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3.帝政エリクシア偵察録
27.ボウエキ?!
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僕はその後、西領の大きなルキウス教の教会を巡り、アレキサンドリア討伐軍の部隊規模や、食料の輸送などの状況を確認していました。
既に12月に入り、想定される開戦まで一ヶ月余りとなっています。西領では食料の調達も難しいため、度々北領へと出向いていた僕とアレキでしたが、久しぶりに戻ってきた西領の町の一角に、大量のマネキンが捨ててある事に気が付きます。
「なぜマネキンが?」
そう思ったのもつかの間、ここは21世紀の地球では無い事を思い出します。町の上空でそのマネキンの正体を確認した僕は、狭い機内の中で嘔吐しそうになり、慌てて口を押さえます。
そう、搭載されたカメラによる拡大されたそれを、僕は直視してしまったのです。
あるものは、白い膜が張った様な目、手足に広がる黒色の痣をもち、既に死後数日経っていると見えて、壊死した手足を持っているもの。
別なものは、脇の下などのリンパ節を拳大まで肥大させたものなどの、人間の死体だったのです。それが街路の一角に、うず高く積まれていたのです。
そして、それらの死肉を漁り、蠢くネズミやゴキブリなどの姿に、僕の胃が悲鳴を上げているのを感じます。
機体の安定が崩れ、アレキがギニャァと鳴き声をあげる中、なんとか森に墜落する事を避けて、近くの川の中州へと緊急着陸をさせました。そして、人目を気にした隠蔽魔法などをかける余力も無く、僕は操縦席から飛び出して、胃の中身を川面に開放します。
その後ぐったりしながら、なんとか現在の状況を把握し、隠蔽魔法をかけましたが、空中では見られていなかったかも知れませんが、地上ではかなり微妙です。
騒ぎになる前に機体を再浮上させて、とりあえず落ち着ける所を近くで探す事にしました。
う~、正直今日はご飯を食べる気力がありません。アレキの餌すら見たくない状況ですが、ひくつく胃をなだめながら何とかアレキへのご飯を提供します。その後、機体搭載のカメラと僕のカメラをリンクさせて、問題の動画を再確認しますが、どちらにも編集機能が付いてないのは痛いですね。再度、ネズミと可能であれば蚤の写真を押さえたい処です。
蚤の写真は、機体をギリギリまで降下させて、撮影すれば何とかなるでしょうか? 流石に望遠レンズだと焦点距離が違いすぎて、接写用にはなりませんよね。あぁ、そういえばネットで以前『望遠接写』とかの記事を見た記憶があります。いざとなれば、魔法でカメラ前面の空間を歪めてでも撮影しましょう。僕のダメージも大きくなりそうですが……
その後何とか、ネズミの写真や死体の壊死した患部や、蚤のクローズアップ写真を、搭載カメラで撮影して、僕のカメラとリンクさせます。
写真や動画を複写した後、テキストの短いコメントを追加して、写真を送信しますが、いつもならメーリングリスト機能でイリスさんだけでなく、ユイとユーリアちゃんにも送るのですが、今回はイリスさんだけにしておきましょう。
多分、今回の写真や動画に耐えられるのはイリスさんだけでしょうから。そして僕は写真を送りながら考えます。イリスさん、覚えているかなぁ~。
あぁ、送信終ったから早速画像は消去しなければね……
*****
『ピロリン』っと可愛い音が鳴り、昼食中だった私とイリスさん、ユーリアちゃんはそれぞれのスマホ型カメラを取り出しました。
久しぶりのクロエさんからの写真の送信かしらと思いましたが、私のカメラには何も入っていません。どうやら。ユーリアちゃんも同じようですね。
イリスさんの顔をみると、画面を見るなり表情が曇ります。ボタン操作をして画面を消去しています。
「ユイ、ユーリア。私悪いけど午後は早退致しますわ。担当教官への連絡をお願いできますかしら?」
私とユーリアちゃんは、イリスさんの反応に疑問をもちます。クロエさんは森猫さんの写真を送ってきてから、度々いろんな写真を送ってきてくれますが、いつだって3人同時に、同じ写真を送ってくださっていました。それが今回はイリスさんだけ……気にならないといえば嘘になりますよね。私はイリスさんに答えました。
「それは構いませんが、今の音はイリスさんのカメラへの、クロエさんからの送信があったということで合ってますか? そしてそれは私達が見てはまずいものなんでしょうか?」
イリスさんは頷いた後、答えます。
「正確には、見てまずくはないですけど、見ないほうが良いものですわ」
