異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第80話 魔性の女3

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 俺は震える手を静香さんの背中にそっと置いた。その瞬間、彼女の体の柔らかさと温かさが手のひらに伝わり、俺の緊張はますますピークに達する。



「あら……雷丸君、手が温かいわね。」

 

 静香さんが穏やかな声でそう言う。俺の手のひらに感じる静香さんの柔らかい感触と、その甘い香りが鼻をくすぐり、俺は何とか冷静さを保とうと必死だった。


 
「冷静になれ、俺。これはただのマッサージだ……健康的なマッサージ……!」



 心の中で何度も自分に言い聞かせながら、俺は異世界で学んだマッサージスキルを思い出す。まずは肩からだ。俺は親指を静香さんの肩に押し当て、軽く円を描くように揉みほぐしていく。


「……どうですか?」



 恐る恐る尋ねると、静香さんがふっと笑みを浮かべた。

 

「本当に上手ね。力加減がちょうどいいわ。」



 その一言に、俺は少しだけ自信を取り戻す。よし、ここから本領発揮だ!俺は肩から背中へと手を滑らせ、筋肉のこわばりを丁寧にほぐしていく。


「ここが凝ってますね。ちょっと痛いかもしれませんけど……」



 軽く力を入れて押し込むと、静香さんが「あっ」と小さく声を漏らす。その声がまた妙に甘くて、俺の集中力が一瞬飛びそうになる。

 

「い、痛かったですか!?すみません、力を入れすぎ――」

「ううん、大丈夫。それより……すごく効いてるわ。」

 

 その言葉に、俺は再び気を引き締めてマッサージを続ける。背中から腰、そして腕へ――。


 
「雷丸君、あなた……本当に上手ね。こんなに気持ちいいのは初めてよ。」

「そ、そうですか!でもまだまだこれからですから!」


 
 俺は何とかしてこの状況を「普通のマッサージ」に戻そうと、世間話を無理やり挟んだ。




「そ、そういえば、最近どうですか?伊集院家の仕事とか、大変そうですけど……」



 なんてことない質問。俺の中では「普通」を取り戻すための必死の一手だ。だが――。

 静香さんは、ゆっくりと息を吐きながら答えた。


 
「ええ、大変ね。最近、いろいろな案件が山積みで……」



 そこまではよかった。だが、その次の瞬間――。


 
「あんっ……そこ……いいわねぇ……」



 突然、静香さんから漏れた甘い声が、俺の耳を直撃した。まるで濃厚なチョコレートを口いっぱいに詰め込まれたような、重く、甘く、逃げ場のない感覚が俺を襲う。


 俺の手が一瞬止まりかけたが、すぐに再開。いや、違う、違う!俺はただマッサージをしているだけだ!妙なことは何もしていない!冷静になれ、俺!


 
「そ、そうですか!まあ、伊集院家ほどの家だと、いろいろな問題が出てきますよね……」



 何事もなかったかのように話を続ける俺。しかし、内心では完全にパニックだ。


 
「でも、こうしてマッサージしてもらうと、少し肩の力が抜けるわねぇ……」



 その言葉に少し安堵するも――。


 
「あっ……そこ……いい感じ……」



 静香さんから再び漏れる甘い声に、俺の背中を冷や汗が流れる。いやいやいや!この声は完全にアウトだろ!?俺の手が何かおかしなところに触れたのか!?いや、そんなはずはない!ただ肩を揉んでいるだけなのに――!


 
「ま、まあ、たまにはリラックスするのも大事ですよね!ストレスをためると体に悪いですから!」



 俺は声を震わせながら、無理やり普通の話題に戻そうとする。しかし、静香さんの反応はさらに俺を追い詰める。

 
「ええ、そうね……あっ、そこも……うん、いい感じ……」



 その声の破壊力があまりにも強すぎて、俺の脳内では警報が鳴り響く。


 
「警告!警告!これは完全にやばい状況です!至急、マッサージを終了してください!」



 だが、俺の手は止まらない。静香さんの疲れを癒すという使命感と、信頼に応えたいという一心で、俺は必死に手を動かし続けた。


 
「ま、また少し強くしましょうか!ストレスを溜めないために!」

「お願い……雷丸君……もっと強く……」



 その一言がトドメだった。俺の心臓は限界寸前。全身に汗が吹き出し、手の震えを抑えるのに必死だ。

 
「つ、次は背中全体を丁寧に……!」と言いながら、俺は静香さんの肩から背中へと手を移動させた。だが、触れるたびに静香さんから漏れる声が、俺の集中力を根こそぎ奪っていく。


