異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

文字の大きさ
99 / 123

第99話 ターニングポイント2

しおりを挟む



 俺が向かった先は、こってりした家系ラーメンの店。脂たっぷり、背脂どっさり、まさに男の戦場って感じの場所だ。

 店の前で待っていると、目当ての人物が、ウキウキした様子でやって来た。



「――――やぁ、雷丸君!」



 鳥丸天道が、いつもの爽やかな笑顔を浮かべて、軽快な足取りで近づいてくる。



「連絡してくれて嬉しいよ、雷丸君!こうして呼び出してくれたってことは、僕の提案に乗る気になったのかな?」



 俺は彼の期待に満ちた瞳を見つめながら、一言だけ返した。



「それについては、店の中で話す」



 すると、鳥丸はまるで遠足前の小学生みたいにウキウキしながら、「いやぁ、こういう店、初めてなんだよね!家系ラーメンってどんな味なんだろう?」なんて言いながらついてきた。

 だが――店に入った瞬間、彼は固まった。



「伊集院静香……!!黒瀬禍月……!!何故ここに……!!」



 そこには、既にカウンターに座っている静香と黒瀬が、ラーメンを前にして俺たちを待っていた。店内はラーメンの匂いと緊張感が交差する、まるで戦場だ。

 鳥丸は、冷や汗をかきながら俺に向かって叫んだ。
 


「雷丸君、下がるんだ!君が私を選んだから、二人とも強硬手段を選んだんだろう!」



 しかし、俺はその場で手を挙げて、彼を制止した。



「――いや、違う」



 そしてゆっくりと鳥丸の方を振り返り、ニヤリと笑った。



「俺が呼んだんだよ」



 その瞬間、鳥丸の目が丸くなり、驚きで顔が真っ青になった。



「なん……だって……!?」



 静香は冷静な表情でラーメンのスープを一口すすり、黒瀬は湯気に包まれたラーメンを黙々と食べていた。ラーメン屋のカウンターは、まるで異世界の重要な会談が開かれるような緊迫感に満ちていた。

 俺はハーレム王として、覚悟を決めた瞬間だった。


 
「今日は、三人にちゃんと伝えようと思って」


 

 ――――――――――――






「まぁ、とりあえず座れよ。食いながら話そうぜ」



 俺はそう言って、渋々ながらも警戒心を隠せない鳥丸に席を促した。ラーメン屋の雰囲気は、どう見ても彼の「高貴な寺院生活」とは程遠い。脂っこい湯気が立ち込める中、カウンター越しに店主がメニューを聞いてくる。



「何にします?」



 鳥丸は慣れない店に圧倒されつつ、戸惑いながらメニューを開いて、「あ、じゃあ……ブタ丸ラーメンで」と頼んだ。

「にんにくは?」と店主がすかさず聞いてくる。

「いや、いいかな。この後信者の前で話す予定があるし……」鳥丸は控えめに返事をする。

 しかし、店主はすかさず「にんにくは?」と再び詰め寄る。



「え、いや、だから、いいかなって言いましたよね?」



「にんにくは?」再び同じ問い。店主の無言の圧がさらに強まる。

 鳥丸は困惑した表情で俺を見たが、俺はニヤリと笑って、勢いよくこう言った。



「この人の全部マシマシで!」



 店主はすぐに「あいよ!」と返事し、ラーメンの準備に取りかかる。鳥丸の顔色が一気に青ざめた。



「え、な、何あの人!!怖いんだけど!?」



 普段冷静な鳥丸天道が、ラーメン屋の店主相手にビビってる姿が、なんとも滑稽で笑いそうになる。俺はそんな彼の様子を見ながら、心の中で勝利のガッツポーズを決めた。


「にんにくは?っていうのは、トッピングどうしますかって意味なんだよ」と、俺は当たり前のことを鳥丸に教える。

 
「あ、そうなんだ……ってか全部マシマシって言ったよな!?雷丸君!?なんて事してくれたんだ!!」と、鳥丸は絶望の表情を浮かべながら俺に詰め寄る。

 
 俺は肩をすくめて、軽く笑いながら「大丈夫、大丈夫。これ食わなきゃラーメン屋の真髄はわかんねぇからさ!ハーレム王の信念だよ、しっかり全部マシマシでいこうぜ!」と返す。