後は察してくれという感じですわね。
「判りました。では、すいませんけど、ユーリアちゃん。私とイリスさんの欠席連絡をお願いしますね。」
「え~、ユイも行くなら私も行きますよ。みんなで行きましょうよ」
私は困りますが、イリスさんがユーリアちゃんを宥めてくれます。
「ユーリアちゃんは次は『解除・解錠講座』でしょ。問題が一段落ついた後、『桜の迷宮』に挑むなら、しっかり受けておかないと駄目な講義よ。ユーリアちゃんの指先に、私達パーティーの生死がかかっているのですからね」
「それに、ほら」
そう言って私はユーリアちゃんの周りを、飛び回る妖精さんを指差します。
「妖精さんが貴女が迷宮を踏破することを待っているのですから」
ユーリアちゃんは私達2人の説得と、妖精さんの姿をみて諦めたのか、むくれつつも納得してくれました。
「その代わり、あとでどんな事だったかは必ず教えてくださいね」
そう言って、食事の後片付けをして、担当教官の部屋へと走っていきました。そして、イリスさんは私をみて言います。
「いいの? 多分後悔するわよ? 今なら未だ間に合いますよ」
「大丈夫ですよ。私も強くなったんですから、何時までもクロエさんやイリスさんにばかり任せるわけにはいきません」
そう言ってイリスさんに同行した、私はイリスさんの忠告通りに、後悔する事になりました……
*****
「防疫? 貿易じゃなくて?」
私は今、『アレキサンドリア中央病院』の一角にある、白家専用棟にきています。冒険者の皆様には、『生体研究・実験所』として恐れられているアレキサンドリアの負の施設だというのは、イリスさんから道中うかがいました。
そしてイリスさんの言葉に疑問を返したのは、私ではなくリリー様ですね。
「そう、防疫処理の即時実施を、委員会にかけて即実施して欲しいんですの」
リリーさんはその言葉に否定的に答えます。防疫処理というものがわからなければ、すぐに実行とは行きませんし、新たに部門を立ち上げるのなら人事や予算も関わります。私も流石に難しいんじゃと思いますが、ここでは部外者となるので黙っています。
「そもそも、防疫処理ってどんな事をするの? そして何故必要なのかを説明してね?」
リリーさんの言葉に、イリスさんも肯いて説明を始めます。
「クロエと私で、アレキサンドリア防衛線という仮想の戦術シュミレーションをしたことがあるのですけど、どちらが防衛を指揮してもアレキサンドリアが負ける事はありませんでしたわ」
イリスさんの言葉に、リリーさんも私も納得します。通常戦力だけでも負ける事は無いように思えますが、今はクロエさん関連の秘匿兵器があります。正直、反則とかチートだけどとクロエさんが笑っていたことを思い出しますね。
「一度だけ、私が防衛戦を指揮して、アレキサンドリアが壊滅した事があります。ただし、勝負は私の勝ちでしたが……」
? 負ける要素が見つかりませんが、壊滅した? でも勝ったんですよね……。私は訳が判らず、首を捻りますが、リリーさんも同様のようですね。
「そのときのクロエの使った戦術が、開戦前の伝染病の蔓延策よ。開戦60日前からの開始をクロエが提案してきて、戦闘した結果ね」
開戦前からの攻撃? しかも伝染病って、病気を蔓延させたというのですか?! 確かにそれは戦術的に有効かもしれませんが、道義的にどうかと思います。
「そして、その時クロエが使ったのがこの病気、『黒死病』よ」
その後動画と写真が、目の前の大パネルで流され、私はイリスさんに着いてきたことを心のそこから後悔しました……
私が長椅子の上でぐったりしている間に、イリスさんとリリーさんの話が進んでいきます。対策の内容としては、
・伝染病などの発生地から出港・寄港した船舶
・航海記録の確認による、船員・船客の7日以内の病死の合った船舶
上記の条件に当てはまった船舶の40日間の荷揚げ・荷降ろし及び船員・船客の乗船・下船の禁止。尚、貨物は全て殺虫処理を実施する為、生物等の荷物は事前申告する事。
また、上記措置中の船舶の乗員・船客への食事・飲料水の提供は、アレキサンドリア側の負担で行う。
というものです。
「う~ん、処置自体は賛成だけれど、荷揚げはともかく荷降ろしが出来ないのは、船主さんの事情も絡むし、貿易港としては難しい問題よ? 荷降ろしが終れば、船は別な港に言ってもいいというなら受け入れる船主さんもいるかもしれないけど」
リリーさんの言葉も最もですが、蚤やネズミを媒介として病気が広まるのであれば、布一枚とはいえ検査は必要でしょう。
そうです! ネズミや蚤を探知し死滅させることが出来れば荷物の受け入れは可能ではないでしょうか?
