異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第83話 魔性の女6

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「それじゃあ、みんな!今日は静香さんの仕事を手伝うぞ!」



 俺の力強い宣言がリビングに響くと、全員が少し驚いた顔をしながらも、次第に賛同の表情を浮かべた。


 麗華が腕を組みながら、少し冷静な声で問いかける。


 
「お母さん、そんなに仕事が溜まってるの?」



 静香は微笑みながら、控えめに頷く。


 
「ええ……最近、色々と案件が重なってしまってね。私一人では少し手が回らなくなっていたの。」


 その言葉を聞いて、俺は拳を握りしめて叫んだ。


 
「名付けて『ハーレム作業部隊』だ!今日はみんなで静香の仕事を片付けるぞ!」



 雪華が控えめに手を挙げ、優しく微笑んで言った。


 
「じゃあ、私はまず軽食を作ってきますね。皆さんが作業の合間に召し上がれるようにしておきます。」


 
 そう言うと、雪華はエプロンを手に取り、優雅に台所へ向かった。その後ろ姿には、安心感が漂う。

 焔華が肩を叩きながら笑う。


 
「任せとけ、雷丸!わしは力仕事は得意じゃから、なんでも持ち運んでやるぞ!」



 貴音は元気よく手を挙げながら言った。


 
「私、書類を運んだり分類したりするよ!静香さん!一緒に頑張ろうね!」



 麗華はため息をつきながらも、やれやれといった様子で静香に向き直る。


 
「……まったく、ハーレム作業部隊なんて名乗るのはどうかと思うけど、手伝わないわけにはいかないわね。手際良くやりましょう。」



 静香が感謝の微笑みを浮かべながら、俺たちを仕事部屋へ案内する。


 俺たちが向かったのは、伊集院家の一室――静香の仕事用の書斎部屋だった。ドアを開けた瞬間、目の前に広がったのは、まさに「書類の山」。ファイルが積み上げられ、棚には分類されていない書類がぎっしり詰まっている。

 

「な、なんだこれ……!?」



 俺は思わず声を上げた。これほどの量の書類を静香一人で抱えていたのかと思うと、胸が熱くなる。

 
 静香が申し訳なさそうに言った。

 

「ごめんなさいね……これ全部、最近溜まってしまったの。分類して整理する必要があるんだけど、時間がなくて……。」



 俺は静香の肩に手を置き、力強く頷いた。


 
「大丈夫だ、静香。これくらい、俺たちハーレム作業部隊の力で片付けてやる!」



 全員で役割を分担し、作業を開始することに決定。


 
「まず、この部屋で全員作業するのは狭いから、リビングに全部運ぶぞ!」と俺が提案。力仕事担当の俺と焔華が箱やファイルを次々とリビングに運ぶ。

 
 焔華は軽々と書類の箱を持ち上げ、「ほれほれ!これくらい軽いもんじゃ!」と豪快にリビングへ運ぶ。その姿はまさに力仕事のプロ。

 貴音は箱の中から書類を取り出し、一つ一つ丁寧に分類を始めた。


 
「これって契約書かな?大事そうなのと、そうじゃないのを分ければいいよね、静香さん?」

「ええ、それで大丈夫よ。貴音、ありがとう。」

「うん、任せて!」



 彼女の素早い手さばきが作業をどんどん進める。

 麗華は静香の指示を受けながら、分類された書類を適切なファイルに収納する係を担当。


 
「これは重要書類……これは参考資料……間違えたら後で大変だわね。しっかり確認しておかないと。」



 その真剣な表情と冷静な手さばきに、全員が安心感を覚える。

 静香は全体の指示役として、優先順位や細かい指示を的確に出しながら、俺たちをサポート。
 

 全員が一心不乱に作業を進めていると、台所から雪華の柔らかな声が響いた。


 
「軽食ですよ~。」



 リビングに運ばれてきたのは、綺麗に整えられたおにぎりの盛り合わせと、湯気の立つ味噌汁。思わずみんなの目が輝いた。

 

「おぉ!雪華、さすがだな!」



 俺は歓声を上げると、真っ先に目の前に並べられたおにぎりを手に取った。おにぎりの表面には、ふっくらと炊き上がったご飯の粒が輝いて見え、ほんのりと醤油の香ばしい匂いが鼻をくすぐる。

 
「いただきます!」と心の中で叫びながら、迷うことなくひと口かじる。

 
 その瞬間、口の中に広がるのは、絶妙な塩加減とお米の自然な甘さ。粒立ちの良いお米が舌の上でほぐれていき、海苔の香りと調和する。


「うまっ!!」



 その一言が、俺の喜びを抑えきれず、思わず口をついて出た。勢いに任せてもうひと口頬張ると、今度はおにぎりの中から顔を出した具材――梅干しのほのかな酸味が、絶妙なアクセントを加えてくる。甘さと酸味のバランスが完璧で、まさに「これぞおにぎり!」という味だ。


 次に手を伸ばしたのは、雪華が丁寧に用意してくれた味噌汁だ。湯気が立ち上る味噌汁をそっと口に含むと、体の芯までじんわりと温まる。出汁の香りがふわりと鼻腔をくすぐり、柔らかく煮込まれた具材の食感が口の中で優しく踊る。


