79 / 189
第79話 魔性の女2
しおりを挟む夕食を終え、俺、雪華、貴音、焔華、麗華の5人でリビングでのんびりとくつろいでいた。その時、俺のスマホが軽く震えた。
ポケットから取り出し、画面を覗くと――静香さんからのメッセージだ。
「雷丸君、ちょっと私の部屋まで来てくれる?」
短いけど、どこか意味深な内容。何か急ぎの話か?それとも、俺だけに話したいことでもあるのか?
俺はメッセージを見つめながら立ち上がり、軽く伸びをした。
「ちょっと静香さんに呼ばれたから、行ってくるわ。」
その瞬間、リビングの空気が一変する。全員がピタッと俺を見つめ、そして――。
貴音が一番に反応した。ソファの上でぴょんと跳ねて、両手をひらひらと振りながら無邪気に笑う。
「お兄ちゃん、静香さんに呼ばれるなんて!何の話?愛の話かな?」
「いやいや、そんなわけねぇだろ!」
俺が即座に否定しても、彼女の目はキラキラと輝いたままだ。
雪華は控えめに微笑みながら、手を合わせて俺を見つめる。
「雷丸様……静香さんと二人きりなんですね。なんだかロマンチックです。」
その優しい言葉と微笑みに、俺の胸が少しだけドキッとする。だが、その空気を一瞬で壊したのは――
焔華だった。豪快に笑いながら、わざとらしく肘を突き出してきた。
「おぬし、静香にお呼ばれとは……今夜は熱くなりそうじゃのう!」
「そんなんじゃねぇって!ただ何か用があるだけだ!」
俺が慌てて反論するも、焔華はニヤリと笑い、わざとらしく大きく頷く。
「ほほう、そうかそうか。まぁ、詳しい話は戻ってきてから聞いてやるぞ!」
麗華は腕を組み、少し冷たい視線を俺に向けながら呟く。
「お母さんに呼ばれるなんてね。雷丸、まさかまた何かやらかしたんじゃないでしょうね?」
「なんで俺が呼ばれるたびに問題起こしたことになるんだよ!」
俺が抗議すると、麗華は口元を少しほころばせながら肩をすくめた。
「そうね。でもまぁ、お母さんが呼ぶんだから、何か重要な話なんでしょう。せいぜい失礼のないようにね。」
4人の視線と茶化しが俺に集中し、顔が熱くなるのを感じた。
「おいおい、そんなに冷やかすなって!俺、ただ静香さんに呼ばれただけなんだから!」
だが、彼女たちは全く聞く耳を持たない。焔華は手を叩いて大笑いし、貴音は「お兄ちゃん、頑張ってね!」と全力でエールを送ってくる。雪華は「行ってらっしゃいませ……素敵な時間を」と優雅に囁き、麗華はため息をつきながらも、どこか温かい目で「どうせ大したことない話でしょうけど」と言う。
俺は頭を掻きながらリビングを後にし、静香さんの部屋へ向かう。
「ったく、あいつら……!」
背中に響くみんなの笑い声を聞きながら、俺は少しだけ照れくさい気持ちを抱えて廊下を歩き始めた。
――――――
俺は静香さんの部屋へと向かい、扉の前で深呼吸を一つした。ノックをすると、静かで落ち着いた声が部屋の中から聞こえてくる。
「どうぞ、雷丸君。」
ドアを開けると、そこには柔らかな間接照明に包まれた空間が広がっていた。ふわふわのクッションがいくつも並べられたソファが目に入り、その中心に静香さんが座っている。彼女は優雅な微笑みを浮かべながら、俺を見つめていた。
「いらっしゃい、雷丸君。待ってたわ。」
その声は、どこか甘く、ゆったりとした響きがあった。部屋の中にはほんのりと甘い香りが漂い、まるで夢の中に誘われるような感覚になる。
「ど、どうも……なんですか、話って?」
俺がぎこちなく尋ねると、静香さんはゆっくりと立ち上がり、俺の方に歩み寄ってきた。その動きは、まるで映画のスローモーションシーンのように優雅で、全ての瞬間が絵になる。近づいてきた彼女が、ふわっと俺の腕に絡みつく。
「実はね、雷丸君。最近、すごく疲れていて……少し甘えたくなっちゃったの。」
その言葉に、俺の脳内警報が一気に鳴り響く。
「え?あ、甘えるって……?」
驚きながら聞き返すが、静香さんは微笑みを崩さず、さらに俺の腕にしっかりと絡みついてくる。その感触は柔らかく、心地よく――いや、なんとも表現し難いほど特別だ。
「お願い……少しの間でいいから、あなたに甘えたいの。どうかしら?」
彼女の顔が俺のすぐ近くに寄り、耳元で囁かれる。その声は低く甘く、まるで砂糖漬けの言葉がそのまま音になったようだ。耳元に直接響く囁きに、俺の心臓は爆音を立てる。
「えっ、ええっ!?甘えるって……俺にですか!?」
俺の声が裏返りそうになるが、静香さんはまるで何事もないかのように、さらに体を寄せてくる。その柔らかい感触、漂う甘い香り、耳元での囁き――どれもこれも理性を完全に破壊しに来ている。
頭の中で、さっきの焔華の言葉がエコーのように響く。
「おぬし、静香にお呼ばれとは……今夜は熱くなりそうじゃのう!」
まさか――これが、焔華の言っていた「熱くなる」状況なのか!?俺はどうすればいい!?ここで理性を失うのか、それとも――!
