異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第92話 職場体験6

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 ――――――――――後日

 東京某所


 
 俺、雪華、焔華、そして貴音。全員が揃って口をポカーンと開けたまま、まるで異次元に迷い込んだかのように目の前の光景に釘付けになっていた。

 目の前にそびえ立つ「寺院」――いや、もう寺院なんてレベルじゃない、完全に宮殿だ。朱色の柱は天にまで届きそうな高さで、その壮大さに圧倒される。言葉を失うって、こういう時に使う言葉なんだろうな。ディズニーランドのシンデレラ城ですら、これを見たら嫉妬しそうだ。



「……これが、寺院かよ……?」



 思わず漏れた俺の独り言に、雪華がポツリと返す。



「これ、本当に日本の建物なんですか?……異世界の宮殿にしか見えません……」



 その感想、全く同感だぜ。異世界帰りの俺ですら、このスケールにはビビる。

 そして、焔華を見ると――おいおい、なんで戦闘モードに入ってんだよ!どこで見つけたのか知らないけど、肩にはトゲトゲのパッド、手にはバット。こいつ、ここを戦場だと勘違いしてるだろ!しかも鼻歌まで歌って、テンションがマックスだ。頼むから冷静になってくれ!



「ふふ、いいのう!この場所、燃やしがいがありそうじゃ!」




 焔華、お前何考えてんだ!?燃やしちゃダメだろ!

 貴音はというと、完全に固まってる。目をパチクリさせて、口をパクパクさせてる姿は、初めてディズニーランドに来た小学生のリアクションそのものだ。



「お、お兄ちゃん……これ、本当に寺院なの?めっちゃ広いし、怖いんだけど……」



 俺も正直、ビビってる。まるでホラー映画のセットに迷い込んだ気分だが、ハーレム王がこんなところで尻尾巻いて逃げられるか!



「……あ、あぁ……とりあえず中に入るぞ……!」



 俺が言うと、みんなが少し不安そうな顔をしながらもついてくる。いやいや、俺も内心めちゃくちゃビビってんだよ。でも、ハーレム王たるもの、ここで弱気を見せてどうする?



 ――そうだ、俺は異世界帰りのハーレム王だ。魔王だってぶっ倒してきたんだ。こんな宮殿、ちょちょいのちょいだろ!



「みんな、心配するな!ハーレム王の俺がついてる!この宮殿、俺が制覇してやるぜ!」



 そう言い放って、俺は元気よく先頭を切って朱色の柱をくぐった。――が、雪華たちの顔を見ると、全然不安は拭えてないみたいだ。
 

 まぁ、俺もビビってるけどな!

 
 で、玄関に入ってすぐ。ちょっとだけ勇気を振り絞って、受付に声をかけた。



「す、すみません……雷丸ですが……」



 恐る恐る言ったんだが、受付の人はニコニコしながらすんなり俺を通してくれた。



「どうぞ、雷丸様。お待ちしておりました。」



 おいおい、VIP扱いかよ!?俺、完全に特別待遇じゃねぇか!これがハーレム王パワーか、それとも異世界帰りの英雄だからか?何にせよ、これ悪くないぜ。

 
 俺たちは堂々と受付を通過し、さらにその奥にある宮殿のような内部へと進んだ。

 
 巨大な扉が目の前でゆっくりと開かれる。俺たちは一歩一歩、朱色の柱の間を進みながら、この謎の寺院――いや、もはや迷宮のような建物の中へと足を踏み入れた。



「さぁ、ハーレム王らしくカッコよく決めるぞ!」と自分に言い聞かせ、俺たちはまるで映画の主人公になった気分で、未知の領域に進んでいった――って、待てよ、これほんとに寺院なんだよな?

 いや、まぁ、ハーレム王だから関係ないか。
 
 奥に進むと、突然目の前に現れたのは――



「やぁやぁ!!雷丸君!!」



 大きな声と共に、まるで舞台から飛び出してきたかのような勢いで現れたのは、今回のお目当ての人物「烏丸天道」だった。



 

 ――――――――――――


 


 まるで舞台から飛び出してきたような勢いで、烏丸天道が現れた。まぶしい笑顔と共に、俺の手をしっかり握りしめると、ブンブンと力強く振り回してくる。



「雷丸くーん!!今日は来てくれて本当に嬉しいよ。ようこそ、烏丸家へ!!」



 握手というか、もう腕を引っこ抜こうとしてるんじゃないかってくらいの勢いで振られる。おいおい、俺の腕ちぎれるぞ!

 
 そして、そのままのテンションで貴音、焔華、雪華にも目を向ける。フルスロットルのテンションは一切衰えない。



「君たちも一緒に来てくれて、本当に嬉しいよ!ハーレム王の仲間なら、みんな大歓迎だ!」



 ――いや、何そのテンション!さっきまでの荘厳な雰囲気どこ行ったんだよ!?まるでホストクラブのVIPルームに入ったみたいなノリじゃねぇか!


