好きなら、なぜ裏切ったのだ?しかも、あのアバズレは一方的にマリアを逆恨みして、危害を加えようとするし。この2人は、この先もずっと絶対に許さないと思った。
マリアは更に勉強に没頭し、学園を早期で卒業する。令嬢がここまでするなんて、本当に優秀らしい。
しかし後日、私に内緒で文官の試験を受けて合格したと知った私は、とにかくイライラしてしまった。あんな男ばかりの職場にマリアが行くなんて、私には考えられなかったのだ。マリアは自分がどんな存在なのかに気付いていないから、とにかく危険だし、王宮には、あのマーフィー卿も仕事で来ることがあるから、もしかしたら顔を合わせてしまうかもしれない。私はマリアに、あの男とは絶対に接触させたくなかったのだ。
しかし両親はマリアに甘く、伯爵家から王宮に通うということで、話はまとまってしまう。
不安な私は、時間が合えば、必ずマリアを所属部署まで送ることにした。殿下や同僚達には呆れられ、シスコンだとか、しつこい兄貴は嫌われるだとか言ってきたが、そんなことはないだろうと、全く気にしないことにした。
そんな時に同僚の近衛騎士から嫌な話を聞く。マリアがよく仕事で資料室に行っていると噂になっているらしいと。何だその噂?と思っていると、マリアに近づきたがっている子息の中では有名な話らしく、あのマーフィー卿も最近、資料室に行く姿を見るというのだ。
そんな話を聞いたら、マリアに直接聞いてみたくなった。
「マリア!王宮でマーフィー卿に、絡まれてるんだって?」
すると、偶然会っただけだと言うマリア。あの男が偶然を装っているだけだろう。マリアは考えが甘い。
マリアはあの男とは会いたくはないし、話したくもないと言う。しかし、向こうから勝手に来るし、冷たく対応はしていると。それなのに、ただ甘いとか、気を付けろとか言われるのも辛いと。
私はただ心配なだけなのに、珍しくマリアが反抗的だったことに、カチンときてしまい、言ってはいけない言葉を口にしてしまった。
「こんなことがあるから、文官で働くことには反対だったんだ!辞めてしまえ。」
マリアは、悲しそうな、軽蔑するような目で私を見ていた…。
その日から、マリアは私と目を合わせてくれなくなった。挨拶や必要最低限の会話の時は私を見てくれるが、それだけだった。部屋にお茶やお菓子を持って行っても、『今はお腹が空いていませんので、お気持ちだけ頂きます。ありがとうございます。』と義務的にお礼を言うだけ。一緒に馬車に乗っていても、窓の外を見て、私の方は全く見ない。
私はマリアに嫌われてしまったようだ…。
長い付き合いである殿下は、私がいつもと違う事に気付いたようだった。
「エル。最近は元気がないけど、ついにマリア嬢に嫌われたのか?」
思わず、手に持っていた書類をバサバサっと落としてしまった。
「…えっ!当たったのか?どうせ口煩くして、嫌われたんだろう。」
「………。」
「…やっぱりな。可愛いのはわかるけど、マリア嬢に近づこうとする令息に対して、兄としてではなく、エルは男として嫉妬していたよな。マリア嬢はモテるだろうから、色々な令息が近づいてくるのはしょうがないだろう?どうせ、それをグチグチ口煩く言って、マリア嬢に嫌われたんだろう。だけど、いくらマリア嬢に注意しても、勝手に寄ってくるのは令息の方なんだから、マリア嬢にだけ煩く言っても無駄だし、言われている方は嫌になるぞ。」
「…口煩いのは認めますが、マリアにあのマーフィー卿が近づいていると聞いて、考えが甘いと注意しただけですよ。」
「ああ、マーフィー卿か!マリア嬢に未練がありそうだから、心配だよな。」
「殿下もそう思いますよね?王宮で働くとマーフィー卿と顔を合わせてしまうのが嫌だったので、私はマリアに文官にはなって欲しくなかったのです。それなのに、私が心配していることも知らず、会いたくないし、話もしたくないし、冷たくしても勝手に向こうから来るのに、甘いとか注意しろとか言われるのが辛いとマリアが言うので、こんなことがあるなら文官なんて辞めてしまえと言ってしまったのですが…。」
「マリア嬢に関しては秘密主義のエルが、そこまで私達に打ち明けるなんて……、よっぽど悩んでるな。」
「ちょっと待って下さい。さっきから2人の会話を聞かせてもらっていましたが、コリンズ卿はマリア嬢に『文官なんて辞めてしまえ』と言ったのですか?」
最近、殿下の側近として働き出した、マリアの友人のベイリー公爵子息が口を挟んで来た。
「…ああ。言ってしまった。」
「…失望しました。マリア嬢がどんな気持ちで文官になったのか全く分かってないのですね。マリア嬢は、マーフィー卿と別れた後に『早く自立したい。1人で生きていけるようになりたい。』って言って勉強していたんです。恐らく、マーフィー卿と結婚する為にこの国に来て、コリンズ伯爵家に養女として入ったのに、それがなくなってしまったから、伯爵家を出ようと考えていたのではないですか?マリア嬢は、他の令嬢みたいに高位の貴族令息を捕まえて、結婚して、ラクに生きたいって考えはなくて、自分で努力して頑張りたいって考えの令嬢ですよね?せっかく努力して文官になったのに、辞めてしまえだなんて…。そんな酷いことを、よく言えますね。」
「……そうか。1人で生きていけるようになりたいと言っていたのか。…そう言えば、文官の寮で生活をしたいと言っていた。…うちを出るつもりだったのだろうな。結局、うちの両親が反対して、その話は無くなったが。」
「エル、黙って見守ることも大切だ。エルは、しつこい令嬢がきっかけで女嫌いになっただろ?マリア嬢だって、しつこくて口煩い義兄のせいで、お兄様嫌いになってしまったらどうする?気をつけろ!そして、明後日には、隣国に旅立つのだから、その前に仲直りできるようにしろ。1ヶ月は会えなくなるぞ。」
殿下とベイリー公爵子息にダメ出しをされ、更にショックを受ける。しかし、マリアに謝ろうと思っても、何と声を掛けていいのか分からない。相変わらずマリアは、私に素っ気なく、目も合わせてくれないのだ。
しかし、明日は隣国に出発することは言わなければならない。私が不在だと知って、マリアに近づく令息は沢山いるだろうから。いや、本当は謝るのが先なのだろうが…。
思い切って、帰りの馬車の中で明日から隣国に行くことと、私がいない間も気を付けて欲しいことを伝えてみた。すると、マリアは一瞬何かを考え込んだ後に、自分の腕から赤い宝石の付いたブレスレットを取って、私に渡してくれる。この赤い宝石は、魔石か?
マリアはこの魔石は、魔物討伐で手に入れて、マリアの治癒魔法と保護魔法の力が込められた物であると言う。それをお守りとしてくれると言うのだ。
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