私がリリー様、イリスさんにその事を話すと、荷を検査装置に乗せる人の問題があるわと言われます。確かに、検査装置に乗せるひとが病気に感染しては意味がありません。
「お母様、荷物を検査台に載せる、積み下ろし専用のオートマタと、魔道具で代行できないかしら? エマやジェシーと同型のオートマタは蚤なんか寄せ付けないでしょ?」
リリー様は、確かにそれはいい手ねと言っています。ただ、荷物の一つ一つに魔法をかけるのでは、荷卸しの問題と魔法使いの確保が問題となりますね。ですが、生物の探知と蚤の撃退に限定すれば、魔法陣や呪符で代用できそうです。
イリスさんや私の意見が取り入れられ、また船員や船客の健康チェックなども含めて、アレキサンドリア港での防疫処理の議会での緊急案件として行う事が決定されました。
それには、クロエさんから送信されてきた動画と写真の影響が大きかったようですが、その後数日、食欲が出ないと病院を訪れる議員さんが多かったと、昼食の際にイリスさんから聞かされました……。私もあの日以後数日は、スープやパンだけの食事でしたよ。普通は当然ですよね? 私はケチャップソースのたっぷりかかった、赤黒いハンバーグをもぐもぐ食べているイリスさんを見ながら、心の底で叫びます。
『あんなの見て平気なのは、イリスさんとリリー様だけですよ。』
「……ユイ、思いっきり声に出ていますわよ?」
「あっ!!」
既に12月に入り、想定される開戦まで一ヶ月余りとなっています。西領では食料の調達も難しいため、度々北領へと出向いていた僕とアレキでしたが、久しぶりに戻ってきた西領の町の一角に、大量のマネキンが捨ててある事に気が付きます。
「なぜマネキンが?」
そう思ったのもつかの間、ここは21世紀の地球では無い事を思い出します。町の上空でそのマネキンの正体を確認した僕は、狭い機内の中で嘔吐しそうになり、慌てて口を押さえます。
そう、搭載されたカメラによる拡大されたそれを、僕は直視してしまったのです。
あるものは、白い膜が張った様な目、手足に広がる黒色の痣をもち、既に死後数日経っていると見えて、壊死した手足を持っているもの。
別なものは、脇の下などのリンパ節を拳大まで肥大させたものなどの、人間の死体だったのです。それが街路の一角に、うず高く積まれていたのです。
そして、それらの死肉を漁り、蠢くネズミやゴキブリなどの姿に、僕の胃が悲鳴を上げているのを感じます。
機体の安定が崩れ、アレキがギニャァと鳴き声をあげる中、なんとか森に墜落する事を避けて、近くの川の中州へと緊急着陸をさせました。そして、人目を気にした隠蔽魔法などをかける余力も無く、僕は操縦席から飛び出して、胃の中身を川面に開放します。
その後ぐったりしながら、なんとか現在の状況を把握し、隠蔽魔法をかけましたが、空中では見られていなかったかも知れませんが、地上ではかなり微妙です。
騒ぎになる前に機体を再浮上させて、とりあえず落ち着ける所を近くで探す事にしました。
う~、正直今日はご飯を食べる気力がありません。アレキの餌すら見たくない状況ですが、ひくつく胃をなだめながら何とかアレキへのご飯を提供します。その後、機体搭載のカメラと僕のカメラをリンクさせて、問題の動画を再確認しますが、どちらにも編集機能が付いてないのは痛いですね。再度、ネズミと可能であれば蚤の写真を押さえたい処です。
蚤の写真は、機体をギリギリまで降下させて、撮影すれば何とかなるでしょうか? 流石に望遠レンズだと焦点距離が違いすぎて、接写用にはなりませんよね。あぁ、そういえばネットで以前『望遠接写』とかの記事を見た記憶があります。いざとなれば、魔法でカメラ前面の空間を歪めてでも撮影しましょう。僕のダメージも大きくなりそうですが……
その後何とか、ネズミの写真や死体の壊死した患部や、蚤のクローズアップ写真を、搭載カメラで撮影して、僕のカメラとリンクさせます。
