元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
153 / 161
南国へ国外逃亡できたよ

閑話 ガザフィー男爵令嬢 4

しおりを挟む
 その後のダンスは最悪だった。一曲踊るだけとは聞いていたけど、私達2人だけでみんなの前で踊るなんて知らなかった。元々、得意ではなかったが、緊張して更に酷いダンスになってしまった。何度もオスカー様の足を踏んでしまったが、何も言ってくれない無表情のオスカー様が怖かった。誰から見ても、オスカー様からは愛されてない婚約者だとバレてしまっただろう。

 その後、ダンスパーティーが始まり、ゲスト達もダンスを踊る。すると、噂話をする夫人達の声が聞こえてくる。

『宰相子息とコリンズ伯爵令嬢のダンス、素敵ですわね。』

『本当ね。優雅で品があって、2人とも美しいから、主役みたいね。』

『学園では、2人でよく勉強をなさっているとか!』

『私も聞きましたわ。2人で首席争いをする程、優秀らしいわよ。』

『まあ!お似合いね。』

『媚薬を使ってまで、釣り合いのとれない殿方を陥れるような悪女とは大違いですわ。』

『ふふっ。あの悪女の話ですわね。学生時代から、友人の恋人に手を出すような方だったらしいですわよ。違うことに一生懸命で、ダンスやマナーの勉強はしてこなかったみたいですわね。さっきも、すごいダンスでしたものね。』

 …私の噂をしているの?媚薬って何?

 クスクスと私を見て冷ややかに笑う夫人達。他のグループの夫人達も私を見て、何かを喋っているような気がする。

 侯爵夫人に、ただ立ってないで、ゲストの挨拶回りをして来なさいと言われた私。挨拶に行っても、好意的に私を見てくれる人はいなかった。本当は、オスカー様と2人で行った方がいいのだろうが、オスカー様は私と一緒にいるのを嫌がり、1人で行ってしまったのだ。しかし、あのコリンズ伯爵令嬢の所には、絶対にオスカー様と一緒じゃないと行けないわ。そう思った私は、オスカー様が他のゲストと話し終えるタイミングで、オスカー様の腕に自分の腕を強引に絡めて、コリンズ伯爵令嬢の所に連れて行った。挨拶に行きましょうと言って。オスカー様は無言で表情がなくなっていた。

 そこまでして挨拶に行ったのに、コリンズ伯爵令嬢は、全く気にしていないようであった。一緒にいたベイリー公爵令息は、そんな私を馬鹿にしていた。
 何なのよ!どうしてアンタはそんなに楽しそうなのよ!私は自分が上手く行かないことに対しての怒りを、彼女にぶつけてしまった。八つ当たりだと思う。
 気づくと、近くの飲み物をコリンズ伯爵令嬢にかけてしまていた。しかし……、保護魔法で飲み物は、私に跳ね返ってかかってしまった。高度な保護魔法を、彼女は使いこなしているなんて知らなかった。

 そこからは地獄だった。オスカー様には、今にも殺されそうな目で見られ、彼女の義兄のコリンズ卿には、みんなの前で悪女とか、アバズレ呼ばわりされ…、気付くとオスカー様に控室に連れて行かれていた。

『次にリアにあんな態度をとったら、この家から追い出す。ついでに実家の男爵家も潰すからな。分かったらこの部屋から出てくるな。お前の顔を見ているだけで、私は気分が悪くなって狂いそうだ!ああ、そういえば…、お前の家族は嫌な噂を聞いたらしくて、顔色を悪くしていたぞ。コリンズ伯爵家は男爵家の取引先らしいからな。家族を不幸にしたくないなら、考えて行動することだな。』

 これ以上にないほど、冷たい表情だった。

 嫌な噂って何なのよ?噂を教えてくれたり、噂話を払拭してくれそうな友人は、私にはいないのに。

 望んだ婚約だったはずなのに、なんて不幸な婚約パーティーなんだろう。

 全てが嫌になる……。


 今更だけど、コリンズ伯爵令嬢は、本当にオスカー様を愛していたのだろうか?恋人って言っても、オスカー様だけが彼女を愛していただけの関係?
 私がいくら彼女を煽っても、全く余裕そうだし、気にもしていない。

 後日、茶会で会った時に、私に感謝しているって言ってたけど、何なの?
 私1人だけが彼女を意識して、馬鹿みたい…。
 
 しかし私には、更なる不幸がこの後に待っていたのである。

 私の知らない所で、侯爵家を陥れた悪女と噂され、実家の男爵家が沢山の取引先を失い、嘲笑われ、兄が婚約間近の恋人に捨てられていたことを知ったのは、生まれてきた赤ちゃんが、オスカー様の子供ではなかったことが発覚して、離縁された後だった。

 今更だけど、彼は本当に避妊薬を服用していたのだろう。だからお腹の赤ちゃんが、自分の子供ではないと知っていたに違いない。私が王太子殿下に余計な事を話したばかりに、後に引けないから、一応結婚という形にしたんだろう。
 ははっ!何も知らずに、子供が生まれれば彼も変わってくれるなんて、甘い期待をしていた私がバカみたい!

 オスカー様も、彼のお母様の侯爵夫人も、陣痛で苦しんでいても、産後に疲れてボロボロになっていても、全く見舞ってくれることはなかった。生まれた赤ちゃんの顔を見に来ることも、抱っこしてくれることもなく、出産後に初めて顔を合わせたのは、神殿の神官が侯爵家に来た時であった。
 赤ちゃんを抱っこして、神官がいる部屋に案内された私。私には何の説明もなく、ただ赤ちゃんとオスカー様が手を水晶にかざしている姿を見ていた。水晶が全く違う2色の光を放つ。

「…残念ですが、親子関係は認められません。」

 神官は気不味そうにそう伝えて、帰っていった。

 オスカー様も、侯爵夫人も納得していたように見えた。2人は一言も私に話しかけることもせずに、部屋を出て行ってしまった。文句一つ言う価値のない人間って事だろう。
 そこにメイド長がやってくる。

「ガザフィー男爵家にお送り致します。私物は後日お届け致しますので、このままお帰り下さい。」

 実家に到着すると、何も知らされてない両親は赤ちゃんを見て、可愛いだとか言って喜んでいた。産後に里帰りしたと思ったようだった。

「レーネ!色々と酷い噂に苦しめられて、大変かも知れないが、こんなに可愛い跡取りを産んだんだ。きっと侯爵家ではレーネを認めてくれるだろう。もう大丈夫だ!」

 父のその言葉に、今更だが心が痛んだ。しかし、その後に、御者から渡された手紙を読んだ父の顔は恐ろしかった。


 侯爵家に多額の慰謝料を請求されて、男爵家は傾きかけていた。家族にはゴミを見るような目で見られ、実家にも居場所がない私は、修道院に行くことになった。
 少しの荷物と、誰の子か分からない赤ちゃんを連れて…。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

行動あるのみです!

恋愛
※一部タイトル修正しました。 シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。 自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。 これが実は勘違いだと、シェリは知らない。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

赤貧令嬢の借金返済契約

夏菜しの
恋愛
 大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。  いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。  クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。  王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。  彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。  それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。  赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

処理中です...