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3.帝政エリクシア偵察録
26.崩壊の序章
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■ ある港湾都市での出来事
「おい、さっさと船に積まんか。これは聖戦に赴く神兵達の食料として提供されるのだからな」
偉そうに口だけをだすルキウス教会の助祭に声に、軍の輜重部隊が運搬してきた食料(大麦や小麦などの雑穀)を担いだ、多くの奴隷達が船倉へと運ぶ中、1人の男が荷の影に隠れるように姿を消した。
彼はエリクシアに敗れた敗戦国の人間だったが、港湾管理のできる軍の部隊は居らず、奴隷同然の扱いとは言え以前と同じ職場に勤めていたことが幸いだった。
物資の積まれた集積所の死角となる場所から倉庫に侵入した男は、腰につけたポーチの中から、平たい石を2つ取り出すとすり合わせるようにして袋を裂いた。鋭利とはいえ石によるその傷は、まるでネズミが食い破ったように見える。
男はその穴からこぼれた雑穀を、やはりポーチから取り出した袋の仲にある程度いれると、ほくそ笑んだ。
「なぁに、少しくらい抜いたとしてもネズミの仕業だと思われるだろうな。だが、これだけじゃ弱いか」
そう言いながら周囲を見渡すと、手頃な所にネズミの死骸が見つかる。最近はネズミすら生きていくのに苦労するのか、そこかしこでネズミの死骸がみつかる。
男はネズミの死骸を手に取り、袋の中に押し込んでその場を立ち去る。この一掴みの食料で彼の幼い娘は命をつなぐ事が出来るだろう。出来るだけ長い間、この仕事があればいい。彼はそう思いながら、再びこっそりとその場を離れるのであった。
そんな光景は、西領の物資集積所や中継拠点で数多く行われていく。中には見つかり見せしめの為に、荷役奴隷達に嬲り殺される者が出るが、食糧不足が続く中で目の前の誘惑から逃れる事は難しい。
そしてそれは、非征服民である地元の人間だけではなく、帝国の輜重兵の中にすら居るのである。トータルすれば10万人を3カ月養えると計算されていた食料は、こうして蝕まれ、工作の為に入れられたネズミの死骸などから汚染されていく。
最終的には、開戦前に東領イリュクニアの、最もアレキサンドリアに近い商港『アルケミシュ』に荷が届いたとき、食用可能な物資は80%を割り込んでいた。
教会主導の聖戦の為、軍の補給担当が存在し無い事を良い事に、戦いもせずに我が物顔で物資を掠めていく、東区大司教ディオニクスにより、更に減少していく日々が続いていくのであった。
■ 王都ガラティヤにて
それは帝政エリクシアの王都『ガラティヤ』にも、静かに侵攻していた。
最初に倒れたのは、軍需物資の積み替えを行っていた、奴隷階層の男達であったという。全身に渡る倦怠感と寒気、それに高熱をともない、仕事を休む港湾作業に当たる奴隷が続出した。
『ガラティヤ』はエリクシアの王都であり、港湾関係者としても付き合いの長い奴隷も多い。体調の悪いときは仕方がないと、当初はしかめっ面をしていたが、流石に三分の一の奴隷に休まれては荷卸し・荷揚げの作業が滞りだしていた。
当然、船主や商店主からのクレームが港湾関係者に集中し、即刻遅れを挽回するように命令されれば、荷役担当職員も奴隷達に甘い顔を見せられなくなる。
「付き合いが長過ぎて、甘い顔を見せていたが足元を見られたか」
荷役担当職員は、嫌々ながらも都市の外れの奴隷街へとやってきたが、どの奴隷もぐったりとして俯いている。
挨拶の1つもないことに腹を立てながらも、荷役奴隷の頭をしていた男の家を訪れ、粗末な垂れ幕をくぐった直後、彼の悲鳴が轟くが周囲の反応も薄かった。