写真や動画を複写した後、テキストの短いコメントを追加して、写真を送信しますが、いつもならメーリングリスト機能でイリスさんだけでなく、ユイとユーリアちゃんにも送るのですが、今回はイリスさんだけにしておきましょう。
多分、今回の写真や動画に耐えられるのはイリスさんだけでしょうから。そして僕は写真を送りながら考えます。イリスさん、覚えているかなぁ~。
あぁ、送信終ったから早速画像は消去しなければね……
*****
『ピロリン』っと可愛い音が鳴り、昼食中だった私とイリスさん、ユーリアちゃんはそれぞれのスマホ型カメラを取り出しました。
久しぶりのクロエさんからの写真の送信かしらと思いましたが、私のカメラには何も入っていません。どうやら。ユーリアちゃんも同じようですね。
イリスさんの顔をみると、画面を見るなり表情が曇ります。ボタン操作をして画面を消去しています。
「ユイ、ユーリア。私悪いけど午後は早退致しますわ。担当教官への連絡をお願いできますかしら?」
私とユーリアちゃんは、イリスさんの反応に疑問をもちます。クロエさんは森猫さんの写真を送ってきてから、度々いろんな写真を送ってきてくれますが、いつだって3人同時に、同じ写真を送ってくださっていました。それが今回はイリスさんだけ……気にならないといえば嘘になりますよね。私はイリスさんに答えました。
「それは構いませんが、今の音はイリスさんのカメラへの、クロエさんからの送信があったということで合ってますか? そしてそれは私達が見てはまずいものなんでしょうか?」
イリスさんは頷いた後、答えます。
「正確には、見てまずくはないですけど、見ないほうが良いものですわ」
後は察してくれという感じですわね。
「判りました。では、すいませんけど、ユーリアちゃん。私とイリスさんの欠席連絡をお願いしますね。」
「え~、ユイも行くなら私も行きますよ。みんなで行きましょうよ」
私は困りますが、イリスさんがユーリアちゃんを宥めてくれます。
「ユーリアちゃんは次は『解除・解錠講座』でしょ。問題が一段落ついた後、『桜の迷宮』に挑むなら、しっかり受けておかないと駄目な講義よ。ユーリアちゃんの指先に、私達パーティーの生死がかかっているのですからね」
「それに、ほら」
そう言って私はユーリアちゃんの周りを、飛び回る妖精さんを指差します。
「妖精さんが貴女が迷宮を踏破することを待っているのですから」
ユーリアちゃんは私達2人の説得と、妖精さんの姿をみて諦めたのか、むくれつつも納得してくれました。
「その代わり、あとでどんな事だったかは必ず教えてくださいね」
そう言って、食事の後片付けをして、担当教官の部屋へと走っていきました。そして、イリスさんは私をみて言います。
「いいの? 多分後悔するわよ? 今なら未だ間に合いますよ」
「大丈夫ですよ。私も強くなったんですから、何時までもクロエさんやイリスさんにばかり任せるわけにはいきません」
そう言ってイリスさんに同行した、私はイリスさんの忠告通りに、後悔する事になりました……
*****
「防疫? 貿易じゃなくて?」
私は今、『アレキサンドリア中央病院』の一角にある、白家専用棟にきています。冒険者の皆様には、『生体研究・実験所』として恐れられているアレキサンドリアの負の施設だというのは、イリスさんから道中うかがいました。
そしてイリスさんの言葉に疑問を返したのは、私ではなくリリー様ですね。
「そう、防疫処理の即時実施を、委員会にかけて即実施して欲しいんですの」
リリーさんはその言葉に否定的に答えます。防疫処理というものがわからなければ、すぐに実行とは行きませんし、新たに部門を立ち上げるのなら人事や予算も関わります。私も流石に難しいんじゃと思いますが、ここでは部外者となるので黙っています。
「そもそも、防疫処理ってどんな事をするの? そして何故必要なのかを説明してね?」