 まず天道は貴音に近づく。



「貴音ちゃん!いやぁ、君は本当に清純な美しさだねぇ!雷丸君も良い妹を持ったもんだ!将来が楽しみだな!」



 貴音は戸惑いながらも、丁寧にお辞儀して言った。



「ありがとうございます……でも、何の将来ですか?」

「そりゃもちろん、崇拝派の未来さ!」



 と、天道は満面の笑みを浮かべながら謎の言葉を放った。貴音はその場で一瞬固まり、まるで頭の中で電卓を叩いてるかのように考え込んでいた。俺も意味が分からんけど、貴音はもっと困ってる。

 
 続いて、天道は焔華の方に目を向ける。



「そして焔華ちゃん!その熱いオーラ、最高だよ!君こそ、崇拝派にぴったりだ!いつでも炎を燃やす準備ができてるんだろう?ハハハ!」



 焔華はそれを聞いて、大きく頷いた。「ふむ、その通りじゃ!わしはいつでも炎を燃やしておる!天道、なかなか良い目をしておるのう!」と、まさかの意気投合。


 
 ――ちょ、ちょっと待てよ焔華!お前までノリノリになるな!


 
 そして、最後に天道は雪華に目を向け、優雅に手を差し出した。



「そして、雪華ちゃん……君はこの寺院の冷たい空気にぴったりだ。妖怪を崇拝する者として、その凛とした冷静さが崇拝派には欠かせないよ!」



 雪華はその言葉に一瞬戸惑いながらも、クスリと微笑みを浮かべた。そして、しなやかに手を差し出して天道の手を握ると、口元をさらに柔らかく緩めながらこう返した。


 
「ありがとうございます。でも、崇拝派に欠かせないのは冷静さじゃなくて、もっと熱いものじゃないですか?鳥丸さんみたいに……テンションとか?」


 
 天道は少し固まったものの、次の瞬間には大爆笑。


 
「ハハハ!いやぁ、確かにその通りだね!僕のテンションが崇拝派を支えてるってことだよ!そう言われると嬉しいなぁ!」



 彼は嬉しそうに雪華の手をさらに力強く握ると、ニコニコと笑いながら続けた。


 
「いやぁ、雪華ちゃん、冷静な中に鋭い洞察を持ってるね!素晴らしいよ!むしろ君が崇拝派の広報担当になってくれたら、さらに勢いがつくかもしれない!」



 雪華は微笑みを崩さず、静かに手を引きながらさらっと答える。


 
「それは光栄ですが、私は雷丸様のハーレム広報担当で忙しいので……ごめんなさい。」



 天道はその返しにもまた大笑いしながら拍手を打った。


 
「ハーレム広報担当!いやぁ、素晴らしい!雷丸君、本当にいい仲間を持ったね!」



 俺は苦笑いを浮かべながら「そうだろ、俺のハーレム、最高だろ!」と胸を張った。雪華のさりげない返しが場を和ませつつ、天道のテンションをさらに上げるという絶妙なバランスを取った瞬間だった。


 天道はニコニコしながら、まるでファミリーの一員を迎え入れたかのように、三人に満面の笑みを浮かべている。いや、フレンドリーすぎだろ!そのテンション、崇拝派の狂信者とは思えないくらい軽いぞ!


 
「鳥丸さん……あの、その、何か妙に元気ですね?」



 貴音が困惑しながら聞くと、鳥丸天道は俺の肩をバンバン叩きながら、まさかの満面の笑顔。



「そりゃそうだよ!!だって、あの『異世界帰りのハーレム王』が来てくれたんだ!!うちは名門だけど、雷丸君みたいな大物が来るのはそうそうないからねぇ!!」



 ――俺が大物?名門寺院でVIP待遇を受けるハーレム王って、どういうことだよ?俺、プロサッカー選手でもあるけど、住職がそんなにハイテンションで迎えるもんか?

 
 横を見ると、焔華はテンション高すぎる鳥丸に乗り遅れないように、なぜかバッドを振り回し始めてる。

 
 俺は内心、冷や汗をかきながら鳥丸を観察した。彼はまるで遊園地に行く前の子供みたいな興奮状態で、俺たちをどんどん奥へ案内する。こいつ、本当に住職なのか?もしかして、寺院の住職ってこんなにアグレッシブなのか?俺、全然知らなかったぞ!



「さぁさぁ!今日は特別な歓迎会を用意するよ!!楽しみにしてくれ!!」



 ――歓迎会!?いやいや、ここって寺院だろ?なんでそんなノリで歓迎会なんかしてんだよ!なんかおかしくねぇか?

 
 鳥丸は手を振って、俺たちをさらに奥へと案内していく。その笑顔がやけに眩しい。いや、眩しすぎて怖ぇよ!何が待ってるんだよ、この先……。

 
 寺院らしさゼロの異常なテンションで進んでいく鳥丸と、微妙に不安げな俺たち。ハーレム王の俺ですら、この寺院の異様な空間に違和感しか感じていなかった。


 
 ――まぁ、でも……何が待ってるか、ちょっと楽しみだな。

 
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