静香さんの手がそっと俺の胸元に触れる。その手の動きは優雅で、どこか儀式的ですらある。彼女の瞳が俺を見上げ、静かに微笑む。
「ねぇ、雷丸君……少しだけでいいの。本当に少しだけ……甘えさせて?」
俺の思考回路が完全にショートする。その場から動けない――いや、動いてはいけないような気がする。理性と感情がせめぎ合い、俺はただ静香さんの瞳に吸い込まれそうになる。
「し、静香さん、それは――!」
何かを言おうとするが、言葉が喉で詰まり、先に進まない。この状況、どうすれば――!
静香さんの瞳は、何か切実なものを宿しているようにも見える。そしてそのまま、耳元でまた囁かれる。
「……私、雷丸君のことを信頼してるの。だから、少しだけ……ね?」
その一言に、俺の心は一気に揺さぶられた。信頼――そうだ、静香さんは俺を信じてくれている。この状況をどう乗り切るかで、俺の器が問われる。
「わ、わかりました。じ、じゃあ、お疲れのようだし、マッサージでもしましょうか?」
口から出た言葉は、俺の中で唯一この状況を切り抜ける手段として浮かんだ「マッサージ」だった。
異世界で学んだマッサージテクニックを使えば、静香さんの疲れを癒すことができる――はずだ。
「おれ、マッサージには自信あるんで!」
そう力強く言った瞬間、静香さんの目が輝いた。その瞳には期待と喜びが満ち溢れていて、俺の心臓がドキッと跳ねる。いや、そんな純粋に嬉しそうにされると、逆にこっちのプレッシャーがやばいんだが!?
「そうなの?じゃあお願いしようかしら。私はどうすればいい?」
静香さんが微笑みながら言ったその言葉に、俺はますます動揺する。だが、ここで引くわけにはいかない!俺は深呼吸をし、手のひらを擦り合わせて準備運動をしながら答えた。
「えっと……じゃあ、そこのベッドに横になってもらって――」
そう言いながら俺が静香さんに手を伸ばした瞬間、なぜか――いや、本当にどうしてか分からないんだけど――俺は静香さんをそのままベッドに押し倒してしまった。
思いっきり仰向けに。勢いがつきすぎたのか、それとも緊張で力加減を間違えたのか、理由はどうであれ、事態は予想以上にやばい方向に進んでいた。
「……押し倒されちゃったわ。」
その静香さんの言葉に、俺の全身が一瞬で硬直する。いやいやいやいや、待て待て待て!押し倒したんじゃない!これはあくまでマッサージの一環――いや、ただの手違いだ!そう弁解しようとするが、静香さんのその声色が妙に色っぽいのはどういうことだ!?
「いやいやいやいや!違いますって!ほんと、マッサージですから!ただの健康的なマッサージで……!」
完全にパニック状態の俺に対して、静香さんは微笑みを浮かべたまま優雅に答える。
「ふふ、冗談よ。雷丸君、そんなに慌てないで。」
その言葉に少しだけホッとするも、静香さんの穏やかで甘い声が俺の冷静さを再び削り取っていく。
「お願いするわ、マッサージ。疲れているのは本当だから……あなたに癒してほしいの。」
そう言われたら、俺には断る理由なんてどこにもなかった。俺は深呼吸を一つし、心の中で覚悟を決めた。
「わ、わかりました!じゃあ始めますね……!」
0
あなたにおすすめの小説
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる