元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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南国へ国外逃亡できたよ

閑話 ガザフィー男爵令嬢 3

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 侯爵家の婚約パーティーにて。

 パーティーホールの入り口で、招待客を迎える私達3人。オスカー様のお母様の侯爵夫人が言われたように、来る方はみんな上位の貴族ばかりだった。豪華な馬車で乗り付け、上品で高貴な雰囲気の方ばかり。侯爵夫人は仲のいい友人が沢山いるようで、楽しそうに会話をしている。
 しかし、気付いてしまった。侯爵夫人の友人達は、私のことを冷ややかな目で見ていたことに。笑顔に見えるようで、目が全く笑ってないのだ。
 招待客が途切れた時だった。侯爵夫人は無表情で私を見て、

『貴女、カーテシーも出来ないのかしら?』

 どのゲストの方も、身分が高い方ばかりだったので、丁寧にカーテシーをしたつもりだった。しかし、

『期待はしていなかったけど、ここまでとはね。話にならないわ。一体、学生時代は何を学んで来たのかしら?いくら男爵家の出身といっても、学園でマナーは習ってきたはずよね?これ以上、私達に恥をかかせないでちょうだい。この後、しっかりやってね!』

 頑張っているのに。どうして認めてくれないのかしら。オスカー様は私を庇う事なく、無表情だった。それがまたつらかった。

 そんな時に、私の家族が来た。他の招待客とは全く違う装いで。娘のお祝いの日なので、気合いを入れてきたのだろうが、無駄にギラギラしたような衣装で、あまり品位を感じなかった。母は、派手なドレスを着て明らかに浮いていた。それでも、私の婚約パーティーを純粋に喜んでくれているようで、両親も兄達も機嫌が良さそうだった。心配をかけたくない私は、精一杯、笑顔をつくって出迎えた。
 家族がその場を去った後だった。

『貴女のお母様、元平民って言っていたわね。そのようなお母様に、貴族のマナーを求めるのは無理な話ね。はあー、貴女のドレスも凄いけど、貴女のお母様も流石ね。』

 涙が出てきそうなのを、必死に堪えた。次のゲストが来るから、泣くわけにはいかない。

 オスカー様の元恋人の家のコリンズ伯爵家が来たようだ。侯爵夫人の従姉妹の家のようで、とにかく仲が良さそうだった。しかし、あの恋人だった令嬢がいない。…ショックで来れなかったのかもしれないわね。でも良かった。こんな最悪の気分なのに、あの令嬢の顔は見たくない。

 『…マリアは来ないのかしら?』と侯爵夫人が伯爵夫人に尋ねている。ふん!マリアって呼び捨てに呼ぶくらい仲が良かったのね。私のことは名前すら呼んでくれないのに。

『マリアは後で来ますわ。姉様が素敵なドレスを、マリアに贈ってくれたでしょ?マリアにとても似合っていたから、楽しみ待っていて下さいね。』

 侯爵夫人に贈られたドレスを着て、後で来るの?どうして?また最悪の気分になった。そんな私を、無言のコリンズ卿は睨みつけて去っていった。
 
 そして、豪華な馬車が到着する。中からは品の良さそうな、美形の令息が降りて来た。令息は、馬車から降りてきた令嬢をエスコートしてやって来る。その令嬢は……、美しいプラチナブロンドに、綺麗な水色の瞳。品の良いラベンダー色のドレスを着ていて、花の妖精のような美少女。…オスカー様の元恋人だった。

『まあ!マリア、よく来てくれたわね。ドレスも素敵だわ。貴女に良く似合っているわね。とっても綺麗よ。』

 私には見せたことのない笑顔で、コリンズ伯爵令嬢を迎える侯爵夫人。どうして?私の方が大切にされるべきじゃない。

『伯母様、今日はお招きありがとうございます。そして、素敵なドレスをありがとうございました。とても嬉しかったですわ。』

 彼女のカーテシーは、お手本のように綺麗だった。オスカー様と別れて、つらい日々を送っているのかと思っていたのに、彼女はそうは感じさせないような眩しい笑顔だった。…何でそんなに綺麗なの?今日は私が主役のはずなのに。
 次期侯爵のオスカー様を略奪されたんだから、少しは悔しがりなさいよ!

 侯爵夫人は彼女をエスコートして来た、令息に興味を持ったようだった。彼は綺麗な所作でお辞儀をする。

『カーティス・ベイリーと申します。マリア嬢とは、いつも一緒に勉強させて頂いております。本日は招待して頂き、ありがとうございます。』

『まあ、ベイリー公爵家の!宰相様の子息ね!よく来て下さったわ。楽しんでらしてね。』

 コリンズ卿や王太子殿下だけじゃなくて、公爵家の子息まで仲がいいなんて…。
 隣のオスカー様は、言葉を失っていた。そんな、つらそうな顔で彼女を見つめないでよ。
 2人は仲良く会話をしながら会場の中に入っていった。

『マリアは、今日も可愛いかったわね。…オスカー、前に言ったでしょ?マリアは可愛いから、しっかり捕まえておきなさいと!まさか宰相子息と仲良くなっているなんてね。さすがマリアだわ。』

『…はい。後悔しています。』

 侯爵夫人の言葉に、私のプライドはズタズタにされた…。


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