異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第84話 呪術師界隈1

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 その日の伊集院家の晩御飯も、相変わらずの豪華さで、テーブルに並ぶ料理はまるで高級料亭の懐石料理みたいだ。俺は静香さん、麗華、雪華、焔華、そして貴音と一緒に席についていた。まぁ、ハーレム王の座にふさわしい待遇ってやつだな。

 
 食卓には鮮やかな料理が並んでいて、俺の箸は止まらず、みんなとわいわい話しながら進んでいた。と、その時、静香さんがふいに話を切り出した。



「そういえば雷丸君、貴方、首里城で黒瀬禍月と鳥丸天道に会ったんですってね?」

「……あぁ、そうだな」



 俺は箸を止めて、静香の方を見た。その名前を聞くだけで、さっきまでのうまい飯がちょっとだけ重く感じた。いや、正確には胃がキリッとした気がする。

 麗華が手元の湯飲みを置きながら、冷静な口調で付け加えた。


 
「会っただけじゃないわ。黒瀬と鳥丸――二人から陣営の誘いを受けていた。」



 その言葉に、貴音が目を丸くして驚いたように言った。


 
「黒瀬さんと鳥丸さんって、どっちも大物の呪術師なんでしょ?そんな人たちからお誘いを受けるなんて、すごいじゃんお兄ちゃん!」



 その純粋な反応に、俺は苦笑いを浮かべながら首を振る。

 

「いやいや、それが全然嬉しくないんだよ。」



 俺は箸を置き、少し声を低めて話を続けた。

 

「あの二人、マジで危ない奴らなんだぜ?黒瀬なんか、“妖怪は絶対殺す”ってガンギマリだし、鳥丸は『かわいそうですねぇ』とか言いながら首里城の封印を解きやがった。」



 その言葉に、焔華が興味深げに目を細めながら言った。


 
「ふむ、なんとも極端な連中じゃのう。黒瀬は完全に殲滅派、鳥丸は崇拝派の象徴みたいなもんじゃろうて。」



 雪華は箸を握りながら、少し心配そうな表情を浮かべた。

 

「でも……雷丸様、そんな人たちがどうして雷丸様を誘うんでしょうか?」



 その問いに、俺は肩をすくめながら答えた。

 

「そりゃ、俺が異世界帰りで、ちょっとばかり目立ってるからだろ。黒瀬は俺の力を使って妖怪をぶっ潰したいだけだし、鳥丸は『象徴』だとか言って俺を道具扱いするつもりじゃね?」



 俺がそう話すと、静香が隣の麗華に視線を向け、穏やかに問いかけた。


 
「麗華、貴方はどう感じたの?」



 麗華は少し考え込んでから、冷静な声で答えた。


 
「鳥丸天道は雷丸君に対して、どこか同族意識を持っているように見えたわ。けれど黒瀬禍月の方は……警戒心を抱いているって感じだった。」

「黒瀬の警戒心?俺、あの時黒瀬に手も足も出なかったんだぜ?」



 俺は苦笑しながら言葉を続けた。

 

「根源解放Level1じゃ黒瀬の動きが目で追えなかったし、Level2だって正直、勝てるイメージが浮かばないんだよ。」



 その言葉に雪華が小さく首を傾げ、不安そうに口を開いた。

 

「異世界で魔王を倒した雷丸様ですら……そう感じるのですか?」



 貴音も目を丸くしながら尋ねる。

 

「じゃあ、魔王よりも黒瀬さんや鳥丸さんの方が強いってこと?」



 その問いに、俺は言葉を探す。だが、頭の中には次々と異世界での戦いの記憶が浮かんできて、自然と口が動いた。


 
 ――――いや、違う。
 


「…………いいや。魔王アヴァルガス……あいつはもっともっとやばかった。」



 俺の声には思わず力がこもった。まるで、当時の恐怖が身体の奥底から甦るように感じられる。



 魔王アヴァルガス。
 全能の怪物。防御不能の戦闘を行い、その理不尽さは、戦術や戦略をすべて無意味にする正真正銘の最強。


 俺は拳を握り締めながら続けた。

 

「あいつの力は……常識じゃ測れなかった。『圧倒的』とか『理不尽』って言葉じゃ足りないほどだったんだ。」



 貴音は困惑しながらもさらに問いかけてくる。

 

「でもお兄ちゃんは魔王を倒したんだよね?じゃあなんで黒瀬さんや鳥丸さんには手も足も出ないの?」



 その言葉に俺は反射的に返そうとしたが、ふと口が止まった。

 

 ――――そういえば、どうやって魔王を倒したんだ?



 その瞬間、胸の奥が妙な違和感でざわつき始めた。俺は間違いなく魔王を倒した。だが、その「どうやって倒したか」という部分が、霧がかかったように曖昧だった。


 俺は額に手を当て、記憶を探るように目を閉じた。


 魔王との最後の戦い――。確かに俺は奴を倒した。それは事実だ。
 だが、どうやって?どんな手段で?どんな戦いをして……?