 
「あぁ……雷丸君……そこ、すごく気持ちいいわ……」



 もうだめだ!俺の脳内ではすべての思考が「これ、絶対にやばい」という結論に至っている。だが、静香さんは完全にリラックスしているようで、俺を信頼しきった表情を浮かべている。


 
 この状況、どう収拾をつければいいんだ――!?



 俺は汗をぬぐいながら、静香さんの背中をさらに丁寧にマッサージし続けた。だが、あの甘ったるい声がまた響くたびに、心臓がバクバクして落ち着かない。



「んんっ……そこ、もっと強く……」



 またその声!いや、それ以上甘い声を出さないでくれ!俺の理性がどんどん溶けていく!


 全身から冷や汗が吹き出し、心臓はまるで異世界の大魔王と戦っている時以上の勢いで鼓動している。俺は無理やり視線を下に向けながら、マッサージに集中し続けた。


 
「だいぶ肩こりがほぐれてきたみたいですね!やっぱり日常生活で溜まる疲れっていうのは――ん?」



 突然、静香さんが体をひねり、俺を振り返った。俺のある一点を見つめて。



「雷丸君。私、もっと甘えたくなっちゃったわ……ねぇ?」



 静香さんの低く、柔らかい声が耳に届いた。その瞬間、背筋がゾクリと震える。彼女の目が、どこか怪しげに光っているのを感じた。


 はい、アウト!完全にアウトだ!この状況、俺一人じゃ対処できねぇ!異世界で魔王を倒した俺でも、この静香さんという魔性の女には敵わない!

 
 

「ねぇ、雷丸君……」



 静香さんが俺の耳元に顔を寄せて、甘く囁く。その声は、まるで魔法の呪文のように俺の理性を削り取っていく。


 
「今夜は、このまま一緒に過ごしてくれない?」



 な、なんだと!?一緒に過ごす!?しかもこの甘い雰囲気の中で!?ええぇぇぇぇぇぇぇ!?どうすればいいんだ!
 


「し、静香さん!そ、それはどういう意味で――」



 俺が半ばパニックになりながら言葉を紡いでいると、静香さんは柔らかく微笑みながら俺の腕をしっかりと引き寄せ――そのまま、俺をベッドに押し倒した。
 



「いや、ほんとに押し倒さないでください!」

「ふふ、いいじゃない。今日は私と一緒にゆっくりしましょう?」

 

 ベッドに沈む俺の体。ふかふかのマットレスに包まれているのに、背中にはまるで重力が倍増したような感覚。静香さんは、なんとも優雅な微笑みを浮かべながら、そのまま俺の上に覆いかぶさってきた。



「ふふ、雷丸君ったら、そんなに緊張しなくていいのよ」



 耳元で囁くその声は、甘く、柔らかく、そしてどこか危険な香りがした。俺の理性は崖っぷちだ。異世界で命を懸けた戦いをくぐり抜けた俺の心が、いとも簡単に崩れ去りそうになっている。



「静香さん、俺……!」



 声にならない声を絞り出す俺を見て、静香さんはさらに微笑みを深める。

 

「大丈夫、雷丸君。今日は私がリードするわ」



 静香さんのぬくもりに包まれた俺は、まるで溶けていくように抵抗を忘れていった。ベッドの上で、心地よい眠りのような、けれども甘い夢の中にいるかのような……そんな感覚に引き込まれていく。



「雷丸君……」




 静香さんの温かい手が俺の肩を優しく撫で、そのまま俺の耳元で再び囁いた。


 
「今日は私のわがままを聞いてくれるわよね?」


 
 もう無理だ。俺の理性が、ついに限界を迎えた。
 

 そして、そのまま静かに、俺たちは甘い一夜を共に過ごすことになったのだ。

 
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