 
 鳥丸は明らかに嫌そうな顔をしながら、観念したように大きなため息をついた。その姿はまるで、運命を受け入れるかのようだった。



「……君、私を何だと思ってるんだ……」

「崇拝派のリーダーでも、ラーメンくらいガッツリ食わねぇとカリスマ出ないぞ?俺はいつもそうしてる!」



 俺が冗談交じりに言うと、鳥丸は渋い顔をしながらも「仕方ない」と呟き、次に来る巨大なラーメンを待つことにした。
 

 そして、目の前にドカンと登場したラーメンの山を見た鳥丸は、再び固まった。



「……こ、これは……」

「さぁ、崇拝派のリーダーとして、そのカリスマで山を攻略してみせろよ!」



 俺はニヤニヤしながら、彼の反応を楽しむ。
 
「ふん、滑稽だな、鳥丸天道。」と、冷ややかな声で言い放ったのは――黒瀬禍月。

 
 だが、ちょっと待て。あんた、何言ってんだ?口の周りが脂でギトギトになってるじゃねぇか!ラーメンのスープが飛び散って、まるで子供みたいな食べ方してるぞ!?


 
「いやいや、禍月さん……あんたも相当滑稽っすよ?」



 俺は心の中でツッコミを入れつつ、彼のギラついた目を見る。いや、真剣に威圧感出そうとしてるけど、顔が脂まみれで台無しだって。


 一方、鳥丸天道はと言うと――


「ぐぬぬ……この油の塊が……まるで私の喉を塞いで……」と、完全にラーメンと格闘している。顔中が汗だらけで、もう戦闘モードはどこへやら。鳥丸がこれほど苦戦するのを見るのは初めてだ。

 
 その横で、静香さんがゆっくりと箸を置いて、「うぅ……苦しい……」と息も絶え絶えになっている。ラーメンの前で苦しむ姿は、まるで静香さんじゃないみたいだ。普段の優雅さはどこへ消えたんだよ……!


 
「静香さん、無理しなくていいんですよ!ほら、スープ全部飲まなくていいから!」



 俺が心配して声をかけるが、静香さんは顔を真っ赤にしながら「でも……完食しないと、ラーメンの流儀に反するでしょう……」と、意地を張る。

 
 いや、そんなルールどこにもないって!俺は静香さんの謎のこだわりに再度ツッコミを入れながら、少しだけほっとした。なんだかんだで、みんなそれぞれキャラ崩壊してるけど、こういうところが俺の周りの面白い奴らだよな、なんて思ってしまった。
 


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜

来栖れいな
恋愛
「覚醒しなければ、生きられない———       しかし、覚醒すれば滅びの呪いが発動する」 100年前、ヴァンパイアの王家は滅び、純血種は絶えたはずだった。 しかし、その血を引く最後の姫ルナフィエラは古城の影で静かに息を潜めていた。 戦う術を持たぬ彼女は紅き月の夜に覚醒しなければ命を落とすという宿命を背負っていた。 しかし、覚醒すれば王族を滅ぼした「呪い」が発動するかもしれない———。 そんな彼女の前に現れたのは4人の騎士たち。 「100年間、貴女を探し続けていた——— もう二度と離れない」 ヴィクトル・エーベルヴァイン(ヴァンパイア) ——忠誠と本能の狭間で揺れる、王家の騎士。 「君が目覚めたとき、世界はどう変わるのか......僕はそれを見届けたい」 ユリウス・フォン・エルム(エルフ) ——知的な観察者として接近し、次第に執着を深めていく魔法騎士。 「お前は弱い。だから、俺が守る」 シグ・ヴァルガス(魔族) ——かつてルナフィエラに助けられた恩を返すため、寡黙に寄り添う戦士。 「君が苦しむくらいなら、僕が全部引き受ける」 フィン・ローゼン(人間) ——人間社会を捨てて、彼女のそばにいることを選んだ治癒魔法使い。 それぞれの想いを抱えてルナフィエラの騎士となる彼ら。 忠誠か、執着か。 守護か、支配か。 愛か、呪いか——。 運命の紅き月の夜、ルナフィエラは「覚醒」か「死」かの選択を迫られる。 その先に待つのは、破滅か、それとも奇跡か———。 ——紅き誓いが交わされるとき、彼らの運命は交差する。

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...