 
「これ……ホッとするな……」



 自然と呟く声は、味噌汁の深い味わいに完全に心を掴まれた証拠だ。冷えた体がじわじわと解けていくようで、まるで心までほぐされていくような安心感を覚える。

 
 みんなもそれぞれ感想を述べ、焔華が豪快に言った。


 
「これ、ほんとに美味いのう!雪華、天才じゃ!」



 雪華は控えめに微笑みながら答えた。

 

「ありがとうございます。実はこれ、私の出身地、新潟県のお米を使いました。」

「なるほど、それでこんなに美味いのか!新潟って、米どころだもんな!」


 
 俺が興奮気味に言うと、雪華は嬉しそうに頷いた。


 
「はい。ずっと故郷のお米で美味しいおにぎりを作りたいって思っていたんです。雷丸様や皆さんに食べていただけるなら……とびきりのものをと思いまして。」



 その真心に胸を打たれた俺は、勢いよく言った。


 
「雪華、これ本当に美味いよ!俺、これ毎日食べたい!」



 その言葉に貴音が隣でクスクスと笑いながら、「お兄ちゃん、それってプロポーズみたいだね」と茶化してくる。


 雪華はそのままにっこり微笑み、俺に向かって囁くように言った。

 

「ふふ……じゃあ、雷丸様。私をお嫁にしてくれますか?」



 その柔らかい声と可愛らしい表情に、俺の心臓は一瞬でドキッと跳ね上がる。

 

「もちろんだよ!新潟県産の雪女、絶対お嫁にする!」


 
 その言葉に周りが大笑いする中、焔華が肩を叩きながら言った。


 
「おぬし、ほんとに全力で言うとこがすごいのう!新潟県産とか、どこのブランド紹介じゃ!」



 静香も口元に手を当てて微笑みながら、「新潟県産の雪女……なかなか洒落た表現ね」と優雅に反応する。


 麗華は冷静を装いつつも小さく微笑み、「まったく、どこまでも突っ走るわね」と軽くため息をついた。


 貴音は大きな笑顔で、「雪華、良かったね!」と拍手をしている。
 

 雪華は恥ずかしそうに頬を赤らめながら、「雷丸様……ありがとうございます。そう言っていただけただけで、東京に来た甲斐があります……!」と嬉しそうに微笑んだ。


 その姿に、俺はますます雪華の魅力を感じてしまう。


 
「いや、マジで最高だよ、雪華!これからもよろしく頼むな!」



 俺が熱く言うと、雪華は小さく頷きながら、「はい……雷丸様」と優しい笑顔を返してくれる。


 作業の合間に訪れたこの甘いひと時は、俺たちにさらにやる気を与えてくれた。そして、静香の書類整理というミッションに向けて、俺たちハーレム作業部隊は再び奮起するのだった。


 

 ――――――――――



 作業の合間に全員で軽く雑談を交えながら、効率よく進めていく。

「これもまた、ハーレム王の仕事だな!」と俺が笑いながら言うと、全員がクスッと笑った。


 静香が穏やかな声で言った。

 

「みんなのおかげで、本当に助かるわ。ありがとう……私、幸せね。」



 その一言に全員が笑顔になり、作業の疲れも吹き飛ぶ。


 こうして、俺たち『ハーレム作業部隊』の活躍により、静香の仕事はみるみる片付き、リビングは温かな空気に包まれていった。
 

 

 ――――そして。



 夕方には書斎の部屋に積み上がっていた書類がすべてきちんと整理され、整然とした棚が広がっていた。

 
「これで全部終わったわね……!」と麗華が言い、全員が達成感に満ちた顔で大きく息をつく。


 静香は感極まったように目を潤ませながら、そっと頭を下げた。


 
「本当にありがとう……こんなに早く終わるなんて思わなかったわ。これもみんなのおかげよ。」



 その言葉に、俺は自信たっぷりに胸を張り、全員を見回しながら力強く宣言した。

 

「まぁな!俺たちはハーレム作業部隊だからな。静香が困ってるなら、どんなことでもやってやるさ!」



 貴音が嬉しそうに手を叩きながら言った。

 

「本当にすごいよね!こんなにたくさんの仕事を、みんなで全部片付けちゃうんだから!」



 俺は彼女の言葉に嬉しくなり、貴音に向かってニヤリと笑いかけた。


 
「当然だろ?だって俺たちだぜ!」



 その言葉に、雪華が柔らかく微笑みながら頷き、焔華が豪快に笑いながら拳を突き上げた。

 

「そうじゃのう!これでわしら、さらに最強のハーレムじゃ!」



 麗華はため息をつきながらも、どこか満足そうな表情で静香に向き直った。


 
「……お母さん、これで少しは肩の荷が下りたでしょうね。」



 静香は微笑みながら、彼女の手をそっと握り、「ええ、本当に助かったわ」と感謝を伝えた。その穏やかなやり取りを見て、俺は心の中で満足げにガッツポーズを取る。


 こうして、俺たちは伊集院家の膨大な仕事をすべて片付けた。体は少し疲れたけど、心は充実感で満たされている。


 ハーレム王としての俺の責務――それは、ただ美少女たちに囲まれるだけじゃない。みんなの笑顔を守り、支えることだ。それを再確認した今日一日だった。


 
「さぁ、これからもっとみんなを幸せにするぞ!」



 俺は心の中で新たに決意を固めながら、夕暮れの空を見上げた。

 
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