異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第54話 修学旅行14

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【麗華視点】



 ふと気がつくと、目の前に立っている男に目を奪われていた。彼はスーツを完璧に着こなし、洗練された雰囲気を纏っている。その姿は、夜の闇からふわっと現れた孤高の狼のようで、鋭い目つきがこちらをまっすぐに射抜いていた。

 

「……あの男、誰……?」



 胸の奥で何かがざわつく。その感覚は初めてのもので、まるで見知らぬ男なのに心の奥深くを揺さぶられている気がした。冷たさと余裕が同居する視線。隙のない動き。そのどれもが彼の危険な魅力を際立たせ、私の目を離させてくれない。


 
 ――あの瞳……まるで、獲物を狙う獣みたい。



 そんな考えが頭をよぎると、胸が高鳴る。心臓がドキリと跳ね、彼がこちらを振り向くたびに、その鋭い目つきが私の中を突き刺してくる。胸が締め付けられるようなこの感覚は何なの……?


 
「まさか……これが……」



 ――――――恋?



 思わず息を呑む。一瞬だけ、彼が軽く微笑んだような気がした。その表情は冷たくもありながら、どこか魅惑的だった。その微笑みが視界に映った瞬間、心臓がさらに速く鼓動を打つ。


 こんな人、今まで出会ったことがない。彼だけがこの世界で特別な存在のように見える。時間が止まったかのように、彼の一挙手一投足が私の視界を埋め尽くしていく。


 
「これが恋だなんて……そんなはず……」



 心の中で必死に否定しようとするけれど、彼の存在が視線を奪い、思考を占拠していく。どんなに振り払おうとしても、私の心は彼に引き寄せられてしまっている。


 冷たい瞳と、それでもどこか温かさを感じさせるその雰囲気。そのすべてが、私の中で混乱と新たな感情を生み出していた。


 
「ダメよ、麗華。何を考えているの!」



 頭を強く振って、自分に言い聞かせる。私がここにいる理由は他にある。妖怪たちを封印するため、首里城での任務を遂行するためにここにいるのだ。それなのに、なぜこんな謎の男に気を取られているの?



 ――それなのに。



 ふと胸の奥で呟く自分がいる。


 
「……でも、少しだけなら……」



 その思いが心の片隅に湧き上がった瞬間、理性の声が警鐘を鳴らす。いや、いけない。こんな危険な時にそんな気持ちを抱くなんて。彼はただの人間ではない――きっと何か裏がある。何かの罠に違いない。



 ――それでも、心のどこかで「それでもいい」と思ってしまっている。



 彼の存在そのものが目を引き、心を揺さぶる。悠然と立つその姿、どこか孤高の雄を思わせるその雰囲気。冷たいはずの視線に、なぜか温かさを感じてしまう自分がいる。


 
「いけない……!私はこんな時に……!」



 心の中で必死に叫んでみるけれど、その声はどんどん遠ざかっていく。理性では彼が危険な存在だと理解している。けれど、心のどこかでどうしても目を離すことができない。彼の持つ冷酷さ、危険な香り――それら全てが私の心に小さな炎を灯しているのだ。


 胸の鼓動が早くなるのを止められない。冷たくも鋭いその瞳が、私の中に踏み込んでくるような錯覚を覚える。こんな時にこんな感情を抱くなんて……。彼の一挙手一投足が視界に焼き付き、私の意識を奪っていく。



 ――この人は何者なの?ただの人間じゃない。でも、それでも……。



 目の前にいる彼が何者であれ、その存在感に引き寄せられていく自分がいる。抗おうとしても、その思いは心の奥から溢れて止まらない。


 
「あなたは、誰……?」
 


 言葉は震えていた。それでも、心の奥底から湧き上がる強い欲望が抑えられない。この男の名前を、彼のすべてを知りたいという衝動が、私を突き動かしていた。


 
「私の名前は――アカマター。」

「!!!!!!」



 その言葉が耳に届いた瞬間、すべてが繋がった。目の前に立つのは、琉球の伝説に名を残す蛇の妖怪――アカマター。その瞳、その声、その存在感――すべてが私を絡め取るように迫ってくる。


 ――そうだ、これは奴の力だ。アカマターの持つ特別な魅了の力。伝説では、その美しい瞳で女性を引き寄せ、心も体も意のままに操ると言われている。私はまさに、その罠にかかっているのだ。


