異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第90話 職場体験4

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 政治家としての黒瀬は、超一流だった。

 
 黒瀬禍月の演説が始まると、瞬く間に広場の空気が変わった。彼の姿は一切の無駄がなく、端正なスーツ姿に身を包んだその姿は、まるで鋼のような威厳を放っていた。黒瀬の一挙一動は、どこか重々しく、しかし確かな存在感があった。

 
 低く、響き渡る声がマイクを通じて広場全体に響くと、それまでざわざわと騒がしかった群衆がまるで魔法にかかったかのように静まり返った。黒瀬は、ゆっくりと一呼吸置いてから、冷静に口を開いた。


 
「日本という国が、今この瞬間に何を求めているのか――皆さんは真剣に考えたことがありますか?」

 

 彼の言葉は、淡々としていながらも圧倒的な説得力を持っていた。黒瀬は一度、観客全体をゆっくりと見渡し、続けた。


 
「国の未来は、決して他人任せにはできない。皆さんが感じている閉塞感、停滞感――それは、無責任な政治家たちによって作り出された結果です。しかし、ここで一つ聞きたい。私たちは、このままで本当に良いのですか?」



 その問いかけは、どこか冷静さを保ちながらも、人々の心に深く刺さるようだった。観客たちは息を飲んで聞き入っていた。黒瀬の言葉は力強く、まるで真理を語っているかのように響いた。


 
「今こそ、この国を立て直す時だ。何もしない政治家たちが、国を腐らせるのをただ黙って見ているのは、もう終わりにしなければならない。変革の時が来た。日本を再び、世界に誇れる国にするためには、断固とした行動が必要です」


 
 彼の声には、確固たる信念と覚悟が滲んでいた。黒瀬は観衆の顔を一人ひとり見るかのように、視線をゆっくりと巡らせる。


 
「私は断言します。私が目指すのは、全く新しい日本です。誰一人として見捨てない、全員が誇りを持って生きることができる国。貧困や不公平を無くし、腐敗した権力を徹底的に排除する。それが、私の使命です」



 その言葉に、群衆の間からはざわめきが消え、熱い視線が黒瀬に集中していた。彼の言葉はまるで鋭い剣のように、人々の心に突き刺さっていた。何よりも、彼の静かながら強烈な存在感が、全員を引きつけていた。


 
「私には夢があります。しかし、それは決して一人で実現できるものではない。皆さんの力が必要です。この国を変えるために、私は全てを賭けます。共に立ち上がろうではありませんか!」

 

 その瞬間、広場に拍手が沸き起こり、歓声が響き渡った。

 

「黒瀬さん!この国を変えてください!」
「あなたしかいない!次の総理大臣になってください!」



 彼の演説に魅了された観客たちは、まるで彼を救世主のように見上げていた。その支持者たちの熱狂的な反応にも、黒瀬は決して浮き足立つことなく、静かに頷き、再び落ち着いた声で最後の言葉を投げかけた。


 
「私は、言葉ではなく行動で皆さんに示します。どうか、共に日本を再生しましょう」


 
 彼の言葉が終わると、広場は拍手と歓声で包まれた。黒瀬禍月は、まさに一流の政治家として、人々の心を鷲掴みにする力を持っていた。

 
 俺はその姿を見ながら、内心で「こいつ、ただの怖ぇやつだと思ってたけど、やっぱ本物だわ」と驚嘆せざるを得なかった。


 
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