奴隷頭とその妻は、床に倒れ伏し既に死んでいたのである。2,3日前に亡くなったのであろうが、10月に入り寒い日々が続いていた為、腐敗はさほど進行はしていなかったが、ネズミなどに食い荒らされて、体の一部は白骨化していた。
慌てて周囲の家々を覗き込めば、多くの奴隷が苦痛の声をあげながら寝込んでおり、中には脇の下や膝の裏などが拳大にまで膨れ上がっているものも多く居たのである。職員の頭の中に、伝染病の文字が躍るのであった。
荷役担当職員は、あわててその惨状を上司である港湾局長に報告したが、奴隷街とはいえ、王都での伝染病発生は流石にまずいと判断された。王都の防衛隊へと報告をしたが、結局彼らも保身に走ったのである。奴隷街の一角に、死者と重篤者を集め、『燃える水』により生者共々焼却したが、既に事は遅かったのである。
エリクシアの大都市は地下と地上の二層構造になっている所が殆どである。一般の都市では、排泄物は個人毎に大きな甕などに用を足し、中身を窓から街路へとぶちまける為、都市内は汚物や汚臭が漂っていたが、エリクシアでは各家から地下へと壷を下ろすだけである。
地下に降ろされた壷は、奴隷達の手により糞尿処理場へと運ばれ処理され、新しい壷が上階へと引き上げられる。これによって、エリクシアの都市は他の国々の都市よりも清潔であると言われていた。
しかし間接的とはいえ奴隷への接触がある為、蚤を媒介としたこの疫病が市民に広がる事は避けられなかったのである。
そして、これは王都『ガラティヤ』だけではなかった。西領から『アルケミシュ』への糧食を運搬する船が寄航した港町で。港町から商品を運んだ街道先の都市でも、徐々に疫病が蔓延していったのである。そして、それは海路だけではすまなかったのであった。
■ ある子爵家次男の話 その1
教会主導によるアレキサンドリア討伐部隊の中でも、大多数を占めるのは西領『ホンヤトス』の部隊である。
輜重部隊をつれたとある子爵家の次男は、周囲の兵達が風邪による発熱や倦怠感で進軍が遅滞していく中、比較的順調に進軍を進めていたが、東部属領のとある街で、今回の討伐隊に村を略奪されたという数名の村人に遭遇した。
村人から話を聞くに、それはハンターと一般市民の混成部隊の仕業らしい。彼らはルキウス教の教会で都度寝床や食事を確保してきたが、東部属州にはルキウス教の教会は未だ少なく、もちろん王都を離れる毎に教徒自体も少なくなってきている。
だが、東部属領の事情も関係なく西領と同じ事、つまり異端者の村として襲い、略奪をし、女を連れ去ったというのである。彼らは街道を外れ、更に北部の町のほうへ向っているらしい。
所属する領が異なるとはいえ、ここは他の貴族領であり、領主の許可も無しに勝手な真似をする訳にもいかないが、彼らを放置すれば更に西領の悪名が高くなる。そのことを恐れ、彼らは略奪部隊の討伐を行おうとしたのである。
その行動はある意味正しかったが、同時に略奪を行った部隊同様に迂闊でもあった事に気がついたのは、略奪者を追い詰めたその時であった。
周囲に狼の咆哮が響き、彼らが略奪者共々、狼に囲まれている事を知ったときには、時既に遅かった。騎兵といえど、森の中ではその機動力は発揮できず、更に狼だけではなくコボルト族との連携をとった攻撃を防ぐ手段は彼らにも無かった。
結局その場で生き残ったのは、攫われた女達と、騎兵の馬が数頭であり、彼らが自領から運んできていた良質な物資は、コボルト族の手に落ちたのである。
しかし、彼らは幸運であったかも知れない。少なくても、敵と戦い死ねたのであるから。例え当初の予定とは異なる敵であったとしても。