 目の前の男――いや、妖怪としての姿を隠したアカマター。その顔は完璧なまでに美しく、冷たくも優美な造形が、その存在をさらに際立たせている。


 彼の瞳は、冷酷な光を帯びながらも、どこか優しさのようなものを含んでいる。その視線が私を捕らえた瞬間、胸の中に不思議な温かさが広がった。冷たいはずなのに、触れたくなるような心地よさ。それが彼の魅了の力なのか。
 
 
 気づけば私は、彼の姿をずっと目で追っていた。目が離せない。どうして――?これは明らかに敵だというのに。


 
 ――麗華、しっかりしなさい!奴はアカマターよ!敵なのよ!



 そう心の中で叫ぶけれど、その言葉はどこか虚ろで、私の心には届かない。彼の存在が私の理性を覆い隠し、心の奥底をかき乱している。


 
「麗華、お前は美しい……お前の美しさに相応しいのは、私だ……。」



 アカマターの低く甘美な声が、耳を通り越して心に直接響く。その声が、まるで蜜のように私の中に溶け込み、全身が熱を帯びていく。彼の一言一言が私の胸を叩き、理性を削り取っていく。

 こんな風に言われたことがあっただろうか? いや、ない。今までのどんな言葉よりも深く、どんな想いよりも鮮明に、彼の声が私の中に刻み込まれる。


 本能が叫ぶ。

 
 ――この人を求めよ、と。


 
「ダメ……ダメよ、麗華……!」



 必死に抵抗する。だが、それでも体の奥底で何かが目を覚まし、彼の存在を求めてしまう。

 アカマターが一歩近づくたび、心が波立つ。彼の目に映る私自身が、まるで雌としての本能を試されているような錯覚を覚える。彼の声、仕草、立ち振る舞い――すべてが私を引き寄せる。



 ――これが、アカマターの力……いや、それだけじゃない。



 彼の存在そのものが、私の中に何かを呼び覚ましている。まるで、心の奥底に潜む野性の本能が、彼に応えるように震えている。

 

「麗華、私はお前に惹かれている。強く、そして美しいお前に――お前はどうだ?」



 彼の低く甘美な声が、私の心を揺さぶる。その響きは、抗おうとする理性の壁を静かに、しかし確実に崩していく。



 ――麗華、負けるな。これ以上、彼の力に囚われてはダメ!



 必死に自分に言い聞かせても、その瞳の力には逆らえない。彼の視線が私を捕らえるたび、胸が締め付けられるような感覚に陥る。


 
「……わ、私も……貴方に惹かれています……」



 ――何を言ってるの、私!?



 その言葉が自分の口から出た瞬間、心臓がドクンと跳ねた。これは本音?それとも彼の力のせい?自分自身でさえも分からない。ただ、彼に向けたその言葉は、私の中の何かを変えてしまった。


 アカマターはその言葉を聞き、薄く微笑んだ。その微笑みは冷たくもあり、同時に深い魅力を秘めている。彼は優雅な足取りでさらに近づいてきた。その一歩一歩が私の心を乱し、全身が熱くなる。


 彼が目の前に立つと、そっと手を伸ばし、私の頬に触れた。その瞬間、全身に電流が走るような感覚が広がった。


 
「麗華……私と共に来るのだ。お前を誰よりも幸せにしてやる。」



 その言葉は、甘い毒のように私の胸に染み込んでいく。彼の声は深く、低く、どこまでも優しく響いて、私の心を支配していくのが分かる。



 ――これが罠だって分かっている。分かっているのに。



 でも、彼の言葉を聞いていると、どこか本当に幸せになれる気がしてしまう。

 

「幸せに……?してくれるの?」

「――あぁ、私がお前を幸せにしてやろう。」



 その言葉に、私は自然と微笑んでしまった。自分の中で何かが壊れていくのが分かる。それなのに、どうしようもない。


 
「……素敵……」



 待って、こんなに簡単に惹かれてどうするの!?ダメよ、麗華!!これは本当の気持ちじゃない。彼の力に惑わされているだけ――。


 それでも、彼から目を離せない。彼の声に酔い、彼の存在に溺れる。理性を押しつぶすように湧き上がる感情は、まるで私自身の中に眠っていた本能そのものが目覚めたようだった。


