勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第7章 ここから始まる雁字搦め

五十七日目⑬ どうしてその名前が⁈

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ガランゴロンガラン

 冒険者ギルドの入り口はいつもと同じように俺たちを迎え入れてくれた。
 この変わらない日常のような光景は、俺たち冒険者にとってとてもありがたい。
 だからこそ無事に帰ってこようとがんばるし、帰ってきたら安心するんだ。

「あら、おはようカイト君。」
「おはようございますキャサリンさん。」

 まだクエストボードには依頼が張られていないためか、冒険者はまだらだった。
 酒場には……屍があるけど気にしたらいけない。
 これもまた日常だからだ。

「今日はみんなで早いのね?」
「そうですね、そろそろ【鉱山跡地ダンジョン】の第10層を目指そうと思って、これから【湿原のダンジョン】で連携訓練と野営訓練の合宿みたいなことをしてきます。」

 相変わらず酒場からゾンビがはい出るかのような声が……ってあれは……

「ん?あぁ、あれは気にしなくていいわよ。昨日大変だったみたいだから。それよりも【鉱山跡地ダンジョン】第10層ってことはようやく先に進めるってことね。無理はしないで頂戴ね?」
「分かってます。命を粗末にはしませんから。」

 どうしても目に入っていしまう……
 どう見てもあれって……ジルさんでしょ?
 気になって仕方がないんだけど。

どがっしゃん!!

「あぁ、もう。」

 ものすごい音共に、呆れ顔のキャサリンさん。
 その音の方を見てみると、メイリンさんが書類の下敷きになっていた。
 うん、ドジっ子全開だな。

「いたたたたぁ~。もう、お母さん!!ちゃんと書類は片付けてって言ってるでしょ!!」

 うん、前言撤回。
 原因はキャサリンさんだった。

 キャサリンさんが床に放置していた書類に足を取られて転倒したようで、腰を強かに打ち付けたらしく、メイリンさんは涙目でキャサリンさんをしかりつけていた。
 こればかりは擁護しようがないかな。

「メイリン!!ここでは先輩でしょ!!」

 威厳を出しつつ、メイリンさんを注意しているキャサリンさんだったけど、事を知った以上威厳は皆無だった。
 ああでもないこうでもないと、俺をそっちのけで言い合う二人。
 他の職員の人たちもあまり気にしていないようだったので、これがここの日常なのかもしれないな。

「ん?あわわわわわ!!か、カイトさん!?お、おはようございます!!」

 やっと俺に気が付いたメイリンさんは、慌てたように頭を下げながら挨拶をって、あぶな……

 ゴン!!

 見事に受付の棚に額をぶつけたメイリンさんだった。
 うん、やっぱドジっ子だわ。

「そうでした、キャサリンさん。【緑人の住処ダンジョン】の攻略情報を頂けますか?」
「え、えぇ。ちょっと待ってちょうだいね。たしかここに……」

 見かねたポールは以前から気になっていたダンジョン情報についての確認を行った。
 キャサリンさんもバツが悪そうにしつつも、ポールの質問に答えるために資料を探し始めた。
 あっちをゴソゴソ、こっちをゴソゴソ。
 うん、キャサリンさんは仕事できるけど片付けできない人らしいね。
 これであれだけの仕事量こなせるんだから、不思議なものだと思う。

「あったわ。これね。」

 そうするとお目当ての書類を見つけたキャサリンさんは一つ咳ばらいをすると、その書類をメイリンさんに手渡した。
 あくまで俺たちの担当はメイリンさんだから、メイリンさんから説明させるつもりらしい。

「では、現在の攻略状況ですが第43層まで進行しています。ですが、マッピングの完全網羅は第24層が最新です。現在は第25層をBランクパーティーが行っているところです。出来ればカイトさんにもいっていただきたいのですが、ランク的にはまだ難しいと判断して、指名依頼は止めてあります。」
「思ったよりも進んでいるんですね。この短時間で第43層まで行ってるとは思ってませんでした。」

 【緑人の住処ダンジョン】が解放されてからそれほど経ってはない。
 俺たちも数階はその恩恵に預かり稼がせてもらったけど、その階層までは行ける自信が無い。
 それにマッピングの完全網羅も第24層まで行ってるってなると、俺が言っても足手まといにしかならないと思う。
 
 どうやら俺の顔に不安が出ていたようで、キャサリンさんにじっと見つめられてしまった。
 その表情は心配してますと雄弁に語っていた。
 俺そんなに無鉄砲に見えるのかな?
 
「ではその他のダンジョンの攻略情報は入っていますか?」
「そうね、ポール君は知っていると思うけど踏破済みなのは【新緑のダンジョン】【湿原のダンジョン】の二か所ね。【鉱山跡地ダンジョン】については第79層でいったん終了しているわ。」

 第79層……
 思ったよりも深いな。
 ゲームだとこういった出発地点から近いダンジョンはそう深くはないのだけど……って、違う、ここはゲームなんかじゃないんだ。
 そう言った考えは捨てないとな。
 命を落としてってリセットは効かないんだから。

「では次の階層がボス部屋の可能性が高いため、一度引き返したということですか?」
「そうね、さすがにジェダンさんたちでも無理は出来ないわよ。」

 ん?どっかで聞いたことがある名前……って、ジェダンさん⁈
 それに一番驚いていたのはエルダだった。
 ジルさんたちの惨状に見かねたエルダ・デイジー・アリサの三人は、酒場で介抱しに行っていた。
 だけどジェダンさんの名前が聞こえたようで、慌ててこっちに駆け寄ってきたようだった。

「なんでここでお父さんの名前が⁈」
「あら?聞いていなかったの?今潜っている冒険者ってジェダンさんたちのパーティーよ?」

 うん、聞いてないよ。
 しかも分かれ際、今生の別れみたいに空気が若干あっただけに、こんな近場にいたとは思えなかったよ。
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