そして、生き残った女達が、コボルト族の残した僅かな装備に付いていた子爵家の紋章から、彼らが貴族として不名誉な行いをせずに、死んでいった事が証明されたのである。
■ ある伯爵家嫡子の話
北領のある伯爵家の嫡子は、その日も特段普段と変わりなく行動していた。伯爵家のある北領は、征服されてからの期間も長く、クラウディウス家指導の下、穏やかな治世を続けていた為に、貴族であっても武勲を上げた貴族は少ない。
多くの軍艦を製造し多大な海上戦力を得ようとした策略も、公爵家の指導が入ってしまい策は費えていた。
そして輿入れを狙っていたクラウディウス家の令嬢から直接の叱責を受け、伯爵家の未来に影を落としていた時に、振って沸いた出陣要請である。
教会の請願を受けたクラウディウス家からの告知は、それぞれの領地内の事情を鑑み、ルキウス教会へ協力するものに対しては、領外への出陣を咎めないとの消極的な内容であったが、嫡子の初陣と武勲を上げさせる機会とばかりに、領内の精鋭20名と共にアレキサンドリアとの決戦の場所へと向っていたのである。
北領からの距離の関係で、やや後発となった嫡子と精鋭部隊は、周囲で風邪による咳や発熱などで進軍が進んでいた。しかし、もともと旅に不慣れで、甘やかされていた嫡子の我侭を押さえながらの進軍は、騎兵を中心とする部隊とはいえ、早いとはいえなかったが、周囲と同じ速度ということもあり、余り問題視していなかった。
そして、ある日の朝、貴族家の嫡子は昏倒したのである。やがて、彼は用意されたベットの中で死亡したが、その皮膚のありこちに出血斑が表れ、手足は壊死しており、全身が黒い痣だらけとなっていたのである。
その嫡子の名は、ローラントという。北領マルク伯爵家の嫡男であり1人息子であった。
ここに至って、討伐軍は自分達の状況を正確に理解したのである。討伐軍は『黒死病』に罹患していることと、自分達の移動によって、エリクシア領内の広範囲に『黒死病』を蔓延させた可能性がある事に……
「おい、さっさと船に積まんか。これは聖戦に赴く神兵達の食料として提供されるのだからな」
偉そうに口だけをだすルキウス教会の助祭に声に、軍の輜重部隊が運搬してきた食料(大麦や小麦などの雑穀)を担いだ、多くの奴隷達が船倉へと運ぶ中、1人の男が荷の影に隠れるように姿を消した。
彼はエリクシアに敗れた敗戦国の人間だったが、港湾管理のできる軍の部隊は居らず、奴隷同然の扱いとは言え以前と同じ職場に勤めていたことが幸いだった。
物資の積まれた集積所の死角となる場所から倉庫に侵入した男は、腰につけたポーチの中から、平たい石を2つ取り出すとすり合わせるようにして袋を裂いた。鋭利とはいえ石によるその傷は、まるでネズミが食い破ったように見える。
男はその穴からこぼれた雑穀を、やはりポーチから取り出した袋の仲にある程度いれると、ほくそ笑んだ。
「なぁに、少しくらい抜いたとしてもネズミの仕業だと思われるだろうな。だが、これだけじゃ弱いか」
そう言いながら周囲を見渡すと、手頃な所にネズミの死骸が見つかる。最近はネズミすら生きていくのに苦労するのか、そこかしこでネズミの死骸がみつかる。
男はネズミの死骸を手に取り、袋の中に押し込んでその場を立ち去る。この一掴みの食料で彼の幼い娘は命をつなぐ事が出来るだろう。出来るだけ長い間、この仕事があればいい。彼はそう思いながら、再びこっそりとその場を離れるのであった。
そんな光景は、西領の物資集積所や中継拠点で数多く行われていく。中には見つかり見せしめの為に、荷役奴隷達に嬲り殺される者が出るが、食糧不足が続く中で目の前の誘惑から逃れる事は難しい。