 ――目の前にいるのは、ただの敵ではない。完璧な雄。その魅力に引き寄せられる私は、今にも彼の世界に足を踏み入れてしまいそうだった。


 

「嬉しいよ、麗華。お前も私を求めてくれて。」



 彼の言葉は甘美で、まるで深い霧の中にいるように理性がぼやけていく。気がつけば、私は彼の微笑みに心が揺れていた。



 ――彼が喜んでくれている。それが、どうしようもなく嬉しい。



 もっと彼を喜ばせたい、そんな気持ちが胸の奥から湧き上がる。彼のために何でもしてあげたい――。


 
「では麗華、これから婚約の儀を行う。いいか?」

「婚約の儀……?」



 その言葉に、一瞬だけ理性が戻る。だけど、彼の冷静で優雅な声が、再び私の心を包み込む。


 
「それを行えば、お前は妖怪となり、私の番となる。」

「妖怪になる……」



 その言葉に胸がざわついた。何かがおかしい、違う――そう感じながらも、彼の瞳に囚われた私の理性は、次第に薄れていく。


 
「それをやったら、あなたは嬉しい?」

「――ああ、嬉しい。」



 彼の答えは確信に満ちていた。その声を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなり、何か大切なものを捨ててでも、彼を喜ばせたいと思ってしまう。


 
 ――私が彼を喜ばせられるのなら、それでいい。


 
「――――――じゃあ、あなたの言う通りにします。」



 その言葉が、私の中の最後の理性をかき消した。今、この瞬間、私は彼のものになってもいい――そう思ってしまう自分に気づく。そしてその思いを止める術は、もはやどこにもなかった。

 
 心のどこかで、この契約がどれほど恐ろしいものか理解していた。それでも――彼の言葉、彼の存在が、理性を押し流し、雌としての本能を強く刺激する。



 ――私には、もう拒む力は残っていなかった。


 
 アカマターの手が私の肩に触れる。その触れ方は優しく、まるで私を愛おしむようで――その感触に全身が震える。触れられるたび、理性の声がかき消され、彼の存在に全てを委ねたくなる感覚が押し寄せてきた。


 アカマターの手が私の腕を引き寄せる。その瞬間、私はすべてを忘れてしまいそうになる――。


 そして、アカマターが私の下腹部あたりに手を掲げる。冷たくも優美な動作。彼の手から、何か怪しげな光が漏れ始める。

 

「これから婚約の儀式を行う。」



 低く響く彼の声が私を包み込み、耳の奥に甘く残る。その声に逆らう力が失われていくのがわかる。


 
「私がこれから言う言葉を、私の名前と共に承諾するのだ、麗華。そうすれば婚約の儀は成立する。」



 静寂が訪れる中、彼の次の言葉が心に深く刻まれる。


 
「伊集院麗華、お前は我の番となり、永遠に私と共に生きるのだ。そして未来永劫、私の子を産み続けろ。」



 その言葉はまるで呪文のように、私の理性を奪い去る。低く甘美な響きに彩られた声が、頭の中で何度も繰り返される。その瞬間、いくつかの記憶が脳裏に浮かんだ。



 ――お母さんの笑顔、雷丸君の無邪気な言葉。守りたい人たちの顔。



 だけど、それらの記憶は儚い蜃気楼のように消えていく。残るのは彼の瞳、彼の声、そして彼の存在だけ。

 

 
「……私は、全てを捧げます。私の力、私の命、そして魂までも、アカマター様に。」



 口から出た言葉には迷いがなかった。震えもなく、覚悟を感じさせるほど冷静だった――自分でも驚くほどに。


 
「――忠誠を誓います。」



 アカマターが満足げに微笑み、彼の手から強烈な光が放たれる。その光は私の体に絡みつき、全身を包み込む。その光が消えたとき、私は彼にすべてを捧げたという実感が胸を締め付ける。



 ――――――ああ、もう、私は彼のものになってしまったんだ。

 

「これでお前は我々のものだ。麗華、お前の力を存分に使うがよい。」

「アカマター様……!」



 気がつけば、私は膝をつき、頭を垂れていた。すでに何のためらいもない。


 
「私はアカマター様の忠実なる僕。今より、全てを捧げます。」



 彼の満足げな笑みが私の心を満たす。彼の手が再び肩に触れると、温かさと安堵に包まれる。


 
「良い。これでお前も私の番だ。さぁ、麗華、これからは私のために働くがいい。」


 
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