 気付けば、周りの視線が俺に集中しているのを感じた。雪華や貴音は心配そうに俺を見つめ、麗華はその鋭い目で静かに俺を観察している。焔華は腕を組んでじっと黙って待っている。そして静香は、俺の動揺を悟ったような穏やかな瞳でこちらを見つめていた。


 俺は重い沈黙を破るように、自分でも信じられない言葉を口にした。

 

「……正直、どうやって倒したのか、思い出せない。」



 その場が一気に凍り付いたような気がした。

 貴音が小さな声で囁くように聞いてきた。


 
「思い出せない……って?本当に?」



 俺は頷く。


 
「いや、本当に覚えてないんだ。戦ったのは確かだ。でも、最後にどうやって奴を倒したのか……まるで記憶が欠けてるみたいなんだよ。」



 その言葉に、麗華が静かに口を開いた。


 
「雷丸君、それって……何かしらの影響を受けている可能性も考えられるわね。例えば、魔王そのものの力とか、あるいは異世界の仕組みとか。」



 静香が優しく頷き、俺の肩に手を置いた。


 
「記憶に欠落があるのは心配だけど、雷丸君が魔王を倒したのは紛れもない事実よ。今はその事実を信じて、目の前の問題に集中しましょう。」



 その言葉に、俺はかすかに救われるような気がした。


 
「そうだな……ありがとう、静香さん。」

 

 俺は静香さんの優しい微笑みに少し安心しながら頷いた。


 ――魔王を倒した「どうやって」の部分は思い出せない。でも、きっといつかその答えに辿り着かなきゃならない。そんな気がする。


 
 ふと、麗華がスッと背筋を伸ばし、真剣な表情で口を開いた。


 
「雷丸君の戦闘能力については、一旦置いておきましょう。だけど、貴方の一番の武器は、戦闘力じゃなくて、その“影響力”よ。」

「影響力?」



 麗華の言葉に俺が聞き返すと、彼女はしっかりと頷いて続けた。

 

「このままいけば、貴方の影響力は世論を動かすほどのポテンシャルを持っているの、貴方自身、自覚している?」

「世論を動かすほど……そんなにか?」



 俺が驚いていると、麗華は淡々とした口調で具体例を挙げた。

 

「プロサッカー入団式でのあのスピーチ、テロリストを撃退した動画、そしてプロリーグでの華々しい活躍――それだけで、貴方は既に多くの人の目に留まっている。」



 その言葉に貴音も元気よく頷いて賛同する。

 

「うん!お兄ちゃん、すごいよ!私の学校でもお兄ちゃんのこと知らない人、ほんとにいないもん。」



 貴音の笑顔に、俺は思わず照れながらも苦笑いを浮かべる。


 麗華はさらに静かな声で言った。

 

「飯田君の存在そのものが、彼らにとって脅威なのよ。たとえ戦闘力で勝てなくても、貴方の“影響力”次第では世論や勢力図を変えることだって可能よ。それを黒瀬や鳥丸が見逃すわけがないわ。」



 その言葉に、俺は少し背筋が寒くなる思いがした。俺の行動一つで、そんなに大きな影響があるなんて……。


 静香さんがそっと微笑みながら俺の肩に手を置いた。


 
「雷丸君、だからこそ貴方には慎重に選択をしてほしいの。私たちは貴方を信じているし、どんな道を選んでも尊重するわ。」

「静香さん……。」



 俺は彼女の言葉に胸を打たれながらも、自分の選択がこれからどれほど重要なのか、改めて実感した。


 静香さんが優しく微笑みながら口を開いた。


 
「飯田君、貴方には呪術師の界隈について少し教えておきましょうか。これから貴方も、その世界に巻き込まれることになるでしょうから。」



 その言葉に、俺は一瞬気が引き締まる。そして、堂々と答えた。


 
「そうだな……よろしく頼むぜ!静香さん!」



 背筋をピンと伸ばしながら、俺は静香さんの言葉に集中する。

 静香さんは静かに頷きながら、語り始めた。


 
「まず、呪術師の界隈には大きく分けて三つの派閥があるの。殲滅派、崇拝派、そして中立派。これは知ってるわね?」

「知ってる知ってる!」

 

 俺はちょっと自信を持って答えた。麗華から(盗聴器経由で)色々聞いてたしな。まぁ、さすがにそこは大人の対応として言わないけど、心の中ではドヤ顔だ。

 しかし、麗華がすぐに俺に冷たい視線を送ってきた。



「ええ、きっと盗聴器で得た情報ね。随分と熱心に勉強していたみたいだけど?」



 と、麗華はチクリと嫌味を言ってくる。



「お、おい、そんなこと言うなよ!ちゃんと教えてくれて助かったって意味でさ……!感謝してんだぜ、ほんと!」



 俺が慌ててフォローしようとすると、静香さんは微笑みながら言葉を続けた。



「まぁ、雷丸君が情報収集をしているのは結構なことよ。実際、貴方がこれから立ち向かう相手は、想像以上に厄介だから。」




 
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