そしてそれは、非征服民である地元の人間だけではなく、帝国の輜重兵の中にすら居るのである。トータルすれば10万人を3カ月養えると計算されていた食料は、こうして蝕まれ、工作の為に入れられたネズミの死骸などから汚染されていく。
最終的には、開戦前に東領イリュクニアの、最もアレキサンドリアに近い商港『アルケミシュ』に荷が届いたとき、食用可能な物資は80%を割り込んでいた。
教会主導の聖戦の為、軍の補給担当が存在し無い事を良い事に、戦いもせずに我が物顔で物資を掠めていく、東区大司教ディオニクスにより、更に減少していく日々が続いていくのであった。
■ 王都ガラティヤにて
それは帝政エリクシアの王都『ガラティヤ』にも、静かに侵攻していた。
最初に倒れたのは、軍需物資の積み替えを行っていた、奴隷階層の男達であったという。全身に渡る倦怠感と寒気、それに高熱をともない、仕事を休む港湾作業に当たる奴隷が続出した。
『ガラティヤ』はエリクシアの王都であり、港湾関係者としても付き合いの長い奴隷も多い。体調の悪いときは仕方がないと、当初はしかめっ面をしていたが、流石に三分の一の奴隷に休まれては荷卸し・荷揚げの作業が滞りだしていた。
当然、船主や商店主からのクレームが港湾関係者に集中し、即刻遅れを挽回するように命令されれば、荷役担当職員も奴隷達に甘い顔を見せられなくなる。
「付き合いが長過ぎて、甘い顔を見せていたが足元を見られたか」
荷役担当職員は、嫌々ながらも都市の外れの奴隷街へとやってきたが、どの奴隷もぐったりとして俯いている。
挨拶の1つもないことに腹を立てながらも、荷役奴隷の頭をしていた男の家を訪れ、粗末な垂れ幕をくぐった直後、彼の悲鳴が轟くが周囲の反応も薄かった。
奴隷頭とその妻は、床に倒れ伏し既に死んでいたのである。2,3日前に亡くなったのであろうが、10月に入り寒い日々が続いていた為、腐敗はさほど進行はしていなかったが、ネズミなどに食い荒らされて、体の一部は白骨化していた。
慌てて周囲の家々を覗き込めば、多くの奴隷が苦痛の声をあげながら寝込んでおり、中には脇の下や膝の裏などが拳大にまで膨れ上がっているものも多く居たのである。職員の頭の中に、伝染病の文字が躍るのであった。
荷役担当職員は、あわててその惨状を上司である港湾局長に報告したが、奴隷街とはいえ、王都での伝染病発生は流石にまずいと判断された。王都の防衛隊へと報告をしたが、結局彼らも保身に走ったのである。奴隷街の一角に、死者と重篤者を集め、『燃える水』により生者共々焼却したが、既に事は遅かったのである。
エリクシアの大都市は地下と地上の二層構造になっている所が殆どである。一般の都市では、排泄物は個人毎に大きな甕などに用を足し、中身を窓から街路へとぶちまける為、都市内は汚物や汚臭が漂っていたが、エリクシアでは各家から地下へと壷を下ろすだけである。
地下に降ろされた壷は、奴隷達の手により糞尿処理場へと運ばれ処理され、新しい壷が上階へと引き上げられる。これによって、エリクシアの都市は他の国々の都市よりも清潔であると言われていた。
しかし間接的とはいえ奴隷への接触がある為、蚤を媒介としたこの疫病が市民に広がる事は避けられなかったのである。
そして、これは王都『ガラティヤ』だけではなかった。西領から『アルケミシュ』への糧食を運搬する船が寄航した港町で。港町から商品を運んだ街道先の都市でも、徐々に疫病が蔓延していったのである。そして、それは海路だけではすまなかったのであった。
■ ある子爵家次男の話 その1
教会主導によるアレキサンドリア討伐部隊の中でも、大多数を占めるのは西領『ホンヤトス』の部隊である。
輜重部隊をつれたとある子爵家の次男は、周囲の兵達が風邪による発熱や倦怠感で進軍が遅滞していく中、比較的順調に進軍を進めていたが、東部属領のとある街で、今回の討伐隊に村を略奪されたという数名の村人に遭遇した。