リリーさんの言葉に、イリスさんも肯いて説明を始めます。
「クロエと私で、アレキサンドリア防衛線という仮想の戦術シュミレーションをしたことがあるのですけど、どちらが防衛を指揮してもアレキサンドリアが負ける事はありませんでしたわ」
イリスさんの言葉に、リリーさんも私も納得します。通常戦力だけでも負ける事は無いように思えますが、今はクロエさん関連の秘匿兵器があります。正直、反則とかチートだけどとクロエさんが笑っていたことを思い出しますね。
「一度だけ、私が防衛戦を指揮して、アレキサンドリアが壊滅した事があります。ただし、勝負は私の勝ちでしたが……」
? 負ける要素が見つかりませんが、壊滅した? でも勝ったんですよね……。私は訳が判らず、首を捻りますが、リリーさんも同様のようですね。
「そのときのクロエの使った戦術が、開戦前の伝染病の蔓延策よ。開戦60日前からの開始をクロエが提案してきて、戦闘した結果ね」
開戦前からの攻撃? しかも伝染病って、病気を蔓延させたというのですか?! 確かにそれは戦術的に有効かもしれませんが、道義的にどうかと思います。
「そして、その時クロエが使ったのがこの病気、『黒死病』よ」
その後動画と写真が、目の前の大パネルで流され、私はイリスさんに着いてきたことを心のそこから後悔しました……
私が長椅子の上でぐったりしている間に、イリスさんとリリーさんの話が進んでいきます。対策の内容としては、
・伝染病などの発生地から出港・寄港した船舶
・航海記録の確認による、船員・船客の7日以内の病死の合った船舶
上記の条件に当てはまった船舶の40日間の荷揚げ・荷降ろし及び船員・船客の乗船・下船の禁止。尚、貨物は全て殺虫処理を実施する為、生物等の荷物は事前申告する事。
また、上記措置中の船舶の乗員・船客への食事・飲料水の提供は、アレキサンドリア側の負担で行う。
というものです。
「う~ん、処置自体は賛成だけれど、荷揚げはともかく荷降ろしが出来ないのは、船主さんの事情も絡むし、貿易港としては難しい問題よ? 荷降ろしが終れば、船は別な港に言ってもいいというなら受け入れる船主さんもいるかもしれないけど」
リリーさんの言葉も最もですが、蚤やネズミを媒介として病気が広まるのであれば、布一枚とはいえ検査は必要でしょう。
そうです! ネズミや蚤を探知し死滅させることが出来れば荷物の受け入れは可能ではないでしょうか?
私がリリー様、イリスさんにその事を話すと、荷を検査装置に乗せる人の問題があるわと言われます。確かに、検査装置に乗せるひとが病気に感染しては意味がありません。
「お母様、荷物を検査台に載せる、積み下ろし専用のオートマタと、魔道具で代行できないかしら? エマやジェシーと同型のオートマタは蚤なんか寄せ付けないでしょ?」
リリー様は、確かにそれはいい手ねと言っています。ただ、荷物の一つ一つに魔法をかけるのでは、荷卸しの問題と魔法使いの確保が問題となりますね。ですが、生物の探知と蚤の撃退に限定すれば、魔法陣や呪符で代用できそうです。
イリスさんや私の意見が取り入れられ、また船員や船客の健康チェックなども含めて、アレキサンドリア港での防疫処理の議会での緊急案件として行う事が決定されました。
それには、クロエさんから送信されてきた動画と写真の影響が大きかったようですが、その後数日、食欲が出ないと病院を訪れる議員さんが多かったと、昼食の際にイリスさんから聞かされました……。私もあの日以後数日は、スープやパンだけの食事でしたよ。普通は当然ですよね? 私はケチャップソースのたっぷりかかった、赤黒いハンバーグをもぐもぐ食べているイリスさんを見ながら、心の底で叫びます。
『あんなの見て平気なのは、イリスさんとリリー様だけですよ。』
「……ユイ、思いっきり声に出ていますわよ?」
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