異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第82話 魔性の女5

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 朝日が柔らかく差し込むリビングに、俺と静香が並んで降りていく。いつもよりほんの少し距離が近い――いや、明らかに親密さを漂わせている。リビングにはすでに雪華、焔華、貴音、麗華の4人が集まっていた。彼女たちの視線が一斉にこちらに集中する。


 俺はぎこちなく口を開いた。


 
「……お、おはよう」

「おはよう、みんな。……ええと昨夜は、雷丸君を独占してしまってごめんなさいね」 


 
 静香も落ち着いた様子で微笑みながら皆に挨拶をした。だが、その頬はわずかに赤らんでいる。
 

 焔華が勢いよく立ち上がり、声を張り上げた。

 

「んん~?なんじゃなんじゃ、二人とも、距離がやけに近いんじゃないか?ほぉ~、ふふふ……よっぽど楽しい夜を過ごしたようじゃな?」



 焔華は両手を腰に当て、ドヤ顔で俺たちを見下ろしている。そのストレートすぎる発言に、俺の顔は一瞬で真っ赤になった。



「なっ――!」



 慌てて否定しようとする俺を無視して、焔華はさらに追い打ちをかける。


 
「いやいや、その顔と静香の雰囲気で全部バレバレじゃ!まったく、おぬしもやるのう、雷丸!」

「や、やめろって!焔華!」



 必死の抗議もむなしく、焔華はからかい続ける。笑いながら何度も俺を指差し、「これからは『夜の雷丸』とでも呼ぶかのう!」と爆弾発言を放つ。
 

 そんな焔華の言葉を聞いて、麗華は腕を組みながら深々とため息をついた。

 

「……あぁ……本当に、頭痛がするわ……」


 
 麗華は天井を見上げるようにして目を閉じ、その表情には戸惑いが見て取れる。そして、さらに呟くように続けた。

 
「こういう時が来るのはもちろん覚悟してたわ。でも、実際に自分の母親が自分の恋人と一夜を共にしたと分かると……色々と考えることがあるわね」



 その冷静すぎる言葉には、彼女の中に渦巻く複雑な感情が滲み出ていた。俺は思わず視線を逸らし、どう言葉を返せばいいのか分からなくなる。

 静香は麗華の言葉を静かに受け止め、少し困ったような表情を浮かべながら優しく声をかけた。


 
「麗華、気持ちは分かるわ。でも……私は雷丸君を愛しているの。」



 その言葉には、静香の揺るぎない想いと、麗華に理解を求める切実さが込められていた。彼女はそっと麗華の隣に座り、少し身体を傾けて目線を合わせる。

 

「難しいかもしれないけど、受け入れてくれないかしら?私はこれからもみんなで仲良くやっていきたいの。」



 その言葉を聞いた麗華は、しばらく無言のまま静香を見つめていた。


 その空気を打ち破るように、焔華が腕を組んで豪快に笑い出した。


 
「ふん!まぁ、麗華もそのうち慣れるじゃろ!雷丸のハーレムなんて、まだまだこれからもっと賑やかになるかもしれんしのう!」



 彼女のその無邪気さに場の空気が少し和らぐ。
 

 焔華の言葉に、麗華は再び深いため息をついた。そして、静かに目を閉じると、肩の力を抜いて穏やかな声で呟いた。

 

「まぁ、慣れるしかないんでしょうね……」



 彼女は静香を見つめ、微かな笑みを浮かべながら続けた。


 
「分かったわ、お母さん。私も、これからもみんなで仲良くやっていきたい。」



 その言葉には、彼女なりの覚悟と、静香への信頼がはっきりと込められていた。感情を抑えつつも、麗華は静香に対する愛情と敬意を精一杯伝えようとしているのが分かる。静香はその言葉を聞き、柔らかな微笑みを浮かべた。

 

「ありがとう、麗華。」



 静香はそっと麗華の手を取り、その手を優しく握り締めた。その仕草は、とても静かで、暖かく、母親としての愛情が滲み出ている。その瞬間、静香の瞳がわずかに潤んでいるのが見えた。

 その場の空気が少し感動的に染まりかけた瞬間、焔華が勢いよく声を上げた。


 
「ほら、麗華もいい感じに受け入れてくれたのう!やっぱり我がハーレムファミリーの一員たるもの、大人の対応ができるんじゃな!」



 焔華は満足げに腕を組みながら、豪快に笑う。その元気な声が、少し重くなりかけていた空気を一気に軽くしてくれた。麗華は少し呆れたようにため息をついたが、どこか照れくさそうに視線を逸らしている。


 俺は心の中で、焔華に静かに感謝する。微妙な雰囲気になりそうな時、あいつの明るさと勢いが場を救ってくれることが多い。今回もその例外じゃなかった。


 俺は焔華を横目で見ながら、改めて思う。あいつは単に元気なだけじゃない。場の空気を察し、皆が笑顔になれるように動ける――そういうところが、本当にすごい。俺は内心、焔華のこうした気配りを尊敬していた。

 
 雪華はいつもの柔らかな笑顔を浮かべ、控えめに静香に声をかけた。

 

「静香さん、良い時間を過ごせましたか……?最近お疲れのようでしたから……。」



 その声には、どこか安心したような優しさが込められている。雪華は他の誰よりも、静香の疲れや悩みを気にかけていたのだろう。

 静香はその問いかけに軽く頷き、微笑みを返す。


 
「ええ、おかげさまで……とても素敵な時間を過ごさせてもらったわ」



 その言葉に雪華は安心したようにふっと笑みを浮かべ、「それならよかったです」と静かに呟いた。
 

 一方、貴音は状況を完全に理解しているのか、それとも全く気にしていないのか、無邪気な笑顔を浮かべながら静香に駆け寄った。その表情には、一切の疑いも気負いもない。

 

「静香さん、なんだか今日は顔色がいいね!昨日はちょっと疲れてたみたいだったから、心配してたんだよ。」



 その言葉に、静香は一瞬驚いたようだったが、すぐに優雅な微笑みを浮かべ、さらりと答える。


 
「えぇ、雷丸君にたくさん癒してもらったの。」



 貴音はその返事に満面の笑みを浮かべ、大きく頷く。


 
「そっかぁ~!静香さんが元気になってよかった!お兄ちゃん、もっと静香さんを元気にしてあげてね!」



 その純粋すぎる言葉に、俺と静香は一瞬目を合わせ、少し戸惑ったように苦笑する。それでも、その無邪気さが場の空気をさらに柔らかくしたのは間違いなかった。

 
 
「おう!これからもみんなが幸せになれるように、ハーレム王として全力を尽くすぜ!」



 そんな俺の言葉に、静香が穏やかに微笑み、麗華がため息をつきながらも小さく笑みを浮かべる。
 
 雪華は控えめに拍手しながら、「雷丸様ならきっと大丈夫です」と優しく呟く。そして、焔華は腕を組みながら「頼りにしとるぞ、王様!」と豪快に笑い、貴音は「お兄ちゃん、みんなのこと頼んだよ!」と元気に声を上げる。


 こうして、俺たちのハーレム生活は、少しの波乱を交えながらも穏やかに続いていくのだった。


 
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