村人から話を聞くに、それはハンターと一般市民の混成部隊の仕業らしい。彼らはルキウス教の教会で都度寝床や食事を確保してきたが、東部属州にはルキウス教の教会は未だ少なく、もちろん王都を離れる毎に教徒自体も少なくなってきている。
だが、東部属領の事情も関係なく西領と同じ事、つまり異端者の村として襲い、略奪をし、女を連れ去ったというのである。彼らは街道を外れ、更に北部の町のほうへ向っているらしい。
所属する領が異なるとはいえ、ここは他の貴族領であり、領主の許可も無しに勝手な真似をする訳にもいかないが、彼らを放置すれば更に西領の悪名が高くなる。そのことを恐れ、彼らは略奪部隊の討伐を行おうとしたのである。
その行動はある意味正しかったが、同時に略奪を行った部隊同様に迂闊でもあった事に気がついたのは、略奪者を追い詰めたその時であった。
周囲に狼の咆哮が響き、彼らが略奪者共々、狼に囲まれている事を知ったときには、時既に遅かった。騎兵といえど、森の中ではその機動力は発揮できず、更に狼だけではなくコボルト族との連携をとった攻撃を防ぐ手段は彼らにも無かった。
結局その場で生き残ったのは、攫われた女達と、騎兵の馬が数頭であり、彼らが自領から運んできていた良質な物資は、コボルト族の手に落ちたのである。
しかし、彼らは幸運であったかも知れない。少なくても、敵と戦い死ねたのであるから。例え当初の予定とは異なる敵であったとしても。
そして、生き残った女達が、コボルト族の残した僅かな装備に付いていた子爵家の紋章から、彼らが貴族として不名誉な行いをせずに、死んでいった事が証明されたのである。
■ ある伯爵家嫡子の話
北領のある伯爵家の嫡子は、その日も特段普段と変わりなく行動していた。伯爵家のある北領は、征服されてからの期間も長く、クラウディウス家指導の下、穏やかな治世を続けていた為に、貴族であっても武勲を上げた貴族は少ない。
多くの軍艦を製造し多大な海上戦力を得ようとした策略も、公爵家の指導が入ってしまい策は費えていた。
そして輿入れを狙っていたクラウディウス家の令嬢から直接の叱責を受け、伯爵家の未来に影を落としていた時に、振って沸いた出陣要請である。
教会の請願を受けたクラウディウス家からの告知は、それぞれの領地内の事情を鑑み、ルキウス教会へ協力するものに対しては、領外への出陣を咎めないとの消極的な内容であったが、嫡子の初陣と武勲を上げさせる機会とばかりに、領内の精鋭20名と共にアレキサンドリアとの決戦の場所へと向っていたのである。
北領からの距離の関係で、やや後発となった嫡子と精鋭部隊は、周囲で風邪による咳や発熱などで進軍が進んでいた。しかし、もともと旅に不慣れで、甘やかされていた嫡子の我侭を押さえながらの進軍は、騎兵を中心とする部隊とはいえ、早いとはいえなかったが、周囲と同じ速度ということもあり、余り問題視していなかった。
そして、ある日の朝、貴族家の嫡子は昏倒したのである。やがて、彼は用意されたベットの中で死亡したが、その皮膚のありこちに出血斑が表れ、手足は壊死しており、全身が黒い痣だらけとなっていたのである。
その嫡子の名は、ローラントという。北領マルク伯爵家の嫡男であり1人息子であった。
ここに至って、討伐軍は自分達の状況を正確に理解したのである。討伐軍は『黒死病』に罹患していることと、自分達の移動によって、エリクシア領内の広範囲に『黒死病』を蔓延させた可能性がある事に……
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